活動方針

2004-2005年度活動方針(補強修正案)

Ⅰ 最新の情勢と今後一年間の取り組みに向けて

全国消防職員協議会が発足して早くも四半世紀が過ぎてしまいました。
労働者の基本的権利である団結権をもてない職場として「自主組織」という旗頭のもと現在186組織11,800人の仲間と共に権利不在の中「民主的な職場づくり」をめざし、活動してきました。
しかしながら団結権がないことは、大きな壁であり、さらに国・総務省消防庁断固として消防職員に付与することを拒みつづけています。
全消協が長崎県の出島で産声を上げ27年が経過し、その歴史を振り返ってみると、権利獲得の機会が無かった訳ではありませんでした。
1996年に自治労は消防職員の団結権を獲得するため、ときの自治省と継続的に交渉し、非民主的な全国の消防職場のために団結権への経過措置として消防職員委員会制度の導入となりました。
未加盟の未組織消防職場にとって職場の推薦による委員によって勤務条件等について議論できる初めてのテーブルとして民主的な職場への有効かつ意義ある制度と思われました。
しかし、全国の消防職場の中には、この委員会の意義も認識できず、この制度を運用もできてない消防本部もあり、2003年3月総務省消防庁は消防職員委員会の定期的開催を推進するために当該消防本部に通知を出しました。
総務省消防庁は、全ての消防本部において開催の事実を認めるといっていますが、私たちの調査では開催されていない消防本部もあります。また、開催されていても十分な役割をはたしていないケースが非常に多い実態です。
全消協は団結権獲得に向けて、消防職員の団結権付与に対し、かたくな態度を取る政府に対し、自治労と連携しながら、継続的な組織体制を組み、私たちの活動が単なる僥倖でなく必然的なものとしての理解を得られるよう我慢強く運動を続けていかなければなりません。
さらに総務省消防庁は「市町村合併の推進と軌を一にした消防機関の広域再編を進めると共に、管轄人口概10万人以上を目安として、さらなる広域化を推進することが必要である。」と言っていますが、現在一部事務組合消防は自治体の都合によって分離解体される可能性があり、全消協として対応していかなければなりません。
また、過疎地域の住民にとっては、消防行政の枠組みから零れ落ちかねない状況になるおそれがあり、常備消防の設置義務制度・救急業務の実施義務制度(政令指定)の廃止と相まって、住民に対する消防サービスの低下を招きかねません。
私たちは住民に対する消防サービスの低下を招かないように自治労・地域住民との連携を強化するとともに、自治体当局および地域社会に向けて「理想の消防行政の在り方」について発信していくことが必要です。
全消協は、全国15万余人の消防職員数に比較するとまだまだ少数派です。私たちは、さらなる組織強化・拡大を推し進めながら日本の消防職員全体の声として政府・自治体当局に対する発言力を強化し、住民の為の消防行政確立に向けた基盤を整備する必要があります。
連合は、2002年2月26日 、ILOの結社の自由委員会に対して日本政府が示した公務員制度改革大綱が国際労働基準に違反するとして提訴を行いました。この提訴を受けて、ILO理事会は2002年11月21日、日本政府に対して、①公務員改革大綱を再検討する。②法令を改正してすべての関係者と結社の自由にしたがい、消防職員への団結権をはじめ諸課題につき協議を実施することなどを勧告しました。
2003年6月20日、ILO理事会は「公務員制度改革」について2002年11月の勧告に続き「労働基本権に対する制約を維持するとの考えを見直すことを再度強く求める」という異例の勧告を、しかも前回より強い表現で見直しを迫っています。
このような状況にあって日本政府は、ILO勧告を無視して「公務員制度改革関連法案」の国会上程をめざすなど不誠実な対応に終始していますが、公務員制度改革1000万人署名や消防職員の団結権を求める8・25総決起集会などの取り組みによって実現にはいたっておりません。
全消協は、自治労・連合と連携して「公務員制度改革関連法案」の国会上程を阻止し、ILOの勧告に基づいた民主的な公務員制度改革の実現に向けてさらに取り組みを強めていかなければなりません。
全国各地で、消防職員の重大事故が発生しています。大阪市消防職員の鉄道事故現場での死亡事故、大分県別府市火災現場での死亡事故、神戸市の火災現場での複数の死傷者、三重県桑名市におけるRDFのサイロ爆発による死亡事故など人為的な安全配慮があれば防ぐことが可能であった事故が発生しています。
一因として消防職場の業務の拡大があげられます。法令改正に伴う検査・査察等の事務量の増大、救急件数の増加、一件あたりの出場時間の延長及び研修の増加などがあり、警察と比較しても劣らぬ業務の質・量がありながら人員不足によりその対応が出来ていないことがあげられると思われます。
広域消防行政が開始されてから30年が経過し、団塊の職員の高齢化が進んでおり、現場業務に支障をきたす職場状況のなか、早急な対応と抜本的な解決策を講じなければなりません。
また、ストレスを要因としたPTSD(心的外傷後ストレス障害)・CIS(非常事態ストレス)など特に消防職員との密接な関係にあるメンタルヘルス対策の充実に向けた取り組みも求められています。
全消協は、このような事故等の背景として全国の多くの消防職場における労働環境が変形労働時間であり、深夜を含む24時間という長時間にわたる拘束勤務も大きな要因と考えています。
消防救急においては、救急件数が増加し、高度化する救急制度のなか1件あたりの出動が長時間となっています。救急隊員の健康もさることながら、輻輳する救急出動で住民に対しても行政義務も果たせない状況にあります。救急隊員の勤務時間等における労務管理の徹底を図る必要があります。
また、救急救命士の救急処置拡大について、総務省及び厚生労働省は「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を設置し、協議を重ね、地域メディカルコントロール体制の確立と、事後検証を含めた「気管挿管、除細動及び薬剤投与」の早期実現をめざしています。
しかし、この処置等の実現には、人員及び装備の確保はもとより、専門教育・研修受け入れ病院及び救急医の配備体制を構築する地域のメディカルコントロール体制の充実など課題が山積しています。
大星ビル管理事件は2002年2月に最高裁判決を受けて、2003年2月に和解が成立しました。このことから、労働時間とは「指揮命令下にある時間は、仮に具体的な実作業を行わなくても労働時間である。」という見解が判例となりました。これは消防職場にとって画期的かつ有利な判決と言えます。
全消協は、この機に応じて全国の仲間と議論を重ねすみやかに意思統一する必要があります。政策を形成しながら司法の判断を仰ぐことも視野に入れ、消防当局への働きかけとなるような運動を展開していく必要があります。
高齢者再任用制度は、各自治体において2001年4月からスタートし、消防職場も、6年遅れの2007年4月から始まります。消防職場のみでの再任用職域確保の困難さがあるため、早急な試行・受け入れ体制等の諸準備をする必要があります。
全消協は、総務省に対し消防職員の再任用の困難さや職域課題を含め自治労との連携を強めながら、ビジョンの確認と実効ある制度の確立に向けて働きかけを行っていきます。
年金制度改革法案が国会を通過し、老後の課題も含めて私たち全消協に結集している会員は、今まで以上に危機感を持ち、消防職場のみならず働く仲間とともに国民の安全・安心のためにあらゆる分野を乗り越え全消協運動に取り組むことが求められています。

Ⅱ 平和で安全・安心な社会をつくるために

1.基 調

 1977年8月に全国消防職員協議会が発足して、28回目の定期総会を迎えました。

 これまで、全消協は、上意下達の封建的な消防職場環境の改善や「国民の生命と財産」を真の意味で保護するために、運動を展開してきました。

この間の政治・経済・社会全領域における急激な変化のもとで、消防が担う責務も年を追うごとに増大し、多様化しています。

そのようななか、2003年6月12日、第156回通常国会において、消防・消防組織法の改正法案が全会一致で可決・成立しました。法の内容については、地方分権の趣旨を鑑みて、常備消防の設置義務制度・救急業務の実施義務制度(政令指定)の廃止する一方、大規模・特殊災害時における緊急消防援助隊出動に対して消防庁長官の指示権を創設するなどこれまでの消防行政の根幹である「市町村消防の原則」が転換されようとしています。

また、近年の国・自治体財政危機への対応として、全国各地で国主導の市町村合併が推進されています。合併特例法の2005年3月の期限切れを控えて、その勢いは加速度を増しています。これに呼応して、2002年12月の消防審議会の答申では「市町村合併の推進と軌を一にした消防機関の広域再編を進めるとともに、管轄人口概ね10万人以上を目安として、さらなる広域化を推進することが必要である。」としています。これ以上の広域化は、地理的条件一つをとっても、地域住民にとって「生命と財産を保護するという」消防行政の目的達成からは、程遠いものになるおそれがあり、常備消防の設置義務制度・救急業務の実施義務制度(政令指定)の廃止と相まって、住民に対する消防サービスの低下を招きかねません。

私たちは、住民に対する消防サービスの低下を招かないよう自治労・地域住民との連携を強化するとともに、自治体当局および地域社会にむけて「理想の消防行政の在り方」について発信することが必要です。

全消協は、結成当初の36組織・2,500人から187組織12,097人へ成長してきましたが、全国15万余人の消防職員数に比較すると、まだまだ少数派です。私たちは、さらなる組織強化・拡大を通じて、政府・自治体当局に対する発言力を強化し、明るく魅力ある消防職場づくりと消防職員の権利と生活の向上、住民のための消防行政の確立にむけた基盤を整備する必要があります。

2002年3月、全消協はILO(国際労働機関)に代表を派遣し、消防職員委員会導入後、8年が経過した現在の日本の消防職員を取り巻く現状と、日本政府の消防職員への団結権保障にむけた国内法整備が遅々として進展しない現状について報告しました。

時期を同じくして、連合は、2002年2月26日、ILO結社の自由委員会に対して、日本政府が示した公務員制度改革大綱が国際労働基準に違反するとして提訴を行いました。この提訴を受けて、ILO理事会は、2002年11月21日、日本政府に対して、(1)公務員制度改革大綱を再検討する、(2)法令を改正して、すべての関係者と結社の自由の原則に則って、消防職員への団結権をはじめ諸課題につき協議を実施することなどを勧告しました。これは、2002年3月のILO訪問をはじめとするこれまでの取り組みの一定の成果として評価できます。

2003年6月20日、ILO理事会は「公務員制度改革」について、2002年11月の勧告に続き、「労働基本権に対する制約を維持するとの考えを見直すことを、再度、強く求める」という異例の勧告を、しかも前回より強い表現で見直しを迫っています。

このような状況にあって、日本政府は、ILO勧告を無視して「公務員制度改革関連法案」の国会上程をめざすなど不誠実な対応に終始していますが、公務員制度改革1000万人署名をはじめ私たちのねばり強い取り組みによって実現には至っていません。

このように、国内外で日本の公務員労働者の労働基本権回復の実現にむけた支援と連帯の輪が広がっています。全消協は、連合・自治労と連携して「公務員制度改革関連法案」の国会上程を阻止し、ILO勧告に基づいた民主的な公務員制度改革の実現にむけて、さらに取り組みを強めていかなければなりません。

一方、96年10月から消防職員委員会制度が導入され7年が経過しましたが、多くの未組織職場の旧態依然とした職場環境下では、この制度が十分に生かされているとは言えません。政府は、ILO勧告に象徴される国際世論に対抗するため、2003年3月には、全国900消防本部に対して、消防職員委員会の定期的開催の通知と改善事例集を配布し、開催実績をあげようと躍起になっています。

私たち全消協は、消防職員委員会の運営実態の把握に努めながら、未組織職場の消防職員に対して、自主組織の結成を通じて委員会の実効性を高めるなど、団結権保障にむけた環境作りに取り組む必要があります。

全国各地で、消防職員の重大事故が発生しています。2002年11月、大阪市消防職員の鉄道事故現場での死亡事故、別府市火災現場での死亡事故、神戸市の火災現場での複数の死傷者、さらには、公務上・外による自殺者の発生等、職場の労働安全衛生に関わる事故・事件が発生しています。

広域消防行政が開始されてから30年が経過し、職員の高齢化が進んでいる背景もあり、循環器系等の疾病に対する対策が求められています。また、近年のストレス社会を背景にしたPTSD(心的外傷後ストレス障害)・CIS(非常事態ストレス)などメンタルヘルス対策の充実にむけた取り組みも求められています。

全消協は、このような事故・事件発生の背景として、全国の多くの消防職場の労働環境が深夜を含む24時間という長時間にわたる拘束勤務制度も大きな要因と考えています。

大星ビル管理事件は、2002年2月の最高裁判決を受けて、2003年2月に和解が成立しました。このことから、労働時間とは「指揮命令下にある時間は、仮に具体的な実作業を行なっていなくても労働時間である。」ということが、判例となりました。民間労働者と私たち公務員労働者との立場の違いがあり一律に論じることはできませんが、私たちにとって画期的かつ有利な判決と言えます。

高知県消協は、2003年4月、「高知県消協無賃金拘束時間問題対策委員会」を立ち上げ、学習を深めていく取り組みを始めています。

今後、各地でこのような動きが予想されることから、全消協においては、今まで以上の活発な学習など取り組みを強めていかなければなりません。

雇用と年金の連携のために発足した高齢者再任用制度は、2001年4月からスタートし、私たち消防職場も、6年遅れの2007年4月から始まります。消防職場のみでの再任用職域確保の困難さがあるため、早急な試行・受け入れ体制等の諸準備をする必要があります。全消協は、自治労との連携を強めながら、実効ある制度の確立にむけて努めていきます。

私たち全消協に結集している会員は、今まで以上に危機感を持ち、全消協運動に取り組むことが求められています。

全消協は、成長を遂げている組織力と蓄積された運動の実績をもって、大きなうねりとなって動いている社会情勢に流されることなく、さらに飛躍しなければなりません。そのために、全消協は次の課題を重点に掲げ、運動の強化と拡大を進めていきます。

第1に、団結権獲得に向け、連合・自治労との連携をさらに強化します。
第2に、消防職員委員会制度の民主的運営に取り組み、実効性を確立します。
第3に、未組織消防職員の自主組織づくりを支援し、3万人体制の早期実現をめざします。
第4に、会員の交流・参画を通じて、魅力ある全消協づくりと組織強化を推し進めます。
第5に、労働条件、職場環境の改善にむけた取り組みを推し進めます。
第6に、地域住民と連携し、消防職員の提言による消防行政の改善を推し進めます。

2.消防職員をとりまく情勢と活動の基本的方向

(1) 「公務員制度改革大綱」について政府は、2001年6月のILO総会での「関係職員団体との誠実な交渉・協議に基づき検討する」との国際公約を反故にして決定しました。内容についても、「労働基本権については現行の制約を維持」する一方、代償制度である人事院の役割を大幅に縮小し、各府省の人事管理権限を強化し、「信賞必罰」の考えに基づく能力・実績主義の新人事制度の導入をはかろうとしています。さらに、「キャリア制度」「天下り人事」の廃止には全く手をつけないなど国民が求める民主的な公務員制度改革といえるものではありません。

 政府は2001年12月に「公務員制度改革大綱」において、国家公務員法・地方公務員法の改正作業を進め、2003年度中に国会に改正法案を上程するとの方針を示しました。しかしながら、2002年2月、連合および連合官公部門連絡会は、日本政府が進める公務員制度改革が結社の自由などILOの諸原則違反状況をさらに悪化させるとして、ILO結社の自由委員会に提訴(2177号事件)しました。この提訴を受けて、2002年11月21日、ILO理事会では、結社の自由委員会第329次報告が採択され、日本政府に対し、労働側の主張に沿った画期的な勧告が示されました。

勧告では、公務員に対する労働基本権の制約を維持すると公表された意図の再検討を求めるとともに、とりわけ消防職員の団結権問題については、「消防職員委員会制度は日本政府が主張しているようには円滑に機能していない。肝心なことは、日本の消防職員は団結する自由を持たず、かれらを代表する組織は団結権を求め続けているということである。日本政府は法制度を変更して消防職員に自らの選択による団体を設立することが出来るようすべきであると要請する」と言及しています。さらに、2003年の第91回ILO総会を受けて、6月20日、ILO理事会では、「結社の自由委員会第331次報告」が採択され、再度日本政府に対して、2002年11月の前回の勧告内容について、さらに強い調子で実施するよう求めています。

一方、政府は、ILO勧告の内容を反映させることなく、公務員制度改革関連法案を国会に上程しようとしていますが、実現には至っていません。

これは、2002年3月のILO訪問および公務員制度改革1000万人署名をはじめとする連合・自治労と連携した国内外における粘り強い取り組みによる成果であり、今後の運動のさらなる前進をはかるうえで再確認する必要があります。

国内外を問わず、日本の消防職員の団結権保障をはじめとする公務員労働者の労働基本権問題に対する支援の輪が広がっています。全消協は、連合・自治労と連携して、公務員労働者共通の目標である労働基本権の確立を前提とした民主的な公務員制度の実現をめざして、1,000万人を目標とした「透明で民主的な公務員制度改革を求める請願署名」で示した運動力量を維持・強化しつつ、引き続き各種集会・中央行動への参加など取り組みを推し進める必要があります。

(2) 95年に消防組織法の一部が改正されすべての消防本部に「消防職員委員会制度」が導入されました。全消協は、消防職員委員会制度を、快適な職場環境の実現、安全や健康の確保、労働条件の改善など安全衛生委員会とともに、消防職場の問題解決の場として重要な制度として位置づけ、これを十分に活用するための取り組みを進めてきました。しかし、全国の消防本部では、いまだに制度を理解しない使用者も多く、消防職員委員会が開催されていないところも多くあり、非民主的な運営が行われているケースもあります。このことは、2003年1月8日、消防庁からの「消防職員委員会の運営に関する留意事項について」との通知の中で、委員会を開催していない消防本部の存在と制度が円滑に運用されていない現状に関して各消防本部に改善を求めていることから明らかです。

 一方、全消協では、消防職員委員会の運営実態について2002年2月、加盟単協、未組織職場を対象に調査を行い、482消防職場からアンケートの回答を得ました。職場における問題に対して具体的に改善された件数が、加盟単協のある職場では1999年時点で130職場中333件、未組織職場では352職場中494件と一職場当たりの件数は約2倍の差があることがアンケートの結果より明らかとなっています。調査結果が示すように、非民主的な運営と審議結果を具体化させる拘束力がないことなどの制度的問題点を改善し、実効性を高める必要があります。そのためには、各地域における消防職員委員会の効果的な運営にむけた各単協の取り組みに関して社会全般にアピールするとともに、全消協結集による自主組織結成の有効性と必要性を改めて証明するなど団結権が保障される社会環境をつくる必要があります。

(3) 消防職員の団結権問題について全消協は、消防職員委員会制度を団結権獲得への過渡的な措置として受け止め、この8年間民主的運用に努めて来ましたが、全国のそれぞれの消防本部においては運営方法や制度的に多くの問題が生じています。

 日本政府は、95年ILO総会において「消防職員の団結権に関しては、さらに近い将来において関係者間で論議されるものと考える」と表明しました。さらに2001年6月、2002年4月にも総務大臣は参議院総務委員会で「国民のコンセンサスの推移に応じて消防職員の団結権について議論することは一向に差し支えない」と答弁しました。

2002年3月に全消協はILOに代表を派遣し、2003年6月のILO第91回総会で「日本の消防職員の団結権問題」が取り上げられるよう要請しました。その一週間前に、連合と連合官公部門連絡会は、日本政府が進める公務員制度改革が結社の自由などのILO諸原則違反状況をさらに悪化させるとして、ILO結社の自由委員会に提訴(2177号事件)しました。全消協としても、自治労・連合を通じて、日本政府の結社の自由違反についての提訴に関する追加情報の追加資料「日本の消防職員の団結権と消防職員委員会について」のなかで、意見反映を行いました。この結果、2002年11月21日、ILO理事会は、日本政府に対し、消防職員の団結権保障をはじめとする労働側の主張に沿った画期的な勧告を行いました。さらに、2003年6月のILO結社の自由委員会第331次報告では、改めて前回の勧告内容の履行を強い調子で求めています。

私たちは、未組織消防職員の全消協結集を通じて、政府への発言力を高めるとともに、連合・自治労との連携によって、消防職員委員会制度の運営状況に関するILOへの報告や民主的な公務員制度改革実現にむけた取り組みなどを通じて、団結権獲得のための環境整備をはかる必要があります。

2003年2月、団結権の保障による消防行政の民主化と消防職員の諸権利の確立を通じた職場環境の改善をはかるため、全消協・自治労の働きかけによって、「民主党消防政策議員懇談会」が設置されました。2003年11月に行われた衆議院議員選挙を経て会員数も増加し、2004年2月24日参議院会館で行われた第2回総会には、米田会長はじめ四役が自治労本部書記長らとともに参加する中、衆議院議員78名、参議院議員33名の消防協力議員団が活動しています。国政の場において、消防職場の抱える諸課題に関する共通認識を得るとともに、諸課題の解決にむけた取り組みを促進させることによって、団結権問題の解決をめざしていきます。

(4) 全消協は、77年8月、長崎市の出島会館において結成され、全国の消防職員の生活と権利の向上、自主組織運動の相互交流、明るい魅力ある職場づくり、消防行政の改善、団結権の獲得をめざしています。また、すべての消防職員が、自立した活動ができるための支援や連帯の輪を拡げるための運動を行っている組織です。

 結成当初は36組織2,500人にすぎませんでしたが、「職場で様々な問題を抱えている全国の消防職場の仲間に、私たちとともに行動を起こしてほしい」と考え20数年間運動してきた結果、現在では187組織12,097人を超える組織になっています。

特に、結成当初からの課題である団結権の獲得のために、ともに行動する仲間を一人でも多く結集し、当面の目標である3万人体制を早期に実現し、問題解決への国内世論形成の原動力につなげるため、組織拡大にむけた取り組みを積極的に展開しています。

その一つとして、団結権問題解決へのステップとして位置づけられている消防職員委員会制度を機能・定着させるため、未組織職場に自主組織(消防職員協議会)結成が必要と訴えてきました。

しかしながら、2002年1~2月、全消協と自治労合同で全消防本部を対象に実施した消防職員委員会の運営に関する実態調査では、未組織の消防職場で消防職員委員会の機能が十分果たされていないこと、また全国にある消防職員協議会の存在を知らない消防職員が多数存在することが改めて認識させられました。全国の消防職員に全消協の活動を紹介する一環として、全消協版「組織拡大リーフレット」と「消防職場改善事例集」を作成するとともに、自治労と連携して学習会の開催や公務員制度改革1000万人署名活動など幅広い取り組みを行ってきました。

その結果、この1年間では8組織362人の組織拡大となっています。また、毎年開催している組織強化拡大対策委員会では、各地域の取り組みを踏まえた組織拡大のための有効な手段について議論・総括し、地域に合致したきめ細かな運動の展開がはかられています。

2002年8月、第26回定期総会では、これまでの組織強化拡大対策委員会などの議論を踏まえ、組織強化拡大5ヵ年計画を決定しました。また、2003年1月の組織強化拡大対策委員会では、組織強化拡大5ヵ年計画に関する具体的推進体制を確立し、組織全体で組織強化拡大に取り組むことを確認しました。

組織強化拡大には、全消協組織全体の取り組みとあわせて自治労の協力が不可欠です。全消協幹事会は、自治労主催の「消防セミナー」、「消防対策県本部・重点単組担当者会議」に参加し、未組織消防職場での消防職員委員会制度の詳細な点検など組織拡大への協力を要請してきました。また、協力要請とあわせて、自治労各県本部との連携のもと、定期的に組織強化拡大対策委員会を開催し、各県の実情に応じて組織強化拡大アクションプログラムなど具体的行動計画を作成するとともに、その計画に基づいて、未組織職場に対して全消協結集を働きかけることが必要です。

さらに、急速に進む市町村合併に対しては、直面する単協の賃金労働条件などの実態調査を通じて現状を把握するとともに、自治労各県本部市町村合併対策委員会への働きかけを通じて、自治体当局への意見反映を行うことが必要です。このように市町村合併を契機として、未組織職場に対して自主組織結成の利点を最大限アピールし、組織拡大を強力に推し進める必要があります。

未組織消防本部の職員に対しては、自治労との連携のもと全消協に参画している会員自らが力と知恵を結集し、消防職員が主体的に行動できる自主組織を結成することの重要性について呼びかけることが、働きがいのある職場づくりにつながるものと考えます。

(5) 組織の強化は、組織拡大とともに消防協運動の大きな柱です。組織が拡大しても全消協自身に力強い運動を進めていく体制がなければ、消防協運動への魅力が失われることになります。

 今後さらに全消協が発展し、永年の課題である団結権の獲得をめざして活動を行っていくためには、組織拡大とともに、単協自身が社会情勢を十分に認識しながら、住民に密着し、信頼される組織に変わっていくことが重要となっています。団結権獲得後の全消協の活動も視野に入れながら、活動しなければなりません。

一方で、団塊の世代の大量退職による会員の減少や新入職員をはじめとする未加入問題などが危惧されます。各単協の運動の後継者育成については、喫緊の課題であるとの認識を持つ必要があります。

全消協は、会員の力と知恵を結集することによって、活力を得られる組織です。組織を強化するには、人的資源を生かして地域社会に共感を得られる運動を単協内外に積極的に発信するなど会員にとって魅力ある運動を展開し、会員の参加意欲を高めることが不可欠です。また、社会の急激な変化を鋭敏に察知し、運動が継承・発展されるよう組織の改革と充実をはかるなど環境整備に努める必要があります。

(6) 労働時間や賃金に関する問題は労働者にとって、最も基本的なものです。消防はその業務の性格上、24時間フルタイムでサービスを提供することが社会的にも要請されていることから、全国ほとんどの職場で一昼夜交替勤務制が採用されています。この勤務制は、消防職員の団結権が否認され続けるなか、労働基準法の重要な部分である休憩時間の基本原則が適用除外されていること、休憩時間に上限設定がないということといった条件のもとで成り立っています。

 私たちは、消防職場における無賃金拘束時間の解消の実現にむけて、時短の推進、諸休暇・休業制度などの諸権利行使が実質保障される職場環境を確立することが必要です。

全消協は毎年加盟単協に実施している労働条件基本調査等の取り組みを通じて、1.長時間の無賃金拘束が存在する勤務制、2.変形労働時間制の期間を無視した勤務サイクル、3.制度を無視した振替制の濫用などの職場実態について明らかにしてきました。そして、その結果をもとに、無賃金拘束時間の解消にむけて、隔日勤務制からの脱却や深夜を含む労働の総量規制の新設を求めることなどの各職場に合った運動の方向性についての提起を行ってきました。

2002年2月28日の「大星ビル管理事件」最高裁判決では、「何事もなければ眠っていることができる時間帯といっても、労働からの解放が保障された休憩時間であるということは到底できず、本件仮眠時間は実作業のない時間も含め、全体として指揮命令下にある労働時間というべきである。」との判断が示されました。

2000年「三菱重工業長崎造船所事件」最高裁判決、2001年「関西警備保障事件」大阪地裁などでも同様の趣旨の判決がされています。

2002年3月、全消協は代表をILOの派遣とあわせて、ヨーロッパ(フランス・イギリス・ドイツ)消防行政実態調査を実施しました。調査の結果、イギリス・ドイツの消防職員の労働時間についても同様に取り扱われていることが明らかになりました。

全消協は2003年1月に開催された公共緊急サービスに関する合同会議に参加しました。会議で採択された≪公共緊急サービスを取り巻く環境が変化するなかでの社会的対話に関するガイドライン≫には、「勤務中の公共緊急サービス労働者の休息時間(待機する時間という訳もある)は労働時間として勘定されるべきである。」と示されています。しかしながら、総務省消防庁は2003年4月1日の参議院総務委員会において「消防職場においては、指令係員を配置し休憩時間の出動に備える一方、労働基準法第33条3項で定めるように民間企業とは実態が異なる」との見解に終始し、現行の休憩時間の長さを含む法規制を改正する動きは見せていません。

法改正を待つのではなく、無賃金拘束時間の労働時間性が高いということを実証したうえで拘束時間が労働時間であるという主張を行い、1.隔日勤務制からの脱却や地域に応じた別の交替勤務制等への移行、2.長時間拘束勤務に対する特殊勤務手当等の支給、3.仮眠休憩時における出動実態調査の実施による勤務状況の分析などを通じた多様な取り組みによって、労働時間の短縮・諸手当支給を実現する必要があります。また、政府・自治体当局・人事委員会・公平委員会などへの対策、国会、司法対策をはかるなどあらゆる取り組みを講じる必要があります。

毎日勤務者のサービス残業については、地方財政危機、地方経済の冷え込みを背景として、地方公務員も超過勤務手当の縮減などの人件費が削減される厳しい状況を受けて、消防職場においてもサービス残業が行われています。恒常的なサービス残業が行われている職場については、時間外勤務の縮減を求めるとともに、正規の超過勤務手当が支給されるよう取り組みを強める必要があります。

現在、全国的に市町村合併が推し進められています。私たちは、法定合併協議会および各自治体当局に対しては、合併時における新市町村建設計画の中に、合併による消防の広域再編による賃金・労働条件について明確に取り扱われるよう関係自治労単組と緊密に連携しながら意見反映を行う必要があります。あわせて、合併後の賃金・労働条件の水準については、関係市町村の高位平準化をめざします。

2010年前後には一部事務組合発足当時の採用者が定年退職の時期を迎えるなど、退職者が一時的に増大することへの対応のため、職員の計画的前倒し採用が各地の職場で取り組まれ始めています。他方、女性職員の採用については、消防白書・消防現勢調査などによると、2002年4月1日現在、全国の消防職員154,487人中、女性職員は1,613人(1.04%)に過ぎません。

一方、賃金の問題点については、行政職給料表を採用している消防職場という職務の特殊性から、ほかの行政職に比べ1~2号の初任給上位格付けが行われているところも存在しています。しかし、このようなところでも、昇格運用制度が不十分な職場も見られ、厳然とした階級制度があるために将来にわたってその保障が得られていません。

また、組合消防においては、構成自治体の違いによる職員の身分の違いや賃金格差も存在しています。消防職員の賃金について、消防業務の特殊性を考慮した基本賃金のあり方、中途採用者の前歴換算・年齢別最低保障制度などを含め、昇給・昇格について研究を進めていく必要があります。一部事務組合職員の身分保障の取り扱いについては、2003年3月25日の参議院総務委員会で「合併特例法第9条第1項の趣旨を踏まえて対応することが望ましい。」との政府答弁を活用し、関係自治労単組と連携のうえ不利益を被ることのないよう取り組みを進める必要があります。

(7) 満額年金支給開始年齢の引き上げ措置と高齢者再任用制度の導入は、日本の人口構造が急激な勢いで少子・高齢社会へと突入し、また、年金財政が逼迫するなかで、高齢者の高い就労意欲と知識や経験を活かすことによって、希望すれば65歳まで働けるような社会に切り替え、活力ある社会構造を維持・発展させるためのものでした。

 ところが、少子・高齢社会化と同時に長引く不況により、若年層雇用の悪化が進み年金制度自体が破綻するという事態が訪れようとしています。2004年6月、年金制度改革法案が与党の強行採決により可決されましたが、内容は決して納得のいくものではありません。我々自治体職員も同様に将来の見通しが明るいとは言えなくなりました。

消防職場では、年金の支給年齢の引き上げが6年遅く(司令長以上は一般行政職と同じ扱い)なるものの、制度発足と同時に試行、受け入れ体制を確立していかなければなりません。しかし、消防における組織や職域、業務などの実態から再任用制度導入に対して多くの問題を抱えています。

また、一方で総務省消防庁の考えている消防職員の65歳定年延長について注視していく必要があります。

全消協では災害現場で活動することが大半を占める消防職場において、65歳まで第一線の災害現場で活動することが可能なのか(フルタイム、パートタイムを含め)、高齢職員が長年培ってきた経験を生かせる職種にはどのようなものがあるか、ほかの職種への配置転換は可能なのか、などといった課題について検討を重ね、2002年の制度施行と同時に、消防職場における受け入れ体制を確立するための運動を展開してきました。

各地において、関係団体・部門との間で交流し、再任用についての準備や消防職員委員会などを通じてプロジェクトをつくるなどの取り組みを行い、制度を円滑に運営できるよう活動をしているところもあります。

全消協の2003年度労働条件等調査結果では、高齢者再任用制度を円滑に活用するといっても、まだ手つかずとなっている組織もあり、年金制度改正の動向などに関する情報提供を通じて今後も取り組みを強化する必要があるといえます。

(8) 職場における公務災害の発生割合は、その職務の特殊性から他の職場と比較しても高いといえます。なかでも、本来十分な安全管理のもとで行われるべき訓練時において、火災時の負傷者数を上回る現象がここ数年続いています。そうしたなか、2003年度には消火活動中や救急活動中に職員が殉職をするといった災害も多発しています。これでは、職員の安全意識や安全を守るための装備・施設が十分であるとは決して言えません。

 全消協の2003年度労働条件など基本調査によると、そのほとんどの職場に安全と衛生に関する条例・規則はあるものの、十分に機能をしていない職場が多く見られます。また、6ヵ月ごとに実施すべき深夜業務従事者の定期健康診断についても、完全実施がされていないという状況がいまだ約半数の職場に見られます。私たちの「いのちと健康」を守るためには、執務環境や生活環境は勿論のこと、訓練内容や災害現場活動の実態を再点検し、安全・健康対策の具体的な改善と実現を求めていく必要があります。そのためには、安全衛生委員会を活用した運動に取り組む必要があり、また委員会の設置がされていない職場においても、まずは安全衛生推進者を中心とする安全衛生対策協議会を設置するなどの積極的な取り組みが求められます。

一方、近年の社会構造の変化は、当然のことながら消防の業務内容にも様々な影響を与えています。最近では、過去に類を見ない凶悪な犯罪が多発するなど、人々の多くが心にストレスを抱えているといえます。そうしたなか、消防職場においても、ストレスによる心筋梗塞などの循環器系の疾患、脳出血などの脳血管障害のほか、業務に起因すると思われる自殺者も、ここ数年間に複数件発生していることが明らかな数字となり表れています。労働安全衛生活動のなかでも、CIS(非常事態ストレス)対策など、メンタルヘルスに対する取り組みが早急な課題となっています。全消協は、現状分析と今後の対応策をはかるため、2003年3月に、会員を対象とした「消防職員のメンタルヘルスに関するアンケート」を実施しました。その調査報告から、当初、CISでは、消防・救急でストレスが大きいと考えられていましたが、通信勤務いわゆる指令課員のストレスが大きく、相手(住民)が見えないなか、声だけで火災・救急などの災害対応をしなければなりません。さらには救急の高度化に伴い、CPRや救急手当等の口頭指導や複雑化する災害対応が背景にあると考えられています。また、自覚症状として、「判断力、思考力が低下している」、「普段よりイライラしている」、「夜よく眠れない」 「理由もなく疲れる」という項目のどの業務も共通して高く、PTSD、CISといった問題も大きいが、日常業務のなかで受けるストレスも見逃すことが出来ません。今後さらなる普及啓発活動に取り組みます。

現在の女性消防職員の全体に対する構成割合は約1%ですが、今後全国的にも採用が進むと予想されます。そうしたなか、執務環境については、これまでのように男性を中心とした環境整備だけでは不十分といえます。男女がともに協力し合い、消防業務の質を高めていくとともに、一方で性別を考慮した施設の整備が必要です。

このように、私たちの職場には、「災害現場活動や日常業務においていかにして職員の心と体の健康を守っていくのか」「環境改善をどのように実現していくのか」といった労働安全衛生に関する課題が数多く存在しています。したがって、すべての消防職員が、自分達の「いのちと健康」を守ることができる職場環境づくりのために、具体的な対策の提起と実現を求める運動を展開していく必要があります。

(9) 消防救急は、住民生活に必要不可欠な公共サービスとして、その役割を担っています。救急に対する住民のニーズは年々高まり、救急出場件数の増大と救急業務の高度化がより一層明白になってきました。その一方で、さまざまな問題も浮き彫りとなってきています。

 1999年消防庁と厚生省(現・厚生労働省)による「病院前救護体制のあり方に関する検討会」では、増え続ける救急要請に対する救急隊員への対応策の一環として、搬送有料化の検討が始まりました。このことは救急隊員の労務管理上の観点から検討課題になったと推測されますが、「いつでも、どこでも、誰でも」が享受できる日本の救急サービスは住民生活に定着しています。しかしながら、安易に搬送有料化された場合、救急サービスの低下が必至であり、注視する必要があります。

救急救命士の救命処置拡大については、2001年秋田県で、5年間に1,500件を超える気管内挿管を救急救命士が行っていたことが明らかになり社会問題化しました。このような状況をうけて、2002年4月消防庁と厚生労働省は共同で「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を設置し、「救急救命士の処置範囲の拡大」について協議が重ねられてきました。その結果、2003年4月1日の救急救命士法施行規則改正により、救急救命士は包括的指示下での除細動の実施が認められました。しかし、実施にあたっては地域におけるメディカル・コントロール体制が確立し、事後検証体制が整った条件が必要で、地域によってはその立ち上げに苦慮し、従来通りの活動を強いられているところもあります。さらに、気管挿管については、講習内容等が2003年中に策定され、2004年早々から講習が行われていますが、医療機関での実習が必要かつ重要でありながら、実習先となる医療機関の確保が十分でない状況があります。薬剤投与については、2003年12月「救急救命士による特定行為の再検討に関する研究・救急救命士による薬剤投与における安全性・有効性に関する研究報告」で研究・検証を実施し、その結果を得て、早期実施を目指すとありますが、現場で働く救急救命士においては、薬剤投与の情報不足が否めません。

そして、今後、救命処置拡大の範囲やそれにともなう専門教育・研修時間増加による勤務人員の不足、処置に対する責任問題など課題が山積するなか、救命に対する住民のニーズを踏まえつつ、現行法制度の整備をはじめ解決にむけた取り組みが求められています。地域医療機関と消防救急の連携はなくてはならないものです。特にメディカル・コントロール体制の強化をはかるうえで、地域格差、専門教育・研修受入病院の体制、救急医確保の困難が挙げられ、消防機関が医療機関・地域医師会と良好な関係を構築し、傷病者の側に立った救急医療が展開できる体制作りが必要です。

 感染症(SARSなど)、自然災害ならびにテロによる生物化学兵器の危険が増し、住民生活を脅かす事案に対応するため、有事に備えた動きが活発化するなか、消防救急として危機管理対策が迫られております。感染防護対策の策定、感染防護資器材の充実・強化が重要となります。

精神科救急は、搬送先医療機関選定の困難や所要時間の長期化により、傷病者・関係者・救急隊のそれぞれに負担が強いられることなどから、搬送に際しての保健所・警察との連携、精神科救急医療の24時間対応など総合的な精神科救急医療体制の充実・強化が必要です。

一方、少子社会の影響で小児科救急医療が後退傾向にありますが、疾患・外傷による小児科救急要請は数多く存在し、小児科救急医療体制の充実・強化が必要です。

消防救急では、救急隊員の専従化は、都市部を除き、消防隊員と兼務するなど専従化は低迷を辿っています。さらに救急隊員の専門教育・研修期間の長期化により慢性的な人員不足が問題となっており、救急隊員の増員をはからなければなりません。

全消協では、消防救急の問題点を明らかにしながら、救急救命士制度の効果的な運用と救急隊員の質的向上をめざして専従化、救急医・指導医の確保など救急医療に関する環境整備について関係各省庁に対して働きかける必要があります。

傷病者の救命率を向上し、傷病者が元の生活を送ることが出来る社会復帰率を高めるためには、住民による救命の手当が重要であり、住民に対する救命講習会の普及啓発は必要とされています。住民からバトンを受けた消防救急は医療機関へバトンを渡すまでに果たす役割は大きく、救急医療体制の充実にむけた取り組みが一層重要となります。

(10) 自治体消防は、70年代に入ってから、自治省(現・総務省)消防庁の指導により、単独で消防本部を持てないところに一部事務組合方式および広域連合の消防本部を数多く設置することで、常備化が急速に進められてきました。2002年の消防白書では、山間部や離島にある町村の一部を除き、全国市町村の99.8%の住民が、消防行政のサービスを受けているとしています。

しかし、同時に消防行政の広域化・常備化は、制度・運営・人事・財政などにおいて、さまざまな問題を生み出してきています。

94年に動き出した消防の「広域再編計画」は、小規模消防本部を、周辺の消防本部と再編しながら強化をはかることを目的としています。総務省消防庁は、この広域再編計画は消防行政の効率性、すなわち「火災等の災害の頻度と消防に対する投資とが全体として均衡のとれる地域と規模に再編成する」としてとらえています。消防行政に、災害発生頻度とそれに対する投資とのバランスが必要であるとして、火災や救急などの災害事案が少ない市町村を周辺自治体とセットした形で担わそうとしています。

総務省消防庁は、2001年3月には、一部事務組合や広域連合について「一般的に責任の明確性、意思決定の迅速性、人材確保等の観点から問題もあり」とするとともに、小規模消防本部の広域再編については、「最も効果的な方法は市町村合併によることであると考えられ」、今後の広域再編にあたっては「市町村合併の推進との整合性」が必要であるとしています。

総務省は2002年3月に合併特例法の期限(2005年3月)にあわせて、2003年度中に「合併重点支援地域の指定」の拡大と「法定合併協議会の設置」を求める「市町村合併の協議の進展を踏まえた今後の取組(指針)」を通知しました。また、2003年6月には第27次地方制度調査会の中間報告では、一定規模の目標人口規模に基づいて基礎自治体を再編成する(中間報告では明示について両論併記)との方向性が示されました。

また、2002年12月に「新時代にふさわしい常備消防体制の在り方研究会」の最終報告が出され、市町村合併と共同処理方式の総合的な活用として、「合併後の市町村の間において共同処理を検討すべきである」としています。

 2003年10月に総務省消防庁が各都道府県知事宛てに「市町村合併に伴う消防本部の広域再編の推進について」通知を出し、管轄人口が概ね10万人以上となることを基本として、合併後の市町村が単一で消防本部などを設置することなどにより、結果として従来の消防本部より一層の小規模化を招くことは適当でないとし、共同処理方式を活用した広域化を推進していく必要があるとしています。

現行の事務組合方式を継続した広域再編化は、消防行政の内容がより見えにくくなり、住民との距離を隔てるものといえます。小規模消防の対応力を強化するには、安易な広域再編では根本的解決にはなりません。

このように、必然性の有無を問わない市町村合併によってそれらが解決するとは考えられません。一部事務組合・広域連合にしても、合併にしても、行政の広域化の是非は、住民の人口動向・生活圏・地形・交通などの事情による広域化の必要性の有無が明らかにされ、住民の自主的な意志に基づいて判断される必要があります。そして、現に存する広域消防にあっては、各構成自治体の消防責任を明確にさせたうえで、消防の業務内容や実態を住民に公表するなど透明性を向上させる必要があります。さらに、地域実情に合った消防サービスのあり方について、自治労との連携を通じて、合併協議会で協議されるように求めていかなければなりません。

一方、2003年通常国会において、消防法・消防組織法の一部改正案の成立にともない常備消防の設置義務制度・救急業務の実施義務制度(政令指定)が廃止されたことによって、今後、小規模町村において消防サービスの低下が懸念されます。

全消協では、90年5月のILO「消防職員の雇用および労働条件に関する合同会議」の結論である「消防事業はその他の公共サービスと同様に……経費削減によって地域社会全体、あるいは一部から必要な保護を奪ったり、また、あまりに広範囲を担当しすぎたり、人員が少なすぎたりして、消防士自身の生命をより大きな危険に置くようなことがあってはならない」との指摘を基本に、消防庁に対して、

(1) 広域再編を進めるにあたっては、不必要な広域化は進めるべきでないこと

(2) 住民サービスが現状より低下しないこと

(3) 職員の削減や労働条件の悪化をともなわないこと

といった事項について、自治労を通じ、申し入れを行ってきました。

2003年1月に開催されたILO「公共緊急サービス部門合同会議」においては、「使用者と労働者そして住民による効果的な社会的対話のメカニズムは、公共緊急サービスの提供におけるあらゆるニーズと制約に関する重要な決定に関して、関係者全員の意見表明を確保する重要な手段である。」との理念に基づくガイドラインが採択されました。

私たちは、これらの情勢を十分に認識したうえで、消防行政を担う私たち消防職員自身が、社会的使命を実感でき、そして働きがいのある消防職場にしていくためには、消防の広域化問題に主体的に対応していく必要があります。

(11) 少子高齢社会・分権型行政への移行、多様化する住民ニーズの変化により消防行政には、火災・救急・救助といった従来の災害対応型の活動内容に加えて、よりきめの細かい効率のよいサービスが求められるようになってきました。消防機関は、24時間フルタイム稼動の体制を活かし、住民のもっとも身近にあって安全と安心を提供している行政機関のひとつです。地域に暮らす住民の拠り所であり、急激に変化する社会情勢や住民ニーズの多様化に的確に対応できる機関として、従来の固定観念にとらわれない「地域安全・安心センター」構想を、全消協は94年度全国懇談会(現研究集会)において提起し、その実現に取り組んできました。

 「地域安全・安心センター」は、現行の消防力で、できることを実施していくということだけにこだわらず、未来の消防行政の姿を考えるものです。これを実現するためには、地域の実情に応じ、住民の視点に立って考えるとともに、地域の行政機関はもとより福祉・保健・医療機関などと連携を強化し、総合的に情報やサービスを提供できる行政機関をめざしていくことが必要です。

広域再編・地域の財政危機などの理由により、市町村消防の原則が消防事務の委託などによって崩れるのではないかという危機感を感じている単協があります。そこに消防本部が必要か否かを決めるのは、各自治体当局ではなくその地域に暮らす住民でなければなりません。住民ニーズを調査することも含め、アンケートを実施しようとする先進的な単協があります。このようなデータ結果を組織全体で共有化し、研究することで消防サービスの改善をめざします。

(12) 新時代にふさわしい常備消防体制の在り方研究会の議論を踏まえて、第156回通常国会において消防法・消防組織法の一部改正案が可決・成立しました。消防庁に対しては、同研究会の協議過程において、自治労とともに私たちの立場から常備消防体制のあり方について、次の項目について要請を行いました。

  (1) 市町村消防の充実・強化
(2) 通常の消防防災事務を充実・強化するための執行体制
(3) 大規模・特殊災害発生時における消防防災体制
(4) 消防防災分野における幅広い人材育成および民間組織の活用

 今後も引き続き、地域のニーズに対応できる常備消防体制の実現にむけて、的確な課題認識を持つとともに、政府・自治体当局に対してさらなる市町村消防への充実・強化がはかられるよう求めていきます。

 また、消防無線のデジタル化をはじめとする消防情報処理システムについては、総務省消防庁のIT化推進計画に基づき、2003年度からの3ヵ年で、各消防本部が行動計画を作成し提出することとなっています。これは、郵政事業庁の2011年を期限とする業務無線のデジタル化政策を前倒しして推し進めるものです。しかし、中小規模の消防本部では、多大な費用を投じてのデジタル化導入を求めていないところも多くあります。国の施策として業務無線のデジタル化を推し進め、緊急援助隊の相互の連絡、災害情報の収集にデジタル化を活用するのであれば、当然、国が費用負担をすべきです。災害時に一番不安になって、各種の情報を必要としているのは、被災住民であり、収集した災害情報をリアルタイムで住民に提供できるシステムづくりが必要です。以上のような認識にたって、業務無線のデジタル化についても国と地方が協議し、実施の有無について決定するとともに、今までのような補助金という形でなく、国・市町村相互対等の立場からの財政負担を行うことが求められます。

全消協消防総合研究委員会は、「消防職場のQ&A労働安全衛生編」を発刊しました。今後も消防に関する多種多様な問題の解説をQ&A方式のブックレットとして随時発刊していきます。消防職場独自の「なぜ?」がまとめてあり、運動の支援になると考えます。また、消防行政に関わる諸問題の調査・研究も進めています。

3. 具体的活動方針

(1) 公務員制度改革

1. 連合・自治労・公務員連絡会と連携を強化し、労働基本権の確立を前提とした公務員制度改革の実現にむけて取り組みを強化します。
2. 公務員制度改革に関する情報を収集し、会員に対して情報提供を行います。

(2) 消防職員委員会制度

1. 委員会の民主的な運営を求めるとともに、問題点を抽出し、自治労を通じて、関係省庁・全国消防長会などへ働きかけます。
2. 公務員制度改革に関する情報を収集し、会員に対して情報提供を行います。
3. 円滑な委員会運営のため、多くの単協会員を委員に選出します。
4. 会員の意見を集約し、効果的に提出し、審議する体制を整えます。
5. 委員会の開催時期は、審議結果を予算に反映できるよう求めます。
6. 全消防本部の委員会活動状況を把握し、情報交流をはかるとともに、「審議対象外」とされた提出意見への対応策など共通した課題に取り組みます。
7. 委員会での審議結果を、消防当局だけでなく単組などを通じ首長部局にも働きかけ、その実現を求めます。
8. 単協と当局との話し合いの場を併存することを求めます。

(3) 団結権の獲得

1. 消防職員の処遇や消防行政のあり方などについて、全消協が消防庁・全国消防長会などと意見交換できるような環境づくりに努めます。
2. PSI(国際公務労連)をはじめ、諸外国の消防労働組合との交流を通じ、国際支援の輪の拡大や世論形成をはかります。
3. 「民主党消防政策議員懇談会」をはじめとする国会議員に対して、問題意識の共有化と法改正にむけた取り組みをはかるよう働きかけを強化します。
4. 各地においても、県・自治体・消防長会・地方議員などとの話し合いを進めます。
5. 連合・自治労・公務員連絡会と連携をさらに強化します。
6. ILOに報告できるよう、未組織を含めて、これまでの消防職員委員会制度の実態を継続して調査します。

(4) 組織拡大

1. 組織強化拡大5ヵ年計画に基づき、次のことに取り組みます。
組織強化拡大第5ヵ年計画に基づき運動展開をはかります。(P.364~382参照)
全消協は、各県に全消協全国組織強化拡大対策委員を置き、年1回組織強化拡大対策委員会を開催します。
各県単位においては、2ヵ月に1回組織強化拡大対策委員会を開催し、自治労県本部の消防対策担当者とともに、組織化にむけた取り組みを検証し、具体的対応の強化をはかります。
全消協の中期的目標として全国消防職員の過半数に置き、各県に組織強化拡大対策委員会を設置し、組織強化拡大アクションプログラムに基づき、組織強化拡大対策委員のもとに具体的行動を推進し、当面3万人体制をめざします。
全消協のコンセプトをより明確にし、広報紙・インターネットなどを通じて未組織職場へのアピールを強化します。
未組織職場に対して、全消協や各地域で開催される交流会、学習会、セミナーへの参加を呼びかけます。
消防職員委員会の運営実態に関する調査を継続し、自主組織の必要性を未組織職場へ呼びかけます。
1県1組織の結成にむけ、重点消防本部を選定し、空白県解消の取り組みを強化します。
1県1組織のところについては、全消協幹事、組織強化拡大対策委員が組織化にむけた取り組みを推進します。また、必要に応じて、当該ブロック内の隣接県の組織強化拡大対策委員についても積極的に組織化にむけた取り組みの支援を積極的に行います。
各単協が未組織・未加入の消防職員を対象として、個別に組織拡大リーフレットとともに地域にあった広報物などの配布ができるよう推進します。
政令指定都市については、自治労の大都市共闘に消防職員の組織化に関する集会・会合を開催するよう働きかけます。
毎年組織拡大5ヵ年計画の実施状況について検証を行います。
2. 未組織職場の自治労市町村単組に対して、次のことを要請します。
単組に消防職員組織化対策委員会などを設置し機能化すること。
組合機関紙、各種ニュースなどを消防職場に配布すること。
単組が主催するスポーツ、レク活動に消防職員の参加を呼びかけること。
自治労組織と協力関係にある消防職場、あるいは、自主組織を結成しているところは、全消協への加入をめざすこと。
円滑な消防職員委員会の運営を促進するための消防職員への指導と、組織化を一本化して取り組むこと。
組織化にあたっては、地方議員の支援体制を確立すること。
自治労共済・労働金庫などの活用を推進すること。
全消協加盟が当面困難な職場については、全消協賛助会員制度を利用すること。
賛助会員=自主組織結成の意志のある消防職員3人以上を単位として、全消協に登録、情報の提供、組織化にむけての援助が受けられる。年会費1人3,000円。
賛助会員制度は、過渡的なものであるから、早期に自主組織結成の方策を講じることが求められる。
3. 自治労各県本部・地連に対して、次のことを要請します。
消防対策委員会などの設置と機能強化をはかること。
県消協の結成などを含め、県内消防職場の情報収集などについて積極的な取り組みを行うこと。
消防職員委員会の実態把握および円滑な運営のための県に対する窓口となること。
4. 市町村合併の対応をはかるため、次のことに取り組みます。
「市町村合併組織対策対象消防本部」の未組織消防職員に対して、組織化による当局への影響力をアピールし、100%組織化にむけて取り組みます。
市町村合併に関する現状把握と今後の効果的な対応をはかるため、市町村合併調査を行います。
市町村合併の対象となる消防本部の賃金労働条件や人員資機材に関する情報収集を行い、自治労各県本部市町村合併対策委員会の取り組みに参画できるよう体制整備をはかります。
5. 自治労の横断的組織とも連携強化をはかり、消防に関する情報提供と組織化に対する支援を求めます。

(5) 組織強化

1. 定期総会は事業内容の実効性を高めるため、「活動方針提起総会」と「活動方針補強総会」に区分し、隔年ごとに開催します。
2. 全消協は、各県に全消協全国組織強化拡大委員を置き、年1回組織強化拡大対策委員会を開催します。
3. 各県単位においては、2ヵ月に1回組織強化拡大対策委員会を開催します。
4. 全国消防職員研究集会を開催し、労働条件や消防行政、消防職員委員会、女性消防職員の労働環境などの取り組みについて、会員相互の情報交換や交流の場とします。
5. 労働講座については、全消協運動を進める上での基本的な学習の場と位置づけ、より適切な受講者層・プログラムにより引き続き複数回開催し、学習会への参加しやすい環境づくりに努めます。
6. 消防を取り巻く社会情勢の変化および高度情報化社会の進展に即応するため、広域行政問題・消防職員委員会・高齢者再任用問題・職場環境改善事例など単協活動の参考となる情報の提供・収集など情報機能のあり方について検討を行い、情報機能の整備と強化をめざします。
7. 組織規模、地域事情などにより、各単協で共有できる問題について解決にむけ情報交換を進めます。
8. ブロック連絡協議会は、各県消協・単協間の連絡調整などを行います。
9. 県消協は、県下単協の活動の推進をはかります。その機能強化のため、引き続き交付金として会費納入の5%還元を継続します。
10. オルグ・組織対策費として、各県単位ごとの組織強化・拡大活動の最低保障金額10万円と交付金相当額の合計金額を上限として財政負担を行います。
11. 新規加盟単協については、組織拡大委員が中心となって定期的に相談を受ける機会を設けるなどのフォローを行います。また、新規加盟単協の全消協加盟時の会費納入については、6ヵ月の猶予期間をおくこととします。
12. 単協の組織強化をはかるために、各単協は、次の取り組みを行います。
未加入者や新規採用者の組織加入を積極的に行い、組織の強化に努めます。
これからの時代を担う活動家の人材育成をしながら、幅広く各世代からの意見収集を行い、社会変化に対応できる組織づくりに努めます。
ほかの消防の仲間、自治労、関係団体との日常交流や情報交換を行うとともに、積極的に学習会の開催、参加をします。
消防行政問題や職場環境改善について研究し、問題点について消防当局とルールのある話し合いを確立することで単協の強化を促進するとともに、消防職員委員会の適正な運用を促します。
住民に対して、協議会活動について理解を広めるための活動を行います。
全消協主催の労働講座、研究集会などに積極的に参加し、活動家を養成します。
充実した活動を支えるため、安定した財政基盤の確立を求めます。

(6) 労働条件・職場環境の改善

<労働時間など>
1. 休憩時間特例のある現状をふまえ、無賃金拘束時間を解消するため、以下の取り組みを行います。
全消協として次の取り組みを強化します。
a 休憩時間に係る基本原則適用除外を定める労働基準法施行規則の見直しを求めるとともに、深夜を含む労働の総量と深夜勤務の回数規制を設けるよう求めます。
b 消防職員の仮眠休憩時間の出動実態調査を実施します。
c 調査結果については、加盟単協と逐一情報の共有化をはかれるよう努めます。
d 自治労と連携して、自治労委員長と総務大臣との勤務条件等に関する定期協議などを通じた行政対策や民主党消防政策議員懇談会に対する課題提起と意見反映をはかるなど国会対策に取り組みます。
e 消防職員委員会での審議結果を集約、総括します。
f 仮眠休憩時間の出動実態調査結果、消防職員委員会での審議結果集約を踏まえ、自治労と連携・協議しながら人事委員会・公平委員会に対する措置要求、さらには司法対策をも視野に入れた支援協力体制の確立をはかります。
各単協は次の取り組みを強化します。
a 無賃金拘束時間を可能な限り短縮するよう求めます。
b 週休2日および諸権利行使が保障されるよう職員定数の増加を求めます。
c 変形労働時間制の期間として、「1ヵ月以内」を遵守すること。また、週休日を割り振る基準として「4週間」を原則とし、使用者による恣意的な週休の振替運用については是正を求めます。
d 労働時間配分の明確化をはかり、休憩時間内の労働(出動など)に対して超過勤務手当の支払いを求めます。
e 長時間拘束勤務に対する特殊勤務手当の支給を求めます。
f シフト制の導入等、隔日勤務制の改善をはかります。
g 消防職員委員会に対して、消防職場の勤務条件の改善をはかることを求めて、意見の提出を実施します。
2. 時間外勤務の縮減を求めるとともに、恒常的なサービス残業に対しては、超過勤務手当が支給されるよう求めます。
3. 明番・週休日などの勤務時間外における恒常的・定期的な業務命令(予防査察・救命講習・訓練など)を撤廃し、適正な人員配置のもと、これらの業務が通常勤務のなかで円滑に遂行できる体制を求めます。
4. 勤務形態・労働時間の改善事例を収集し,各単協への情報提供に努めます。
<賃金・労働条件の改善>
1. 明番・週休日などのやむを得ない勤務従事には、身体的に拘束する全時間を対象に超過勤務手当の支払いを求めます。

※(「明番=当直などの番が終わる事。」)

2. 消防職員の給与実態について引き続き調査を実施し、基本賃金ならびに諸手当のあり方についてさらに研究を進めます。
3. 組合消防内における賃金格差解消をめざして積極的に構成市町村での情報交換を行い、消防職員委員会などを通じ、高水準の自治体の賃金に準ずるよう改善に取り組みます。
4. 同一自治体職場での一般行政職員との賃金格差が生じないよう積極的に情報交換を行い、昇給・昇格制度の整備に努めます。
5. 賃金・諸手当の改善事例を収集し、その情報の提供に努めます。
6. 市町村合併による消防の広域再編にともなう労働条件については、関係自治労単組と緊密に連携して、新市町村建設計画に盛り込まれるよう求めます。また、一部事務組合職員の身分保障についても、不利益を被ることのないよう求めます。
7. 職員の業務上必要となる資格取得については、公費で資格が取得できるよう求めます。
8. 諸休暇を取得する権利が制限されないようにします。
9. 退職者が一時的に増大することへの対応のため、各単協に合った職員採用の平準化や定数外採用といった計画的前倒し採用が行われるよう求めます。
10. 女性職員採用がさらに推進されるよう労働条件の整備を求めます。
<高齢者再任用制度の確立>
全消協は、条例で運用されている自治体の情報の収集と共有化に努めます。また、制度の実効が上がるように次のような取り組みを求めます。
1. 該当者にアンケートを実施するなど制度化に必要な基礎的データを整理する。
2. 希望者全員の再任用にむけて関係団体・部門と協議し、職域の研究と拡大・職場の確保をはかる。
3. 希望者が自分の能力を充分に発揮でき、希望する業務に就労し、安心して働き続けられる環境づくりを行う。
4. 再雇用者全員が現職時と同様の福利厚生が受けられるように進める。
5. 消防職員委員会などを通じ、プロジェクトをつくるなど円滑な運営ができるよう万全の準備を進める。
6. すでに運用が開始されている市町村部局での再任用について調査研究するとともに、問題点を把握することによって、自治体当局に対して再任用制度の円滑な運用の開始を求める。
<労働安全衛生対策>
1. 消防業務を労働安全衛生法(以下安衛法)上、「安全管理者を選任すべき・安全委員会を設けるべき」などの業種として指定するよう求めます。
2. 安衛法の趣旨をいかし、民主的で職員一人ひとりが積極的に参加できる安全衛生活動を推進します。
3. 消防職場の労働安全衛生については、現場職員の経験を尊重するとともに、医師・科学者・技術者など広範な専門家の参加により基準の見直しを行うよう求めます。
4. 私たちが従事する現場活動には、あらゆる危険性が潜在しています。現場活動時の安全確保・健康確保をはかるため、消防当局に必要な情報の提供、安全衛生教育の徹底、資機材の整備充実を求めます。また、開発された機械・器具が遅滞なく消防現場に導入されるよう求めます。
5. 業務中や業務に起因して発生したと思われる傷病などについては、すべて公務災害認定請求を行うよう取り組みます。また、未組織職場において発生したものについても、泣き寝入りに終らせないよう働きかけます。
6. 各地で発生した公務災害について、その実態を明らかにするよう取り組みます。また、その情報の共有化をはかるとともに、その防止対策について研究をします。
7. メンタルヘルス問題に対応するため、まずは職場内で気軽に話し合える環境づくりを進めます。また、すべての職員がメンタルヘルスに対する正しい知識を持ち、人権の尊重・プライバシー保護を基本に、労務管理・人事管理とは完全に切り離したカウンセリング体制の充実を求めます。
8. 職員が療養する必要が生じた際に、安心して治療に専念できる体制づくりを求めます。また、職場復帰した際においても、就業場所や業務内容を変更するなど職員の健康に配慮した体制づくりを求めます。
9. 深夜業に従事する職員の健康診断については、安衛法に基づき深夜業務への配置替えの際、および6ヵ月ごとに1回健康診断を行うとともに、その実施についても業務の一環として行うよう求めます。
10. 原子力施設立地地域などにおける消防本部の対応体制の充実、関係機関との情報の共有、災害発生時に出動する消防職員の安全を確保する装備の充実、また、教育・訓練の徹底などを求めます。
11. 女性消防職員の業務従事にあたっては、労働基準法・安衛法などの遵守を求め、かつ、消防職場への女性の進出を制限することなく、現場活動における危険を取り除く対策や適正な勤務配置をするなどの措置を求めます。
12. 男女雇用均等法および男女共同参画社会基本法の趣旨に基づき、セクシャルハラスメントに関する学習会などの取り組みや女性職員専用の浴室・便所・仮眠室・休養室・更衣室を設けるなど性別を考慮した施設の整備を求めます。
13. 消防職員が24時間職場に拘束されるなかで、福利厚生の充実は必要不可欠であるとの認識に立って、食事環境の整備・仮眠室の個室化やリラックスのできる休養室の整備などを求めます。
14. 全消協は、消防職場で労働安全衛生活動を推進するため、「自治体労働安全衛生研究会」の活動に参画しています。各会員が同研究会の活動に積極的に参加し、単協での活動に活かせるように取り組みます。

(7) 消防行政の改善

<救急業務の充実>
1. 急増する住民からの救急ニーズに応えるため、救急救命士の養成、救急隊員の専従化の推進、度重なる出動に対して救急隊員交代、労務管理上の配慮、教育・研修機会の充実、住民に対する応急手当普及啓発などが行えるよう増員措置を求めます。
2. 救急隊員の資質を向上するため医療機関への派遣研修などの充実をはかるよう求めます。なお、派遣にあたっては、派遣先の労働条件との整合性を十分に考慮した上で実施することを求めます。
3. 地域におけるメディカル・コントロール体制を確立し、高度な救急救命処置が行える体制づくり、搬送体制の拡充(救急・ヘリ)を求めます。
4. 救急隊員は関係法令を遵守し、救急活動に際し、自己責任が問われることがないよう消防当局に責任の所在を明らかにするような運動を進めます。
5. 新型感染症(SARSなど)や生物・化学兵器によるテロに備え、救急隊員の感染防護対策、ディスポーザブル資器材の拡充、消毒室の設置、また救急車内での患者に対する感染防護対策の充実・強化をはかり、感染傷病者搬送のための救急車の増強配備を強く求めます。
6. 精神科救急医療や周産期・小児科救急医療体制の充実を含めた整備・強化を求めます。
7. 地域医療計画や救急体制の抜本的な見直しのため、地域の医療関係者と連携をはかり、発症現場から社会復帰までの体系的整備(命のネットワーク)づくりについて研究を進めます。
8. 救急業務のより一層の充実と行政サービスを住民が平等に享受できるための運動を展開し関係省庁に働きかけます。
<広域再編対策>
1. 広域再編にあたっては、次のことを求めます。
消防本部の規模のみを判断材料とするのではなく、住民の生活圏・消防需要の動向・サービスの水準・住民の意思などを総合的に検討すること。
人員及び財政の削減を主たる目的に置くのではなく、あくまで住民の消防に対する行政需要と市町村の消防責任との均衡をはかること。
防災対策について消防機関と関係市町村との密接な連携強化策を講じること。
署所の統廃合などにより住民に対する消防行政サービスの低下を招くことなく、総合的に向上すること。
計画的職員採用、円滑な人事ローテーション、専門家の養成ができる職員規模、必要資機材の購入ができる財政規模を有する組織であること。
構成自治体の経費負担方法については、いわゆる6・4方式のような不適切なあり方ではなく、地域住民に対する行政サービスと財政負担の均衡が取れるよう適切な措置を講ずること。
消防職員の身分・賃金など処遇が不利益とならないようにすること。
2. 社会的対話を通じて住民の意思が消防行政に反映できるようなシステムづくりを求めます。
3. 法定及び任意合併協議会が設置されている地域の単協は、早急に地域実情にあった消防行政サービスのあり方について研究し、自治労県本部・単組と連携して専門部会に政策要求を行います。
4. 財政運営のあり方について調査を行い、実態把握に努めます。
5. 自治体の主体性や、住民参加システムの制度化、設立目的、権限と財政負担の均衡などの観点から「広域連合制度」を導入した場合の検討を行います。
6. 市町村合併の対応については、次の通り取り組みます。
「自治労各県本部市町村合併対策委員会」の取り組みに参画できるよう自治労各県本部に要請するとともに、合併協議会や各自治体当局に意見反映を行います。
既存単協周辺に「市町村合併の対象となる」消防本部がある場合、合併を契機として既存単協に及ぼす組織拡大・縮小両方の観点から「市町村合併組織対策消防本部」として選定し、組織化の取り組みを具体的に進めていくこと。
合併した新自治体および「新設合併」や「編入合併」にともない再編された一部事務組合・広域連合における消防職員協議会については、既存の単協を活用して、対象全消防本部の組織化を進めること。
<地域安全・安心センター構想の推進>
1. 「地域安全・安心センター」構想に関して各地域の実情に応じた消防行政のあり方を、各単協で主体的に分析・検討します。
2. 住民アンケートの集計によって得られたデータなどをもとに、今、地域住民が消防行政に何を求めているのかについて、調査・研究します。
3. 会員をはじめ各方面から、消防行政の将来的展望について幅広い議論の素材の提供を求めます。
4. 具体的行政実例を収集し、分析・検討を行うとともに、その情報を提供し、各地域での議論の活性化に努めます。
5. 「地域安全・安心センター」構想と、「高齢者再任用制度」、「広域再編・市町村合併問題」の接点について検討します。
6. 医療・福祉・保健・教育機関など、ほかの関係機関との連携について、さらに検討します。
<時代に対応するシステムづくり>
1. 消防財政に関する調査研究を進めます。
2. 国庫補助金などに関する過重手続きを解消するため、申請・交付・報告などの手続きについて簡素化・迅速化をはかるよう求めます。
3. 基準財政需要額の算定方法については、地域の実情を反映するシステムを構築するとともに、簡素化をはかるよう求めます。
4. 消防法の一部改正により予防行政の責務が増大し、その積極的推進のため、予防担当職員の増員・研修・育成の充実をはかるよう求めます。
5. 消防無線のデジタル化については、導入にともなう費用を国が応分の負担をするよう求めます。
6. 「消防力の基準」の中に広域応援に関する対応が明記されていない矛盾点を指摘し、財政面も含めた広域応援体制のあり方を検討します。
7. 大規模災害の発生に備え各自治体で地域防災計画の見直しが行われ、消防においても広域応援体制の整備などが推進されています。私たちは、視点を変え、「災害に強い人づくり」を進めるため、行政として何をすべきか、その担うべき役割などについて研究します。
8. 各単協においても、地域の実情に沿った消防行政の確立にむけて、次のことに取り組みます。
地域の消防行政について、各県自治労・自治研センターとともに、行財政の問題点の調査・分析など地方自治・行財政の研究活動を進めます。
地域の防災計画、消防行政の改善のため、住民や有識者を中心としたシンポジウムの開催を計画するなど世論の喚起に努めます。
各地域の消防責任を果たすための消防力体制を研究します。
消防総合研究委員会は消防に関わる各種問題を調査・研究します。
9.
消防に関する多種多用な問題を随時出版物にまとめていきます。
消防行政の情勢、法令や消防職員委員会などの研究をすすめます。
各種の講座・集会に講師を派遣します。
消防に関する学識経験者との交流を深めます。