全国消防職員協議会第49回定期総会
全消協全般 定期総会報告

2025年9月4日・5日の2日間日程で、全消協第49回定期総会を開催した。
東京都日本教育会館にて完全参集で開催、代議員235名のうち202人の仲間が集結した。
2日間で次の議事を行い、質疑・討論の後、賛成多数をもって可決・承認された。
【1日目】
・議長団選出
北信ブロック 上伊那広域消防職員協議会 吉澤 一(よしざわ はじめ)
関東甲ブロック 座間市消防職員協議会 佐藤 和幸(さとう かずゆき)

・須藤洋典会長のあいさつ

・来賓あいさつ(以下、敬称略)
自治労本部 書記長 伊藤功
参議院議員 岸 まきこ
・新規加盟単協あいさつ
北海道ブロック せたな消防職員協議会 副会長 佐々木崇仁

・2025年度活動経過報告(事務局、女性連絡会、ユース部)
・女性連絡会アンケート結果報告
・2025年度会計決算報告
・2025年度会計監査報告
・役員選挙委員会報告(中村郁夫 選挙委員長)
・報告事項についての質疑・討論
(報告事項)苫小牧市消防職員協議会 特別幹事 須藤 悟
「全消協の副会長を務めた小野英一さんが釧路消防を退職し、自治労北海道本部のオルグに採用され、消防職員の組織化に取り組んでいる。消防職員にとって頼りになる存在であり、消防職員から自治労のオルグになる例は全国的にも珍しいため、紹介させていただく。」
【2日目】
・第1号議案「2026-2027年度活動方針(案)」
・第2号議案「2026年度会計予算(案)」
議案についての質疑・討論
(質問者順)
質問1 苫小牧市消防職員協議会 特別幹事 須藤 悟
単協代表者会議と定期総会へのブロック・県消協役員が参加する場合、現状は単協枠で参加してしているが、参加枠の追加は可能か。
回答:佐藤副会長
県やブロック役員が代議員として参加し意見を反映させたいという思いは認識しているが、総会、単協代表者会議、県代表者会議は、会則第7条・第8条・第9条に規定の通り、参加対象者の範囲を見直す場合、会則改正が必要となる。各県や単協には体制の違いや事情があること、また予算面での制約もある中で、現状は「自主参加」や「傍聴」枠を設けているが、会場収容人数の問題もあり、「自主参加」や「傍聴」を見越して大きな会場を手配しようとすれば、さらに費用がかかってしまう。現在、会員数の減少が深刻な状況にあり、総会代議員および単協代表者会議の参加対象の拡大には、予算も含めて考え方の整理が必要。
全消協としては「単協-県消協-ブロック-全消協」がそれぞれの役割を持ちながら、すべての段階において連携することが重要と考えている。まずは、ブロック幹事が「全消協幹事会で決定したことを滞りなく、ブロックに伝えていく」、そして「単協、県消協、ブロックの課題を全消協に報告する」という情報伝達の基本の徹底からお願いしたい。
質問2 名張市消防職員協議会 会長 権名津 竜太
(1)今後、広域化が加速し職員の処遇の改悪が懸念されるため、全消協が収集した未組織を含む全国の広域再編時の不具合事例情報を共有いただきたい。
(2)処遇改善にむけ、「3部制交替勤務の実現をめざす」とあるが、その目的は何か。3部制のメリット・デメリットはどんなものか。
回答:佐藤副会長
(1)総務省消防庁は、2024年3月29日に「市町村の消防の広域化に関する基本指針」と「市町村の消防の連携・協力に関する基本指針」を改正し、消防の広域化の推進期限を2029年4月1日まで延長した。現在、高知県では県内15の消防本部を1つに統合する案を示されており、現在の消防署や分署の数を維持して現場の活動に専念させるとのことだが、災害時における消防と市長部局との連携に支障をきたすのではないかといった懸念の声があがっている。
全消協は、消防の広域化について、住民サービスを低下させないことは当然として、職員の削減や人事異動を含めた労働条件の引き下げにつながることのないよう、関係消防本部の全職員の意向を踏まえた慎重な検討が必要と考えている。
広域化の不具合事例の情報について、全消協としては調査していない。今回の要望を受けて、会員に対し調査を行うかどうかは執行部で協議する。
なお、全消協が未組織地域を含め、広域化した消協との情報共有を行うことは可能。まずは課題を抽出し、ブロック幹事を通じてご質問やご意見をいただければ、単協に情報共有をはかっていくことができるため、単協には積極的に情報を繋げていただきたい。
(2)3部制交替勤務の実現は、消防職員の処遇改善に向けた重要な取り組みである。3部制のメリットは、①年間の「無賃金拘束時間の縮減」に直結する、②消防職員の業務負担の軽減をはかることができる、③3部制にすることで管理職ポストが増え昇格の可能性が高くなり、職員の処遇改善につながるなど有益なものと捉えている。一方、デメリットは、3部制には人員が必要となるため、財政の支出増を理由に、消防当局が難色を示すことが想定される。
全消協は勤務体制の見直しを、消防職員の処遇改善の取り組み目標の一つして掲げることとした。各単協は、全消協が掲げた目標のうちからそれぞれの実情にあわせて選択して取り組みを進めていただきたい。単協の皆さんが消防職員委員会などを活用して職員の要望を伝えていくことが、取り組みの始まり。一丸となって頑張っていこう。
質問3 鈴鹿市消防職員協議会 会長 伊藤 祐康
「無賃金拘束時間問題」を活動方針の最優先事項として一番目に掲げるべきではないか。
回答:佐藤副会長
「無賃金拘束時間の解消」は、全消協にとって積年の課題であり、団結権の回復と並ぶ最重要の取り組みであると認識している。ただし、団結権の回復が政治問題であるように、無賃金拘束時間の解消は大幅な予算措置が必要になり、財政問題である。そのため、「掲げれば直ちに解決できる」ものではなく、どちらも解決にむけた道のりは非常に困難なものである。
全消協は、団結権の回復については国際連帯活動や国との定期協議や各種申し入れ、議員懇談会での意見交換、さらに自治労をはじめとする他団体との連携などの取り組みを重ねてきた。こうした活動の積み重ねがあり、2025年6月5日の公務員制度改革関連5法案の衆議院提出につながっている。
一方、無賃金拘束時間問題については、全消協はこれまで目標に掲げながらも、具体的な取り組みには着手できていなかった。しかし、韓国の公労総消防労組との交流を契機に、無賃金拘束時間についても自らが動かなければ問題解決することはできないということを改めて実感したため、「消防職員の処遇改善のための委員会」を立ち上げ、無賃金拘束時間の解消の取り組みの検討を始めることにした。
全消協は、団結権問題も無賃金拘束問題も最重要の課題として取り組んでいく。無賃金拘束時間の解消に取り組むためには、消防職員が団結して集まることが許されないようでは取り組むことができない。活動方針の順序を問わず、消防職員にとって必要な取り組みを着実に行っていく。
質問4 高知市消防職員協議会 長田 哲宜
高知市の立場からの高知県での消防広域化について紹介させていただく。高知は人口減少が深刻という事情もあり、2024年から知事の旗振りで広域化の議論が進められている。県は広域化ありきで議論を進めており、県主導のあり方検討会は現在まで9回開催、住民サービスや職員の処遇の観点が無視されている。広域化したら単協の位置づけがどうなるのかという課題もあり、高知県本部、高知市職とも連携して対応している。県は、表向きは職員の意見は大事といいながら、消防職員には団結権にはないから意見を聴かなくてもいいという態度もとっている。県は広域化のメリットを打ち出しているが、実務者の協議の中では県の提案は理想論という話も出ている。現在15本部のうち5本部が3部制、10本部が2部制。当初、県はすべての本部を高知市と同じ3部制に統一し、給料・処遇も高知市に合わせるという条件を提案していたにもかかわらず、今になって均一化から多様性という話も出てきている。各市町村の財政が厳しいため、職員・施設・車両は自賄方式でやってくれということである。
また、県内15本部のうち13本部で、救急車2台出動した時点で予備車を構えて非番招集している。県は広域化でこうした運用は解消できると言っているが、応援するにも消防本部間が離れている上に、応援した本部も非番招集しなければならなくなる。市民サービスを優先すれば非番招集だが、職員の負担を考えるとどうすべきか対応に悩んでおり、意見があればお願いしたい。
回答:佐藤副会長
非番招集の件については本部毎に実情が異なる。人員確保していかなければならないと思うが、全消協としては今後課題検討・共有をしていきたい。先ほど広域化の質問をされた名張消協の権名津さんと連携いただければと思っている。
質問5 福岡県消防行政研究会 事務局長 吉田 真也
(1)役員の負担軽減はかるため、福岡県消研では副幹事の承認やウェブ開催の併用、役員活動補助など実施している。全消協でも役員の負担軽減策はあるか、または実施を検討しているか。
(2)大阪市のビル火災での消防職員の殉職事故を踏まえ、労働安全への認識向上をはかる学習の場を予定しているか。もしくは各県に取り組みを促す予定はあるか。今後の組織拡大の足掛かりにもなるため検討いただきたい。
回答:佐藤副会長
(1)ご提案に感謝する。協議会の役員の活動を負担だと思う方もいれば、絶対にやらないといけないという方、さまざま考え方はあるが、協議会活動を前に進めていくために歯を食いしばって頑張っていきたい。負担軽減の考え方はさまざまだが、できるかぎり検討し協議会活動および全消協活動を進めていきたい。
(2)全消協の行事はさまざまあるが、労働講座の中で労働安全の取り組みを進めていくのが良いのではないかと考えている。他の単協や県消協で実施している「労働安全の日」の取り組みをSNS等で情報発信し、ブロック幹事につなげ、全国で情報共有する取り組みをいただきたい。
質問6 苫小牧市消防職員協議会 三浦 孝仁
方針に「高齢期職員が安心して働ける環境整備に取り組む」と掲げているが、具体的にはどのようなものか。これまでの進捗状況も伺いたい。
回答:佐藤副会長
全消協は、高齢雇用に関する当初懸念された問題について、シンクタンクを設置し意見交換を行ってきた。定年の段階的引き上げは2023年に制度開始されたが、現場ではまさに今問題が出てきているのではないかと認識している。毎年実施している総務省消防庁への要請項目にも盛り込んでいる。この要請項目に反映するため、全消協は高齢期雇用に関するアンケートも実施している。2022年には総務省消防庁が「定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会」を開催し、全消協も委員としての参加を求めた。結局、参加は認められなかったが、代わりに自治労の八巻労働条件局長(当時)が委員として参画し、八巻委員を通じて全消協の意見が報告書に反映された。現在の全消協の取り組みとしては、制度開始から2年が経った現在の状況について調査中である。
・議長団解任
・旧役員代表者あいさつ(須藤会長・佐藤副会長)
・新役員代表者あいさつ(岡 会長)

・岡新会長による「団結がんばろう」

以上をもって閉会した。
2026年度から役員体制も一新し、岡新体制のもと全国の会員の声を聞き、課題解決に取り組んでいく。
全消協の役割は、問題を共有し課題を抽出すること。抽出した課題を国などに申しれることにある。
新年度からは活発な活動を展開し、全国の会員に寄り添ったサポート・住民サービスの向上に取り組み活動を行っていく。
困りごとがあれば気軽に相談し、一人で抱え込まず「協議会」を活用していこう。