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第36回全国消防職員研究集会

2007年5月9日から11日までの3日間、世界で初めての核による武力攻撃を受けた被爆都市『ヒロシマ』において、全消協第36回全国消防職員研究集会が開催された。
全体集会の会場である広島市青少年センターは、プロ野球の広島カープの本拠地である広島市民球場の隣にあり、また原爆の恐ろしさを今に伝える“原爆ドーム”が静かにたたずむ広島平和公園にも近距離に位置する水と緑の豊かな環境の場所にあり、開催期間中は五月晴れの好天にも恵まれ、全消協加盟・未組織の消防職員、自治労関係の組織員など全国から約480人の参加者が集い、消防職場におけるさまざまな課題について研究を深め、討論や情報の交換を行った。

初日の全体集会は、全消協・迫会長の歓迎のあいさつと、自治労中央本部・笠見副委員長の自治労が取り組んでいる課題の報告から始まり、その後、来賓として地元自治労を代表し、自治労広島県本部・向井委員長が祝辞を述べられ、多忙な時期でもあるのにわざわざ東京から本研究集会に駆けつけ、祝辞と決意表明を報告された相原久美子参議院議員選挙組織内予定候補のあいさつがあった。
その後、全消協活動経過報告が山﨑事務局長から報告され、続いて消防総合研究委員会の中間報告が中井委員長から発表された。
休憩をはさみ、広島県被団協理事長である坪井 直さんによる「被爆体験から」と題した特別講演が行われた。坪井さんは20歳の時に爆心地から1キロメートルの路上で被曝され、一週間後には意識不明の状態となりその後約40日間生死の境をさまよわれたとのことであった。また現在まで10回の入退院を繰り返し、今も悪性腫瘍などの病と闘いながら非核平和に向けた活動をされているとのことで、講演の内容も悲惨な原爆投下直後の惨状を話され、最後には「被爆者問題をはじめ、いかなる国際問題も暴力や軍事力では解決できない。人間の知恵である言葉により解決でき平和も勝ち取れる。人間の作った核兵器なら、人間の力で解決しよう。その鍵は皆さんの手元にあるはずだ。」と熱く語られた。
初日の最後は全体行動として、広島平和公園へ参加者全員で移動し、原爆慰霊碑に献花・黙とうを行った。夕刻が迫る中、迫会長を先頭に参加者が隊列を作り整然と原爆慰霊碑の前に集合し、哀悼の言葉を迫会長が述べ広島県消協・島田会長とともに献花を行い、平和への誓いを参加者全員で確認したのち、迫会長の発声により黙とうを行った。

2日目は、YMCAホールと八丁堀シャンテに会場を分け、第1分科会から第4分科会が行われた。
第1分科会 「組織強化拡大と未来の消防を考える」
第2分科会 「賃金・労働条件改善のために」
第3分科会 「消防救急体制の課題」
第4分科会 「労働安全衛生~公務災害補償と心のケア」
また、各分科会終了後、リーガロイヤルホテルにおいて全体交流会が開催され、未組織の消防職員を壇上に招き、感想や今後の決意などを語ってもらい参加者全員で交流を深めた。
最終日の3日目は、全体集会として各分科会報告を担当幹事が行い、高松消防協が取り組んでいる公務災害認定闘争の報告が行われた。
また、特別報告として、財政破綻した北海道夕張市での協議会活動を夕張市消防協・千葉会長を招き行った。千葉会長は、財政破綻の問題が浮上した時期から今日までの協議会や職場内での人間関係の葛藤や組織を維持していく難しさ。その行動の中で生まれた仲間の大切さを切々と語られた。報告中、会場は水を打ったように静まり、あちこちで多くの参加者が涙を流す場面も見受けられ、集会の終了時刻を過ぎようとしても誰もが席を立つことなく最後まで話に聞き入っていた。
そしていよいよ、予定していたすべての行事が終わり、最後に全消協・鳥生副会長による「団結がんばろう」を参加者全員で唱和し本集会を締めくくった。
2日目からは、4つの各分科会に分かれ活発な討議を行い、組織強化、賃金・労働条件、消防救急体制、労働安全衛生、その他全般にわたり活発な議論を展開した。
最終日には、千葉恭久夕張消防協前会長から夕張の現状報告があり、会場に集まった多くの仲間は消防協活動の原点を夕張に学んだと目頭を押さえ、単協の結束を誓いあって、3日間の幕を閉じた。

特別講演

「被爆体験から」

坪井直(日本被団協代表委員・広島県被団協理事長)
坪井さんは、大学生(20歳)の時に被爆しました。爆風で10m吹き飛ばされて気を失い、熱線で顔、両手、背中、腰、両足などほとんど全身をやけどし、ワイシャツの両袖、ズボンの半分が焼け、わずかに残った衣服もボロボロでした。
気がついた時には街全体が火の海となり、炎をさけながら逃げまどっていました。
街中に黒焦げの死体が横たわり、水を求めて川に飛び込んだ人の死体が浮かんでいました。眼球が飛び出たまま逃げる少女、皮膚が焼けてぶらさがりながら逃げる少年、「この世の生き地獄」を見ました。坪井さんはその後40日間意識不明となり、その間の記憶がいっさいなく、意識が戻った時には、終戦を迎えていました。

坪井さんは、現在まで10回の入退院を繰り返し、今なお原爆症とたたかっておられ、時折体調を崩されることもあります。
そんな自身の体験や原爆に対する強い姿勢で、世界から核兵器がなくなることを心から願い、世界規模で活動をなさっています。
「ヒロシマ」は、決して過去のできごとではありません。核兵器廃絶と恒久平和の実現とする「ヒロシマの願い」が、全人類の約束となることを心から願うものです。

分科会の概要

第1分科会

「組織強化拡大と未来の消防を考える」

討論の柱として「組織強化拡大と消防広域化」「消防の広域化と地方財政」「消防の広域化に対するメリット・デメリットの抽出」の3点を取り上げた。
午前は、自治労森組織局次長から「消防職場をとりまく情勢と自治労の消防職員支援活動」として、団結権をめぐるILOと日本政府の動向、消防職員に対する労働基本権のあり方に対する日本政府内における議論状況についての経過説明・報告があった。自治労の組織拡大方針として、自治労はもとより全消協の組織強化拡大が急務であり、消防職員の団結権獲得にむけ、最低1年で1単協結成をめざすことが提起された。
続いて自治総研飛田講師から、「地方財政の現状と今後の改革動向」として、地方財政について国と地方の財源配分、地方財政の中での消防費の位置づけ、基本方針2006による地方財政改革の動向と、新しい地方財政再生制度の整備についての講義がされた。
沖縄県消協島会長からは、消防広域再編の現状報告として、県消防長会は県下一消防本部を決議し、2011年をめどに消防広域化、2013年をめどに消防救急無線のデジタル化を県域で整備する方針であるとの報告をうけた。

午後は飛田講師から「消防行政の財源保障と広域化問題」と題し、消防費の財源保証、広域化財政措置、広域化と財政効率について講義がなされた。
続いて、グループに別れ、地形・道路状況・生活圏・面積等考慮しながら、住民サービスの質・量、職員の身分・階級、給料・手当、福利厚生、予算面についてメリット・デメリットについて活発に討議し、住民サービスの向上か低下か、地水利・給与・人員・通勤・組織の拡大化による充実と弱体化等の問題点を抽出した。
また、山崎事務局長から、年末年始の休日給支給問題、消防職員委員会制度の検証とPSIを活用した団結権獲得にむけた国内外からのとりくみ、住民の立場に立った消防サービスの提供と職員の処遇改善のない広域化は受け入れられないと提起された。
総括として、鳥生副会長から消防の広域化に対し住民・職員の目線で議論でき、総務省に対し地域の特殊性を十分考慮した消防の広域化となるよう働きかけられるよう今後議論を重ねるとともに、県が策定する推進計画、市町村が策定する広域消防運営計画に対し、各単協と連携して住民サービス及び消防職員の権利向上のため努力していくことを確認し、分科会終了となった。

第2分科会

「賃金・労働条件改善のために」

第2分科会は、ナリッジ共同法律事務所の小倉知子弁護士、渡辺晶子弁護士を迎えて労働基準法と交替制勤務職場をテーマに討論を進めることを座長から提起した。
午前は小倉・渡辺両弁護士から「休憩時間と勤務時間の振替」について講演いただき、現在措置要求を行っている佐世保消防協の事例から、問題解決に向けた取り組み方法の提起があった。民間では労使交渉で解決する問題でも、公務員の場合は直接的に当局に訴える場がないので公平委員会に訴えなければ解決しない。今回の佐世保消防協措置要求の争点として、1点目は勤務時間条例主義に反するということ。2点目は、労基法は15条1項に明示義務を規定し施行規則5 条に明示すべき労働条件項目をあげているが、労働条件明示義務の趣旨は、使用者の恣意的な労働条件変更を阻止するものであり、今回の件は、まさにこれに該当する。3点目は、消防長通知文の法規範性をとりあげ、通知は行政文書の一種で、単なる事実の伝達文書にすぎないということ。4点目は、22時から5時までの勤務時間制をとりあげ、その判例紹介として、大星ビル管理会社事件、青梅市管理業務事件、愛知県警手当請求事件などから、本事例との相違点の有無を考察した。

午後は、伊藤副会長から特殊勤務手当の撤廃も含めた見直しに関し、特殊勤務手当の制度趣旨からいって、消防業務の持つ特殊性を強く訴えながら特殊勤務手当の要求をすべきとの提言があった。その後、年末年始の休日給の取扱について、また、労基法は使用者が守らなければならない法律であり、労働者が違反しても罰則がないとの講義を受け、グループ討議に移行した。グループ討議では、実態として勤務サイクルを8週間で行っている単協がかなりあること、年間で勤務サイクルを組みその中に祝日も週休と同じ指定休という言葉で組み込まれ週休なのか休日代休なのかがわからないといった単協もあるという報告があった。また、昼間の休憩時間中の出動を時間外勤務手当でもらった場合に食事時間はどう取り扱われるのかといった質問や、代休日の割増賃金についての取り扱い、夜間特殊業務手当の問題、管理職隔勤者の時間外勤務についての取り扱い、非番日等の時間外勤務に対する代休処理の問題など、各単協で抱えている問題点について、論議を交わした。
「権利意識を持たねば権利を持つ意味はない。」という小倉弁護士の言葉に象徴されるように、消防職員も研究集会などを通し知識を得ることの必要性、正当な権利を主張していくことが大事だと感じる分科会となった。

第3分科会

「消防救急体制の課題」

福山市民病院の宮庄浩司救命救急センター長を講師に迎え、福山市の救急医療の現状を伺った。
宮庄浩司救命救急センター長は、大きな課題として3点をあげた。1点目は、地域MC協議会のあり方。MC協議会が発足したのは包括的指示下での除細動開始前日で、医師に認識がない中での始動だったため、その後2年余りスムーズな運用とはならなかった。
さらに、総務省と厚労省の縦割り行政の壁、また、MC協議会は大都会とそれ以外の市町村では、大きな格差があること。
2点目は、地域密着型の救急医療の確立。住民は、救命救急センターを何でも診てもらえる、いつでも24時間専門医がいると勘違いしている傾向がある。また、二次病院に医師がいるにもかかわらずセンターに依存する、しかし、期待に反して救急医療に携わる医師の不足。結果、加重労働・ストレス問題が生まれ、体調を崩す医師も多い。
3点目は、救命士の質の向上。医師と救命士が顔の見える状況を構築する必要がある。医師と救命士の信頼関係、医師が救命士個々の技量をどれほど知っているか等、人間関係の問題と救命士個人の資質の向上は、早急な課題。以上3点をあげた。

また、2単協から119番受信時トリアージについて報告があった。それぞれ、システム紹介の他、119番受信時の問題点として、通報内容と現場での差異が著しい場合や、通報者との言葉の行き違いによるトラブルなど患者との問題点などを指摘していた。
グループ討議では、救急件数を減らすための方策と今後の救命処置の拡大は何かという2つの課題で討議をした。
救急件数を減らすための方策では、(1)マスメディア等を利用したPR(2)転院搬送のあり方(3)福祉施設等の軽症患者自前対応(4)有料化(5)常習化傾向の精神科救急問題(6)119番トリアージ対応という意見が多数を占めた。
今後、予想される救命士の処置拡大として、(1)薬剤投与の拡大(2)糖尿病患者の血糖値測定(3)CPA前の静脈路確保などが上げられた。
最後に横浜消防が行っている転院搬送について紹介があり、当局と医師会など関係団体との調整が図られ合意の上で、救急搬送の適正利用を図っているという報告があった。
また、老人福祉施設等は企業設置が多く、軽症・中等症は施設責任で寝台車の設置や24時間で運用できるようルール化させる必要があるという意見もあった。
これらの意見を現場の声とし総務省や厚労省に訴えていく必要があり、また、反映されるような協議会活動を展開する必要があるとして分科会を終了した。

第4分科会

「労働安全衛生~公務災害補償と心のケア」

分科会テーマを「健康に働き続けられる職場を作る」とし、二人の講師を招き分科会を開催した。
はじめに、西東京共同法律事務所西畠弁護士から、公務災害補償を認定問題のみにとどめず再発防止対策など総合的に取り組むために、請求実務とともに請求事務体制や再発防止活動体制など、公務災害にかかわる活動のあり方について、講義・実習・討論を行った。
講義は、「公務災害や通勤災害など補償の対象となる災害」について、公務上認定の2要件「公務遂行性及び公務起因性」を踏まえ、公務災害認定請求の実務の流れや必要な提出書類作成など、実例を挙げて解りやすいものであった。
その後、講演の内容を踏まえ、いくつかの事例についてグループ討論を行った。
西畠弁護士は、明るい職場づくりや同僚が支えるような職場づくりが必要であること。使用者責任もあるが、協議会の支えが必要であり、会員一人ひとりがセミプロになるような学習を行う必要があると締めくくった。
次に兵庫県「こころのケアセンター」加藤寛医学博士から「メンタルヘルス対策の基礎知識と協議会の関わり」と題した講演を受けた。
阪神大震災の経験を踏まえ、惨事ストレス(CIS)や外傷後ストレス障害(PTSD)の背景・症状、消防職員が他の職種よりも惨事ストレスを引き起こしやすい状況であること、救援者である消防職員が受けるストレスについて具体的な対策の必要性について学んだ。
惨事ストレスへの対応は事前準備が不可欠であり、(1)専門知識を得た職員の養成(2)事後対策は試行錯誤の段階であるが、消防に見合った方法を確立し一体感・職業意識あるいは情緒的な交流を促進する行事や人間関係は重要であるとの提案を受けた。
全体総括として、公務災害補償については初期の対応が重要で、発症の時期を明確にした早期な手続き申請また規程の整備の確立。
メンタルヘルスについては消防職場特有の対策を確立するための更なる調査研究が求められるとともに、相互理解の学習が重要であるとの認識を持ち、分科会を終了した。

夕張現状報告

千葉夕張消防協会長
「ふて腐れないで、がんばるべ」

給料30%カットや人員削減、悩みに悩んで先輩や同僚が次々と退職という厳しい決断を強いられる。大変だという一言では片付けられない切羽詰まった状況。仕事はどうなる、生活はどうなる、いろいろな不安が渦巻く。
千葉会長は、落ち込んでいる夕張消防協会員を集め、「世の中には、もっと辛い状況に追い込まれても頑張っている人がたくさんいる。それを考えれば何とか克服できる。金は、なんとかなる。今まで通りの仕事をするぞ、命まで取られる訳でない。」さらに「ふて腐れないでがんばるべ!中途半端な仕事にならないように、みんながんばるべや!」不安を打ち消し、みんなの勇気を奮い立たせるには充分すぎる言葉だった。
「協議会活動の素晴らしさは仲間作り。仲間を失わないために協議会活動があるんだ。」そう言い切る千葉さんの話に会場全体が熱くなる。団結する本当の意味をあらためて考えさせられる。
「夕張頑張っているぞー。とにかく元気だから心配しないで、みんなも頑張れ。」
講演が終わった時には、盛んなエールと拍手が湧き上がった。会場の袖で控えている会館スタッフも感動の涙。会場のあちこちでも涙、もちろん迫会長も・・・。
研究集会の最終日に、元気を送るはずだった夕張から逆に勇気を与えられた。
「ガンバレ夕張。全消協も応援するぞ!」

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