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PSI第15回アジア太平洋地域総会(APRECON)

2025年9月9日(火)から同年9月11日(木)まで、ネパール・カトマンズのラディソンホテルカトマンズにて、第15回アジア太平洋地域総会が開催された。

PSI-JC日本団として、自治労をはじめた産別から総勢33人が参加し、全消協からは、岡大祐会長、藤木亜純事務局次長、福島丈一朗ユース部副代表の3人が代議員として出席した。

9月8日(月)から翌9月9日(火)午前中には、事前会議として、35歳以下が対象の『若年労働者フォーラムおよびコーカス』、事前選択の『LGBTQI+フォーラム』、女性が対象の『女性委員会およびコーカス』に出席した。さらに、地域総会では、分科会が設定され、全消協は『消防士ネットワーク』および『労働組合権とILO』に出席した。

9日午後から開会した地域総会では、藤木亜純事務局次長が決議案に対する発言を、分科会『消防士ネットワーク』では、岡大祐会長がダリア・シブラリオPSI上級政策担当者および消防士であるロバテ・ダウカカカカ・パレティフィジー公務員協会会長とともにスピーカーを務め、福島丈一朗ユース部副代表が質疑を行った。

さらに、地域総会最終日に、岡大祐会長が消防士ネットワークにおける今後の取り組みについて檀上にて発表を行った。これをもって、今後消防士のネットワークの構築について検討が進められることになる。

なお、8日からカトマンズ市内において発生したデモが暴徒化したことを受け、9日に開催された若年労働者連帯の夕べは日本団として安全確保の観点から欠席、10日に開催予定であった連帯の行進は中止となった。

事前会議:若年労働者フォーラムの集合写真

      

PSI―JC日本団集合写真

 

第1号決議案:緊急サービス労働者

事務局次長 藤木 亜純

第1号決議案発言の様子

 

【発言内容】

アジア太平洋地域総会にご参加の皆さん、おはようございます。

私は、日本の消防を代表する組織、全国消防職員協議会の藤木亜純代議員です。第1号決議案の第19章「緊急サービス労働者」について、大いに賛同する立場で発言させていただきます。

日本では、公安職とされる警察、自衛官、海上保安庁、消防のうち、女性の採用は消防が最も進んでいません。また、社会全体の女性活躍推進も背景に、総務省消防庁は「女性消防吏員の活躍推進」として、全国の消防吏員に占める女性消防吏員比率を、2026年度当初までに5%とする目標を掲げて取り組みを進めてきました。しかし、着実に増加傾向にはあるものの、2025年現時点で女性消防士の割合は3.7%で、事実上目標達成は難しい状況にあります。

女性活躍推進が進まない理由としては、離職者が多いことも要因の一つです。住民の命を守りたいという強い使命感と憧れから消防士になったのに、女性であることだけを理由に男性よりも下に見られたり、「結婚したら辞めるから教えても無駄」と言われ、現場に行かせてもらえないなどの職域が制限される実態もあり、その結果退職を選んでしまう仲間が後を絶ちません。

ライフステージに応じた休暇制度等は整備されていますが、人員に余裕がないため取得しにくく、仕事と家庭の選択を迫られる状況です。

また、男女を問わず消防職場のハラスメントの被害は深刻で、離職に留まらず、少なくない数の自殺者が出る事態となっています。皆が当たり前に働き続けられる環境を整備することは喫緊の課題であり、女性消防吏員の確保にもつながると考えます。

最後になりますが、今回のアジア太平洋地域総会に、日本から3人の消防士が参加しています。様々な職種の皆さんと仲良くなりたいです。ぜひお声を掛けてください。

心からの連帯をこめて、私の発言といたします。

Let’s Fight in Solidarity! ともにがんばろう!

 

分科会:消防士ネットワーク

会長 岡 大祐

消防士ネットワーク発言の様子

 

【発言内容】

皆さんこんにちは。私は日本の消防職員で自主組織を結成している「全国消防職員協議会」、略して「全消協」の代表を務めております「岡 大祐」と申します。

短い時間ではありますが、日本の消防職員の現状を皆さんに知っていただきたいと思い、お話をさせて頂きます。

私達「全消協」は、1977年の8月に、職場・現場における実践と経験から、国民・住民の命と暮らしを守る消防・救急業務を確立するため、業務の質の向上をはかるとともに、民主的で働きやすい職場づくりを目的に、自治労の協力を得て、自主的団体として結成しました。

日本では、国家公務員、地方公務員ともに争議行為は禁じられていますが、非現業職員については団結権が認められており、協約締結権までは付与されていないものの、団体交渉をすることは認められています。しかし、私たち、日本の消防職員は、団結権・団体交渉権・争議権の労働三権のすべてが与えられていません。

日本の法律の地方公務員法で、「消防職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、地方公共団体の当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはならない」と規定されています。ILOは日本政府に対し、消防職員に団結権を付与するよう繰り返し指摘しており、2025年6月に開催された第113回ILO総会後の理事会で、12回目となる結社の自由委員会報告・勧告が採択されました。勧告では、2002年以来の再三の勧告にもかかわらず、公務員への労働基本権付与の問題が未解決であることを指摘し、必要な法改正をするよう強く要請しています。

しかし、日本政府は、「消防は警察の職務と同視される」として、団結権の付与について慎重に検討するという姿勢を崩していません。

私たち全消協は、自治労とともに日本政府と団結権の付与に関して定期的に協議を行っていますが、議論は今なお平行線となっています。

団結権が保障されていない現状においては、階級制の下、上司の命令は絶対という上位下達な職場風土の中で、個人では物を申すことができない消防職員は多くいます。

次に、日本の消防職場の課題についてご紹介したいと思います。

まず、行政ニーズに対応した人員確保の問題です。近年、気候変動の影響により、世界各地でも災害が発生していますが、日本においても毎年各地で大規模な地震や豪雨災害、今年は大規模な山火事も発生し、記録的な災害が頻発しています。また、猛暑による毎年熱中症の増加で救急需要が増えており、救急体制がひっ迫しています。これらに対応するため、消防職員はこれまで以上に高度な専門知識と柔軟な対応能力が求められています。しかし、日本は世界に先駆けて高齢化が進んでおり人口減少社会に突入している中で、財源不足を理由に、とくに地方を中心に定数を確保されていない消防本部が多くあります。そうした消防本部では、人員体制に余裕がないため、訓練に費やす時間を確保されず、職員の安全管理体制にも問題があるケースが多くなっています。日本の消防・救急体制は、職員個人の努力や忍耐によって、何とか維持しているといえる状況にあります。

もう一つの問題は、働き続けられない職場環境です。消防職場のハラスメントは深刻で、訓練と称して腕立て伏せを1,000回強要したり、逆さづりにするなど、もはや犯罪といっても過言ではないほどのケースが連日報じられています。中にはハラスメントを苦に自殺に至るケースもあり、ハラスメントを一掃し、安心して働くことのできる職場環境の確立が必要です。

また、消防職員は、2部制もしくは3部制の1当務24時間体制で勤務しています。このような長時間の拘束がゆえに、今お話ししたようなハラスメントが発生しがちとなるとも指摘できますが、ワークライフバランスの観点からも問題といえます。日本の消防職員全体に占める女性消防職員の割合は3.7%で、女性比率が非常に低い状況にありますが、家庭や育児との両立の観点からも長すぎる拘束時間は女性消防職員が働き続ける上でのハードルになっています。また、2023年から日本では公務員の定年年齢の引き上げが段階的に行われており、引き上げ完成時には定年が65歳となります。60歳を超えて働き続ける消防職員が増える中で、どんなに体力トレーニングを重ねても加齢による視覚・聴覚機能低下は避けることはできなこと、またとくに夜間の出動など不規則な生活習慣が起因する心疾患を引き起こすリスクもあり、24時間拘束の勤務体制は身体に大きな負荷を与えています。そのため、私たちは誰もが長く働き続けることができることのできる柔軟な勤務体制の検討が必要と考えています。

団結権の付与にむけた全消協としての取り組みは、3つあります。まず、ILO議長集約にかかる定期協議です。これは、2018年ILO総会基準適用委員会議長集約を受けて、日本政府側から「社会的パートナーと協議する」と宣言したことから設置されたもので、2019年1月から始まり、自治労とともに全消協も参加しています。団結権問題の重要な論点である「消防職員の警察との同視」について、政府、自治労・全消協がそれぞれ考え方を示し、現在まで13回の協議を続けてきています。議論は平行線の状況にありますが、私たちは政府と真摯にむきあって、議論を打開できるよう取り組みを続けています。

次に、消防行政を充実強化する立場から、現場目線での問題点を抽出して改善を求める要請行動を、毎年7月と12月の年2回実施しています。私たち消防職員は、団体交渉はできないものの、自治労の協力を得て、職場の課題を洗い出し、各消防本部での改善を促すよう政府に要請しています。実際に、この要請行動を通じて、改善できた成果もあります。

また、消防現場における課題について、政治の場での解決をはかるため、自治労が国会議員に呼びかけ、衆議院、参議院あわせて150人を超える国会議員が参加する「自治労消防政策議員懇談会」を結成しています。2025年2月に、この懇談会の会議を行ったところ、85人の国会議員と全消協加盟単協の代表者で合計237人が出席し、消防職場で抱える課題等について意見交換、情報共有をはかりました。出席された国会議員による委員会質問にもつなげることができました。

また、私たちはPSIの活動も、団結権の付与にむけた取り組みの一つとして捉えています。本日のこの場のように、PSI加盟の世界各国の労働者に日本の消防職員の労働基本権の制約状況を周知し、連帯と協力を求めることができることも重要な取り組みです。世界の労働者の仲間とつながることができること、またPSI活動を通じて、ILOをはじめとする国際機関に日本の消防職員の団結権の問題を持ち込むことができ、日本政府に外圧をかけることができるという点も、私たちが今回の会議に参加する理由の一つでもあります。皆さん、是非私たちへの協力をよろしくお願いします。

私たちは国民・住民の暮らしを守るために安心の消防サービスを提供したいと考えています。それにむけては、消防職員が安心して業務に従事できる労働条件・環境が必要です。しかし、現場から労働条件・環境の改善を申し入れたくても、日本の消防職員がおかれた現在の状況では、労使での協議が保障されていません。私たちは職場を良くするために、労使で協議がしたいのです。そのためには、何として団結権が必要です。

全消協は、私たちの悲願である団結権の付与が実現するまで、粘り強く取り組みを続けています。これからも日本の消防職員の団結権問題を注視していただき、皆さまの支援お願いして終わりたいと思います。

ともにがんばりましょう。

 

消防士ネットワーク質疑の様子

 

地域総会3日目

会長 岡 大祐

地域総会3日目発言の様子

地域総会にお集まりの皆さん、こんにちは。

私は日本の消防士で組織している「全消協」の岡 大祐です。

私たちは消防ネットワーク分科会にて、お互いの目標に向けた活動の、情報交換をする事を決めました。

方法は定期的な発文及び画像で、ニュースペーパーのような物から始めようと考えています。

インターネットを使っての会議も考えましたが、皆さんそれぞれの事情があり、まずは負担にならない事からと考え、この方法で始めたいと思います。

小さな一歩ですが、まずはアジアから、そして世界の消防士が繋がり、より民主的な消防行政を目指し、地域住民の安心安全に繋がる活動を行います。

ありがとうございました。