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第33回全国消防職員研究集会

あるべき消防行政のビジョンを発信

5月12~14日、函館市で,第33回全国消防職員研究集会が開催され,全消協未加盟自主組織・未組織消防本部の消防職員を含む156単協405人が参加した。 集会では、行政改革、地方分権、公務員制度改革などをうけて、全国の消防職場における賃金、労働条件労働安全衛生対策、その他消防行政全般にわたる調査と分析をし、その改善に向けた取り組みについて幅広い議論が展開された。
まず,主催者を代表して米田晋会長の挨拶のあと、開催地の井上博司函館市長から歓迎挨拶、自治労の笠見猛副委員長、大場博之自治労北海道本部委員長、阿部一行北海道消防職員協議会会長から連帯の挨拶、金田誠一衆議院議員から激励の挨拶、所用により欠席した高嶋良充参議院議員からはメッセージビデオが届き披露した。
挨拶の後、山崎均事務局長から、2003年5月の第32回集会以降の活動および2組織が新たな全消協加盟状況について報告を受けた。

第1日目は、森井利和弁護士から「消防職員の無賃金拘束時間について」と題して、本集会の基調講演が行われた。講演のなかで、仮眠時間と労働時間について、①前提事実として、消防職員の勤務時間は24時間拘束勤務。但し、途中、夜間の時間帯(6時間程度)に「仮眠時間」が入り、「労働時間」として位置づけられていない。仮眠時間帯は職場内の仮眠室に滞在し、災害等の場合、出動態勢をとらねばならず、現実には災害等の場合、出動する義務がある。また、許可なく外出することは禁止されている。これは、労働時間であるのか、ないのかが問題となる。②大星ビル管理事件最高裁判決(2002年2月28日)が明らかにしたことは、仮眠時間帯といえども、労働からの解放の保障がない場合、指揮命令下にある時間であり、それは労働時間である。次に、所定労働時間ではないが、このようにして労働時間と評価される時間について、労働契約を根拠として、どのような賃金が支払われるかは、労働契約の内容による。しかし、仮眠時間帯が労働時間とされた結果、法定労働時間を越える場合、あるいは、深夜労働時間に該当する場合には労働基準法を根拠として37条に基づく賃金が支払われるべきである。この場合、割増賃金の算定基礎となる賃金は「通常の賃金」であり、別異の賃金ではない。③大星ビル管理事件訴訟の性格は、ビル管理業を主要業種とする会社であり、従業員数は当時約1,000人。ビル業界としては大手に属し、原告10人はいずれもビルの管理に従事する「技術員」であった。④事実関係は、原告らの業務、本件当時の労働時間の定め、労働時間に関する就業規則などの定め、仮眠時間帯に対する取扱いならびにその作業を明らかにした。⑤東京地裁判決(1993年6月17日)では、「仮眠時間帯は労働時間であるかどうか」だけが争点となり、判決は、終始、労働基準法の問題として判断している。⑥東京高裁判決(1996年12月5日)の争点は2つあり、「仮眠時間帯は労働時間か」に対し、「何事もなければ眠っていられる時間といっても仮眠時間を労働から開放された休憩時間であるということはできない。仮眠時間は実作業のない時間も含め、全体として控訴人会社の指揮命令下にある時間というべきである。」と判断。次に「労働時間に基づき割増賃金が請求できるか」について、24時間勤務についた場合には、実作業がない場合には泊まり勤務手当を支給するのみで、仮眠時間帯については時間外手当も深夜就業手当も支給しないことが労働契約の内容となっていたと判断。さらに「労働基準法第37条に基づく時間外割増賃金、深夜割増賃金を請求できるか」については、請求対象となり、その場合の割増賃金計算の基礎は、通常の賃金となり、何事もなければ眠っていてもよい時間であるといっても、賃金価格の低下はよくないとしている。⑦最高裁判決(2002年2月28日)では、「仮眠時間帯が労働時間かどうか」については、仮眠時間であっても労働からの開放が保障されない場合には労基法上の労働時間に当るとした。「労働契約に基づく割増賃金請求権があるのか」については、労基法上の労働時間であるからといって、当然に労働契約所定の賃金請求権が発生するわけではなく、仮眠時間に対して、いかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まる(定めにない)。「労働基準法に基づく割増請求権はあるのか」については、法定時間外労働に対しては、時間外割増賃金及び深夜割増賃金を支払う必要がある。「法定時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金の計算の基礎となる賃金は何か」については、所定労働時間における通常の賃金を計算の基礎におくべきであってこれよりも低い賃金を別途立てて計算の基礎におくべきでない。しかし、最高裁判決で残された課題があり、原審差戻となり、東京高裁での和解(2003年2月24日)となった。⑧労働時間の意義として、地裁、高裁、最高裁の各判決が明らかにしたことは、「指揮命令の下のある時間は、仮に具体的な実作業を行っていなくても労働時間である」とした。さらに東京地裁の判決後、次々と同様の仮眠時間についてそれが労働時間であると判断される判決が出ている。⑨消防職員の場合の問題点として、まず、労働時間制を指摘、仮眠時間中の義務として、指示があった場合には直ちに出動しなければならない義務があり、この指示には従わなければならない。一体、この義務はどこから生じるのか、どのような根拠規定があるのか。次に発生頻度の問題として、大星ビル管理事件では事実上完全に労働から解放されている場合には、別論であり、「どの程度突発事態が発生しているのか」が問題となる。さらに指令係員の存在(最高裁の事例とは異なり、正規の勤務時間において119番通報の受信業務に従事する者がおり、仮眠時間中の職員は対応しない。)について提起をうけた。おわりに、今後の課題として、仮眠時間の取り扱い、時間外勤務手当の支払い要件などの調査・改善を挙げた。

第2日目は、前日の提起をうけて、消防職場の問題について、第1分科会「組織の強化と自主組織づくり運動」、第2分科会「賃金・労働条件の改善のために」、第3分科会「未来の消防行政を考える」、第4分科会「救急医療体制の課題」、第5分科会「労働安全衛生~快適な職場づくり」の各分科会に分かれて活発な討議を行った。

第3日目の全体集会では、各分科会からの次のような概要・報告があった。
第1分科会「組織の強化と自主組織づくり運動」は助言者に松永徳芳自治労組織局長を迎え、次の提起があった。①消防職場をとりまく若干の情勢と課題のなかで常備消防の設置義務制度・救急業務の実施義務制度の廃止、市町村合併・広域再編に関する動き、ILO公共緊急サービス合同会議の開催、消防力の基準の見直しに関する動向、消防職員の勤務時間問題、2004年度政府概算要求の取り組み、②団結権問題の動向と取り組みのなかで消防職員委員会制度の運営実態と対応、新たな段階に入っている団結権問題、ILOを動かした全消協の取り組み、③自主組織づくりの結成の意義と方向性のなかで働きやすく、働きがいのある職場づくり、消防行政の改善・消防力の強化、自主組織づくり。これらの提起は、組織があればこそ展望があり、自らの組織力を高めるために組織拡大運動を日常課題にすることが必要であると提言した。次に実態報告として、6ブロック7単協の市町村合併状況をうけ、合併については様々な問題があり、特に自主組織のある消防本部が未組織消防本部のところと合併する時に多くの問題が発生するようになった。さらに未組織消防本部の消防長が新しい消防長になる時、既存の単協に対して妨害や圧力をかけており、「消防協は違法な組織である」、「名称に消防本部名を使うことは許可しない」など未だこのようなことをいう消防長がいることに驚きを隠せず、これが未組織消防本部の実態である。まとめとして、米田会長から「組織拡大5ヵ年計画について本年で2年経過し、組織化が進まない現状があり、この計画の軌道修正を含め厳格な検証を行い、組織化政策を全力で推進する」といった力強い言葉で述べた。
第2分科会「賃金・労働条件の改善のために」は、第一日目の基調講演をした森井和利弁護士(詳細については前述の講演要旨参照)、菅家功自治労労働局次長を助言者に迎え、「増大する消防需要に対応可能な勤務体制」をテーマに消防職場の仮眠休憩時間の問題点と対応の提起があった。大星ビル管理事件を踏まえて全消協としては、休憩時間の3原則が全面適用される一般労働者と休憩時間に特例が設けられている消防職場とは一線に論じることが出来ないことを前提に討議した。一方、総務省消防庁からの「消防職員の勤務条件等の適正運用」についての発文から問題点が明らかになり、タイムリーな課題で論点がはっきりとした分科会となった。討議内容から仮眠休憩時間について、それぞれの単協の情報交換を行った上で大星ビル管理事件と消防職場を比較して、消防は仮眠休憩時間帯における出場機会はそれを上回る現状があり、これに対して何等かの手段を講ずるべきではないかとの意見があった。「休憩時間の繰上げ、繰り下げ」については、当局側の理解認識不足があり、条例・規則に定めさえすれば可能であるといった解釈を武器に経費削減に走る傾向が報告された。これらの問題は、発文内容に見合った適正運用を行い、労働時間・休憩時間の位置・長さを明記させる運動を行い、仮眠時間帯の出動実績をカウントして記録に残し、無賃金拘束からの開放を求めていくキーワードであり、新たなスタートを切ることが可能となると確信した。
第3分科会「未来の消防行政を考える」は、宮﨑伸光法政大学法学部教授・全消協消防総合研究委員アドバイザーから講演、自治体行政の財政が緊迫し、経済見通しが不透明ななかで、今後、消防としての公共サービスの展開。過去の自治体債務処理、今後概ね10年間続く大量退職者及び人件費、手当問題。これからの消防職場における女性消防職員の業務の確立。各自治体での消防費のパーセント及び首長、議員によるあきらかに身の丈を越えた箱物建設の実態等があり、また、国外の消防業務状況、とりわけ救急業務として交通事故等の搬送は行われているが、家屋・建物はプライベート空間のため医療分野であり、日本との格差について問題を提起した内容の講演であった。そして、分科会の内容を一部変更し、①総務省消防庁から新聞報道された消救車問題、②救急支援出場時の実態及び道路交通法、道路交通法施行令の違法性について座長から緊急提起し、グループ討論をした。そのなかで、消救車問題の内容については導入する消防がないのでは。車両の色の割合はどうなるのか。第一線での現場活動では装備を積載するには中途半端。人員削減につながるのでは。財政力のない町村で導入が進むのではないか。衛生的に好ましくない等の意見が出た。救急支援出場の内容にあっては、高速道路での災害、高層マンションからの患者搬送、片側2車線道路での災害等に出場しているが、住民サービスおよび隊員の安全確保を目的に道路交通法、道路交通法施行令の法整備を行うことが先決であることが確認された。その他、消防行政および消防職員に期待される内容にあっては、動物救助、住民票の交付などの業務を行い、財政難のなか、消防が地域住民に何が出来るか、もっと単協で話し合い住民サービスの向上に努める。救急。消防、救助、予防各業務を細分化し、充実の徹底を図る等の確認があった。
第4分科会「救急医療体制の課題」は、小出明知市立函館病院救命救急センター長から「気管挿管および薬剤投与における問題点」を講演、そのなかで①道南MC協議会の取り組み、②救命処置拡大とMC体制の構築の経過と今後一層の充実を図るべき検討課題として処置拡大と体制構築の関連、気道管理と気管内挿管、気管内挿管の実施のための要件、薬剤投与について、私見と演習課題を織り交ぜ、参加者を惹きつける講演内容であった。講演の結びに、包括的処置拡大に伴うMC体制の確立は医療機関と消防機関の距離が縮まるきっかけになることと、互いの組織内の救急体制の充実が重要であるとの提起があった。次に井上雅行氏(函館市消防本部)から「函館市における救急医療体制」報告を受け、今後の課題として、各種現場活動実施要綱の見直し、救急隊の増隊、救急救命士の養成と研修、救急業務高度化推進、救命講習体制の見直し、PA連携、隊員の勤務体制を網羅した提起があった。他に「救急救命士の処置拡大に関する問題点」から救急の歴史を紐解き、1948年(昭和23年)の消防組織法から救急業務の開始が15年遅れたことで、当時の救急業務が重視されず、優秀な人材が警防・予防に使われたため、救急業務に携わったことすらない幹部がおり、救急業務に対する認識・理解が低く、かつ、財政による政策も立ち遅れ、救急の高度化が妨げられる現状があり、救急救命士制度発足から現在に至るまで消防によるMC体制の確立が徹底されず、当該の課題である気管挿管と薬剤投与において遅々として進まない組織体制が存在することを提起した。グループ討論では、気管挿管の行為について、責任関係の明確化と保障における不信感、PA連携については、救急現場におけるマンパワー不足を補うため、ポンプ車による出動は大枠で賛成論があったが、ポンプ車での救急支援活動における出動が道路交通法違反になるということに戸惑いが見られた。薬剤投与に関しては情報不足で課題の認識も浅いが十分な教育研修を経て受講出来る職場制度の確立を望む意見があった。
第5分科会「労働安全衛生~快適な職場づくり」は、中村義彰全消協消防総合研究委員アドバイザーから「消防職員のメンタルヘルスに関するアンケート」を基にした調査報告書の解説があった。当初、非常事態ストレス(CIS)では、消防・救急でストレスが大きいと考えられていたが、通信勤務いわゆる指令課員のうけるストレスが大きいことに着目し、相手(住民)が見えないなかで、火災・救急などの災害対応をしなければならないこと、特に最近では、救急の高度化に伴い、CPRや応急手当等の口頭指導や複雑化する災害対応が背景にあると考えられる。また、自覚症状として、「判断力、思考力が低下している」、「普段よりイライラしている」、「夜よく眠れない」「理由もなく疲れる」という項目がどの業務も共通して高かった。PTSD、CISといった問題も大きいが、日常業務のなかで受けるストレスも見逃すことが出来ず、こうした情報も提供する必要がある。さらにILOの「公共緊急サービスに従事する労働者に対する助言」を各職場で取組強化していく必要性、まとめとして、各職場でメンタルヘルス対策の際、この調査報告書を参考にして、より良い職場を作ってもらいたいと締め括った。次に上野満雄自治労顧問医師から「職場安全衛生の課題と実践」を講演、消防職員はいろいろな面で不安定で過酷な職場でストレスが非常に多いという前段でうつ病について、話があった。①うつ病の不調兆候として、不眠、無気力、決断不能、食欲低下、厭世感(自分を責めること)。②うつ状態の対応として、休養が一番の薬だが、薬物投与(抗うつ薬等)の使用も必要な時がある。他に、負担軽減、不調への理解、励まさないことや自殺や失踪などの予防が挙げられる。③うつ病になりやすい心の不調と性格傾向では、まじめ、几帳面、仕事好き、他人からの評価がいい、断れないなどのタイプが挙げられる。④うつ病は、誰でもなりうる病気で15人に1人がなるといわれている。いわば風邪のようなもので、早期治療で治すことが大切。ただ、この病気は偏見等があり、うつ病と思われる人の3/4が医療機関で受診していないと言われている。このことから職場におけるメンタルヘルスケアシステムの構築が必要で、うつ病になった或いはその予備軍的な人、本人や知人、家族が相談しやすく、受診しやすいシステム作りが必要であると提起があった。他に、職場改善事例報告(福山地区消防本部)、職場巡回(函館市西消防署弥生出張所)を実施した。まとめは上野満雄自治労顧問医師から有意義な職場巡回のなかで良いものを得たことを自分たちの職場へ持帰り、職場の安全衛生の解決や庁舎建設時に生かせるアドバイスを受けた。
続いて、質疑応答を行った。最後に集会まとめとして迫大助副会長から3日間の総括があり、米田晋会長の「団結がんばろう」で集会を終了した。

日程

【第1日】(5月12日)13:00~17:00 全体集会(ホテル花びし:芙蓉の間)
13:00~13:05 開会・座長選出 鳥 生 泰 之 幹 事
13:05~13:15 全消協あいさつ 米 田 晋   会 長
13:15~13:25 自治労本部あいさつ 笠 見 猛 自治労副委員長
13:25~13:35 自治労北海道本部あいさつ 大 場 博 之 委員長
13:35~13:55 来賓あいさつ
13:55~14:00 祝電・メッセージ披露
14:00~14:30 経過報告 山崎事務局長
(休 憩)
14:45~16:00 基調講演「消防職員の無賃金拘束時間について」
弁護士  森 井  利 和
16:00~16:50 分科会提起
16:50~17:00 事務連絡
(終了後、各自ホテルへチェックイン)
18:30~ 全体夕食懇親会(ホテル花びし あかしあ・ライラック
あいさつ:函館市消防職員協議会
自治労函館市職労
【第2日】(5月13日)9:00~17:00 分科会討論
第1分科会 「組織強化・拡大と消防職員委員会の活用」
第2分科会 「賃金・労働条件の改善のために」
第3分科会 「未来の消防行政を考える」
第4分科会 「救急医療体制の課題」
第5分科会 「労働安全衛生~快適な職場づくり」
【第3日】(5月14日) 9:00~11:30全体集会
8:30~10:00 ・各分科会報告と質疑・討論
10:00~11:15 ・質疑応答
11:15~11:30 ・集会のまとめ、閉会

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