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欧州訪問報告(VPOD・ILO・ITUC)

2017年1月29日(日)から2月3日(金)の間、スイス及びベルギーにてVPOD(スイス公務員組合)・ILO(国際労働機関)・ITUC(国際労働組合総連合)との協議及び要請活動等を、「連合」平川秀行国際局長、「公務労協」吉澤信夫事務局長・林義倫事務局次長とともに、全消協から井戸章夫副会長・青木女性連絡会代表が参加した。

行程

1/29(日)
12:45 羽田空港発
17:00 ミュンヘン空港着
18:45 ミュンヘン空港発
19:40 チューリッヒ空港着

1/30(月)
13:30 VPODとの協議・要請 (面談者:Georg Munz)
15:00 ウィンタートゥール市消防見学 (面談者: Isabelle Sieber)
19:00 VPOD事務総長との会合 (面談者:Stefan Giger)

1/31(火)
09:30 チューリッヒ空港発
10:20 ジュネーブ空港着
13:20 ILOとの協議・要請(面談者: Karen Curtis他)
16:00 PSIとの協議 (面談者:David Boys他)

2/01(木)
11:25 ジュネーブ空港発
12:40 ブリュッセル空港着
15:00 ITUCとの協議・要請 (面談者:Jaap Wienen Diallo Mamadou他)

2/02(金)
市内視察
18:00 ブリュッセル空港着
20:50 ブリュッセル空港発

2/03(土)
16:15 成田空港着


写真:ILOにて

VPOD(スイス公務員組合)との協議趣旨概要
日本の自治体消防は発足から60年以上が経過したが、団結権が否定され社会的にも認知されていない。このような情勢の中で、当事者である消防職員は40年前に自主組織を結成し、現在も団結権を求める活動を続けている。

2010年、民主党政権下で政府は「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」(以下、検討会)を設置し、報告書がとりまとめられ、2012年には消防職員に団結権を認めるとした関係法案が立法措置されるところまでいったが、審議されず廃案となった。

日本は近年、2011年の東日本大震災など大規模災害が多発しており、現場の最前線で働く消防職員は「公務の中でも特に重要な存在だ」として国民に広く認知されている。

団結権に否定的な人たちは「仕事に支障がでる」「指揮命令系統や部隊活動に影響が出る」ことを理由としているが、検討会による諸外国消防の状況調査では、対象となったほとんどの国において団結権が認められており、日本が国際的にみて極めて異例であることが明らかになった。また、業務への影響も調査したが「業務への影響は認められなかった」との結論が出ている。消防職員が団結権を有していることは世界的な常識であることについても改めて世論に訴えていきたいと考えている。

検討会の報告書では、スイスの消防職員の労働基本権は、日本の非現業公務員と同様となっていたが実際はどうか。まずは団結権回復をめざし、スイスの消防行政を参考にさせていただきたい。また、団結権の経過を教えてほしい。

日本の消防職員の団結権問題について、4月に「大規模災害時の消防職員の活動と団結権の必要性」をテーマとして「連合」主催のシンポジウムを開催し、世論喚起したいと考えているため協力を願いたい。


写真:VPODにて

ILO(国際労働機関)との協議趣旨概要

2017年はILO第87号条約と98号条約の日本案件についての政府レポートの年となる。国内情勢は動いていないが、2018年ILO総会における個別審査にむけて覚悟と決断を持って臨むことを表明。

日本の現政権が女性参画推進等の取組みに力を入れたのは初めてであり、政策内容によっては受け入れ、上手く使っていく必要があると考えている。

団結権問題の最たるものである消防職場は女性職員が非常に少ない。地方公務員全体で約40%、警察でも7%であるにも関わらず消防ではわずか2%となっており、女性参画は中々進んでいない。

その中でも、全消協では女性会員が積極的に活動している。

労働基本権は全体の問題でもあるが、女性消防職員のためにも団結権を回復し、勤務環境や労働条件の改善をめざすことが必要であると考える。

日本の消防職場の経過及び現状に関してはVPODとの協議趣旨と同様に説明。

2018年ILO総会にむけた活動を行う上で本年は勝負の年となるため、指導をお願いしたい。


写真:ILOにて

ITUC(国際労働組合総連合)との協議趣旨概要

ILOとの協議趣旨と同様である2018年ILO総会における個別審査にむけ、連合を含め決意と覚悟をもって臨むことを表明した。

日本の消防職場の経過及び現状に関してはVPOD・ILOとの協議趣旨と同様に説明。

公務労働組合としてはPSI等を通じて、連合は諸外国のナショナルセンターへの理解を得る必要があると考えるが、本当に大きく非常に重要なのはITUCであるため、強い対応と日本への指導・協力等について要請をおこなった。


写真:ITCUにて

所 感(青木玲奈)

2017年4月に東京都にて開催される連合主催のシンポジウムにて『消防職員の団結権』が取り上げられることを受け、また2018年のILO総会における個別審査にむけた指導・協力要請のため、関係機関を訪問するとのことで参加させていただきました。

4泊の行程の中で、スイスにてVPOD(スイス公務員労組)とWinterthur市の消防署見学およびILO本部を訪問、ベルギーに移動しITUCを訪問しました。

VPODではシンポジウムで来日予定のゲオルグ・ムンツさんよりスイスでの労働基本権の状況や消防行政の成り立ちをお聞きしましたが、スイスはボランティア消防(日本で言う消防団)が先に確立されており、プロの消防は非常に少数で消防学校が出来てまだ10年足らずであることを知り驚きました。その後見学したWinterthur市の消防署は全職員40数名の組織で、男性職員に女性が消防にいることについて課題を尋ねると「女性は第一期初任科からいたので、いるのが当たり前の感覚。何がそんなに問題になっているのか」と反対に質問されてしまうほど『男女ともに働く職場』となっていたのが印象的でした。

ILOでは日本における87・97号条約の問題に長らく取組んでいるCFA(結社の自由委員会)のカレン・カーチスさんを訪ね、全消協女性連絡会の活動内容を紹介、現場で働く女性消防職員の現状、現政権の掲げた女性活躍推進を受けての消防庁の動き、消防職員委員会だけでは現場の意見はなかなか組織に反映されないことなどを直接お話しさせていただきました。カレンさんからは「ILOからの勧告を当事者(日本の消防職員)が国内でどう使っていくのかを戦略的に考えることが重要である」とご意見をいただきました。

ITUCでは井戸副会長より日本の消防職場の現状や、災害派遣における安全管理・保障など自治体間格差を訴え日本の現状を知ってもらうことができました。

今回の訪問を通して、私たち日本の消防職員は団結権を得て市民サービスの向上はもとより、自分たちの安全(装備の充実やハラスメントの一掃等々)をもっと考え充実させる必要と権利があるのだと改めて感じました。その権利を得る努力は他の誰でもない、当事者である私たちがしなければなりませんが、現状は結果的に他力本願となってしまっている部分も多いのではないでしょうか。それは閉鎖的な職場環境も大きな原因の一つであり、外の世界を知る機会を得られる全消協の重要性は非常に大きく、会員はもちろん未組織・非会員の多くの消防職員にもっと全消協の存在を伝え、声を大きくしていくことがやはり今後の最優先課題であると再度認識しました。シンポジウムの影響は未知数ではありますが、この一連の波にどう乗っていくのか全消協の在り方が問われているのかもしれません。

末筆となりましたが、今回国際機関の訪問し直接現場の声を訴えるという願ってもない貴重な機会をいただきましたことに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 

所 感(井戸章夫)

今回の欧州訪問に至った理由は、4月に連合が開催するシンポジウム「大規模災害時の消防職員の活動と団結権の必要性」に、VPOD(スイス公務員組合)消防職員担当であるゲオルグ・ムンツさんにスイスの消防行政と団結権に関する事例報告及びパネルディスカッションのパネリストとして招聘するための事前協議等と、2018年ILO総会における個別審査に向け、ILO(国際労働機関)とITUC(国際労働組合総連合)へ日本の消防職員の団結権問題への対応協力及び指導をしていただくためであった。

それぞれの組織に、全消協として団結権への決意・大規模災害等活動報告・女性職員の現状と課題を伝えることができた良い訪問となった。

各組織からのアドバイスを具現化していくためには、今まで以上に全消協の組織強化拡大をはかり、消防職員の団結権問題に関しての世論喚起を行い、世論を味方につけ、自治労、公務労協、連合、協力国会議員とより強固な連携・協力関係を深め、政治活動及び国際連帯の強化を図り国(政府及び関係省庁)に対して国内外からの圧力となる働きかけが必要である事を痛感した。

まずは4月に開催される、連合シンポジウムを世論喚起の第1歩と位置づけ、私たちの現状・課題を訴える機会の成功を目指します。

最後に、このように大変貴重な欧州訪問に参加させていただいたことに心から感謝を申し上げます。


写真3枚:ウィンタートゥール市消防