第38回全国消防職員研究集会
研究集会報告
「地域住民の安心と安全の確立のために-質の高い消防サービスを考える」をメインテーマに、全消協は5月12日から14日、大阪市の中央公会堂ほかで第38回全国消防職員研究集会を開き、全国から370人(女性18人、未組織消防本部10本部17人)が参加した。
集会では基調講演や研究報告、課題提起、長野県・須坂消協と三重県・鈴鹿消協の市民ボランティア活動の紹介や課題別分科会などを行った。また阪神・淡路大震災の経験を踏まえた地域防災の特別分科会、JR福知山線事故の現場の視察など、開催地の特色を生かした企画も行われた。 また集会には、自治労大阪府本部副委員長の冨永猛さん、民主党参議院議員の武内則男さん、自治労労働局長で次期参議院選挙に立候補を予定している江﨑孝さんも駆けつけ、市民の安心・安全を守る消防行政の拡充、団結権獲得をめざす全消協への連帯を表明した。
会場を沸かせた長野県・須坂消協のボランティア活動「消すんジャー」の実演。
開会前には元単協会長の再任用拒否の取り消しを求める福岡県消協の仲間がビラ配り。
基調講演 消防がつなぐ地域の力
同志社大学教授 風間規男さん
阪神・淡路大震災の地域別の被災状況を検証したところ、被害の軽かった地域はコミュニティーが大きな役割を果たしたことが分かった。これを教訓に、地域防災の現状を把握し、それぞれの地域の特性を検証し、防災面での強みと弱点を洗い出すことが重要だと言える。
住民の防災力の向上には消防職員が日常業務を通して住民とともに取り組むことが不可欠だ。消防機関の特性を生かして、地域との関係作りを考えて欲しい。地域でボランティアをしようとする市民を、地域の防災活動につなぐ役割が、消防職員に期待される。
第Ⅰ分科会 組織強化・拡大
広域化のもとでの単協活動を討論
第Ⅰ分科会は「未来の消防を考える」をテーマに開かれた。 吉川大介幹事が運営計画策定段階の単協活動について提起した後、自治総研研究員の飛田博史さんが財政的視点からの広域化について講演した。続いて自治労組織局次長の横山龍寛さんが組織強化拡大の必要性について提起し、山崎均事務局長がファシリテーターとなり、広域化の課題や単協活動についてグループ討議した。
参加者からは活発な意見が出され、総括として住吉光男副会長が、「この分科会で議論された結果を単協活動に生かし、未来の協議会のためにともにがんばろう」と締めくくった。
第Ⅱ分科会 賃金・労働条件
無賃金拘束時間など議論
第Ⅱ分科会は80人(未組織2人)が参加し、まず西岡博之幹事が「消防職員と労働基準法」について、法令等の基礎知識・活用方法等について講演した。 次に伊藤薫副会長が「無賃金拘束時間」について、三重県・四日市消協の取り組み報告を含めて講演。続いて千葉県・松戸消協の澤田和幸会長が松戸市の「パワーハラスメント」訴訟について報告した。
最後に弁護士の小倉知子さんと渡辺晶子さんが「労働事案と解決策」と題して九州の消防職場での事案について紹介し、法的課題の考察を述べた。
第Ⅲ分科会 救急医療体制
新型インフル対応も課題に
第Ⅲ分科会は、90人が参加し、午前中、座長である小田規親幹事が「救急の現場と課題」と題して、最近出動要請の多い転院搬送や老人福祉施設に対する横浜市の取り組みの報告と、新型インフルエンザへの現場救急隊員の対応報告を行った。続いて、総合研究委員会の岩本展政委員からアンケート調査の報告が行われた。
午後からは、横浜医療センター・救急救命センター長である山本俊郎さんが「メディカルコントロール体制の現状と課題」と題して講演し、参加者のグループ討議とその発表を行い終了した。
第Ⅳ分科会 労働安全衛生
安衛委の活性化を討論
第Ⅳ分科会は、「労働安全衛生~快適な職場づくり」をテーマに開催。講師は自治労香川県本部特別執行委員の野中幹男さん。安全衛生委員会の活性化について事例の検証などの討議を深めた。野中さんは豊富な経験を踏まえて参加者に様々なアドバイスを提示した。
午後は大阪市消防局の西消防署を訪問し、見学した。
第Ⅴ分科会 男女平等
個が尊重される職場と社会を
第Ⅴ分科会は、ジェンダー問題に詳しい伊田広行さんと自治労元中執の野田那智子さんを講師に迎え、講義やワークショップを通し「男女平等参画社会の実現」に向けた取り組みを学んだ。
グループ討論では、職場で少数である女性職員が、どのような言動に不快感を抱くかなど具体的な経験が語られ、個人を尊重することの大切さを認識した。
昨年に続き2回目の分科会開催で、今回の参加者は男女比がほぼ同数。全消協の男女平等の課題への取り組みが徐々に浸透しつつあることをうかがわせた。
第Ⅵ分科会
語ろう地域防災と消防の役割
第Ⅵ分科会は「地域防災と消防」をテーマに、ランドシステム研究所、防災・環境・まちづくりアドバイザーの岡本茂さんを講師に迎え『日本の自然と災害のしくみを考える』と題し、日本各地の特性・自然災害の分類などの講演を受けた。
その後、班ごとに各地域の災害の特性や地域防災計画のあり方について討論し発表する参加型の研修を行った。「大災害が発生した場合、消防が機能しない可能性があり、日頃からコミュニティーで顔の見える関係を築くことが大切だ」と参加者から声が上がった。