TOP > 活動方針 > 2022ー2023年度活動方針

2022ー2023年度活動方針

Ⅰ 基 調

 

1. 私たちをとりまく情勢

【国外の情勢】

2020年3月、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)について世界保健機構(WHO)がパンデミック(感染症の世界的大流行)を宣言して以降、全世界で感染者が爆発的に増加し、死者も多数発生しています。感染拡大の波は繰り返し各国を襲い、複数の変異株の発生も相俟って医療はひっ迫し崩壊の危機にさらされています。2021年3月からは世界各地でワクチン接種が本格化していますが、パンデミック収束には程遠いのが現状です。また、この「コロナショック」によって経済活動の停滞等が1年半を経過してもなお継続しており、IMF(国際通貨基金)などからは2021年の世界の実質GDP成長率は6%程度のプラスに転じるとの予測が出されているものの、変異株の感染急増などによる事態の悪化も危惧されるなど、先行きは不透明です。

新型コロナの発生源となった中国では、台湾問題および周辺諸国との領土をめぐる対立のほか、新疆ウイグル自治区での人権抑圧や香港の民主化運動への弾圧を益々強めるなど、国際社会において人権問題等について懸念の声があがっています。

アメリカでは、2021年1月に「自国第一主義」的な政策によって国内外で多くの対立を生んだトランプ前大統領からバイデン大統領へと政権が変わりました。バイデン大統領はトランプ前大統領の「新・冷戦思考」をリセットし、新型コロナや気候変動などの分野では中国との協調をめざすとしていますが、貿易分野から始まった米中対立は、人権・民主主義といった価値観や安全保障問題へと拡大しています。

世界的環境問題に関しては、アメリカが2030年度までに温室効果ガスを半減させるとの公約を掲げ、先進国は中国などを除きその政策に追随する姿勢を示しました。また、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の認知度が高まり世界規模で環境問題に対する危機意識が共有され始めました。

世界各地では気候変動に伴うと思われる森林火災・洪水が頻発しています。7月にはカナダ西部のブリティッシュコロンビア州で最高気温49.6度という記録的熱波により死者が相次いでいるなど、気候変動への対応は世界各国が歩調を合わせて取り組むべき喫緊の課題となっています。

 

【国内の情勢】

国内においても新型コロナに振り回され続けています。2020年4月、政府は緊急事態宣言を発令し、外出自粛を呼びかけるとともに遊興施設や商業施設など幅広い業種に休業を要請しました。その後、一時的に減少してきた感染者数も2020年12月頃からは再度増加傾向となり、幾度にもわたり緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が再発令されるなど、感染拡大の波は繰り返し襲ってきています。

この間国民生活は大きく変化し、ソーシャル・ディスタンスやマスク着用など「新しい生活様式」が浸透しました。また、「テレワーク」の推進をはじめ、感染リスクが高まるとされる「3密」を回避する動きが広まりましたが、長きにわたるコロナ禍の中で国民は疲弊しています。

政府は、新型コロナへの対策として、「特別定額給付金」の支給や雇用維持のための「雇用調整助成金」、さらには苦境に陥った観光業界を支援する「GoToトラベル」事業など、様々な緊急経済対策を講じてきました。しかし、場当たり的な緊急事態宣言の発令・解除や、水際対策の失敗、国際的なワクチン獲得戦での敗北など、コロナ対策については厳しい意見が大多数を占めています。さらに、7月12日からは東京都に4度目の緊急事態宣言が発令されるなかで東京オリンピック・パラリンピックが半ば強引に開催されましたが、変異株による感染も拡大し、8月5日には1日あたりの全国の感染者数が1万5,000人を超えるなど、更なる状況の悪化が危惧されています。

2月からは医療従事者等に対しワクチン接種が始まり、自治体等の尽力も相俟って進んできてはいるものの国民全体へは行き渡っていません。また、政府は自衛隊を動員し大規模ワクチン接種会場を設置、6月21日からは企業や大学などで職域接種をスタートさせました。しかし、大規模会場の稼働は2割程度にとどまり、対して職域接種は申し込みが殺到し開始の同日に受付を一旦打ち切るというお粗末なものとなりました。そのような中、ワクチンの打ち手として救急救命士を動員するとの施策が示されましたが、本来の救急業務へ影響が出てはならず、また、安易な対応により職員の過度な負担とならぬように強く働きかける必要があります。

国民の声を反映していない政策の結果、7月に行われた東京都議会議員選挙では自民党・公明党が過半数に届かず、前回旋風を巻き起こした都民ファーストの会も大きく議席を減らしました。2021年秋には衆議院議員選挙が実施されますが、私たちの訴える消防行政の向上と職場環境の改善のための代弁者を見極めていく必要があります。

毎年、自然災害が多発していますが、7月には静岡県熱海市で大雨による土石流が発生するなど、全国各地で災害が頻発しています。消防職員はこうした災害において最前線で現場活動に従事しており、対応しうる体制の整備等が不可欠です。

この間、災害や新型コロナ関連の暗いニュースが目立ちましたが、国内外の文化・スポーツ分野で日本人が活躍する明るい話題もありました。

 

【地方公務員・消防職場を取り巻く情勢】

新型コロナの感染拡大や大規模な自然災害等、危機的な事態が次々と発生している状況の下で、住民生活を支える立場にある地方公務員・消防職員に求められる役割は、これまで以上に重要なものとなっています。しかし、この間、地方公務員数は大きく減少し、民間委託などの推進も相俟って災害時の即時対応などの難しさが明らかになってきています。また、消防職場においても新型コロナや増大する救急需要に対応するための人員の確保等も課題となっています。さらに、新型コロナの感染拡大防止の観点から在宅勤務や時差出勤などを導入している消防本部もありますが、それにより職員に業務負荷がかかる状況も散見されています。引き続き、業務体制の整備を求めていく必要があります。

2021年6月、国家公務員と地方公務員の定年を65歳まで段階的に引き上げるための、「国家公務員法等の一部を改正する法律案」及び「地方公務員法の一部を改正する法律案」が可決・成立しました。両法律案について、参議院内閣委員会、衆議院及び参議院総務委員会においては、①公務員の働き方改革の一層の推進、②新型コロナウイルス感染症対策等に関する職員の安全確保と職務環境整備等に関する附帯決議が採択されています。今後、地方自治体における関係条例の整備が進められ、定年年齢が2023年度から2年に1歳ずつ段階的に引き上げられ、2031年度には65歳となるよう国と同様の措置が講じられる予定となります。

自治体消防制度が確立してから70年以上が経過した現在の消防職場は、消防車両や個人装備品などの資機材は小型・軽量化、省力化が進み性能も飛躍的に向上しました。一方で、消防業務の性質上、職員の体力が勝負となる部分が大半を占めていることを考慮し、定年年齢の引き上げが適切に導入されるよう組織の総力をあげて早急に取り組む必要があります。

総務省消防庁は、緊急消防援助隊の登録目標隊数を、 2023年度までに現在の約6,000 隊 (24,000人規 模 )から 6,600 隊(27,000人規模)に増強するとしていますが、派遣に関する待遇については派遣元の自治体条例によるため、賃金・労働条件等で不均衡が生じているのが現状であり、その解消が早急に求められています。また、大規模災害発生現場での肉体的・精神的ストレスに対する対応策も十分措置されているとは言えません。あわせて、新型コロナをはじめとする感染症等に対するより一層の配慮など、更なる労働安全衛生の確立を今まで以上に国に対して強く働きかける必要があります。

 

【新型コロナに関する消防職場の課題】

新型コロナ感染拡大初期に比べ感染防護資器材はある程度整備されてきたものの消防本部ごとに差異があり、当該自治体内でクラスター等が発生した際やコロナ禍が長期化する情勢下において資器材不足が危惧されています。また、防疫等作業手当(準ずる手当を含む)の支給額や要件に差異があることも全消協主催のアンケート調査等で明らかになっています。

さらに、一時期に比べ病院の受け入れ態勢は改善されてきましたが、未だに病院選定に時間を要する搬送困難事例も散見されます。

引き続き、日本の消防職員の代表たる組織として、こうした現場の実情を関係省庁等に対して訴え、しかるべき措置を講ずるよう追求します。

コロナ禍において、救急現場では陽性者および疑陽性者に対応した後、徹底した消毒作業を終了するまでは車両運用を停止せざるを得ないのが実情です。これは明らかな救急サービスの低下であり、近年増加の一途をたどる救急要請への対応に支障をきたしています。従来から訴えていた消防力の整備指針の改正による救急車増隊をより強く政府に対して働きかけ住民サービスの向上をめざします。

政府は、ワクチンの接種体制を強化することを目的に、ワクチン接種の打ち手として救急救命士等を活用することを決定しました。今回の救急救命士等によるワクチン接種業務への従事はコロナ禍における感染拡大防止や住民が安心して生活するための基盤となるものの一助であると考えます。他方、ワクチン接種業務への従事にあたって、総務省・消防庁から「消防職員である救急救命士がワクチン接種業務に従事する場合の任命等及び手当について」(通知)が発出されていますが、変則勤務およびコロナ禍の日常業務が従前に比べ負担が大きくなることから、①本来業務である救急を含む部隊(人員)に過度な負担が出ないこと、②協力する職員の研修等を丁寧かつ適切に行うこと、③接種業務に従事する職員の手当等を適切に支給すること、など、適正な労務管理や労働諸条件となるよう働きかけていくことが不可欠です。

 

2. 運動の基本方向

【消防職員の団結権回復にむけた対応】

団結権問題とILOの対応
全消協は、1977年の結成以来、団結権回復にむけた運動を一貫して続けてきました。日本政府は消防職員の団結権禁止について、ILO(国際労働機関)の第87号条約で、「軍隊及び警察に条約が規定する保障(団結権等)を適用するかどうかは各国の国内法令で定めること」としているため、消防は警察に含まれると解されることから、「同条約上問題なしとした上で1965年に批准した」としています。これに対し、1973年、ILOは「消防職員に団結権が認められるよう適当な措置をとることを希望」するとして、日本政府に消防職員への団結権付与について勧告し、以降幾度にもわたって指摘がなされていますが、現在に至るまで具体的な措置は講じられていません。

② 消防職員委員会の創設
1980年代後半から団結権問題が政労においてさらにクローズアップされるなか、1995年の自治労委員長と自治大臣(当時)の会談では、消防職員の団結権問題についての当面の解決策での合意として、「消防職員委員会」が創設され、1996年から開始されました。また、2005年には「意見とりまとめ者」などの告示改正が行われるとともに、第107回ILO総会・基準適用委員会での議論も踏まえ、消防職員委員会の運用方針の改正にむけ政府との協議に精励した結果、2018年9月には「連名・匿名での意見提出」などを盛り込んだ告示改正が行われました。しかし、消防職員委員会は職員個人の意見を提出・審議するものであり、消防職員の団結権に代わるものにはなりえません。

③ PSIへの加盟と国内での機運の高まり
2007年、消防職員の団結権回復の運動を国外からも協力を得るため、全消協はPSI(国際公務労連)に加盟しました。2009年9月、民主党(当時)を中心とする政権が発足し、公務員の労働基本権問題や労使関係制度の改革にむけて本格的な作業が始まり、消防職員の団結権は着実に回復への道を辿りました。2010年10月に発足した「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」で議論が重ねられ、「付与が妥当」とされました。2012年11月には、消防職員への団結権付与を含む「地方公務員制度改革二法案」が国会へ提出されましたが、衆議院の解散により審議未了のまま廃案となり、消防職員の団結権回復への道筋は一旦途切れました。

④ 定期協議に至るまでの国際的な対応
国内における膠着状況が続く中にあって、全消協は自治労や公務労協、連合、そしてPSIを通じて、ILOやITUCなどへの働きかけなど国際的な対策を強化してきました。その結果として、2018年5月末から開催された第107回ILO総会・基準適用委員会(以下「基準適用委員会」という。)の個別審査の対象とされました。基準適用委員会での審査は、187の加盟国の労働問題の中で特に討議すべき優先順位が高い事項が選ばれるものですが、その対象となるためには、国内外での実情を訴えていくことが不可欠であり、全消協のこの間の国際対策が実を結んだ結果であり、従来の勧告とは一線を画すものです。

基準適用委員会の議論の中で、日本政府は、団結権付与に関しては今まで通り「警察と同視」との見解を示しました。しかしながら日本政府は、消防職員委員会制度が定着しているとした上で、①消防職員委員会の運用方針の改正を行うこと、②新たに労働側との定期的な意見交換の場を設けることを明言し、これを受けた議長集約でも同様の指摘がなされるとともに、結社の自由委員会報告において、日本の公務員の労働基本権問題について、2002年の連合・官公部門連絡会のILO提訴以降11回目の勧告が行われました。

特筆すべきは、政府が「②労働側との定期的な意見交換の場を設ける」を認めたことです。これにより全消協は、自治労と連携し日本の消防職員の代表組織として災害現場の最前線で奮闘している会員から預かった想いを踏まえ、定期的に政府と対等な立場で協議を実施しています。

⑤ 団結権の回復にむけて
前述の通り、消防職員委員会制度の改正がされるに至りましたが、同制度は「団結権に代わるものにはなりえない」ことは明らかです。時には自身を命の危険にさらし、住民の負託に応えるため災害現場の最前線で活動する消防職員の意見を反映させるためには、労働基本権は必要不可欠なものです。

今後も、自治労および自治労消防政策議員懇談会やPSI-JC(国際公務労連加盟組合日本評議会)・連合および公務労協とも連携し、団結権の回復に向け全力を注ぎます。

 

【組織の強化・拡大】

全消協は、第37回定期総会で会員3万人体制を目標に掲げていますが、会員数は10年前とほぼ同数で推移しています。そのため、これまでの取り組みを検証した上で、第43回定期総会において「新たな組織強化・拡大の取り組み(以下「組織強化・拡大アクションプラン2020」という)」を策定し活動を行うこととしました。しかしながら新型コロナ感染拡大に伴い、2020年度半ばから全消協も活動・行事などを制限しなければならない状況となり、具体的な成果には至っていません。

こうした状況を踏まえ、全消協はコロナ禍においても出来得る活動を模索するとともに、全国的な参集が難しい状況においてもブロック単位を含めた近隣での活動強化が不可欠であることも踏まえ、「組織強化・拡大特別支援金」制度を創設し取り組みを展開することとしました。また参加者を感染リスクにさらさないことを最優先とし、全国的なウェブ会議を実施してきました。改善すべき点はありますが、今後もウェブ等を活用することにより、これまでの課題であった、「休みの調整ができず参加できない」「少人数しか参加できない」といった意見にも柔軟に対応できると考えます。全消協に加盟し各地域の情報・活動状況を共有できることは大きなメリットであり、ブロック・県消協・単協における活動強化やウェブで繋がる体制の構築に取り組みます。

一方で、この間実施してきたウェブ会議後のアンケートでは、参集することも重要であるとの意見が多く寄せられています。参集開催の重要性は全消協の共通認識ですが、コロナ禍が続くことが想定されるなかしばらくは従前のような規模での行事の開催は困難と考えています。しかし、組織とは「人」であり「人とのつながり」によって成り立つものであることから、その再構築に向けた手法を検討し組織強化・拡大とすべての世代の人材育成に取り組みます。

 

【賃金・労働条件の改善】

全消協は、結成以来、賃金・労働条件の改善にむけて、継続して取り組みを行ってきましたが、当初からの課題である無賃金拘束時間についてはいまだ解決されていません。2003年、総務省消防庁が発出した206号通知を根拠に、休憩中の労働を事後において休憩時間を繰り下げることにより、時間外勤務を正規の勤務時間とし、処理できない時間のみ時間外勤務として扱う恣意的な運用をする職場もあります。これは勤務時間の事前明示に反するものであるため、法制度上の矛盾を追及し206号通知の不正運用を解消する活動を展開します。

緊急消防援助隊の派遣にあっては、多くの自治体で派遣手当の新設などの条例整備がされました。また、総務省消防庁は、緊急消防援助隊の活動に、出動前の車両点検等の準備を含むとの見解を示しました。しかし、いまだ条例整備を行わない自治体が存在するなど改善に至らない消防職場が多々あります。

緊急消防援助隊の出動は国の制度下によるものであり、派遣に伴う諸条件は全国画一とすべきであることから、引き続き、総務省消防庁への働きかけを行っていく必要があります。

新型コロナに対する防疫等作業手当については、総務省通知等を基に条例整備等を行うことが不可欠であることから、各消防本部における情報を収集するとともに、必要に応じて関係省庁への働きかけを行います。あわせて、休暇等に関する取り扱いや救急救命士のワクチンの打ち手の課題に対しても取り組みを展開します。

新型コロナの感染拡大は経済にも大きな打撃を与えました、その影響は今後、国・地方の財政にも波及してくることが想定されることから、消防財政の不当な緊縮・人件費削減、さらには財政面だけを主眼とした不合理な広域合併が推進されないよう働きかけを行います。

消防職員が安心安全に働ける再任用制度や定年延長のあり方を最重要課題の一つとして取り組むとともに、2018年に成立した「働き方改革関連法」を基に、消防職場の働き方について、あるべき姿の提起を行います。

また、人事評価制度についても、恣意的評価がされないよう取り組むとともに、消防職場に適したものとなるよう調査・研究を行います。

 

【労働安全衛生の確立】

全消協は、結成以来、継続して消防職場の労働安全衛生について取り組んできました。消防業務は、深夜勤務を伴う交替制勤務や長時間拘束などの過重労働であり、有事の際には、危険な現場に赴くことが求められます。また、新型コロナ感染拡大により、陽性者および疑陽性者との接触が増加しました。感染防止資器材を充実させるなど、現場での感染リスクを極力低下させ、安心して目に見えないウイルスと対峙するためには何をすべきかを考え取り組みます。

近年は、災害が大規模・複雑多様化の傾向にあり、それに対応するための資機材や技術の高度化が進んでいます。そのため、これまで以上に現場や訓練時の安全管理体制・メンタルケアの確立が求められています。消防力の低下を防ぎ、より質の高い消防サービスを提供するためには、これまで以上に職場の安全衛生体制の確立と、労働安全衛生活動の強化が必要です。そのために全消協は、労働安全衛生法を活用し、安全で快適な消防職場に即した職場環境を整備する取り組みを進めます。

総務省消防庁は、2017年7月「消防本部におけるハラスメント等への対応策」を示しました。この対応策の策定にあたっては、全消協も現場目線での意見を伝えるなど取り組みを行ってきています。

引き続きすべてのハラスメントを撲滅させることを重要な課題として、ハラスメントによる「犠牲者」を出さないよう取り組みを進めます。

さらには職場内のハラスメントのみならず、職場外の様々なハラスメント対策についても新たな課題として取り組み手法を検討します。

 

Ⅱ 活 動 方 針

(1) 団結権回復にむけた取り組み

全消協は、1977年の結成以来、最大目標である団結権回復にむけて取り組みを続けてきました。2009年9月には民主党(当時)を中心とする政権が発足し、「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」が設置され議論が活発になりました。しかし、2012年11月に法案が閣議決定されたものの、衆議院解散により審議未了のまま廃案となり、直後の再度の政権交代以降、今日まで議論の俎上にはのぼっていません。

こうした中にあっても全消協は団結権回復にむけて国内外で活動を展開してきました。2017年11月に開催されたPSI第30回世界大会では、「日本の公務員と韓国消防職員の労働基本権」と「公共サービスと公共サービス労働者の拡充で災害に強い社会づくり」の決議案を提出するとともに、村上全消協会長が「日本の消防職員の労働基本権問題」を提起しました。その際には、ガイ・ライダーILO事務局長から全消協の活動を支援する旨の考えも表明されています。

2018年5月末から開催された第107回ILO総会・基準適用委員会において日本の公務員の労働基本権問題が個別審査され、報告書が採択されました。これは連合や公務労協、自治労の尽力によるものですが、それには諸外国の労働組合との合意も必要であり、当事者たる全消協がPSIを通じて声を上げ続けてきた結果でもあります。

また、同時にILO結社の自由委員会第386次報告では、日本政府に対して11度目の勧告が行われ、こうした経過を踏まえ設定されたILO総会基準適用委員会議長集約にかかる定期協議には全消協も主体的に参画しています。今後も現場の意見を反映させ、団結権回復の運動を展開します。

全消協は引き続き消防職員の団結権回復を含むすべての公務労働者の労働基本権回復にむけて、自治労消防政策議員懇談会との連携やPSI-JCでの活動を通じ、連合・公務労協とも連携し取り組みを継続していきます。

さらに、今後も自治労と連携し、地域公共サービス分野で働く同じ労働者として、共通した問題意識を持ちながら、ともにたたかう体制づくりを構築します。あわせて、全消協第33回定期総会で決定した団結権回復後の組織のあり方である「自治労に合流することを前提とし、課題整理していく」ことを踏まえ、自治労と定期的に組織合流のあり方について検討を行います。

 

【労働基本権回復のための政治的活動の強化】

1. 消防職員の団結権回復を含む公務員の労働基本権の回復にむけ、自治労をはじめ公務労協・連合との連携をより一層密にし、自治労消防政策議員懇談会に支援と協力を求め、政府・総務省消防庁などへの問題提起など、団結権回復にむけた働きかけを行います。

 

【労働基本権回復にむけた国際連帯の強化】

2. ILO87号条約批准国であるにもかかわらず、消防職員への団結権付与にむけ、国内法令の整備等、積極的な行動を起こさない日本政府に対して、PSI-JCでの活動を通じ、国際的な機運が高まるよう取り組みます。

3. PSIに加盟する消防・救急労働者等との情報交換を行うとともに、PSI-JCの活動を通じ、他産別との交流を深め、消防職場の現状を発信します。

 

【自治労への合流を見据えた連携強化】

4. 全消協は、引き続き団結権回復を見据え、自治労に組織合流することを前提に具体的協議を重ね、これからの組織のあり方について共通認識を深めます。

5. 全消協は、自治労本部と引き続き連携を深め、県消協・単協においては自治労県本部・単組とより一層の連携を深めます。

 

(2) 組織強化・拡大の取り組み

全国約16.5万人の消防職員のうち、全消協会員数は約1万3千人で、10年前からほぼ横ばいとなっており、会員数の大幅な増加には至っていません。

また、新型コロナの感染拡大に伴い、2020年度半ばから現在に至るまで活動や行事を制限しなければならない状況となっており、その影響により消滅のおそれのある単協が出てきているのも事実です。

また、この間、広域再編の動きを組織拡大の機会として捉え、自治労とともに取り組みを行ってきましたが、広域化がされた単協の組織力には濃淡があることから、より地域実情に合わせた組織強化・拡大にむけた施策が必要となっています。

喫緊の課題である組織強化・拡大を推進するために、会員3万人体制を目標に掲げ、「組織強化・拡大アクションプラン2020」に基づき、まずは、さらなる組織強化を進め、全既存単協の会員加入率過半数をめざし、各地での勉強会等の実施の後押しを行います。組織拡大にあたってはブロック幹事が中心となり、自治労の地区連絡協議会(地連)とも連携し未組織本部への働きかけを行います。あわせて、隣接するブロックと協力し情報の共有、オルグ活動の活性化をめざすとともに、「組織強化・拡大特別支援金」制度を活用し、ブロック・県消協・単協における活動を強化します。

さらに、全国的な参集が難しい状況下においてもウェブを活用し、労働講座・研究集会・女性交流会・ユースStep Upセミナー等を継続するとともに各種講座の機会を利用して組織強化・拡大を進めます。

性別を問わず、すべての世代の人材育成と組織強化に努めます。女性連絡会・ユース部の活動を強化し、女性とユース世代が参画しやすい協議会活動を展開します。

 

【組織強化・拡大方針について】

1. 2020組織強化・拡大アクションプランを基軸に、多くの意見を集約するとともに、組織強化・拡大事例を共有し、単協・県消協・各ブロックと連携した組織強化・拡大活動に取り組みます。

2. 全消協幹事が中心となり、ブロック内でより積極的な組織強化・拡大活動を行います。

3. 自治労大都市共闘との連携を深め、大都市消防における組織強化・拡大に取り組みます。

4. ウェブを活用した取り組みを強化し情報の共有化をはかります。

5. 参集ができない場合においてもウェブでの会議、各種講座を実施します。

6. 「組織強化・拡大特別支援金」を活用しブロック、県消協、単協の活動をさらに強化します。

 

【自治労本部との連携】

7. 自治労第5次組織強化計画も踏まえ、自治労本部とともに、既存単協の組織強化や未組織消防職場への組織拡大のオルグ活動の環境を整備します。また、自治労共済をオルグ活動に活用します。

8. 自治労消防政策議員懇談会と連携し、消防職場を取り巻く課題への対応を通じて組織強化・拡大を推進します。

 

【自治労県本部・単組との連携】

9. 自治労県本部・単組と県消協・単協は、組織強化・拡大にむけて連携を深め、取り組みを進めます。
① 消防職場の実態や問題点などを共有し、現状の打開策を協議します。
② 自治労各県本部に「消防組織化対策委員会」の継続を働きかけ、組織強化・拡大を推し進めます。
③ 未組織消防の組織化をめざし「組織化マップ・組織化事例集(仮称)」の作成にむけてデータの集約をはかります。

 

【協議会活動を担う人材の育成】

10. 単協における個々の会員の積極的な活動参加を促します。また、未組織の消防職場への働きかけを行うため、オルガナイザーの育成・配置に努めます。

11. 次世代の協議会活動を担う人材育成を目的に、問題の所在と課題、あるべき姿の提示から解決の方向性を提起できる能力の開発をめざし、労働講座やユースStep Upセミナーを開催します。

12. 女性・ユース世代が各ブロック等で学習会を開催するなど、自主的な活動を後押しし、協議会活動を担う人材育成に努めます。

 

【全消協PR活動について】

13. 全消協ホームページおよび各種SNSの活用のほか、全消協ニュース・パンフレットを作成します。これら各種媒体を活用し、会員ならびに未組織消防職員へ全消協活動全般を広く情報発信し、組織強化・拡大につなげます。

 

(3) 賃金・労働条件改善への取り組み

住民の安心安全を守るためには、消防職員の勤務労働条件の向上は欠かせません。

しかし、現在の消防職場においても、全消協結成当初からの課題である無賃金拘束時間の解消が、いまだになされていません。

一度出場となれば、過酷な現場活動に従事するにもかかわらず、2003年に総務省消防庁が発出した206号通知を根拠に、休憩中の労働を事後において休憩時間を繰り下げることにより、時間外勤務を正規の勤務時間とし、処理できない時間のみ時間外勤務として扱う恣意的な運用をする本部もあります。また、2011年の広島高裁判決では、消防職員は休憩時間の自由利用の原則が排除されていることを根拠に、労働時間性を否定しました。この裁判の結果も踏まえ、各消防職場の勤務時間や休憩時間等の実態を調査するとともに、無賃金拘束時間の解消にむけ、現行の法制度上の矛盾を追及する運動を展開します。

また、緊急消防援助隊派遣にかかる諸手当は自治体の条例に基づき支給されますが、規定されていない本部では不支給となるなど同じ活動に従事している職員間での不均衡な取り扱いにつながっています。地方交付税で特殊勤務手当が算定されていることも踏まえ平等な取り扱いとなるよう、引き続き総務省消防庁等へ働きかけます。

コロナ禍において、消防職員は高い感染リスクの中で極めて厳しい勤務環境下で業務にあたっていますが、防疫等作業手当(準ずる手当を含む)には消防本部ごとに差異があるのが現状です。2020年3月に総務省が発出した、「新型コロナウイルス感染症により生じた事態に対処するための防疫等作業手当の特例について」(通知)を踏まえ、適切に支給されるよう取り組みを進めます。

2021年6月の地方公務員法の改正を踏まえ、2023年度から定年が段階的に引き上げられていくことになりますが、消防職場は肉体的・精神的に負担が大きい職種であり、加齢に伴う体力の低下などの懸念もあることから、職員が安心安全健康で働くことのできる再任用制度や定年延長のあり方について調査・研究を進めます。

2016年度から人事評価制度が消防職場にも導入され、本格的に運用されはじめています。この制度は、賃金、昇給・昇格に直接関わることから、消防職場に適した恣意的な評価や運用とならないよう取り組みを進めます。

 

【賃金・労働条件の改善】

1. 勤務体制や賃金・手当等、ほかの公務労働との均衡性を含め、消防職員の労働のあり方・労働に対する評価のあり方等について調査・研究し、改善にむけた施策を検討します。

2. 改善にむけた施策を検討するにあたり、幅広く意見を聴き、解決方策等を検討する機会を設けます。

3. 各種手当は、地域により不均衡な取り扱いとなっていることから適切に支給されるよう取り組むとともに、各単協の現状を把握するため、引き続き労働条件等調査を実施します。

4. 広域再編後の給料表・手当が統一されていないことは、モチベーションの低下につながるため、格差是正にむけて取り組みます。

 

【無賃金拘束時間の解消とワーク・ライフ・バランスの推進】

5. 結成当初から課題となっている無賃金拘束時間は、休憩時間と称しておけば、何時間でも無賃金で職場に拘束するものです。とくに、消防職員にかかる労働時間についての例外のあり方の見直し・再検討を求めます。現行法の休憩時間に関する取り扱いの是正をめざし、自治労や自治労消防政策議員懇談会と連携して取り組みを進めます。

6. 単協・県消協において、人事委員会・公平委員会に対する措置要求、または訴訟などの動きについて情報収集に努め、支援・協力のあり方を検討します。

7. 単協・県消協は、無賃金拘束時間を可能な限り短縮するよう、勤務体制を研究します。

8. 厚生労働省が推進するワーク・ライフ・バランスに鑑み、妊娠・出産・育児期や家族の介護等に関する特別休暇を取得できる環境の有無や休暇の取得率等について、実態調査結果をもとに仕事と生活の調和を図れる環境を整えられるよう働きかけ、ワーク・ライフ・バランスの推進を行います。

 

【現行の勤務制度上における改善】

9. 地方公務員法第58条の規定により、消防職員には労働基準法第32条の2で規定される「一箇月単位の変形労働時間制」しか適用になりません。単協は、消防当局に対して、労働基準法等の遵守および勤務時間条例等との整合性のとれた運用を求めるとともに、それぞれの消防職場において、次の点について改善を求めます。

① 変形期間の始期と終期を明確にした勤務割を行うこと

② 各職員の各日の勤務について、正規の勤務時間および休憩時間位置を明確にすること

③ 非番・週休日における常態化した業務命令を見直し、通常勤務の中で業務遂行できるよう、体制の整備をはかること

④ 非番・週休日の業務従事に際して、時間外勤務手当の支給対象を明確にした上で勤務命令を出すこと

⑤ 週休日の労働に対して、安易に週休日の振替等の運用を行わないこと

⑥ 条例等で定める休暇・休業が取得しやすくなるよう、必要な措置を講ずること

⑦ 勤務時間の明確化をはかり、休憩時間内の労働(出動など)に対して、時間外勤務手当の支払いを求めること

⑧ 常態化した時間外勤務を撤廃し、適正な人員配置のもと、時間外勤務の縮減とサービス残業を廃止するよう求めること

 

【災害派遣にあたっての取り組み】

10. 総務省消防庁に対して、次のことを求めます。
① 緊急消防援助隊の派遣に関する処遇について、各市町村の給与条例等に依拠することなく、国の責任としてリーダーシップをはかること
② 派遣された隊員の処遇のあり方・内容について例示するとともに、派遣時の職員の身分、勤務の態様、特殊勤務手当の支給対象となる活動およびその額等について例示し、各自治体に対し適切に助言すること

11. 単協は、各市町村の給与条例等に基づいて、災害派遣にかかる手当等が支給されるよう取り組みます。

12. 災害派遣における処遇について、調査・研究します。

 

【新型コロナウイルス感染症に対する取り組み】

13. 総務省の「新型コロナウイルス感染症により生じた事態に対処するための防疫等作業手当の特例について」(通知)も踏まえ、それぞれの消防職場において、次の点について改善を求めます。
① 通知に即して条例等を整備すること
② 新型コロナ対応にあたる全ての職員に対し適切に支給すること

14. 新型コロナ感染対策に係る休暇等の取扱いについて、総務省が発出した「新型コロナワクチン接種に伴う副反応が生じた場合の休暇の取扱いについて」(通知)および「医療従事者等に該当する地方公務員についての新型コロナワクチン接種に係る考え方について」(事務連絡)等に基づき、適切に対応するよう各消防本部に求めます。

15. ワクチン接種業務への従事にあたって、総務省・消防庁が発出した「消防職員である救急救命士がワクチン接種業務に従事する場合の任命等及び手当について」(通知)に基づき、職務としての派遣など適切な対応がなされるよう各消防本部に求めます。

16. 新型コロナに関わる業務状況や各種手当、ワクチン接種時の取り扱い等について調査し、情報共有します。

 

【再任用制度と定年延長への取り組み】

17. 職員が安心安全で健康に働くことのできる再任用制度や定年延長のあり方について調査・研究を進めます。

18. 定年延長までの間は、現行再任用制度について、以下の点に取り組みます。
① 単協は、再任用にあたって、職員定数の枠内ではなく、定数外職員として任用することが可能な制度に改めるよう取り組みます。
② 単協は、任命権者に対して、本人の意向を踏まえた再任用制度の運用を求めます。

19. 定年延長に伴って、健康で働きやすい職場環境となるよう、それぞれの消防職場において次のように働きかけを行います。
① 職員の意向や希望も踏まえ、勤務体制や業務内容を決定すること
② 健康管理・安全管理・衛生管理など、必要な環境整備を行うこと

 

【消防職場の人事評価制度の取り組み】

20. 消防職員の賃金、昇給・昇格に大きな影響を与える人事評価制度の運用にあっては、恣意的な評価がされないよう取り組みます。また、この制度が消防職場に適したものとなるよう調査・研究します。

 

(4) 労働安全衛生の確立

労働安全衛生法は、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進する」ことを目的とし、最低基準を確保するだけでなく安心安全な職場を実現することをめざして制定されたものです。消防職場においても法の趣旨に基づき、過去の尊い命の犠牲をもとに、二度と労働災害の犠牲者を出さないとの信念のもと、これまで以上に労働安全衛生活動を強化し、職場の安全衛生体制を確立して安全で快適な職場環境の整備に取り組んでいかなければなりません。

他方、消防業務は深夜勤務を伴う交替制勤務や長時間拘束などの過重労働であり、有事の際には危険な現場に赴くことが求められるなど、公務内外における死者や負傷者の発生する割合は、他の行政職員と比較しても高い水準となっています。また、災害現場では常に命の危険と隣り合わせでの活動であり、公務災害が後を絶ちません。そのため、休息を十分にとれる体制の確立や安全に災害現場で対応するための設備管理など、労働災害が起こらないよう安全管理体制の確立に取り組みます。あわせて、公務災害の認定請求を行うよう助言するなど対応を行っていく必要があります。

さらに、新型コロナの感染防止の観点から、引き続き防護資機材の確保等が不可欠です。また、地方公務員の定年の引き上げにあたっては、消防職員が定年まで安心して働き続けられる働き方の検討や災害現場や訓練時の安全管理体制の確立がこれまで以上に求められていることから、今後も総務省消防庁等への働きかけを強めます。

大規模自然災害や多数傷病者が発生する事件・事故が多発し、消防職員がメンタル不調などを訴える例が多く報告されていることから、各職場での相談窓口の設立やメンタルヘルスラインケアの資格取得及びメンタルヘルス講習会の開催等など、メンタルヘルス対策を講じるよう追求するとともに、主体的に取り組みを行います。

全消協は、2012年の労働講座から「すべてのハラスメント一掃宣言」を展開しています。しかしながら、職場環境に目をむければ、いまだに非民主的な職場環境が多く存在しています。ハラスメントは相手の尊厳や人格を侵害する行為であり、職員の士気低下や職場環境の悪化につながることから、全ての職場でのハラスメントの一掃に取り組むことが必要です。

全消協は引き続き、メンタルヘルス対策とすべてのハラスメントの撲滅を重要な課題として、その「犠牲者」を出さないよう取り組みを進めます。

 

【危険職種指定をはじめ法令改正に対する取り組み】

1. 労働安全衛生法では、消防職場は安全委員会の設置・安全管理者等の選任義務がないことから、危険職種指定をはじめとする一連の法令改正について、自治労と連携し、自治労消防政策議員懇談会の協力も得ながら、総務省消防庁を通じ厚生労働省に対し改善を行うよう求めます。

 

【労働安全衛生法に基づいた取り組み】

2. 労働安全衛生法の趣旨を活かし、民主的で職員一人ひとりが積極的に参画できる労働安全衛生活動を推進するため、次のことに取り組みます。
① 「職場の改善対策事例:消防職場」を活用し、消火・救急・救助活動などの現場活動を含めた職場点検活動を行うこと
② 消防職員委員会・衛生委員会等の委員の選出や会議において、民主的な運営を求めること
③ 職場点検活動で得た問題点は、消防職員委員会・衛生委員会等で協議し、消防長等に改善策を求めること
④ 訓練中および現場活動で想定しうる災害に対処するための必要な情報の提供・安全衛生教育の徹底・装備すべき資器材の整備充実を求めること
⑤ 深夜業務や潜水業務に従事する職員の健康診断については、労働安全衛生法に基づいた適正な健康診断を行わせるとともに、実施にあたっては業務の一環として受診させ、その結果分析と事後措置などの改善対応を求めること
⑥ 衛生委員会等への女性の参画を推進し、「男女がともに担う安全衛生活動」の確立を求めること
⑦ 消防職員の勤務実態において、労務環境の充実は必要不可欠であるとの認識に立ち、食堂や休養室、個人のプライバシーが守られる仮眠室の個室化などの整備を求めること
⑧ 消防職場に関する労働安全衛生法の改正点について研究すること

 

【定年延長に関する対策】

3. 消防職員が定年まで安心・安全に働き続けることができる環境整備にむけ、以下について取り組みを進めます。
① 過重労働である消防職場での働き方について情報共有すること
② 他職種の定年延長後の働き方について情報収集を行い研究・情報共有すること
③ 定年延長後の職員にアンケートを実施し、再任用職員との違いや働き方について情報共有すること

 

【公務災害対策】

4. 公務災害が発生しないようすべての消防本部で安全管理マニュアルを策定し、職場の安全管理体制を確立します。また、各公務災害の事例を検証し、情報を共有することで、質の高い安全管理が図れる
よう努めます。

5. 公務災害補償制度は自己申告制となっていることから、職員側が申告しなければ公務災害認定を受けることはできません。このことから、単協・県消協は、公務遂行中や公務に起因して発生したと思われる死亡・傷病、また、過重労働に伴う内因性疾患について、自治労県本部・単組と連携をはかりながら、すべて公務災害認定請求を行うよう取り組みます。

6. 認定基準の改善を求めるとともに、被災者立証制度の抜本的見直しにむけて取り組みます。

7. 職員が療養する必要が生じた場合、安心して治療に専念できる体制づくりを求めます。また、職場復帰をする前には、慣らし出勤や就業場所・業務内容の変更、規則の制定による段階的な職場復帰ができるよう、健康に配慮した体制づくりを研究します。

 

【メンタルヘルス対策】

8. 単協・県消協は、メンタルヘルス対策として、次のことに取り組みます。
① メンタルヘルスの基礎教育(セルフケア・セルフチェック)と消防本部による相談・カウンセリング体制の充実や慣らし出勤等の職場復帰に関する体制整備(ラインケア)の充実を求めます。
② メンタルヘルス問題を職場内で気軽に話し合える環境づくりを進めます。また、人権の尊重・プライバシーの保護を基本として、人事管理とは完全に切り離したカウンセリング体制の充実を求めます。
③ 本人や家族または職員同士で惨事ストレスについて理解し、心身の変化を早期に察知できるよう、研修・担当職員の養成を求めます。また、メンタルヘルスの専門家を活用できるよう関係機関等と協力関係を築きます。

9. 従業員50人以上の事業所に対して、医師・保健師等によるストレスチェックが義務化されました。衛生委員会等で職場環境の改善について協議を進めるとともに、従業員50人以上の事業所に対して義務化されているストレスチェックが適正に実施されているかを調査します。

 

【ハラスメント対策】

10. 全消協は、消防職場におけるハラスメントの撲滅を目的に、次のことに取り組みます。
① 総務省消防庁が2017年7月4日に発出した「消防本部におけるハラスメント等への対応策」が確実に実施されるよう注視します。
② 改正労働施策総合推進法に基づき、職場におけるパワーハラスメント防止対策が事業主に義務付けられたことから、消防職場においても同様の措置が講じられるよう総務省消防庁等への働きかけを行うなど、取り組みを強化します。
③ 全国の消防職員と消防本部に対して実施したアンケートは、現場の状況を十分反映した結果が出ていることから、今後の比較対象として、同様のアンケートを継続して実施することを総務省消防庁に求めます。
④ 職場内外での全てのハラスメントの実態を把握し、その防止にむけて取り組みます。

11. カスタマーハラスメントを含む業務に付随する全てのハラスメントについて、職場における状況を把握・分析するとともに、必要に応じて総務省消防庁等への働きかけを行います。

12. 単協・県消協は、ハラスメント対策として、次のことに取り組みます。
① 2017年に総務省消防庁が発出した「消防本部におけるハラスメント等を撲滅するための、消防長の宣言等による意志の明確な表明について」を踏まえ、職場においてその宣言が確実に履行されるよう、消防長に対して求めること
② 会員相互の連帯を深め、職場内におけるすべてのハラスメント防止にむけて取り組むこと

 

【新型コロナウイルス感染症への対応】

13. 全消協は、新型コロナの蔓延に伴い、次のことに取り組みます。
① 世界的な感染拡大による防疫資器材の供給不足対策について、今後の感染拡大による影響を考慮し、継続して総務省消防庁に働きかけを行います。
② 消防職員が感染した際の隔離等の対応についてデータを集め、単協・県消協への情報提供を行います。
③ 現場での感染リスクを極力低下させ、安心して現場で活動ができるように情報の提供を行います。
④ 医療機関への受け入れ態勢について総務省消防庁に対し厚生労働省に働きかけを行うよう求めます。
⑤ 新型コロナウイルスワクチンがもたらす予防効果期間が不透明なことから情報を収集し、必要があれば継続したワクチン接種を行えるよう総務省消防庁へ働きかけを行います。

 

【自治労との連携】

14. 消防職場で労働安全衛生活動を推進するため、自治労主催の安全衛生集会等へ積極的に参加し、単協での活動に活かせるように取り組みます。

15. 自治労作成の「公務災害認定への取り組みマニュアル(2015年)」を活用するなど、公務災害認定に積極的に関与し、取り組みを強化します。

16. 公務災害認定にむけて、学習・研鑽と情報の共有化をはかることを目的に、「地方公務員災害補償基金支部労働側参与会議」に積極的に参加します。

 

(5) 男女平等参画社会実現の取り組み

男女共同参画社会基本法の制定から22年が経過するなか、政府は第5次男女共同参画基本計画(2020年12月25日閣議決定)や育児・介護休業法の改正(2021年6月9日公布)など、男女平等参画社会の実現にむけて施策を進めています。また、さまざまな分野で女性が活躍する場面が増える中にあって、防災分野では女性目線による復興および防災対策の重要性が改めて認識され、男女平等参画社会の実現が災害に強い社会づくりであるともいわれています。

一方「世界経済フォーラム(WEF)」がまとめた男女格差報告(ジェンダーギャップ指数2021)の調査によると、調査対象国156ヵ国中、日本は120位です。とりわけ「政治」と「経済」の分野においては先進国の中でも下位であるなど、依然として男女格差が大きく、女性からみて働きやすい社会とはいえない状況です。

消防職場においても、女性消防吏員の活躍推進のため2015年7月に消防庁次長通知が各都道府県知事あてに発出されるなど、積極的な取り組みが求められています。しかし、女性消防吏員は5,021人(2020年4月1日総務省消防庁調べ)で、消防職員全体の約3.0%にとどまっており、女性消防吏員の採用や職域の拡大を推進することが喫緊の課題となっています。また、施設や資機材など男女ともに働きやすい職場環境を整え、職場への男女平等の啓発やすべてのハラスメントの防止にむけた教育を実施し、未だ続く「男職場」を改革することも必要です。全消協としても、組織のさらなる活性化をはかるため、グローバルな視点から、すべての人があらゆる分野で活躍できる組織づくりを推進していきます。

男女平等参画は、女性のみの課題ではなく組織の活性化の要です。ワーク・ライフ・バランスの観点から社会全体の課題であることを認識し、意識を改革する必要があります。職場や地域、協議会活動において、性別を問わずすべての人が消防職員としてその能力を十分に発揮し、生き生きと活躍できるよう全力で取り組みます。

 

【男女平等の推進】

1. 男女共同参画社会基本法を踏まえ、あらゆる社会制度・慣行をジェンダー中立のものとするため、職場における男女平等の推進にむけて取り組みます。

2. さらなる女性吏員の積極的な採用と職域の拡大等を推進するため、労働条件等調査を精査し施設や資機材の改善など、環境整備を求めます。また、男女間の処遇上の格差を是正し、男女平等の職場づくりを推進します。

3. 人事院の「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」を参考に、育児・介護を行う職員の両立支援制度を研究・活用します。

4. 性別を問わず、育児・介護を行う職員の超過勤務の制限および改正された育児休業・介護休暇制度の活用にむけて取り組み、情報を発信します。とくに、男性職員の積極的な育児参画を推奨します。

5. 地方公務員共済制度・事業について、性とライフスタイルに中立な制度設計を前提として、両立支援策や福祉事業などを充実するよう、自治労と連携し対策を進めます。

6. 職場において、男女がともに担う安全衛生活動をめざすため、衛生委員会等への女性の参画を推進します。

7. すべてのハラスメントに対し、使用者責任を明確にしつつ、情報提供や予防対策、被害者救済対策に取り組みます。

8. 2016年6月、総務省消防庁長官を本部長とする「消防女性活躍推進本部」が設置され、全国の女性消防吏員を2026年度当初までに2.4%から5%に引き上げるとの目標が示されました。全消協はこの政策の動向を注視するとともに、必要に応じて意見反映を行います。

 

【男女がともに担う全消協づくり】

9. 全消協活動のすべての領域で、女性参画を促進します。

10. あらゆる世代の会員に全消協活動への参加を促す観点から、以下の事項に取り組みます。
① 全消協が主催する各種行事に女性枠を設けます。
② 育児を行うすべての会員の参加を促すため、託児所等を設置します。
③ ウェブ会議システムを併用し参加しやすい開催方法を模索します。

 

【国際的な活動における男女平等の推進】

11. ワークルールの改善、男女平等、均等待遇の推進など、ILO条約等国際条約の批准および遵守の取り組みを強めます。

12. PSI規約に基づき、あらゆる活動での男女平等参画をめざします。

 

(6) 消防職場の課題改善にむけた取り組み

市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生してから70年以上が経過しました。この間、消防制度や施策、消防防災施設等の充実強化がはかられ、火災予防・消火、救急、救助、自然災害への対応や国民保護まで業務が広範囲にわたり、国民の安心と安全の確保に大きな役割を果たしてきました。

他方、近年は災害が大規模・複雑多様化する中にあって、今後発生が危惧される南海トラフ地震や首都直下型地震、風水害等の大規模災害をはじめ、危険物火災等の特殊災害、国際的なテロ災害などが予想されています。さらに新型コロナの感染拡大に伴い、新たな事態への対応も課題となっていますが終息はみえません。

このような災害・感染症等から国民の生命、身体および財産を守るという消防の責務はさらに大きくなっていますが、消防職場では業務量が増える一方、慢性的な人員不足により、職員個々の負担が増大し、さまざまな弊害が出てきています。

全消協は、さらなる消防防災体制の充実にむけ、消防職場が抱える課題を明確化し、効果的に消防業務を遂行できるよう、自治労や自治労消防政策議員懇談会の協力を得ながら、関係省庁などに対して問題を提起し働きかけます。

 

【消防職場の課題の抽出】

1. 警防関係についての課題
① 大規模・複雑多様化する災害に対応するための消防力の不足
② 消防救助技術大会にむけた訓練など訓練全般における受傷事故の頻発
③ 救急出動件数の増加、医療の進歩、救急救命士の処置範囲拡大など、精神的・肉体的な負担の増大
④ 新型コロナに対応するための感染防止資器材、教育、情報の不足及び医療機関や保健所等との連携

2. 予防関係についての課題
① 立入検査と違反是正に対応する業務量増加による負担
② 消防設備違反に対する公表制度の開始など、新たな業務量の増加による負担
③ 多様化する防火対象物、度重なる法令改正に対応する業務負担

3. 消防業務全般についての課題
① 増大するさまざまな業務に伴い、超過勤務が常態化している現状
② 世代交代に伴う専門的知識の継承・教育体制が確立されていない現状
③ 業務に関する資格・研修を自費取得、受講している現状
④ 施設・庁舎等の計画的な整備が遅れている現状
⑤ 各種施策の実施にあたって現場の意見を聴取していない現状
⑥ 定年延長に関わる職場課題

 

【消防職場の課題改善にむけた取り組み】

4. 全消協は、総務省消防庁に対して、次のことを求めます。
① 消防力の整備指針に示す必要な人員、車両および装備等に見合う財源を継続して確保すること
② 職員の負担軽減を考慮した車両、装備および設備等に財源を確保すること
③ 現状の課題に即し、将来を見据えた施設・庁舎等の整備のあり方を示すこと
④ 適切な労務管理が行われるよう指導・助言を行うこと
⑤ 全国規模の感染症が蔓延し業務に著しい負担がある場合は、早期に物資の確保や財政措置を講じるとともに、職員に対する心身的なサポートなど必要な施策を行うこと
⑥ 違反是正の法務相談について全国で情報共有できるシステムを構築すること

5. 全消協は、課題解決のため情報収集および提供、調査・研究を行い、課題の改善にむけて取り組みます。あわせて、労働講座や研究集会等の様々な機会を通して、消防職場の課題を抽出します。

6. 単協・県消協は、消防当局および各自治体首長に対して、次のことを求めます。
① 人員および財源の確保にむけ、必要な対策を講じること
② 施設・庁舎や車両、装備および設備等の計画的な整備を行うこと
③ 心身の疲労回復、パフォーマンス低下、事故防止の観点から、適切な労務管理が実行できる体制づくりを強化すること
④ 災害対応能力、専門的知識を習得・伝達・継承できる教育体制を確立すること
⑤ 業務に関する資格・研修は、公費で取得・受講できるようにすること
⑥ 増大する各種業務に対し、職員の負担が減るよう業務の効率化を行うこと

 

(7) 消防の広域化への対応

総務省消防庁は、2018年4月に「市町村の消防の広域化に関する基本指針」と「市町村の消防の連携・協力に関する基本指針」を改正し、消防の広域化の推進期限を2024年4月まで延長しました。しかし、この間、実態にそぐわない広域化が進められている地域も見受けられるのが現状です。

基本指針では、「消防広域化重点地域については、これまで以上に積極的に指定」することとし、あわせて「消防の連携・協力についても推進していくもの」としています。この内容については、具体例が示されていますが、「効果的・効率的」との記述があることから、より良い消防行政を実現できるか注視していく必要があります。

今後、人口減少や高齢化の進展に加え、災害の大規模・複雑多様化により、消防力の維持に支障をきたす恐れがあることから、さらなる体制強化が喫緊の課題となっています。しかし、現在推進されている消防広域化では、地域の実情や実態、職員の労働条件の統一化などをはじめとする課題が山積しており、簡単に実現できるものではありません。

全消協は、1990年のILO「消防職員の雇用及び労働条件に関する合同会議」の結論に基づき、総務省消防庁に対して、①広域再編にあたっては不必要な広域化は進めるべきではない、②住民サービスを現状より低下させない、③職員の削減や労働条件の悪化を伴わない、の3項目について自治労を通じて申し入れを行っています。

今後も、広域化を推進する場合には、消防本部の規模にかかわらず、地域の実情にあわせたものとなるよう関係機関等に提言するとともに、先進事例や留意事項の情報収集を継続します。

 

【総務省消防庁に対する取り組み】

1. 消防広域化の推進にあたっては、自治労と連携し、自治労消防政策議員懇談会を通じて、地域の実情に即したものとなるよう求めます。

 

【広域再編自治体に対する取り組み】

2. 消防組織の広域再編を検討する自治体に対して、次のことを提起します。
① 財源優先の広域化は避けるべきであり、再編された消防組織の財源を確保するため、構成市町村の負担(拠出)額が、地方交付税基準財政需要額の消防費額を下回らないこと
② 新たな特別地方公共団体を設立する段階での規約に、一人の職員も欠くことなく「雇用を継続する」旨の文言を盛り込むとともに、給与など労働条件について不利益を生じることのないよう措置すること
③地域住民や現場の消防職員に対して積極的に情報を提供・開示し、意見を聴取する機会を設けること

 

【広域再編の対象となった単協・県消協の取り組み】

3. 広域再編の対象となっている消防組織の単協・県消協は、「消防組織広域再編対策委員会(仮称)」などを設置し、自治労県本部や協力議員とも連携しながら次のことを提起します。
① 既に広域化した組織から、広域化までの経過や形態等に対する情報を収集し、その共有や提供を行うこと
② 地域住民、各種団体、未組織消防に対し、広域化に関する情報の提供などの活動を行うこと
③ 広域再編にあたって、各自治体当局に対し、消防職員の意見を聴取する機会の確保を求めること
④ 広域再編を契機に、組織の強化・拡大につながるよう取り組むとともに、単協の組織力が低下しないようフォローすること

 

(8) 質の高い消防サービスの実現にむけて

全消協は質の高い消防サービスの実現にむけ、消防力の地域間格差の解消や職員の職場環境改善などが必要であるとの観点から、現場実態に基づく要望書をとりまとめ、総務省消防庁に対して要請行動を行ってきました。さらに、新たな課題である新型コロナに関する事項については、感染拡大初期の段階から現場の声を取りまとめ、総務省消防庁や国会議員等に直接訴えるなど取り組みを推進してきました。

また、PSIは「質の高い公共サービス(QPS)」について、「質の高い公共サービスとは、質の高い労働条件下で働く質の高い労働者が提供するもの」と定義した上で、「質の高いサービスは人権」であり、「サービス利用者が常に質の高さを望めるような財源を伴ってこそ初めて提供が可能になる」との考え方のもと取り組みを展開してきました。これは、全消協がめざす目標や信念と同質であり、質の高い消防サービスの実現にむけて取り組みを継続していかなければなりません。

質の高い消防サービスの基礎となるのは消防力であり、その力の原点は消防職員であることはいうまでもありません。人員が充足され、継続した人材の育成がなされた上で、遺憾なく能力を発揮できる車両や装備資機材、および組織の体制と消防予算が必要です。しかし、自治体消防が整備すべき基準値は整備すべき目標となり、条例定数の削減や車両の最低人員が目標値に届かない中で運用している消防本部も見受けられています。また、従来の消防業務のほか新型コロナへの対応も求められており、消防職員への負荷は増大しています。さらに、十分な消防予算も担保されておらず、住民に対して必要な消防サービスを提供できるものか疑問を抱く状況です。

住民本位の消防行政のあるべき姿を実現するためには、十分な消防力を有し、消防職員が安心して働ける職場環境が必要であり、その担保となる消防予算の充実を強く求めることが重要です。

全消協は、賃金・労働条件の改善のみならず、住民からの信頼に応え、やりがいをもって仕事ができる環境の整備をめざします。その思いを職場の仲間、住民とともに共有できる自治研活動等への参画を通じて、「質の高い消防サービス」の実現にむけて取り組みます。

 

【質の高い消防サービスの実現にむけた取り組み】

1. 全消協は組織強化に努め、PSIの「質の高い公共サービス(QPS)」の趣旨を尊重し、単協・県消協の取り組みを集約し、質の高い消防サービスの実現にむけ課題を提起します。

2. 単協・県消協は、次のことに取り組みます。
① 住民ニーズの把握に努め、地域住民と協働した活動を推進すること
② 単組・県本部と協働して、消防行政についての課題を情報発信し、地域住民と共有すること
③ 災害時における自助・共助の重要性について協議を行い、地域との連携をはかること
④ 新型コロナへの対応等も踏まえ、より一層地域の医療、福祉、保健、教育機関などと連携・協力して、質の高い消防サービスの実現をめざすこと

 

【消防力の整備指針の取り組み】

3. 全消協は、総務省消防庁に対し、次のことに取り組みます。
① 自治労や自治労消防政策議員懇談会と連携し、全国的な消防力に関する課題提起を行います。
② 「消防力の整備指針」が市街地の常備消防を配置の対象としている一方、「地方交付税算定基礎」は国民生活環境最低水準としての算定となっており、基本となる考え方に乖離があることから是正を求めます。

4. 単協・県消協は、当局に対して、現在の消防力および整備すべき目標について、住民への十分な情報公開を求めます。

 

【自治研活動への参画】

5. 全消協は、消防行政や消防サービスのあり方等について議論を重ね、消防の将来を展望する活動を推進します。

6. 単協・県消協に対し、地方自治研究全国集会への参加や、他産別との交流を促すとともに、取り組みの参考となる情報を提供します。

7. 単協・県消協は、単組・県本部と協働し、自治研活動へ積極的に参画します。

 

(9) 国際連帯活動の推進

全消協は、2017年11月に開催されたPSI第30回世界大会で、「日本の公務員と韓国消防職員の労働基本権」および「公共サービスと公共サービス労働者の拡充で災害に強い社会づくり」の2つの決議案を提出するなど、日本における諸問題の解決に向け取り組みを展開してきました。

こうした主体的な取り組みも経て、2018年6月の第107回ILO総会では、日本政府へ11度目の勧告等が出され、①消防職員に団結権を付与すること、②社会的パートナーとともに行動計画を策定すること、③定期的な協議の場を設定すること、などより強い要請が出されました。これを受けて、全消協・自治労は、政府と消防職員委員会の告示改正に向けた具体的な議論を行い、現在では消防職員の団結権問題について定期的に協議を継続しています。

このように、政府と正式な形で協議を実施できるのは、国内外での主体的な取り組みを継続してきたことによるものです。引き続き、国際社会の中で共通の課題や諸問題を解決するために関係機関と連帯し、世界から日本政府に対して訴え続けることが団結権回復に必要不可欠です。

また、全消協は住民の安心・安全を保障する「質の高い消防サービス」の実現にむけ取り組みを推進してきましたが、PSIも「質の高い公共サービス」の基本に公務員の労働基本権確立を挙げています。引き続き、より良い消防行政の構築と職員がやりがいをもって働くことのできる労働諸条件、そのための団結権獲得にむけた取り組みを国内外で推進すべく、PSIと連携し活動を強化します。あわせて、PSIが重視しているジェンダー平等の取り組みやユースの参画を、全消協の活動のすべての領域に適用するとともに、すべての人が働きやすい消防職場づくりを推進します。

他方、韓国では2020年12月に消防公務員を労働組合の加入対象とすることを含む「公務員労働組合法改正案」が国会で成立(2021年7月6日施行)し、全消協と同様に悲願であった団結権の獲得によって、労働組合の結成や加入の動きが進んでいます。これらの情報を収集するとともに、日本における公務員の労働基本権問題の解決に向けた取り組みに活かしていかなければなりません。

全消協の活動は、世界の公共部門労働者から注目され、労働者の権利が脆弱なアジア諸国からも大きな期待が寄せられています。これらの期待に応えるべく、全消協はアジア諸国の先頭に立って団結権回復をめざし、私たちの活動が各国にも波及していくよう国際連帯を深めます。

 

【PSI活動を通じての国際連帯の取り組み】

1. 団結権問題について、PSI活動の場を通じて強く訴えることにより、ILOなどの国際機関から日本政府に対して強力なメッセージが送られることを求めます。この取り組みにより、国際労働運動の注目と国際世論の喚起に努めます

2. 団結権問題に関する日本政府との「協議」が設けられました。この協議の取り組み経過をPSIと共有し、一層の連帯を深めます。

3. ILOの中核的労働基準の遵守と、ILO94号条約(公契約)、 105号条約(強制労働廃止)、111号条約(差別待遇禁止)、149号条約(看護労働)、183号条約(母性保護)、190号条約(暴力・ハラスメント)など未批准条約の批准促進にむけ、連合・公務労協・自治労とともに取り組みます。

また、PSI-JCの活動を通し、超党派の国会議員で構成するILO活動推進議員連盟と意見交換を行い、情報発信と共有をはかります。

4. PSIの「2018-2022行動プログラム(PoA)」で示された、公共サービス労働者の労働基本権確立、公共サービスの市場化反対、男女平等やすべての人に対する尊重と尊厳、ユースの参画などを全消協活動に反映し、平等で公正な社会の基礎となる質の高い公共サービスの実現をめざします。

5. PSI-JCの活動を通じて、世界的な脅威である新型コロナの課題に関し、PSIで共有する情報を収集するとともに、日本国内の緊急公共サービス労働者の取り組みを発信します。

 

【アジア太平洋地域を中心とする国際連帯の取り組み】

6. PSIアジア太平洋地域の諸活動へ積極的に参加し、問題解決にむけて取り組みます。また、韓国消防職員の労働組合に係る実態把握を行い、全消協の活動に反映すべく、PSI-JCや自治労・公務労協・連合と連帯した活動を推進します。あわせてFFDCとも連携を強化しながら、日本における消防職員の団結権回復への取り組みにつなげます。

7. 2018年4月、PSI本部において、消防職員をはじめとする緊急事態従事者で構成されたファーストレスポンダーネットワークが創設されました。全消協もこのネットワークと連携して、世界の消防・救急労働者の諸問題について、さまざまな国際組織への情報発信と共有をし、国際連帯の推進をはかります。

 

【国内における国際連帯の取り組み】

8. PSI-JCの活動を積極的に担い、女性・ユース世代の参画を促進し、他産別との交流や相互参画により、日本におけるPSI加盟組合の組織強化・拡大の取り組みに連携します。

併せて、これらの取り組みを全消協女性連絡会・ユース部の活動に反映します。

 

【国際連帯活動の情報共有と発信】

9. 国際連帯活動の取り組みについて、その実例を共有するとともに、これまで以上に具体的な情報と取り組みの必要性を加盟単協にむけて発信します。

 

(10) 女性連絡会の取り組み

全国の女性消防吏員は2020年4月1日現在で5,021人となり、1969年に初めて採用されて以来増加しています。2015年7月に総務省消防庁より「消防本部における女性職員の更なる活躍に向けた検討会報告書」公表後、関連通知の発出や消防大学校で「女性活躍推進コース」が開催され、2017年12月には「女性消防吏員活躍推進アドバイザー制度」が新設されています。

しかし、総務省消防庁が女性消防吏員の活躍を推進し、消防職員全体に占める女性消防吏員の割合を2026年4月までに5.0%に引き上げる目標を定めているにもかかわらず、2020年4月1日現在で約3.0%にとどまっています。さらに、いまだ全国の約28%の消防本部では女性を採用しておらず、残念ながら女性の進出が遅れている職場であるといわざるをえません。

女性連絡会がこれまでに実施したアンケートの調査結果や、2018年より開催している女性交流会から、性差についての理解不足や施設の未整備、ハラスメント、恣意的な職域の制限がいまだに存在することがわかっています。2019年に全国の女性消防職員を対象に実施したウェブアンケートからは、施設の整備や職域制限については改善傾向であるものの、女性職員が増加したことで、結婚・妊娠・出産・育児・介護や、長期休業・休暇後の復職について新たな課題が浮き彫りとなっています。住民サービ
スの向上をめざすにあたっては、女性消防職員が働き続けることのできる環境整備が重要性であり、これら女性職員だけの問題ではなく、協議会全体としても取り組むべき課題です。

2020年3月にPSI-JC女性委員として、国際女性デー要請行動に参加し、政府・政党、ILO議連へ女性消防職員の取り巻く現状について報告・要請を行いました。さらに、同年5月には労働の科学、同年7月には月刊労働組合へ寄稿しています。今後も、性別や会員に限らず広く意見を募るとともに、継続的に女性職員の勤務実態の把握に努め、会員や関係機関へ課題を提起します。また、マスメディア、SNS等を活用した積極的な情報の発信や、各種研修会や意見交換会の開催、関係機関との連携を図ります。

これらを踏まえ、女性職員に関する諸課題の解決に貢献できる活動の展開と、すべての消防職員が能力を発揮しながら働き続けられる職場環境づくりに取り組みます。

 

【女性連絡会の取り組み】

1. 男女がともに協議会活動を担う体制を確立し、男女平等の職場環境の構築をめざし、女性連絡会の活動を強化します。

2. 女性を取り巻く環境の実態把握に努め、働き続けられる環境の整備に向け、課題を提起します。

3. 会員が積極的に研修会へ参加し、意見を発信できる環境および、活動強化に向けた体制の整備をします。

4. 女性交流会を開催する等、あらゆる世代が参加しやすいよう、デジタル媒体の活用に努めます。

5. ユース部と協同して、LGBTQI差別や男性の育児休暇、性別問わず解決すべき課題に取り組むとともに、相互理解を深めるための研修の実施や課題の提起を行います。

 

【女性会員との連携、非会員・未組織女性職員との交流】

6. 女性同士のネットワークを強化するとともに、女性連絡会の活動報告、学習会や関係機関の通知・通達などの情報を性別問わず広く発信し、共有します。

7. FacebookページやInstagramなどのSNSを活用し、会員だけでなく、非会員・未組織女性職員に対しても活動をPRし、女性交流会を通じて女性職員間の連携を深めます。

 

【職場環境の改善への取り組み】

8. 女性交流会においてアンケート調査を行うなど現場実態をとりまとめ、総務省消防庁などの関係機関との意見交換を追求します。あわせて、連合・ILO議連などの関係機関に課題を提起します。

9. 従前より課題となっている、施設整備、個人被服、ハラスメントに加え、女性消防吏員が増加したことや、多発する大規模災害に伴い浮き彫りになっている課題(育児や介護等に関わる各種休暇や非番招集を含めた働き方等)について取り組みます。

 

【連帯活動の取り組み】

10. PSI-JC女性委員会およびユースネットワークの交流活動に参画し、全消協活動に活かします。

11. PSI規約に基づく、あらゆる活動での男女平等参画をめざし、女性の協議会活動への積極的な参画に取り組みます。

12. 自治労・他産別と女性職員にかかる課題解決にむけ連携強化をはかり、全消協活動へ活かします。

 

(11) ユース部の取り組み

ユース部は、ユース世代の協議会に対する思いや、求めること等について把握しつつ、様々な活動を展開し10年が経過しました。この間、活動の一つとして、次世代の全消協活動を担うリーダーを育成することを目的に、「全消協ユースStep Upセミナー」を開催し、全国のユース世代が感じている課題の共有や協議会活動・消防業務に関する学習を重ねてきました。こうした活動の展開とともに、全消協幹事会における各種取り組みに意見を反映してきており、引き続きユース会員の求める活動にむけて取り組みを強化していく必要があります。

また、LGBTQI(レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障がい者を含む、心と出生時の性別が一致しない人)、クエスチョニング(性自認や性的指向が定まっていない、もしくは意図的に定めていない人)、インターセックス(身体的性が一般的に定められた男性・女性の中間もしくはどちらとも一致しない状態)のアルファベットの頭文字をとって組み合わせた言葉)について、継続的に取り組みを行うとともに、男性の育児参加に関する「イクボス」についても情報発信してきました。

こうした取り組みは、国外でも高い評価を受けています。2019年9月のPSIアジア太平洋地域総会(APRECON)においてユース部の活動を発信した際には、PSI加盟組合のユース層から全消協のユース世代に対する大きな期待が示され、今後のより一層の連帯を求められるなど、大きな成果へとつながっています。引き続き、国内での取り組み強化とともに、PSI加盟のユース世代との連携をはかっていかなければなりません。

ユース世代の取り組みの活性化は、組織の強化や協議会活動の更なる発展に不可欠であり、消防職員としてのさらなる意識の向上にもつながるものです。

そのため、ユース部はユース世代の「問題」を「課題」として提起するとともに、引き続き、ユース世代の育成にむけ協議会活動の歴史やその必要性を学ぶセミナー等を開催します。さらに、全国のユース世代の活動に関する情報発信に取り組みます。

 

【ユース部の取り組み】

1. 次世代のリーダー育成を目的とした活動を推進し、各種学習会への参加を促し、ユース世代が今後の組織の一翼を担えるよう以下のことに取り組みます。
① ユースStep Upセミナーや各ブロックで開催する各種学習会において、ユース部が主体的に担うことで、ユース世代のさらなる意識の向上と体制や活動を強化します。
② ユース世代を対象としたアンケート調査を実施します。その結果を分析し、活動へ反映するとともに、全国のユース世代と情報の共有をはかります。
③ 単協・県消協におけるユース部に関わる連携強化をはかります。
④ 各ブロックユース部とデジタル媒体を活用した積極的な交流や合同会議を実施します。
⑤ コロナ禍での若年層の課題を抽出し、今後の活動へ活かします。

2. ユース部の活動を、マスメディア・SNS等を活用し、情報を発信します。

3. LGBTQIへの理解促進や男性の育児参画促進にむけて課題を共有します。

4. 女性連絡会と協同し、ジェンダー平等に関する取り組みをはじめ、関連する諸課題の共有など連携を深めます。

 

【単協・県消協の取り組み】

5. 単協・県消協は、次のことに取り組みます。
① 単協・県消協の組織形態に応じて、ユース部会の設置、ユース世代の役員や委員の選出を積極的に行います。
② ユース世代の会員に対して、協議会活動の積極的な参画を促します。
③ ユース部の各ブロック幹事と、ユース世代の会員が意見交換、交流を行う機会を設けます。

 

【連帯活動の取り組み】

6. PSI-JCに設置されているユースネットワークに参画します。あわせて、PSI加盟のユース世代との連携・強化をはかります。

7. 自治労・他産別と若年層にかかる課題解決にむけ連携強化をはかり、全消協活動へ活かします。

ページトップへ