各種報告

第35回全国消防職員研究集会

研究集会報告

第35回全国消防職員研究集会が,新緑の青葉が萌える“ケヤキ並木”で有名な『杜の都・仙台市』において,5月10日から12日にかけて開催された。
開催初日の天候は全国的に荒れ模様で,仙台空港は霧のため離発着ができず,また各地の飛行場が運行を見合わせるなか,交通手段を変更しながら全国の仲間たちが主会場である電力ホールに駆けつけ,全消協加盟・未組織の消防職員,自治労単組関係者など多くの参加者が参集した。
集会冒頭,主催者を代表して全消協・迫 大助会長が歓迎のあいさつを述べ,本研究集会の開催にご尽力をつくされた地元の自治労宮城県本部,ならびに地元単協である栗原市消防職員協議会の仲間達に感謝の言葉を伝え,続いて現在国が推し進めようとしている「消防の広域化」による問題点を,消防職員自らが考えることの重要性について提起を行い,そのための取り組みとして研究集会のメインテーマである「消防の広域化と市民の安全・安心を考える」を研究の柱として,各分科会での活発な意見交換や学習に期待すると訴えた。

その後,各ご来賓のあいさつをいただき,休憩を済ませたのち幹事会による「消防の広域再編(30万規模)と地域の安心安全」と題する,総務省消防庁が示す今後の消防体制のあり方についての中間報告を,役人の目線で説明し参加者に課題提起した。

集会2日目には市内に5分科会場を設け,参加者が希望した分科会に分かれ,組織強化と自主組織づくり,賃金・労働条件の改善,これからの消防行政,救急医療体制の課題,労働安全衛生などについて,講義や活発な議論を展開した。

集会最終日は主会場の電力ホールに集い,各分科会報告を担当幹事が行ったのち,迫会長による総括的まとめを受け,最後に全消協・伊藤副会長による“団結ガンバロー”で締めくくった。

日程

 

【第1日】 5月10日(水) 13:00~17:00 全体集会「電力ビル;電力ホール」
13:00~13:05 開 会 石川 正紀 幹事
13:05~13:15 全消協代表あいさつ 迫 大助 会長
13:15~13:25 自治労本部あいさつ 笠見  猛 自治労副委員長
13:25~13:35 来賓あいさつ 菅野 哲夫 社民党議員
13:35~13:45 自治労宮城県本部あいさつ 及川 光行 委員長
13:45~14:15 経過報告 山﨑 均 事務局長
(休 憩)
14:30~15:00 課題提起 全消協幹事会
「消防の広域再編(30万人規模)と地域の安心安全」
15:00~15:30 単協実態報告
北海道・函館市消防職員協議会 住吉 光男さん
新 潟・新潟市消防職員協議会 田村 繁明さん
広 島・福山消防職員親和会  木村 洋邦さん
15:30~15:40 広域化に対する全消協の取り組み提起
15:40~16:00 消防職員の団結権問題(報告:迫会長)
16:00~16:40 分科会の説明・提起(各分科会:担当幹事)
16:40~16:45 事務連絡
(各ホテルへチェックイン)
18:00~ 夕食懇談会 ホテルメトロポリタン仙台

 

【第2日】 5月11日(木) 9:00~17:00 分科会
第1分科会 「組織強化と自主組織づくり運動」 日専連ビーブ5F
第2分科会 「賃金・労働条件の改善のために」 仙台市シルバーセンター6F
第3分科会 「これからの消防行政~未来の消防を考える」 日専連ビーブ6F
第4分科会 「救急医療体制の課題」 仙台市シルバーセンター7F
第5分科会 「労働安全衛生~快適な職場づくり」 三井アーバンホテル2F

 

【第3日】 5月12日(金) 9:00~11:00 全体集会「電力ビル;電力ホール」
09:00~10:30 各分科会報告 全消協担当幹事
10:30~10:50 集会の総括的まとめ 迫 大助 会長
10:50~10:55 閉 会 石川 正紀 幹事
10:55~11:00 団結ガンバロー 伊藤  薫 副会長

第1分科会

第1分科会では「組織強化と自主組織づくり運動」をテーマに、主催者側の助言者の森労働局次長と全消協の担当者2人、参加者は当初の予定人員をやや下回る49人の参加で開催された。
午前中は、全消協の活動状況として、迫会長から全消協30年の足跡やILO、PSI加盟に向けた方向性と団結権獲得に向けた全消協の独自性を訴える話があり、続いて、消防職員を取りまく情勢と自治労の消防職員支援活動について自治労中央本部 森 労働局次長局より報告を受けました。さらに、既に合併をした三単協《西胆振消協 安部氏、津市消協(旧 久居市消協)寺田氏、高松消協 香西四国幹事》からの報告があり、広域再編による合併に至るまでの過程と合併による降格・降給などの問題点を指摘しました。
午後からは各班討議に移り、単協の問題点、団結権獲得を含めた取り組みや問題点、組織拡大運動における問題点、職員委員会制度の問題点などを取り上げて話し合われた。
この討議では、職員委員会は形骸化し、もはや限界がある。労使交渉をするためには団結権獲得が必要で、PSI加盟を含め、獲得に向けた方策や方針を全消協が明確にし
活動していくことが大切であることを確認した。
最後に鳥生副会長が、団結権獲得には自治労のバックアップは当然だが、全県単の個々の協議会が出来ることはキッチリする。団結権獲得は組織拡大、地域住民を巻き込んだ活動が必要ではないか。PSIをとおしILOを動かす。そして団結権獲得をすすめる。と締めくくった。

第2分科会
賃金・労働条件の改善のために

総括・伊藤事務局次長、座長・北海道石山幹事、記録者・吉永九州幹事、助言者に松岡二郎(明治大学講師)氏を迎えて行い、テーマを(1)労働基準法は交替勤務者に何を求めているか、(2)労働基準法について、に置き討論を進めることを座長から提起した。
午前は伊藤事務局次長から「消防職場と賃金・労働条件について」の講演があり、職場の問題解決に向けた取り組み方法の提起があった。現状、団結権を持たない消防職員には、消防本部との正式協議の場として消防職員委員会制度が設けられているが、まずは、その制度を活用して問題点を表面化していくこと。それでも解決しない問題は、地方公務員法による人事(公平)委員会へ措置要求をしていくこと。さらに、最終的には裁判闘争で司法判断を仰ぐという過程の説明がなされた。地道ではあるが、一歩一歩行動を具体化することで、問題解決に向けた運動の展開を強調された。
午後からは松岡二郎氏(明治大学講師)から「労働基準法について」の講演を受けた。労基法は使用者に向けた適用基準であり、消防職員もいくつかの例外があるが、原則全面適用であること。法律を知り、使いこなすことで自分達の権利と命を守っていくことが必要と講義された。
質疑応答では、参加者から、消防職員は使用者が業務命令を下すことの出来ないはずの休憩時間においても庁舎内で待機し、出動命令が出ればいかなる状況下でも瞬時に業務に入っていかなければならない。そのような厳しい環境下にいる職員の休憩時間を振替えるというのは、労基法に照らして問題ではないか。また、財政難を理由に祝祭日給の支給・時間外手当や補充勤務の超過勤務支給などが正規に支払われていないなどの理不尽な取扱いがなされている、なかには、労基法違反が疑われる条例改正があるなど質問が相次いだ。
それぞれの質問に対し、松岡氏・伊藤事務局次長からアドバイスをいただき、各所属に持ち帰り、取り組みをスタートしてほしいとくくった。

第3分科会

「消防広域再編と今後の消防」をテーマに、討議の柱として「消防力の基準から消防力の整備指針と名称変更し、市町村合併から消防広域化を模索する意図とは」「デジタル無線と指令台の共同運用の動向」「近隣消防との広域模擬想定」3点を取り上げ討論した
3232あった市町村は現在1820となり、消防も同様に936消防本部から820あまりとなったが、市町村合併では各自治体の財政難の一時的な緩和のため、各首長同士の合意により合併がすすめられた。しかし、これから行われようとしている「30万規模」の消防広域化では消防組織法を改正し、国および都道府県の権限が強化され、現時点においても、車両購入に対する補助金は緊急消防援助隊に限定されるなど、消防業務が国主導のものへ変化しており、今回の法改正により消防業務が更に国主導のものとなってしまう可能性が高いことが指摘された。
また、消防力の基準から整備指針に変更になった経過について、消防行政サービスの低下があってはならないように、全国統一の「消防力の基準」を国主導で作り上げてきた。しかし、全国の消防本部で基準を満たした消防行政サービスを提供してきたところは少ない。それは「消防力の基準」という強制力が足かせになっていたためであり、基準を満たすことが難しいという意見が多数あったため、努力目標である指針への方針転換は、現在の消防力ですら維持できなくなる問題をはらんでいることが考慮されることも提起された。
消防・救急無線のデジタル化及び指令業務の共同運用は、各自治体が財政難にあえぐ中、新たな設備投資である消防無線のデジタル化が期限内での整備を迫られていることをふまえたうえで、モデル県である長野県の現状を報告し、消防・救急無線のデジタル化及び指令業務の共同運用は消防広域再編を進めるものであり、国・都道府県の消防に対する権限強化である消防組織法改正との密接な関係があることを指摘した。
午後からはグループに別れ、30万広域消防を基本とし、地域の特殊性・離島等考慮したうえで、都道府県域ごとに広域消防模擬再編をした。
その中で、地形・道路状況・生活圏・面積等考慮しながら、メリット・デメリットについて活発に討議し、住民サービスの向上か低下か、地水利・給与・人員・通勤・組織の拡大化による充実と弱体化等の問題点の抽出した。
総括として、消防の広域化に対し住民・職員の目線で議論でき、執行部として貴重な意見を尊重し、総務省に対し地域の特殊性を十分考慮した消防広域再編になるよう働きかけられるよう今後議論を重ね、住民サービス及び消防職員の権利向上のため努力していくことを確認し、分科会終了となった。

第4分科
救急医療体制の課題

「救急救命士の処置拡大に関する問題点」「地域メディカルコントロール(MC)体制の現況」「救急出動件数増加に伴う消防救急の現状と課題」をテーマに討論した。
午前は仙台市立病院救命救急センター副センター長、村田祐二先生に『宮城県内や仙台市のMC体制ついて』と題し、講演を受けた。この中で、MCに関する復習や処置拡大とMC体制について話され、現在のMC体制の地域格差や問題点を示された。次に、現在までの「救急救命士の業務のありかたに関する検討会」について話され、医師としての見解を示し熱い思いを話された。また、仙台市における「ドクターカーでの活動紹介」で、実際にドクターカーで現場に行き、現場での体験談を話され、その中で「質のいい心マ」が重要だと話された。最後に仙台市立病院救命救急センターと救急ステーションの紹介を受けた。
その後、現状報告として2単協から救急出動件数増大による現状と問題点、また、告発の行方と題し実際に告発まで行った事例の報告を受けた。
午後からは、グループ討論で、「救急出動件数を減らすには」どうすれば良いのか[救急救命士の薬剤投与に関する問題点]の二つについて、座長より課題を提起した。討議の中で、「救急出動件数を減らすには」という問題は、民間救急の使用方法や有料化や他にも色々な意見が出され、活発な意見交換を行ったが、現在のところは難しいという意見が多かった。
「救急救命士の薬剤投与に関する問題点」についても、薬剤投与の是非、薬剤投与のスムーズなMC体制等の多くの意見が、救急救命士以外の救急隊員からも出され、MC体制の重要を確認した。
最後に総括として迫会長より、現在の消防における、救急情勢や救急の重要性などについて話があり、参加者との意思の疎通をはかつた。

第5分科会報告
「労働安全衛生~快適な職場づくり」

「健康に働き続けられる職場をつくる」を分科会テーマとして、「メンタルヘルス対策の基礎知識と協議会のかかわり」「安全衛生対策への取り組み」研究の柱となるよう構成され。
まずヒューマン・メンタルヘルス研究所「あこーる」所長 我妻淳一氏に働き盛りのメンタルヘルス(毎日のさわやかライフのために)を題材に講演があり、冒頭リラクゼーションを求めるような講義の始まりとして講師の乾杯の挨拶がありました。
これは通常、日常生活の中では主に左脳が理性を働かしているので、右脳を働かせるようなように切り替え、ユーモア的な感性が必要であるという話しから始まった。
メンタルヘルスの近年の動向として、事業主責任と実行責任者について、2003年3月最高裁判決を例に事業主は、心身を損なう事のないよう注意する義務を負うという内容のお話しがあり、次に心の健康に関する相談体制とストレス対策のあり方として「フィジカルヘルス」と「メンタルヘルス」の必要性や進め方、協議会などの組織としての対応と、個人対応の違いや、消防職員における惨事ストレスの背景、職場のモラルハラスメントについて講演があり、続いてリラクゼーションの必要性としてハンドマッサージ・ストレッチング・静的リラクゼーション等の実践を行った。
午後からはリスニング研修を踏まえ現在自分たちが抱えている、又は相談を受けたことがある事案についてグループ討論を行った。
その後、職場巡回で仙台消防局・青葉消防署を訪問し、警防隊室・救急隊室・食堂・仮眠室・消防情報センター・特殊消防車両・高度救助資機材等の見学をさせていだき、「安全衛生に係わる職場づくりへの取り組みについて」総務課担当の方から仙台市の現状や取り組みついて講演を受け、質疑応答に答えていただいた。