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第34回全国消防職員研究集会

「住民の安心・安全」メインに活発な議論を展開

第34回全国消防職員研究集会は,社会文化会館を主会場に全国から全消協未加盟・未組織消防職員を含む134単協,約350人が参加した。
集会冒頭,主催者を代表し,米田会長があいさつ。「消防職員をとりまく情勢が,行政改革,地方分権,と広域再編,給料制度の地域給への見直しなど厳しい環境に直面している状況の下,61年以降34年間,市町村の火災予防・警戒等を行うための最小限度の設備および人員を定めてきた『消防力の基準』が,各市町村消防力の整備を進める上での指針として『消防力の整備指針』に改められようとしていることに象徴されるように,消防行政の大転換が図られようとしている。全消協はこうした状況に対応するため,この間の運動の積み重ねによるその成果を共有化していくことを通じ,国・地方自治体・地域社会に対して消防行政のあるべきビジョンを発信する必要がある。」と強調し,この共通認識に立って団結権問題への取り組み,消防職員委員会制度の改正に至る経緯と今後の自主組織づくりの重要性を訴えた。
集会2日目には5分科会に分かれ討議を行い,全国各地の消防職場における賃金・労働条件,労働安全・衛生対策,地域住民の安心・安全を確保するための救急体制など消防行政,その他全般にわたる調査・分析に基づく改善に向けた取り組みなど活発な議論を展開した。

日程

【第1日】(5月11日)13:00~17:00 全体集会(社会文化会館:5Fホール)
13:00~13:05 開会・座長選出 小田 規親 幹事
13:05~13:15 全消協あいさつ 米田 晋 会長
13:15~13:25 自治労本部あいさつ 人見 一 夫 自治労副委員長
13:25~13:35 民主党代表あいさつ 角田 義一 民主党議員懇会長
13:35~13:55 地元代表あいさつ 吉岡 裕之 関東甲ブロック代表
13:40~14:20 経過報告 山崎 均 事務局長
(休 憩)
14:40~16:00 基調講演「消防職員の団結権確立に向けて」
ILO理事・連合総合国際局長  中嶋 滋 氏
16:00~16:20 消防職員委員会懇談会の経過と今後の対応について
自治労組織局次長 比留間 稔史
16:20~16:50 分科会の説明・提起
16:50~17:00 (終了後、各自ホテルへチェックイン)
18:30~ 全体夕食懇親会(赤坂プリンスホテル 別館5Fロイヤルホール)
【第2日】(5月12日)9:00~16:30 分科会討論(主婦プラザエフ・東京グリーンパレス)
第1分科会 「組織の強化拡大と消防職員委員会」
第2分科会 「賃金・労働条件の改善」
第3分科会 「これからの消防行政~未来の消防行政を考える」
第4分科会 「救急医療体制の課題」
第5分科会 「労働安全衛生~快適な職場づくり」
【第3日】(5月13日) 9:00~11:30全体集会 (社会文化会館:5Fホール)
9:00~10:30 ・各分科会報告
10:30~11:00 ・集会の総括的まとめ 米田 晋 会長
11:00 ・団結ガンバロー 迫 大助 副会長

基調講演

消防職員の団結権確立に向けて

中嶋 滋(ILO理事 連合総合国際局長)

研究集会初日の全体集会は,中嶋滋ILO理事から「消防職員の団結権確立に向けて~ILO(結社の自由委員会)の結論・勧告と今後の取り組み~」と題して基調講演が行われた。

消防職員の団結権は、国際舞台では「世界の常識」である

まず,消防職員の団結権というのは「世界の常識」で,日本は極めて特別な例外的な存在として否認している状況がある。ILOは1919年に設立された現存する国際連合の中で最も古い歴史を持つ機関で,国際的な労働基準をILO条約あるいは勧告という形で制定する役割を持っている。消防職員の団結権問題はILOの条約の中で結社の自由と団結権の保護を目的とした87号条約に関連する問題で,同条約は1948年に制定された。ILOの条約は通常2回の総会レベルの議論を経て最終的には「3分の2以上」の賛成をもって成立する。
この「3分の2以上」の賛成をもって制定されるということは,ILOの構造から見て非常に大きな意味を持っている。というのは,ILOは他の国際機関と違って,政・労・使(政府側と労働側と使用者側)の3者をもって構成され,政府側2票,労働代表1票,使用者代表1票,1国で計4票を持つと形になっている。その「3分の2以上」の賛成ということは政・労・使の大方が賛成しないと条約は成立しない構造である。このことから消防職員の団結権保証は「世界の常識である」ことが如実にいえる。
ところが,この条約にあまねく保証する原則の例外として第9条で「ただし軍隊と警察については国際条約に扱わない」で,団結権を保証する,しないについては国内法にまかせようという基準が含まれる。問題は、この唯一の例外である「軍隊および警察」の中に消防が含まれるかということである。警察の中に消防が含まれるとすれば、消防に国内法の中で団結権を与えなくともよいということになる。このことに関してILOは、後述のように「消防は警察に含まれない」、即ち他の労働者と同様に軍隊や警察と違って、自由に自分たちの意思に基づいて労働組合をつくり、それに加入する権利を保障されるべき労働者としてある、ということが謳われており、何回にもわたってILOの中で確認されている。

理不尽な「警察と消防」の同一視と日本政府の条約違反

このことに関して、ILOの監視機構どういう形になっていてどう扱われてきたか、とりわけ結社の自由委員会でどういう結論が出されているか見てみよう。
見てきたように、ILOにおける消防職員の団結権問題は、87号条約の違反事案として扱われてきた。この条約違反というのは、一般的加盟国すべてに当てはまるわけでなく、その加盟国政府が条約を批准した場合には、条約の趣旨に合致するよう国内法を改正しなければならない。労働政策も条約の内容に適合する形で展開されなければならないという義務を負う。
日本の場合、1965年にILO87号条約を批准した。従って批准した以上、その条約に適合するような形で国内法を改正しなければならない義務を負っているわけで、具体的には地方公務員法の中にある職員団体の結成に関して、「警察と消防」についてはこの権利を与えないという条項は、当然批准に伴って改正しなければならなかった。しかし、日本政府は前出の第9条にいう「警察」の中に消防が含まれると強弁し、地方公務員法の条文改正の必要なしというかたくなな態度をこれまで改めてこなかった。
こうした当然の義務を果たさない政府に対してILOは、加盟国政府として許されない対応であり態度であることを具体的に指摘し、監視する機関を持っている。
まず第1に、条約勧告適用専門家委員会がある。これは、国際法の権威である世界の20人の法学者によって構成されている、非常に権威ある専門性の極めて高い委員会である。この委員会は、加盟国政府ならびに代表的な労働団体(日本の場合・・連合と経団連)の3者から、その国(日本)が批准している条約が守られているか適用状況について毎年9月までに報告を受け、それを事務局が整理し11月~12月にかけ2週間以上の時間をかけて論点を専門家的立場から検討して見解を明らかにする、それが3月のILOの理事会がその内容は適切なものであるという判断をすると、毎年6月のILO総会の基準適用委員会にその報告書が提出され、これをたたき台に同委員会で議論される。この基準適用委員会は、各国の一般的な適用状況の審査とともに、毎年約25件の専門委員会から違反しているのではないかと指摘され個別ケースについて、政府の代表を呼ぶなどして審査し議論する。
日本の消防職員の団結権問題も、何度もこの総会における基準適用委員会の個別審査の対象とされた歴史を持っている。この適用委員会での議論というのは、何回も「日本の消防職員は警察の一部ではない、従って、当然団結権が保障される存在である」ということであり、早急にその違反状態を克服する措置がとられるべきであるということが委員会の結論として出ている。

国際監視機構「結社の自由委員会」は、毎年団結権保障を迫っている

もう1つの監視機構が、結社の自由委員会である。これは、結社の自由、つまり自由に団体をつくり、その団体に加盟するという権利は労働組合はもちろんのこと、使用者についても使用者団体をつくり、それに加盟するという権利は認められるべきで、ILOが3者構成主義による構成を組織運営の基盤にしていることから、最もILOの中で基本的にして基礎的な条約は87号条約であるといわれている。
87号条約(結社の自由、団結権の保障)に関しては、加盟・批准国がこの条約を守る義務を負う一般的原則に加えて、たとえ批准していなくても、結社の自由を侵害する、あるいは禁止するという措置を加盟国政府がとった場合に、ILOはそのことについて事態を早急に解決する具体的措置を加盟国政府にとるよう求めることができる仕組みを条約制定とともにつくった。
それが結社の自由委員会で、そのスタートは従って1948年の条約制定後、1950年である。
いずれにしても結社の自由、団結権の保障に関しては、主にこの3つの監視機構がILOの在立基盤である重要な原則を維持するために作動しているわけで、そういう仕組みの中で消防職員の団結権問題が毎年のように問題になり続いているのである。

「労働基本権」総体の認識を深め、団結権確立への運動構築を

1976年から自治労は皆さんとともにILOの場で、消防職員の団結権保障に向けた具体的取り組みを開始する。先程から触れているように、総会の基準適用委員会の審査に参加するということを通じて、常に我々の主張に近い、あるいは満足させる結論は得られるけども、一向に日本政府はそれを真摯に受け止めて具体的な法改正の作業を実施しないという事態が20年近く続き、らちが明かない。
そこで、より職場の実態に合った形での組織活動が展開し得るような具体的な形態を追求する取り組みが同時に必要ではないかという問題意識から、95年の総会で団結権保障に向けた一里塚・第一歩として消防職場に「消防職員委員会の導入」ということを勝ち取る取り組みを進め、旧自治省との協議とその合意の基づくILOでの取り扱いということに至った。
この「合意」はいわば同床異夢で、我々は団結権保障に向けた第一歩に過ぎないという位置づけで、この制度の導入を図った。ところが、旧自治省(現総務省)側は団結権保障に代わる措置であると考えた。
ここに「合意」という表現にはふさわしくない同床異夢的なズレがあった。このズレの一方の当事者である旧自治省(現総務省)の考え方は、基本的には現在も当時と大きくは変わっていない。
この制度の導入を基礎にして、職場における運動をどう構築していくか、全消協としての運動を自治労運動との提携を含めてどのように展開するのかということが、かたくなな当局側の姿勢を変えさせる基盤としてあるだろう。そのために、ILOの判断というものをどのように活用し得るか否かが問われる。
そういう観点から、ILOはこう言っているという一言で済ませるのではなく、労働組合の団結権保障、団体交渉権の保障、あるいは公務におけるストライキ権の保障の原則と例外について、どのようにILOは考えているのかという労働基本権の総体を消防職員の皆さんも把握して、その認識を基礎にした具体的な活動を展開するということが大きく求められている。

分科会の概要

第1分科会

組織の強化拡大と消防職員委員会

助言者に自治労の比留間組織局次長と戎居労働政策研究・研修機構・国際研究部調査員を迎え57人が参加した。
はじめに、助言者の戎居さんからILOにおける消防分野の労働者に対する方針と活動状況について、次の報告を受けた。
(1)ディーセントワーク:ILOの掲げる4つの戦略目標、(2)公共緊急サービスの性質と最近の傾向、(3)公共緊急サービス部門合同会議、(4)ガイドラインフォローアップ活動の現状、(5)日本の対応と今後の課題、であった。
国際的な状況について話を聞くことができ有意義なものであった。
次に、迫副会長より「消防力の基準の改正と問題点」について報告を受けた。その中で今回の改正は、現在の消防力に合わせた指針を作りながら充足率を上げていこうとしており、現場を知らない者が作成したのもであるので、今後全消協として逆提案が必要ではないかと提言した。
午後からは、比留間組織局次長から「消防職場をとりまく情勢と自治労の消防職員支援活動」について提起を受けた。さらに、消防職員委員会制度の改正についての説明があり、今回の改正の意見取りまとめ者は、全消協が担う大きなものであると強調した。
参加単協からの活動状況として、(1)単協の取り組んでいること、(2)単協が抱えている問題、(3)組織率が100%にならない理由を中心に報告がなされた。組織強化の方策も必要な単協の現状等が分かり有意義なものであった。
最後に、米田会長が「今回の消防職員委員会制度の改正をよい契機として活用し、組織の強化、また拡大につなげていただきたい」とまとめた。

第2分科会

賃金・労働条件の改善のために

総括・伊藤事務局次長、座長・岡九州幹事、記録者・中村東海幹事、助言者に松岡二郎(明治大学講師)、菅家自治労労働局次長を迎えて行い、はじめにテーマを(1)労働基準法は交替勤務者に何を求めているか、(2)公務員制度改革、に置き討論を進めることを伊藤事務局次長から提起した。
午前は菅家労働局次長から「公務員制度改革について」の講演があり、その中で人事院勧告・評価制度の進捗状況の説明があった。人事院勧告は約5%カットが言われ、地域給を導入するという人事院の考え方の説明があった。
午後からは松岡二郎氏(明治大学講師)の「労働基準法について」の講演を受けた。その内容として消防職員もいくつかの例外があるが、原則労基法が全面適用であること、「1日8時間労働制」にふれ、労基法は労働者が自らの意思で働くことへの規定ではなく、使用者に向けた適用基準であり、その基準によって裁くのは、要するに使用者に対してであることなど法の精神と趣旨を明らかにした。また、休憩時間の振替えの問題について、労基法第34条の休憩時間の三原則の内、自由利用の原則と一斉付与の原則が労基法規則第31条及び33条で消防職員に対しては適用除外になっている。そのため、消防職員は本来なら使用者が業務命令を下すことの出来ないはずの休憩時間においても庁舎内で待機し、出動命令が出ればいかなる状況下でも瞬時に業務に入っていかなければならない。そのような厳しい環境下にいる職員の休憩時間を振替えるというのは、労基法に照らして問題ではないか、などの議論がかわされた。この分科会では労基法の概念を再度考えさせられると同時に各市町村の条例が労基法に合致しているか再度点検する必要性が確認された。

第3分科会

未来の消防行政を考える

助言者に宮﨑伸光法政大学法学部教授を迎え「市町村合併や広域再編による住民サービスおよび今後の消防行政の方向性」「消防力の整備指針と国民保護法」を討議の柱にした。助言者から特徴的にはJR福知山線脱線事故時の救助実態、阪神淡路大震災を教訓とした地域住民との連携と救助といった問題提起がなされた。
また、世界における日本の常備消防率の高さとその発達した背景を踏まえ、単独より組合消防が多いのはなぜかとの問題提起があり、北海道の常備化実例や財政面から言及された。
さらに、今後は自治体の財政逼迫という中で市町村合併・広域再編成が進み、管轄面積の拡大などにより消防行政が希薄化するのではないかとの危機感が示された。
こうした様々な提言をうけ、「広域連携体制の整備か」「自治体消防の充実か」についてディペート形式でグループ討議が活発になされた。
午後からは、「消防力の整備指針」と「国民保護法」について迫全消協副会長より、概要およびポイントについて提言した。消防力の整備指針については現在の「消防力の基準」が満たされていない(現状の7割程度)指針となり、車両決定後、人員を配備するのはどうかなどの問題提起があった。また、国民保護法の検証では緊急消防援助隊にも見られるように地方分権ではなく国主体での消防行政ではないかとの鋭い観点から問題指摘があり、その後質疑応答で、活発な意見交換を行った。

第4分科会

消防救急体制の課題

「救急高度化・多様化にどう対処していくか、みんなで考えよう!」をテーマに現在の消防救急に関わるタイムリーな課題を中心に進めた。討議の柱として、「救急出動件数多発に伴う救急有料化、民間救急、救急隊員の労務管理」「救急救命処置の拡大と気管挿管の効果」「消防力の整備指針と救急業務」の三つについて取り上げ討論した。
午前は国立病院機構横浜医療センター救急救命センター長の山本俊郎先生に「MC体制の現状と課題」と題して講義を受けた。三年前から全国でMC体制の整備が急速に進められているが、全国的にも温度差があり、進んでいる所と、まだ手もつけられていない地域などの状況が示された。
午後は小川幹事から「全消協活動方針と救急業務の充実」について、今日の消防救急体制の現状、全消協の活動方針を踏まえ今後克服すべき課題を提起した。
グループ討議で「救急出動件数を減らすには」というテーマで討議し、財政難にあって、やはり救急搬送の有料化も必要であるという意見と、有料化自体に反対であるという意見に分かれた。一致点として日本が唯一、貧富の分け隔てなく同等の待遇または処置が無料で受けられる等の搬送システムは、世界に誇れる救急搬送システムであるということを確認した。
しかし、救急出動件数の増加という現状は、単に件数の増加だけではなく、救急車を要しない軽症の傷病者の搬送が多く、本当に救急車を必要とする緊急性の高い傷病者が利用できない状態にあるのも事実として多く出された。いずれにせよ救急車の有効利用・運用については住民、行政を交えた更なる議論が必要であるとまとめた。

第5分科会

労働安全衛生~快適な職場づくり

冒頭、小林副会長からテーマである「消防職場における労働安全衛生の実践的活動と、公務災害のない快適な職場環境づくり」について基調提起がされた。
まず、自治労顧問医師・上野先生から「職場安全衛生の課題と実践」と題した講演を受けた。この中では、本年労基法改正予定の最重要案件である過重労働対策、特に週100時間を超えた労働を行った場合、産業医の診断が求められることなど述べられた。特に、最近の傾向として、ノーペーパレスを進めるため、職場内にパソコンが導入されているが、添付ファイルの膨大化による情報の増大傾向があり、報告文書の作成作業が業務の困難性を高める結果となっているとの指摘があった。
また、メンタルヘルス対策について相談室の設置などとともに、職場での信頼関係を築くことがまず重要である。安全対策について、危険予知を最重要課題と捉え、どこにどんな危険が潜んでいるか予測・指摘をしなければならないとの指摘もなされた。次に、2004年全消協と自治労が共同で作成した「消防職員のメンタルヘルスに関する調査報告書」について、当時の編集委員である高橋氏より、その内容が報告された。
午後からは、労災事件の弁護を数多く担当されている西東京法律事務所・西畠先生による「公務災害の認定と予防」の講演、グループワークによる実践的公務災害認定への実務講習を行った。
その中で最近の傾向として公務災害が多発しているのは消防職と清掃職で、突発性の原因と継続性・疲労性の原因が混在しているものと考えるべきとの指摘もなされた。
講演の後は、公務災害認定請求の実務としてグループに別れ、公務災害認定請求書の災害発生の状況欄の記入例を、業務中に起因する腰痛に対してどのように説明するかグループで討論し、発表したのち講評を受け、最後に質疑応答を行った。

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