被災地消防本部消防職員への災害義援金等の寄贈
全消協全般
2024年5月9日(木)、10日(金)の2日間、災害義援金の寄贈のため、須藤会長と川北事務局長が、「令和6年能登半島地震」の被災地である奥能登を訪問した。全消協加盟単協から多くの賛同を得て集められた災害義援金の主な拠出先は、今回の災害による被害が大きかった地域を管轄する消防本部である奥能登広域圏消防組合消防本部、七尾鹿島消防本部、羽咋郡市広域圏事務組合消防本部の3消防本部の消防職員とした。
9日は、七尾鹿島消防本部(以下「七尾消防」という)を訪問し、災害義援物品として災害対応用皮手袋135双を寄贈するとともに、災害時の状況を説明していただいた。
七尾消防の本部庁舎は、海岸沿いにあり、周囲は液状化現象により、道路などの損壊が激しい様子であった。庁舎は免震構造であったが周囲が損傷している。
発災時、職員は大津波警報が出ている中、海岸沿いの本部庁舎へ向かう必要があるため、山方向へ向かい避難する住民とは逆方向へ移動していた。道路の損壊等により、消防車両の移動もできず、職員は上階へ避難することしかできない。119番通報は、通常時の約10倍の件数であり、指令装置は、発災から約2時間のシステムダウンがあり、電話と地図帳を使い対応していた。水道管の損傷により、消火栓が使用できない状況であった。職員は4日間、休む時間もなく災害対応している状況であったが、1月4日には、奥能登へ向け県内応援隊を派遣している。緊急消防援助隊は、2大隊が最初の数日の応援の後、奥能登へ向かっている。緊急消防援助隊の野営する候補地の選定が困難であったことや、7か所ある市内の給油所は、大半が使用できず、燃料確保も課題となっている。職員のメンタル不調については、しっかり聞き取り等を行っているとのことである。
次に、同日、羽咋郡市広域圏事務組合消防本部(以下「羽咋消防」という)を訪問し、災害義援金を寄贈するとともに、災害時の状況を説明していただいた。
羽咋消防の職員も山側に避難する住民とは逆方向に移動し、参集している。管轄地域の対応は、3~4日の即時対応後、県内応援隊として奥能登へ向かっている。原発の状況は、ホットラインで、大きな被害がないことを確認している。羽咋消防においても119番通報件数は、通常時の約10倍の件数であったため、計画されていた大規模災害時のコールトリアージを行っている。このコールトリアージは、熊本地震の教訓から作成されたものをモデルとしており、効果があったとのことである。多くの通報の中には、避難中に車が動かなくなったなど、非緊急なものもたくさんあることから、コールトリアージの重要性を強く感じた。
10日は、震度7を記録した輪島市および珠洲市を管轄する奥能登広域圏事務組合消防本部(以下「奥能登消防」という)を訪問し、災害義援金を寄贈するとともに、災害時の状況を説明していただいた。
奥能登消防では、電気の供給が寸断されたことから、本部庁舎および無線中継局等の機能維持のため、非常用発電機の燃料を絶やすことなく供給する必要があり、毎日が綱渡りであったとのことである。指令装置はシステムダウンし、地図検索および指令送出ができない状況の中、多数の119番通報に対応している。水道管も損傷し、断水が長期間続いていたため、消火栓が使えないことを考慮した出動計画や防火水槽の補水など、応援隊とともに対応している。奥能登消防には、多くの緊急消防援助隊および県内応援隊が出動していることから、野営地の確保やトイレの課題が浮き彫りとなっている。
次に、輪島朝市の火災現場へ行き、当時の火災対応を行った消防職員から説明をいただいた。先着隊が部署した消火栓は、断水のため使用できず、河川から給水しようとしたが、水が引いており、有効な水量が給水できなかった。
防火水槽は倒壊家屋により、使用できなかったため、海とプールからの遠距離送水により対応している。公設消防隊2隊に加えて招集できた消防団で対応し、6口の筒先でなんとか延焼防止ラインを確保していたとのことである。大規模街区火災の計画はあったが、地震との複合災害での対応と水利が使用できないなど、困難な中、鎮火に至っている。
訪問した三本部が共通してあげる課題として、半島の先端では、道路が損壊すると、応援隊が到着することは難しいため、陸路だけでなく海、空から輸送できる計画(アクションプラン)が必要であること。さらに、電気、水道、燃料などが確保できない場合は、継続的な活動が困難であることから、様々な形の早期の支援が必要である。
また、緊急消防援助隊の時間外勤務手当や特殊勤務手当などへの特別交付金措置はあるが、受援消防本部の職員の手当てに関する特別交付金措置はなく、被災地消防本部には多くの負担がのしかかる。
被災地消防本部の職員も被災者であり、働きながら復旧、復興していく必要があることから、離職していく者もいる。新たな職員採用も難しい中、多くの人数を採用することは困難であり、職員の育成には時間がかかる。本当の意味での復旧・復興には、多くの課題がある。これらの課題を今後の活動に盛り込んでいきたい。