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ダニーロ・ズリアーニ氏へのインタビュー

PSI本部消防ネットワークコーディネーター
ダニーロ・ズリアーニ氏へのインタビュー

 2014年6月3日15:00、第42回全消協研究集会とPSI-JC2014年度QPSセミナーとのジョイント開催会場となる東京ベイ幕張ホールで、PSI消防コーディネーターのダニーロ・ズリアーニ氏にインタビューを行い、世界の消防の実態やPSI本部での活動などを伺いました。

 イタリアと日本では言語や文化など環境は大きく違いますが、消防活動とその問題点には共通点が数多く存在し、職場の同僚から話を聞くかのような終始親しみを持って接することが出来てとても勉強になりました。災害現場で働く世界の消防職員が、それぞれの労働問題を解決するためのネットワークの必要性を自覚し、互いに絆を深め、あらゆる機会で発言し続けることが必要であるとをインタビューを通して再認識しました。 (三上)

インタビュイー:ダニーロ・ズリアーニ氏
インタビュアー:仲野特別幹事、三上幹事
サポート:PSI-JC佐藤事務局長、自治労本部和久井、通訳アマディ氏 

 

Keita nakano(以下K)nakano01
はじめまして。PSIアジア太平洋地域消防救急ネットワークコーディネーターの仲野です。今回、遠いイタリアから来日して頂き、ありがとうございます。

daniro01Danilo zuliani(以下D)
こちらこそ、はじめまして。PSI本部で消防ネットワークコーディネーターをしているダニーロです。日本は初めてなのでよろしく。

K:せっかくの機会ですので、いろいろとお話しを聞かせてください。まずはダニーロさんの自己紹介をお願いします。

D:はい。名前はダニーロ・ズリアーニです。1956年にイタリアのローマで生まれました。
理科系の高校を卒業し、1976年4月に消防士を拝命しました。その年にイタリア北部で大きな地震があり、トレーニング期間もないまま災害活動を体験しました。また消防士となったと同時に大学にも入学し大学では法学部を専攻し、仕事と勉学の両立に励みました。

K:1976年から消防士ですか。私が生まれたのが1976年なので大先輩ですね(笑)

D:そうなるね(笑)イタリアでは1985年に消防の大きな組織変革がありました。それ以前までは現場部門と管理部門(事務的な業務)が同じで兼任が当たり前でした。しかし1985年以降は現場部門と管理部門に分かれ、より専門的な業務ができるようになりました。またイタリアの消防は世界でも珍しく国の直轄組織で、身分は国家公務員となります。

K:日本の消防士は自治体消防が基本で身分は地方公務員です。

D:消防は地方公務員が多いね。私が知るところで言うと2000年にニュージーランドも国の直轄になりました。またイタリアでは1985年以降に消防組織の中で試験制度が設けられ、私は試験をパスし1986年から管理部門へ移りました。それから約10年間、ローマにあるイタリア全土の消防士が集まってトレーニングをおこなう学校(日本の消防大学校にあたる)で教官をしていました。教官の任務を終えた後、国家緊急レスキューチームに入り、航空隊のヘリに3年間搭乗し、その後は水難隊員としてスクーバも経験し、空に海へといろいろと活動をしました。現在は国家安全管理部門の隊長として勤務しています。
現在の住所はフィアーノ・ロマーノというところで、妻と子供3人の5人家族で住んでいます。プライベートの話はこのあたりでいいでしょうか(笑)

K:ありがとうございました。ではPSIにおけるダニーロさんの役割はどのようなものでしょうか?

D:まだスタートしたばかりなので手探り状態ですが、まず着手しているのは、PSIに加盟する消防労働組合の調査を始めている。その調査結果を踏まえてどのような消防ネットワークが構築できるのかを検討していきます。現在、オーストラリアとニュージーランドの消防労働組合とコンタクトを取っており、今後はアメリカとカナダの消防労働組合とコンタクトをとっていきたいと考えています。

K:私がコーディネーターを務めるアジア太平洋地域消防救急ネットワークとの連携強化もよろしくお願いします。

D:もちろん。こちらからもお願いします!

K:ありがとうございます。ダニーロさん自身がPSI活動や労働運動をしようと思ったキッカケはなんですか?

D:消防士を拝命した1976年から現在も所属するFPCGIL(イタリア労働総同盟)に加入しました。当時、日本でも同じだったと思いますが、イタリアでも1970年代は学生運動が盛んで私も参加していました。その影響もあり学生時代から社会人になれば労働組合に入るのは当たり前の事でした。それから組合活動を続ける中で、2012年に国際部門を担当していた方が退職したため、その後任に私が担当となりました。またヨーロッパ部門(EPSU:欧州公務労連)の担当にもなりました。2年前のPSI世界大会で我が国のローザ・パヴァネリがPSI書記長となり、ローザの意向でヨーロッパだけの消防ネットワークではなく、もっとグローバルな議論が必要であるとのことによりPSI本部の消防コーディネーターに任命されました。

K:なるほど。それではPSI活動で現在取り組んでいること、この活動のやりがいや苦労したことなどを教えてください。

D:私が労働組合にはいった1970年代というのは、ヨーロッパ全土で組合活動が活発で労働者の権利獲得もどんどん進み、組合員も右肩上がりに増加していった時代でした。しかし、最近では新自由主義な考え方や経済のグローバル化により、労働者の権利が脅かされる時代となりました。そのような状況から労働者の権利を如何に守っていくのかというのが活動の中心的な考えです。また、イタリアでは2005年から法律が改正され、消防労働組合の一部の権利がはく奪されました。この権利についても回復できるように取り組んでいます。
イタリアでは、地方の事情に関係なく中央(ローマ)で決定した事がすべて地方に波及します。そう言った面では私は中央で労使交渉をおこっているので、やりがいはありますが責任も重大です。また中央で決めたことが地方では問題となるケースもあり、現在はこの制度の変更も検討しているが難しい問題もたくさんあります。

K:最後となりましたが、日本の消防職員に労働組合権が付与されていないことについてどのように思いますか?

D:ヨーロッパから来た私からすれば信じられないとしか言いようがない。労働組合がなければ、自分たちの処遇などは誰が決めるのか不思議であるし、労働者の声が反映されない労働条件など考えられない。また賃金・労働条件だけでなく、危険な現場が多い消防士は特に安全装備が大切であり、労働組合が関与してしっかりチェックする必要があります。

K:日本の消防職員に労働組合権を与えない理由として、消防特有の指揮命令系統が崩れるという意見もありますが、労働組合権を有するイタリアの消防士はそのようなことはありますか?

D:イタリアの消防士はヨーロッパの中でも最も組合化された組織です。労働組合があるからこそ労使の信頼関係が築けており現場活動も円滑です。労使交渉をしたからといってその信頼関係が崩れることはなく、当然ですが指揮命令系統が崩れるなんてことはありません。それから日本では労働組合権を与えるとボランティア消防士(消防団)との関係が悪くなるという話を聞いたが、まるで反対です。イタリアでもボランティア消防士が多数います。職業消防士とボランティア消防士の間を労働組合が取り持って良好な関係を築けています。採用時にもお互いがサポートできる仕組みとなっており、ボランティア消防士にあっても我々の労働組合の存在は大きいのです。
また女性消防士の割合は、現場部門では全体の8%でまだまだ少ないのですが、管理部門の事務業務は男性より女性が多く、現場部門に近い車両管理・装備の調達部門でも女性は35%で、イタリア全土で101箇所ある消防署のうち、5箇所は女性署長がいます。いま言ったように女性消防士が活躍する場も多くあり、このあたりについても労働組合の働きかけが大きかったのです。

K:労働組合があることで、消防行政にも良い影響を与えているのですね。まだまだお話しを聞きたかったのですがお時間となりましたので、これでインタビューを終了します。
これからも全消協として労働組合権回復のために全力で取り組んでいきますので、PSI本部としてサポートをよろしくお願いします。

D:もちろんです。しかし我々消防士だけの力では限界があります。もっと政治的な活動も必要であり、国際連帯活動を通してILOに働きかけ日本政府にプレッシャーをかける必要もあるでしょう。PSIとしてもそのような角度から取り組みを展開し支援していきたいと考えています。

K:Grazie(グラーツィエ)

D:Prego(プレーゴ)

 

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(写真1:笑顔で質問に答えるPSI本部のダニーロ・ズリアーニさん)

 

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(写真2:インタビューの模様。右端は通訳のアマディさん)

 

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(写真3:インタビューを終えズリアーニ夫妻と記念撮影)

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