2008-2009年度活動方針
1. 基調
地球温暖化が進むなか、世界各地で異常気象による局地的な熱波や集中豪雨による大洪水が発生し、多くの犠牲者がでました。また、地震災害も頻発しており、特にインドネシア・ジャワ島南西沖地震では津波により600人以上が死亡するなど、多数の被害をもたらしました。
気象観測上の最大・最小値を日々観測しながら、予測される想定をはるかに超えて地球そのものが危機的状況を迎えた事実を認識する必要があります。
国内でも温暖化の影響からか台風による被害だけでなく、日本ではあまりなかった竜巻や突風による被害が各地で報告されており、地震も多発しています。2007年3月、想定されていなかった能登半島沖において震度6強の地震が発生し、石川県七尾市・輪島市・穴水町では最大震度6が観測され大きな被害をもたらしました。新潟県・中越地震の記憶が消え去らぬうちに新たな災害が立て続けに起こっており、海外には国際緊急援助隊が、国内では法制化された緊急消防援助隊が被災地に赴き、救出・救護活動を行い国民の信頼に応える働きが報告されています。
制度化された緊急消防援助隊により、大規模災害への対応力が整備され、一定の成果を上げています。しかし、非常時対応力の強化が図られているものの日常的なところに目を向けると、社会構造の変化からくる救急需要・消防需要は増加の一途を辿り、消防職員を取り巻く環境は厳しくなるばかりで、とりわけ救急業務に携わる隊員は自らの健康そのものが危惧される状況にあります。救急出場件数の増加に伴い救急車の台数や人員が不足し、現場到着が遅延したりする傾向にあります。今後も少子高齢化、核家族化、地域コミュニティーの崩壊、住民意識の変化などに伴い救急需要が増加し続けることが予測され、地域によっては救命率の低下などが危惧されます。したがって地域医療との連携をはかるメディカルコントロール協議会の充実へ向けた取り組みが必要となってきます。
国や地方財政のしくみは改革途上にあり、消防行政に大きく関係している地方交付税をみると基準財政需要額のうち都道府県で91.5%、市町村で81.4%(2006年総務省分析)が地方の裁量度合いの低い義務的経費で占められており、これ以上の地方財源を縮小・廃止すれば、ナショナルミニマムそのものが崩壊する恐れにあります。「三位一体改革」により3兆円の税源移譲が行われましたが、国庫補助負担率の切り下げにより公共サービスを切り捨て地方への負担を押し付けるなど、税財源の分権改革とは名ばかりで国の関与、義務付けを見直さず、地方財政計画や地方交付税の総額を圧縮することは、すなわち地方自治の縮小に繋がり分権改革に反するものです。このような状況下にあって交付税削減で、より逼迫した財政状況に追い込まれている自治体が多く見られるようになってきており、北海道・夕張市からは、財政破綻に陥ったあとの想像もつかない厳しい自治体運営の実態が報告されています。
平成の大合併にともない、全国の自治体数は、1999年の3,232から1,820へ、消防本部数は1991年の936から811となりました。
国は小規模消防管轄の人口減少による消防力の低下を危惧し、消防力維持・強化を建前として、管轄人口30万人規模以上の消防の広域化を進めています。とりわけ、都道府県域を単位とした消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用と連動した消防の広域化を強力に推し進めており、その枠組みを想定した対応が必要とされています。
全消協はこれらの情勢に対し、公共緊急サービスの担い手である消防職員の自主組織として、その社会的使命を果たすため、積極的に行政に対し提言を行っていかなければなりません。
消防職員をはじめ公務員職場を取り巻く環境は厳しくなる一方です。国主導で進められる「公務員制度改革」により新たに人事評価制度が導入されました。この制度は職務職階制に変わるものとして導入されましたが、全消協は制度の導入に団結権付与は最低条件であるとして自治労および関係団体と取り組み強化をはかって活動を展開してきました。しかし、日本政府はいまだ労働基本権問題に消防職員の団結権付与を盛り込むことすら行わず、消防職員委員会制度を活用するとのスタンスを変えていません。
消防職員の団結権に係る権利問題は憲法における基本的人権の問題です。全消協は団結権獲得をめざし活動を進め、30年が経過しました。日本政府は消防職員の団結権問題についてILOからの再三の勧告にもかかわらず、法改正を含めた基本的解決の姿勢を見せません。団結権付与に向けた過渡的措置として設けられた「消防職員委員会制度」の導入から11年を経た今日においても、制度の欠陥を改めず、「意見取りまとめ者」を新たに設けることで十分に機能すると位置づけています。しかし、この制度の最大の欠陥は委員会により実施すべきと結論付けられた職員提案事項に対し、それを実施すべき立場にある消防長に履行責任を負わせていない点にあります。総務省消防庁の実態調査による報告でも、予算措置を伴うものについて改善事例の実績は僅かに報告されているに過ぎず、全消協が行った加盟単協の調査においても同様の実態が報告されています。このように消防職員委員会制度は職場改善の手段としては不十分であり、全消協は総務省消防庁に引き続き制度の改善を求めていく必要があります。同時に、消防職員委員会の活用とは別に、団結権の獲得を求めていきます。
全消協は昨年、北海道・札幌市において「第30回定期総会・30周年記念レセプション」を開催しました。第30回定期総会において団結権獲得に向けた方策としてPSI加盟が提案、承認され新たな活動を展開することとなりました。全消協は今後、自治労・関係団体との連携を強め、PSI・ILOの場において日本の消防職員16万人の代弁者として責任ある行動と発言・提言を行い、団結権保障に向けた活動を強化していかなければなりません。
全消協は団結権獲得と並ぶもう一つの大きな課題として、無賃金拘束時間の解消に向けた活動を展開しています。2002年に出された「大星ビル管理事件」の最高裁判決では、仮眠時間も労働時間であると判断され、このことは消防職場に存在する仮眠時間の実態と共通する点が多く見られることから、問題解決の道標として取り組む必要があります。しかし、多くの職場で勤務時間について、違法性が高い運用がされていることが全消協調査から浮き彫りにされています。その代表的な例が当局の恣意的な運用による休憩時間の「繰り上げ・繰り下げ」の問題です。一勤務日における休憩時間の位置が固定されず、昼夜問わず休憩時間中の出動命令で出動した職員自身が、その時間が勤務時間か時間外勤務かの判断がつかないなどは法を無視した運用であり、このような運用がまかり通る職場を改善していかなければなりません。このように一勤務日における労働時間の明確化を進め、その上で仮眠時間の実態を訴えることが無賃金拘束時間解消の手段として、その活動を進めていかなければなりません。そして、消防職場に拘束される職員の環境整備を進め、今日消防に求められる質の高いサービスを提供できる勤務体制を構築していかなければなりません。
東京・名古屋での火災現場における崩落事故、長野県松本における転落事故など、全国各地で消防職員の災害現場における重大事故が発生しています。このように消防職員は人々が避難するその場が活動の場となるにもかかわらず、安全管理については法整備がされていないのが現状です。
さらに、災害現場での悲惨な体験から心の病に陥る職員や、階級職場によるパワーハラスメントなど、近年のストレス社会を背景にしたメンタルヘルスケアの必要性が求められています。職場の安全衛生に関わる事故・事件に対しての有効な手段を講じなければなりません。
雇用と年金の連携のため設けられた「高齢者再任用制度」の本格運用が2007年から開始されています。消防職場における再任用に適した職場環境の整備に向けて全消協は有効かつ実現性の高いものとなるよう自治労・関係団体とともに活動を展開していかなければなりません。
全消協は1977年結成以来、「明るく魅力ある消防職場づくりと消防職員自らの権利と生活向上、住民のための消防行政を確立する。」という目的に向け取り組んできました。結成当初、36組織2,500人から現在183組織12,852人へと成長しています。今日の社会情勢は「安全・安心」に対する関心が高まり、消防職員への期待は非常に強いものがあります。公共緊急サービスに携わる私たちは、社会対話を実践し期待に応えられる消防行政の確立を目標に、ILOに対しPSIを通じ日本の消防職員を代表した責任ある提言をしていき、今日までの活動によって蓄積したノウハウと組織力で社会的評価をより高めるため、次の課題に向け活動強化を進めていきます。
第1 団結権獲得に向け主体的活動を強め、自治労・連合・関係団体との連携強化を進めます。
第2 消防職員委員会制度の実効ある活用をもって、組織拡大を進めます。
第3 未組織職消防職場の自主組織づくりを支援し、3万人体制の早期実現をめざします。
第4 会員間の交流、参画を通じ、魅力ある全消協づくりと組織強化を進めます。
第5 労働条件、労働安全衛生、及び職場環境の改善をめざした取り組みを進めます。
第6 地域住民と連携し、消防職員の提言による消防行政の改善を進めます。
2.消防職員をとりまく情勢と活動の基本方向
(1)消防力の整備指針
1961年に制定された「消防力の基準」は、最小限度の必要な基準として整備され、10年経過した1971年に消防需要を考慮して最初の一部改正が行われました。
この時点では市町村における常備消防化はまだ過渡期であり、小規模自治体において一部事務組合による常備化が進められましたが、全国的にもこの基準に合致する消防職場はありませんでした。
1975年の一部改正においては、救急業務、および救助業務について規定し、予防業務の重要性を鑑み予防業務担当者を単独で算定し、事務強化をはかりました。また、1976年には石油コンビナート所在市町村に3点セットである大型化学消防車などの配置基準が追加されました。
この時期、単独自治体の消防本部は消防力の整備が進められましたが、依然として一部事務組合消防は職場組織の確立さえできていない状況にあり、人員・装備ともに不十分でした。
さらに10年が経過し1986年の一部改正となりますが、消防力の基準を達成する消防本部はなく、自治体の消防力整備への限界が露呈されました。1986年および1990年の一部改正においては、救助隊や化学消防車の算定基準などの付加措置を行いました。1975年以降消防の常備化が進展するなか、全国で90%以上の地域を網羅できたことは評価に値しますが、市町村消防における「消防力の基準」の充足率は70%程度に過ぎず、未だ住民にとって消防力の普及は完全ではありませんでした。
「消防力の基準」から「消防力の整備指針」と名を変え、単に人員・装備の「最低基準」から「整備目標」としていますが、現場実態の状況把握なしに運用されるべきものではありません。
半世紀を経過した現在の消防行政の質・量、および費用対効果を精査しつつ、大規模小規模にかかわらず単位消防としてのあり方を検討すべきであり、また、どのような目的意思を持って災害対応を行うか、国の責務として明確な意思と判断をもって、消防力を規定すべきだと考えます。
いま、国民保護法の制定を受けて、消防の任務がどう変化していくのか定かではありません。災害現場にいち早く初動体制を取るのは消防であり、警察(県)、および自衛隊(国)よりも住民にとって身近な存在であることを、改めて認識する必要があります。
全消協は、全国の消防職場をモニタリングして組織機構の検討を行い、公共緊急サービスの担い手として規模に応じた具体的な職場制度の策定にむけて取り組み、消防職員自らの提言として発信していく必要があります。
また地方財政の悪化にともない、この「消防力の整備指針」において自治体消防がどのような方向性を堅持していくのか、全消協は、自治体消防の基本理念に則して、消防作用における国家責任の所在を明確にしながら、消防体制の研究を行いつつ住民の期待に応えうる活動を推進していかなければなりません。
(2)消防職員委員会制度
消防組織法の改正により、すべての消防本部に「消防職員委員会制度」が導入・設置され11年が経過しました。全消協はこれまで消防職員委員会の運営に関与することにより消防職員委員会制度を向上させ、職場を活性化させることに繋がる重要な制度であると位置づけ、組織をあげてこの制度を有効活用し、民主的な職場づくりに取り組むとともに、この消防職員委員会を媒介にした未組織消防との交流が全消協の組織拡大に結びつくものとして、オルグ活動を展開してきました。
しかし、消防当局による恣意的な運用や制度的な限界が露呈するなど、形骸化している消防職員委員会が多く存在することが全消協の調査により明らかになり、現行の勤務条件等を向上させるためには、制度改正を望む声が多数あがっていました。
その結果、2005年5月9日、「消防職員委員会の組織及び運営の基準の一部改正について」が通知されました。全消協はこの改正で「意見取りまとめ者」の創設、予算編成作業を勘案した開催時期の指定など、消防職員委員会の公正性・実効性をより向上させるものであるとし、「消防職員委員会の手引き」の改訂を行い消防職員委員会の活用をはかってきました。
しかしながら、依然として当局側の恣意的な運用や職員側の意見を全く聞き入れようとしない姿勢、さらには職員推薦の委員の選考にも関与するなど、消防職員委員会の民主的な運営ができないなどの実態が報告されています。中には、毎年同じ意見を出し「実施が適当」とされながら一向に実施されないため、人事委員会や公平委員会に措置要求を行う単協が増加していることも事実です。
全消協として現行の制度のまま消防職員委員会の有効活用を訴え続けることは、単協との意識・認識のズレが拡大する恐れがあります。さらに、消防職員委員会制度が世界的に見ると、「消防職員委員会の存在が団結権の付与に変わり、職員の意見を反映する場として日本の消防職員は納得している。」と受け止められかねません。そういった誤解をされないために、総務省消防庁に対しこの制度の不備を指摘し、制度改善をはかっていかなければなりません。そのためにも制度創設の当事者である自治労と共通した認識を持つ必要があります。
消防職員委員会制度の活用と、団結権獲得については別問題です。
(3)団結権
全消協は、消防職員委員会制度を団結権獲得への過渡的措置として受け止め、この11年間民主的運用に努めてきましたが、全国のそれぞれの消防本部においてその運営方法や制度について多くの問題が生じています。日本政府は1995年ILO総会において「消防職員の団結権に関しては、さらに近い将来において関係者間で論議されるものと考える」と表明しました。さらに2002年4月にも総務大臣は参議院総務委員会で「国民のコンセンサスの推移に応じて消防職員の団結権について議論することは一向に差し支えない」と答弁しました。2002年3月に全消協はILOに代表を派遣し、2003年6月のILO第 91回総会で「日本の消防職員の団結権問題」が取り上げられるよう要請しました。また連合と連合官公部門連絡会は、日本政府が進める公務員制度改革が結社の自由などのILO諸原則違反状況をさらに悪化させるとしてILO結社の自由委員会に提訴しました。全消協としても自治労・連合を通じて、日本政府におけるILOの結社の自由違反についての提訴に関する追加情報において、追加資料「日本の消防職員の団結権と消防職員委員会について」のなかで意見反映を行いました。2002年11月21日にILO理事会、2003年6月のILO結社の自由委員会では改めて前回の勧告内容の履行を強い調子で求めました。
しかし、日本政府は「国民のコンセンサスが得られない」として消防職員の団結権を否定し続けています。2006年公務員制度改革において、行政改革推進本部専門調査会を設置し、労働基本権等に関する協議を引き続き行っており、争議権と協約締結権を一定の範囲で付与する方向で今秋をめどに検討するとしています。しかしその対象を消防・警察以外の現業や非現業の一般職公務員とするなど、頑なに「消防・警察」を一つのパッケージとしてとらえ、沖縄など過去に団結権を持っていた組織制度や諸外国では当然の権利として団結権が認められていることなど、これまでの経過やILOからの勧告を無視した議論となっています。私たちは、これらの議論を到底受け入れることはできません。
また、全消協は第30回定期総会においてPSIへの加盟を決議し、2006年11月に加盟しました。2007年度からは活動の舞台を国際社会までに広げ、4月に東アジア太平洋地域の執行委員会に出席するなど、新たな活動のステージに入っています。今後も2007年9月にPSI世界大会に出席するなど、積極的な活動を展開していきます。
(4)国民保護法
2003年6月に「安全保障会議設置法」「自衛隊法」の改正とともに、「武力攻撃事態法」の三法が成立し、2004年6月に「国民保護」法制を含む有事7法案、3協定・条約が成立するとともに同年9月17日に「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(国民保護法)が施行されました。
国民保護法は、武力攻撃事態等や緊急対処事態において、武力攻撃から国民の生命や財産を保護することを目的とし、国は本法に基づき国民の保護に関する「基本指針」を示し、2005年度内に指定行政機関、および都道府県に国民保護計画を策定させ指定公共機関に国民保護業務計画の作成を終え、市町村国民保護計画の策定がはかられました。この間2006年1月に消防庁から「消防機関における国民保護措置上の留意事項等について」が通知され、消防機関についても武力攻撃災害への対処や避難住民の誘導など様々な役割が課せられました。
現在、国が想定している武力攻撃等は、(1)弾道ミサイル攻撃(2)ゲリラ特殊部隊による攻撃(3)着上陸侵攻(4)航空攻撃の4事象です。
国民保護法では、避難住民の誘導は、市町村長が市町村職員、消防長及び消防団長を指揮し行うこととされており、市町村国民保護対策本部において活動計画を調整し、消防機関が誘導に当たることとなっています。
しかしながら課題は多く、その想定の範囲も予測不可能な事態の連続と考えられます。消防職員は市町村の一般職員と変わらぬ身分でありながら、国民保護法上の有事対処下では国民の生命と財産を守る一番身近な組織として最前線での活動を余儀なくされます。基本的には、安全と認められる場所での活動と位置づけていますが、有事の際には安全と認められる場所は存在せず、制度と消防に求められている活動内容は矛盾しており、装備等もそれを想定したものではありません。また、初期の段階で対応を求める住民に対し、十分な消防活動が困難になることや広域的応援をした場合の消防力の偏重など、新たな問題を発生させることとなります。これらの問題に対し総務省消防庁などに対策をはかるよう働きかける必要があります。
(5)組織拡大
(6)組織強化
組織の強化は、組織拡大とともに全消協活動の大きな柱です。組織が拡大しても全消協自身に力強い活動を進めていく体制がなければ、全消協活動への魅力が失われることになります。
全消協は新たな活動としてPSIに加盟し、団結権の早期獲得をめざして活動を行っています。組織拡大活動とともに、単協自身が社会情勢を十分に認識しながら、住民に密着し、信頼される活動を行っていくことが重要です。団結権獲得後の全消協活動も視野に入れながら、活動しなければなりません。
一方で、「団塊の世代」の大量退職による会員の減少や新規採用職員の未加入問題などがあります。各単協活動の後継者育成については、喫緊の課題であるとの認識が必要です。
全消協は、会員の力と知恵を結集することによって、活力を得られる組織です。組織を強化するには、人的資源を生かして地域社会に共感を得られる活動を単協内外に積極的に発信するなど会員にとって魅力ある活動を展開し、会員の参加意欲を高めることが不可欠です。また、社会の急激な変化を鋭敏に察知し、活動が継承・発展するよう組織の改革と充実をはかるなど、環境整備に努める必要があります。
(7)賃金について
労働時間や賃金に関する問題は労働者にとって、最も基本的かつ重要なものです。私たちの消防職場では、団結権が付与されていないがゆえに賃金労働条件において消防当局の恣意的な運用が横行している例が数多く存在しており、その代表的なものが無賃金拘束時間の問題です。
全消協が毎年実施している労働条件基本調査等の取り組みを通じて、長時間の無賃金拘束が存在する勤務制
- 1ヶ月単位の変形労働時間制の期間を無視した勤務サイクル
- 制度を無視した振替制の濫用
などの職場実態が明らかとなったことから、隔日勤務制からの脱却や深夜を含む労働の総量規制の新設を求めるなど、各職場に合った活動の方向性について提起を行ってきました。その 結果、新しい勤務サイクルの導入により無賃金拘束時間縮減の動きが報告されています。
消防職場と類似する司法判例では、2002年2月28日の「大星ビル管理事件」最高裁判決において、「何事もなければ眠っていることができる時間帯といっても、労働からの解放が保障された休憩時間であるということは到底できず、本件仮眠時間は実作業のない時間も含め、全体として指揮命令下にある労働時間というべきである。」との判断が示されました。2000年「三菱重工業長崎造船所事件」最高裁判決、2001年「関西警備保障事件」大阪地裁、2006年「青梅市管理業務員事件」東京地裁などでも同様の趣旨の判決が下されています。
しかし、総務省消防庁は2003年4月1日の参議院総務委員会において「消防職場においては、指令係員を配置し休憩時間の出動に備える一方、労働基準法第33条3項で定めるように民間企業とは実態が異なる」との見解に終始しました。
2003年11月11日消防庁消防課長206号通知「消防職員の勤務時間等の適正な管理と運用について」は、私たち消防職場に多大な影響を与え、とりわけ「休憩時間の繰り上げ・繰り下げ」は、勤務実態を無視したものであり、労働条件明示義務を示した労働基準法の趣旨に馴染むものではなく、違法性の高い運用になっています。
一方、全消協加盟単協の中には、「休憩時間の繰り上げ・繰り下げ」への対応措置のほか、隔日勤務の出動実態調査・勤務状況の分析を行い、無賃金拘束時間の解消を求める司法対策に向けた現実的な動きが出てきています。このように政府、自治体当局、人事委員会および公平委員会への対策をはかるなど、現行法改正に向けたあらゆる取り組みを進めていかなければなりません。
民間企業の人事管理・給与制度を参考にした、公務員の能力・実績に基づく新たな人事評価制度が消防職場にも導入されています。的確な評価が行われれば、仕事の能率を向上させ、士気も高まるという期待もありますが、消防職場は自治体職場において特殊性を持った職場であり、勤務体制、職階級、署所など一元的な評価ができない実態があります。チームワークを基本とする消防職場に新たな評価制度がどう影響するのか、制度の持つ限界と弱点があることを踏まえ、公正性や透明性が高く実効性のある人事評価制度の整備に向け消防職員が納得できる制度をづくり上げていかなければなりません。新たな評価システムが「公正な賃金」になり得るには、労使の関係整備を求めていく必要があります。
平成の大合併により、全国の自治体数は1999年の3,232から1,820となり、消防本部数も1991年の936から811になりました。合併後の賃金・労働条件等の課題を積み残したままの単協も多く、関係自治労単組と緊密に連携しながら問題解決に向けた取り組みが引き続き必要です。
また、消防の広域化についても、人員および財政の削減を主たる目的としたものであり、賃金・労働条件の不利益発生が考えられます。現在の組合消防においても構成自治体の違いによる職員の身分の違いや賃金格差が存在し、今後の広域化により、さらに大きな歪みが発生することも予想されます。
消防職員の賃金については、消防業務の特殊性を考慮した基本賃金のあり方、中途採用者の前歴換算・年齢別最低保障制度などを含め、昇給・昇格について不利益を被ることのないよう取り組みを進めていく必要があります。
2010年前後には一部事務組合設立当時の採用者が定年退職の時期を迎えるなど、退職者が一時的に増大することへの対応のため、職員の計画的採用への取り組みが各地で始められています。他方、女性職員については、2006年現在全国の消防職員156,758人中、2,961人(1.89%)にすぎません。採用や職域の確保、昇給や昇格について世代間や男女格差が生まれることのないよう、新たな取り組みをしていかなければなりません。
(8)再任用制度
本格的な高齢化社会の到来に対応し、職員が長年培った知識・経験を社会において有効活用していくとともに、公的年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、60歳代前半の生活を雇用と年金の連携により支えていくことを目的に、本年4月から再任用制度が消防職場にも設けられました。
しかし、この制度は消防の組織や職種、業務などの実態から様々な問題を抱えています。例えば、フルタイムで再任用された職員は条例で定められている定数に数えられるため、新規採用の抑制や職員の年齢構成に歪みが生じるなどの弊害が予想され、今後の人事のあり方などに影響を及ぼすことも懸念されます。
また、少子・高齢化や若年層の雇用悪化が進み年金制度自体が破たんするという事態が訪れる可能性もあり、年金問題も含め総務省消防庁の考えている消防職員の65歳への定年制の延長についても注視していく必要があります。
全消協では、消防職場において65歳まで第一線の災害現場で活動することが可能か(フルタイム、パートタイムを含め)、ベテラン職員が長年培ってきた知識・経験を生かせる職種にはどのようなものがあるか、一般行政職との人事交流等を通して他の職種への配置転換は可能か、などの課題について更に検討を重ね調査をする必要があります。
(9)労働安全衛生
近年、日本国中で地震が多発しており、防災の拠点となる建築物の耐震性等、常に災害対策に備える必要があります。将来発生するであろう「東海・東南海地震」などに備え消防庁舎の耐震診断あるいは耐震改修工事がどの程度実施されているか検証していく必要があり、震災発生後も防災の拠点としての能力を十分に発揮し、地域住民の安心と消防職員の心身にあたえるリスク軽減をめざさなければなりません。
消防職員の公務中における死者や負傷者の発生する割合は、その職務の特殊性から他の行政職員と比較しても高い水準となっています。
本来ならば、十分な安全管理のもとで行われるべきである訓練時において、災害時の負傷者数を上回る現象がここ数年続いており、また、長期的な不況のあおりを受けて地方財政の縮小や業務の多様化により人員増が望めない結果、災害現場活動で多くの仲間の命が危険にさらされています。
全消協の2006年度労働条件等調査結果によると、安全と衛生に関する条例・規則はあるものの、十分に機能していない職場が多数存在しており、また、深夜業務従事者の定期健康診断についても、本来ならば使用者側に義務付けられた6ヶ月ごとに実施されるべき健康診断が年1回のみの実施となっている状況がいまだ多数見受けられます。私たちの「命と健康」を守るためには、執務環境や生活環境のみならず、訓練内容や業務内容、さらには現場活動の実態を再点検し、安全・健康対策の具体的な改善と、理想的な職場環境の実現を求めていく必要があります。
そのためには、安全衛生委員会を最大限活用した活動に取り組み必要があり、また、委員会の設置がなされていない職場においては、安全衛生推進者を中心とする安全衛生対策委員会を設置するなどして、積極的な取り組みが求められます。
一方、近年の社会構造の変革は、当然のことながら消防業務の活動内容にも、さまざまな影響を与えています。最近の傾向として、犯罪の低年齢化や過去に類を見ない凶悪な事件なども多数発生しており、人々の心にストレスを与えています。また、消防職員も多くの悲惨な現場を経験し、職場の人間関係などによりストレスを溜め込み、PTSD(心的外傷後ストレス)・CIS(非常事態ストレス)といった「心の傷」や、うつ病などの「心の風邪」により、心筋梗塞などの循環器系の疾患、脳内出血などの脳血管障害のほか、神経性の病気に罹患する職員も多数存在しており、そのため、長期休職者や最悪の結末である自殺を誘発させる要因となっています。
2006年度労働条件等調査結果によると、職場での人間関係や業務荷重によるストレスについても「増えている」との回答が80%を超え、災害現場での「心的外傷後ストレス(PTSD)」や「非常事態ストレス(CIS)」によるストレスについては、「増えている」が36%となっています。
一方メンタルヘルス対策について「実施していない」と答えた単協が64%にのぼり、「実施している」の36%を大きく上回っています。実施している組織の中で単協として取り組んでいるのは5%にとどまり、多くは自治体や当局の取り組みとなっています。
メンタルヘルスの必要性について行われたアンケート調査においても、職員と当局では、その必要性の認識が大きくかけ離れていることから、全消協としてストレス対策のさらなる研究と普及啓発活動に取り組みます。
現在、女性消防職員の採用比率は増加傾向にありますが、職員全体に対する構成比率は2%程度です。そうしたなか、執務環境については、これまでのように男性を中心とした環境整備だけでは不十分であり、整備が遅れていることを理由に女性消防職員の採用が抑制され、採用されても職域が限定されるなど、女性の消防職場への進出が阻害されています。これらは、男女共同参画社会における不適当な環境となっています。
全消協には、「同じ条件で採用され同じ訓練を受けているのに、“女性だから”と業務が制限されるのはおかしい」「女性職員ではなく“消防職員”として認められ働きたい」「いったん結婚や出産で業務を離れると、もとの職場に復帰することが難しく、結果として婚期や出産を考えてしまう」といった、切実な意見が寄せられました。職場環境も含め、男女がともに協力し合い、質の高い消防サービスが展開できるよう、今後も女性消防職員の現場の声を反映させ、消防行政に役立てる取り組みを展開します。
このように、私たちの消防職場には、「現場活動や日常業務上での職員の安全と、心と身体の健康をいかに守っていくのか」、「職場の環境整備をいかにして実施していくのか」といった、労働安全衛生に関する課題が多数存在しています。したがって、全ての消防職員の命と健康を守ることができる快適職場づくりのために、具体的な対策の提起と実現を求める活動を展開していく必要があります。
(10)救急医療体制
わが国における救急業務は1930年代に始まり、1963年救急業務の法制化、1991年救急救命士制度発足などその体制が逐次整備され、社会経済活動の進展に伴い国民にとって必要不可欠な行政サービスです。救急車による救急出動件数は年々増加し過去10年間で約1.6倍に増加していますが、地方自治体の財政状況の悪化により、救急需要の増加にもかかわらず救急車や救急隊員の充実をはかることができていません。
今後も、少子高齢化、核家族化、地域コミュニティーの崩壊、住民意識の変化などに伴い、救急需要が増加し続けることが予想され、地域によっては、さらに現場到着所要時間が遅延し、救命率に影響が出ることが危惧されます。
また、救急需要が増大することに伴い、傷病者を受け入れする医療機関の負担も大きくなってきています。特に夜間などは医療機関も受け入れ態勢には限界があり、また慢性的な医師不足、小児科、産婦人科、精神科等においては、夜間は専門医が不在のところが多く、収容できる医療機関の手配に長時間を要し、傷病者の生命を危険にさらしたり、家族等から不信感をもたれたり、一次救急処置もされないままに専門医のいる遠方の医療機関まで搬送せざるを得なくなっています。
このままの状態が続けば救急隊員も医師も負担が増大し、消防機関、医療機関とも「救急医療体制の崩壊」を招くことになりかねません。総務省消防庁でも「救急車の有料化」「民間救急の活用」「指令室でのコール・トリアージまたは現場でのフィールド・トリアージ」など救急車の適正利用について議論と研究を重ねていますが、まだ具体的な施策は出ていません。可及的速やかに官民一体となってこの問題に取り組んでいかなければ、本当に救急車が必要な人が利用できない事態に陥り、また適切な医療機関での救急医療処置を受けることができなくなります。
昼夜を問わず出場する救急隊員は人命の救護・応急処置・病院搬送の任務を遂行する重責を担っており、労務管理上において出場件数の増加は救急隊員の身体的負担を招き、蓄積した疲労は予期せぬ災害を引き起こすことにもなりかねません。出動回数、走行距離などを考慮した救急隊員の交代要員の配置を求めるなどの取り組みを強化していく必要があります。
近年、凄惨・悲惨を極める事件や事故が多発しています。その現場に従事した救急隊員の精神的負担も計り知れず、PTSDやCISなど身体的症状を訴える救急隊員も少なくありません。消防職場は、「我慢が美徳」、「心身的な相談をすることは恥」と考える風潮がまだまだ蔓延しています。 メンタルヘルスについて気軽に語れるような職場環境が必要であり、また、必要に応じて専門医のカウンセリングが受けられる対策が必要です。
救急救命士制度発足から救急救命士、および救急隊員の養成、処置拡大に伴う専門教育・研修が長期にわたり行われることにより、高度な知識・手技を取得した救急隊員を効果的に運用することが必要不可欠ですが、消防職場では、慢性的に勤務人員が不足している現状があります。2005年4月に示された「消防力の整備指針」では、地域事情を考慮して、専従化から消防隊との兼務が可能とされましたが、救急の高度化を進める一方で兼務による救急のサービス低下には矛盾があります。
救急救命士の救急救命処置は年々高度化が進み、2003年「包括指示下での除細動」、2004年「具体的指示下による気管挿管」、2005年「救急隊員・一般消防職員によるAED(自動体外式除細動器)の使用」が可能となりました。また、2006年4月からは救急救命士による医師の具体的指示下での薬剤投与(1剤「エピネフリン」)の処置が行われています。しかし、運用前の病院実習には患者の同意が必要なうえ、地域によっては責任問題を敬遠する病院側の受け入れ体制が遅れています。救急救命士の気管挿管については実施以前から救急救命士の中でも救急医学会の中でも議論されてきました。救急救命士の処置拡大はいつも法律だけが先行し最初から救急救命士の処置拡大ありきで議論され、必要に迫られ地域メディカルコントロール(MC)を構築し、形ばかりの指導と検証をしているところもあります。このように消防機関と医療機関との見解の相違が背景にあることにより、地域MCに地域格差が生れる原因があると言わざるをえません。
救急救命処置を有効に機能させるためには、消防救急と地域医療機関との連携・相互理解をするためにも“顔の見える”関係が必要であるといえます。また、医学的観点から救急隊員が行う応急処置の質を保証するMC体制が各都道府県、各医療圏・各地域に構築されていますが、さらなる充実・強化が必要です。
全消協では、消防救急の抱える問題点を明確化し、救急救命士制度の効果的な運用と救急隊員の質的向上をめざし、地域住民、地域医療、および消防救急が一体となり、さらなる消防救急の充実に向け関係各省庁に対して働きかけます。
(11)消防の広域化
国は消防の常備化を進める中で1970年代から広域化を推し進め、その結果1990年代初頭には山間部や離島にある町村の一部を除き、全国のほとんどの住民に対し消防行政サービスの提供が可能となりました。そして1990年代以降は管内人口が10万人規模の消防体制をめざし、複雑・多様化する消防需要に対する高度な消防サービスの提供をはかることへと変化しています。
この間、全国の人口の99%以上が常備消防によりカバーされたことをふまえ、同時に多発する大規模災害に対応するためとして、2003年に消防法・消防組織法を一部改正し、常備消防の設置義務制度・救急業務の実施義務制度(政令指定)の廃止と、緊急消防援助隊が規定されました。また、2005年には「消防力の基準」を「消防力の整備指針」へと改正しました。
平成の大合併にともない、全国の自治体数が、1999年の3,232から1,820へと大幅に再編されましたが、消防本部数は1991年の936から811にとどまりました。しかし、小規模消防が全国の約6割を占めている状況から、2005年10月総務省消防庁は、多様化・大規模化する災害・事故に対応し、今後の人口減少を考慮したうえで、市町村消防の原則を維持しつつ、消防体制の充実強化が求められているとして、「今後の消防体制のあり方に関する調査検討会」を設立しました。2006年1月の消防審議会への中間報告のなかで、今後の消防の広域化については災害対応・組織管理・財政運営等の観点から、「管轄人口30万人規模以上を一つの目安とすることが考えられる」としました。
2006年2月、消防審議会からの「市町村消防の広域化の推進に関する答申」では、「広域化は多様化・大規模化する災害・事故や高度化・複雑化する社会における消防業務に対する住民のニーズに的確な対応をするため」とし、その方策として「消防組織法を改正し、広域化における都道府県の役割を明確にするとともに、消防広域化の関係者による議論の枠組みを創ることが必要である」と答申しました。
これらの結果、同年6月の国会で消防組織法の一部改正が決議され、自主的な市町村の消防広域化を推進するため、消防庁長官が定める基本指針にもとづき、2007年度中に都道府県が推進計画を策定、2008年度以降広域化を実施する市町村が広域消防運営計画を作成し、2012年度末を目途に広域化を進めていくとされました。
国は消防の広域化に際し、「消防力の向上が目的であり、署所・人員の削減はしない」としていますが、地方自治体の逼迫した財政状況による新規採用の圧縮や団塊の世代の大量退職による人員減により消防隊の兼務運用などの懸念があります。その結果、消防職員に対する負担が増大し、住民サービスの大幅な低下をまねくおそれがあります。
全消協では、1990年5月のILO「消防職員の雇用および労働条件に関する合同会議」の結論に基づき総務省消防庁に対して、
- 広域再編を進めるにあたっては不必要な広域化は進めるべきではない
- 住民サービスが現状より低下しない
- 職員の削減や労働条件の悪化を伴わない
上記3項目について、自治労を通じ申し入れを行ってきました。
行政の広域化の是非は、住民の人口動向・生活圏・地形・交通などの事情による広域化の必要性の有無が明らかにされ、住民の自主的な意志に基づいて判断される必要があります。また、現行の事務組合方式を継続した広域化は、消防行政の内容がより見えにくくなり、住民との距離を隔てるものといえます。小規模消防の対応力を強化するには、安易な広域化では根本的解決にはなりません。
1990年代後半から検討が始まった消防・救急無線のデジタル化は、2003年に電波法関連審査基準が改正されたことに伴い、消防救急無線の広域化・共同化と通信指令業務における共同運用へと内容を変え、財政難にあえぐ地方自治体に対し、消防の広域化を強く推し進めるものですが、整備に莫大な費用を要し、中継局が多く必要であるため、災害時に使用できなくなる懸念があります。
莫大な費用を要する無線関連の整備について、国は消防の広域化と同様、財政難を理由に新たな財源を地方の起債に求めていますが、今後は、国と市町村相互の対等の立場だけではなく、都道府県もその中に入り、国、都道府県、市町村相互の対等の立場からの財政負担を行うことが求められます。
全消協は、公共緊急サービスの担い手として、消防行政を担う私たち消防職員自身が、社会的使命を実感でき、そして働きがいのある消防職場にしていくためにも、地域実情に合った消防サービスのあり方を求めていく必要があります。
「広域化ありき」ではなく、自治労・関係議員・各種団体との連携を通じて、都道府県が定める推進計画、広域化対象市町村が定める広域消防運営計画策定に関与し、広域化が地域の防災力を高める有効な手段となるよう提言し、消防の広域化に対し主体的に対応していく必要があります。
(12)安心・安全センター構想
少子高齢社会・分権型行政への移行、多様化する住民ニーズの変化により消防行政には、火災・救急・救助といった従来の災害対応型の活動内容に加えて、よりきめの細かい効率のよいサービスが求められるようになってきました。しかし、近年の消防行政においては分権型行政ではなく、国主体型になりつつあります。国民保護法については国および各都道府県の策定が終わり,現在各市町村レベルでの協議となっています。このことからも見てとれるように市町村消防の原則を破棄し、武力攻撃事態を想定した広域応援体制の確立、緊急消防援助隊登録のみに対する国庫補助金、市町村合併、および広域再編のための消防無線のデジタル化への移行を機に、さらなる消防の広域化につながる動きが加速し、住民サービスの低下を招こうとしています。消防の広域化・地域の財政危機などの理由により、市町村消防の原則が消防事務の委託などによって、崩れるのではないかという危機感を感じている単協があります。そこに消防本部が必要か否かを決めるのは、各自治体当局ではなく、その地域に暮らす住民でなければなりません。
消防機関は、24時間フルタイム稼動であり、住民のもっとも身近にあって安全と安心を提供している行政機関です。地域に暮らす住民の要であり、急激に変化する社会情勢や住民ニーズの多様化に的確に対応できる機関として、従来の固定概念にとらわれない「地域安全・安心センター」構想を、全消協は1994年度全国懇談会(現研究集会)において提起し、その実現に取り組んできました。
「地域安全・安心センター」は、現行の消防力で、できることを実施していくということだけにこだわらず、未来の消防行政の姿を考えるものです。これを実現するためには、地域の実情に応じ、住民の視点に立って考えるとともに、地域の行政機関はもとより福祉・保健・医療機関などと連携を強化し、総合的に情報やサービスを提供できる行政機関をめざしていくことが必要です。住民ニーズを調査することも含め、アンケートを実施している先進的な単協があります。このようなデータ結果を組織全体で共有化し、研究することで消防サービスの改善をめざします。
3.具体的活動方針
(1)消防力の整備指針
- 単協は、消防力の整備目標について市町村長に確認し、説明責任を求めます。
- 国民保護法における武力攻撃災害対応に対して弾力的財政施策を求めていきます。
(2)消防職員委員会制度
- 消防職員委員会制度の実態調査を継続し、民主的な消防職員委員会が実施され、実効力のある制度になるよう自治労と協力しながら総務省消防庁に働きかけます。
- 積極的に地域住民や地域の各種団体などとの交流を行い、住民が望む消防行政サービスを把握し、課題点の共有化をはかるとともに、消防職員委員会の意見として消防行政に反映させていきます。
- 消防職員委員会制度と全消協が求める団結権付与とは明らかに違うことを内外にアピールし、政府が消防職員委員会を盾に団結権を認めないことへの逃げ道にしないようILOに対しPSIを活用し継続的に訴えていきます。
- 未組織消防本部へ積極的にオルグ活動を行い、消防職員委員会をより有効に活用するためにも、自主組織の発足を促し組織拡大をはかります。
(3)団結権獲得に向けて
- 組織拡大を早急に行い自治労・連合とともに国に対し、団結権を付与するよう訴えていきます。
- PSI活動の中で国際的理解を求め、団結権獲得に向けILOへ訴えていきます。
- 自治労をはじめとする各種団体との連携を強化し、住民理解を求めて団結権付与に対する国民の同意を得るための取り組みを進めます。
- 消防職員の職場制度を広報し、団結権獲得への社会理解を求めます。
(4)国民保護
総務省消防庁に対し、次のことを要請します。
- 有事の際に消防職員の安全を確保すること。
- 武力攻撃災害・NBC災害に対応できる資機材の充実をはかること。
- 財政措置の確立をはかること。
(5)組織拡大
- 全消協は組織拡大に向け、次のことに取り組みます。
ア 各県に全消協組織強化・拡大対策委員を置き、年1回組織強化・拡大対策委員会を開催します。 イ 各ブロックに組織強化・拡大対策委員会を設置します。 ウ コンセプトをより明確にし、ホームページ・広報紙などを通じて未組織消防
へアピールします。エ 未組織消防に対して、研究集会・労働講座や各地域で開催される交流会、学習
会、セミナーへの参加を呼びかけます。オ 消防職員委員会の運営実態に関する調査を継続し、自主組織の必要性を未組
織消防へ呼びかけます。カ 1県1組織の結成にむけ、重点消防本部を選定し、空白県解消の取り組みを強
化します。キ 1県1組織のところについては、必要に応じ隣接県の組織強化・拡大対策委員
と連携し組織化にむけた取り組みを積極的に行います。ク 各単協が未組織・未加入の消防職員を対象として、個別に組織拡大リーフレ
ットや広報物などの配布を行うことを支援します。ケ 政令指定都市については、自治労の大都市共闘に消防職員の組織化に関する
集会・会合を開催するよう働きかけます。コ 定期的に組織拡大計画の実施状況について、幹事会で検証を行います。
- 未組織消防の自治労単組に対して、次のことを要請します。
ア 消防職員組織化対策委員会などを設置すること。 イ 組合機関紙、各種ニュースなどを消防職場に配布すること。 ウ 単組が主催するスポーツ、レクリエーション活動に消防職員の参加を呼びかけること。 エ 自治労組織と協力関係にある消防職場、あるいは、自主組織を結成しているところは、全消協への加入をめざすこと。 オ 円滑な消防職員委員会の運営を促進するため、消防職員への研修と組織化を一体として取り組むこと。 カ 組織化にあたっては、地方議員の支援体制を確立すること。 キ 自治労共済・労働金庫などの活用を推進すること。
- 自治労各県本部・地連に対して、次のことを要請します。
ア 消防対策委員会などの設置と機能強化をはかること。 イ 県消協の結成などを含め、県内消防職場の情報収集などについて積極的な取り組みを行うこと。 ウ 消防職員委員会の実態把握および円滑な運営のための都道府県に対する窓口となること。
- 広域化への対応に向け、都道府県が策定する「推進計画」について、県消協・単協と協力して進捗状況の把握や問題点の抽出を行い、意見反映に向け取り組みます。
- 自治労本部の消防対策委員会とも連携強化をはかり、消防に関する情報提供と
組織化に対する支援を求めます。
(6)組織強化
- 定期総会は事業内容の実効性を高めるため、「活動方針提起総会」と「活動方針補強総会」に区分し、隔年ごとに開催します。
- 全消協は、各県に全消協組織強化・拡大対策委員を置き、年1回組織強化・拡大対策委員会を開催します。
- 各ブロックに組織強化・拡大対策委員会を設置します。
- 全国消防職員研究集会を開催し、労働条件や消防行政、消防職員委員会、女性消防職員の労働環境などの取り組みについて、会員相互の情報交換や交流の場とします。
- 労働講座については、全消協活動を進める上での基本的な学習の場と位置づけ、より適切な受講者層・プログラムにより開催し、参加しやすい環境づくりに努めます。
- 消防を取り巻く社会情勢の変化および高度情報化社会の進展に即応するため、消防広域化・消防職員委員会・高齢者再任用・職場環境改善事例など単協活動の参考となる情報の提供・収集など情報機能のあり方について検討を行い、情報機能の整備と強化をめざします。
- 組織規模、地域事情などにより、各単協で共有できる問題について解決にむけ情報交換を進めます。
- ブロック連絡協議会は、各県消協・単協間の連絡調整などを行います。
- 各ブロックに対し組織強化・拡大対策費を交付します。
- 新規加盟単協については、組織強化・拡大対策委員が中心となって定期的に相談を受ける機会を設けるなどのフォローを行います。また、新規加盟単協の全消協加盟時の会費納入については、6ヵ月の猶予期間をおくこととします。
- 各単協に組織強化をはかるため、次の取り組みを求めます。
ア 未加入者や新規採用職員の加入を積極的に行い、組織強化に努めます。 イ これからの時代を担う活動家の人材育成をしながら、幅広く各世代からの意見収集を行い、社会変化に対応できる組織づくりに努めます。 ウ 自治労、関係団体との日常交流や情報交換を行うとともに、積極的に学習会の開催・参加をします。 エ 消防行政問題や職場環境改善について研究し、問題点について消防当局とルールのある話し合いを確立することで単協の強化を促進するとともに、消防職員委員会の適正な運用を促します。 オ 住民に対して、協議会活動について理解を広めるための活動を行います。 カ 全消協主催の労働講座、研究集会などに積極的に参加し、活動家を養成します。 キ 充実した活動を支えるため、安定した財政基盤の確立を求めます。
- 女性会員のための情報提供や交流をはかります。
(7) 労働時間など
- 休憩時間特例のある現状をふまえ、無賃金拘束時間を解消するため、以下の取り組みを行います。
ア 全消協として次の取り組みを強化します。 a 休憩時間に係る基本原則適用除外を定める労働基準法施行規則の見直しを求めるとともに、深夜を含む労働の総量と深夜勤務の回数制限を設けるよう求めます。 b 消防職員の仮眠休憩時間の出動実態調査を実施し、その結果は、加盟単協と逐一情報の共有化をはかれるよう努めます。 c 自治労と連携し、自治労委員長と総務大臣との勤務時間等に関する定期協議などを通じた行政対策や、協力国会議員に対する課題提起と意見反映をはかるなど国会対策に取り組みます。 d 仮眠休憩時間の出動実態調査結果、消防職員委員会での審議結果集約をふまえ、自治労と連携・協議しながら、人事委員会・公平委員会に対する措置要求、さらには司法対策をも視野に入れた支援協力体制の確立をはかります。 イ 各単協は次の取り組みを強化します。 a 無賃金拘束時間を可能な限り短縮するよう求めます。 b 休暇取得及び諸権利行使が保障されるよう職員定数の増加を求めます。 c 変形労働時間制の期限として「1ヵ月以内」を遵守すること。また、週休日を割り振る基準として「4週間」を原則とし、使用者による恣意的な週休の振替運用については是正を求めます。 d 労働時間配分の明確化をはかり、休憩時間内の労働(出動など)に対して超過勤務手当の支払いを求めます。 e 24時間拘束勤務に対する代償措置の取り扱いを求めます。 f シフト制の導入など、勤務制度の改善研究を求めます。 g 消防職員委員会に対して、消防職場の勤務条件の改善をはかるために、意見提出の実施を求めます。
- 時間外勤務の縮減を求めるとともに、恒常的なサービス残業に対しては、超過勤務手当が支給されるよう求めます。
- 明番・週休日などの勤務時間外における恒常的・定期的な業務命令(予防査察・救命講習・訓練など)を撤廃し、適正な人員配置のもと、これらの業務が通常勤務のなかで円滑に遂行できる体制を求めます。
- 勤務形態・労働時間の改善事例を収集し、各単協へ情報提供に努めます。
(8)賃金・労働条件の改善
- 明番・週休日などのやむを得ない勤務従事には、拘束する全時間を対象に超過勤務手当の支給を求めます。
- 消防職員の給与実態について引き続き調査を実施し、基本賃金及び諸手当のあり方
- についてさらに研究を進めます。
- 組合消防内における賃金格差解消をめざして、積極的に構成市町村での情報交換を
- 行い、消防職員委員会などを通じ、高水準の自治体の賃金に準ずるよう改善に取り組みます。
- 同一自治体職場での一般行政職員との賃金格差が生じないよう積極的に情報交換
- を行い、昇給・昇格が不利益のないような制度整備に努めます。
- 賃金・諸手当の改善事例を収集し、その情報の提供に努めます。
- 広域化にともなう賃金・労働条件については、その過程において十分な協議を求め、不利益とならないような取り組みを求めます。
- 職員の業務上必要となる資格取得については、公費で資格が取得できるよう求めます。
- 諸休暇を取得する権利が制限されないよう、取り組みを求めます。
- 退職者が一時的に増加することへの対応のため、各単協に合った職員採用の平準化
- や定数外採用といった計画的採用が行なわれるよう求めます。
- 女性消防職員の採用がさらに推進されるよう労働条件等の整備を求めます。
- 新たな人事評価制度の導入に当たっては、会員自らが制度設計段階から関与・参画
- し、納得できるシステムづくりを求めます。
(9)高齢者再任用制度の確立
全消協は、既に運用されている消防職場の情報の収集と共有化に努めます。また、制度の実効が上がるように次のような取り組みを求めます。
- 希望者全員の再任用にむけて関係団体・部門と協議し、職域の研究と職場の確保をはかります。
- 希望者が自分の能力を充分に発揮でき、希望する業務に就労し、安心して働き続けられる環境づくりを行います。
- 再任用者全員が、現職時と同様の福利厚生が受けられるように求めます。
- 制度の適切な運用に向けて、再任用職員および配置された職場に対して、フォローアップのための調査を実施し、実態把握に努めます。
(10)労働安全衛生対策
- 消防業務を労働安全衛生法(安衛法)のなかで明確な職種として位置づけ、「安全管理者を選任すべき・安全委員会を設けるべき」事業所として指定するよう求めます。
- 安衛法の趣旨を活かし、民主的で職員一人ひとりが積極的に参画できる労働安全衛生活動を推進します。
- 消防職場の労働安全衛生については、その職場で働く職員の意見や経験を尊重するとともに、医師・有識者・自治労関係者・技術者など、広範囲な専門家の参画により基準の見直しを行うよう求めます。
- 私たちが従事する現場活動には、あらゆる危険性が潜在しています。現場活動時の安全管理はもとより、訓練中の安全管理にも細心の注意を払うとともに、健康で働きやすい職場の環境整備をはかるため、必要な情報の提供・安全衛生教育の徹底・資器材の整備充実を、消防当局に求めます。また、開発された機械・器具が早期に消防職場に導入されるよう求めます。
- 業務中や業務に起因して発生したと思われる傷病などについては、すべて公務災害認定請求を行うよう活動を進めます。また、未組織消防において発生したものについても調査を行い、泣き寝入りに終わらせないよう働きかけます。
- 各地で発生した公務災害について、その実態を明らかにするよう取り組みます。また、その情報をホームページなどで全国に発信し、情報の共有化をはかるとともに、その防止策について研究します。
- メンタルヘルス問題に対応するため、職場内で気軽に話し合える環境づくりを進めます。また、すべての職員がメンタルヘルスに対する正しい知識を持ち、人権の尊重・プライバシーの保護を基本として、労務管理・人事管理とは完全に切り離したカウンセリング体制の充実を求めます。
- 本人や家族が惨事ストレスについて理解し、心身の変化を察知し、単協が事前の対策をたて、研修・担当職員の養成などの教育が充実するような資料の作成に努めます。
- メンタルヘルス専門家を活用できるよう精神保健団体などと協力関係を築きます。
- 職員が療養する必要が生じた場合、安心して治療に専念できる体制づくりを求めます。また、職場復帰時からフルタイムで働くことが困難な場合、就業場所や業務内容の変更、規則の制定による段階的な職場復帰ができるよう、健康に配慮した体制づくりを研究します。
- 深夜業務に従事する職員の健康診断については、安衛法に基づいた適正な健康診断を行わせるとともに、その実施についても業務の一環として受診させるよう活動を進めます。
- 原子力施設や他国の施設などが管轄内にある消防本部の災害対応体制の充実、また、関係機関との情報を共有し、さらには、災害発生時に出動する消防職員の安全を確保する装備の充実や教育・訓練の徹底などをはかるよう働きかけます。
- 女性消防職員の採用にあたっては、男女雇用機会均等法に違反することなく平等に採用をはかり、採用後の職場配置においても男女の区別なく業務を行わせるよう活動を進めます。
- 女性消防職員の業務従事にあたっては、災害出動を制限することなく、適正な業務の遂行がはかられるよう求めます。また、女性専用の浴室・トイレ・仮眠室・休養室・更衣室を設け、そのすべての施設が完全に男性と分離し施錠できるなど、性別に考慮した職場環境の改善をはかるよう働きかけます。
- 男女共同参画社会基本法の趣旨に基づき、セクシュアルハラスメントに関する学習会や、女性協議会会員が自由に発言し、現状の問題や課題などを取り上げた女性セミナーなどを開催し、女性消防職員の意見を消防行政に反映させるよう取り組みます。
- 消防職員が24時間職場に拘束されるなかで、福利厚生の充実は必要不可欠であるとの認識に立ち、食堂やリラックスできる休養室の整備、個人のプライバシーが守られる仮眠室の個室化などを求めます。
- 全消協は、消防職場で労働安全衛生活動を推進するため「自治体労働安全衛生研究会」の活動に参画しています。各会員が同研究会の活動に積極的に参加し、単協での活動に活かせるように取り組みます。
(11)救急業務の充実
- 急増する救急出動について、救急車の適正利用を第一に働きかけ、救急搬送有料化については十分かつ慎重な議論を求めます。
- 民間救急等の導入については十分な議論が行われるように求めます。
- 救急に関するトリアージの在り方について研究を進めます。
- 昼夜を問わず出動する救急隊員の精神的・身体的労務管理の徹底を求めます。
- 救急救命士・救急隊員の専門教育・研修受講で生じる勤務人員不足を解消するため、適切な増員・採用を求めます。
- 救急救命処置範囲拡大については、地域格差が生じることのないように整備を求めます。
- 全消協は消防救急の抱える問題点の改善に取り組み、救急業務の充実に向けて各関係機関に対して働きかけます。
(12)広域化対策
- 国や地方自治体に対して、次のことを求めます。
ア 消防本部の規模のみを判断材料とするのではなく、住民の生活圏・消防需要の動向・住民の意思などを総合的に検討し、住民サービスの低下をまねかないこと。 イ 消防本部の規模のみを判断材料とするのではなく、住民の生活圏・消防需要の動向・住民の意思などを総合的に検討し、住民サービスの低下をまねかないこと。
人員及び財政の削減を主たる目的におくのではなく、あくまで住民の消防に対する行政需要と市町村の消防責任との均衡をはかること。ウ 広域化対象となる地域住民に情報を開示すること。 エ 現場の消防職員に情報を開示し、意見反映をはかること。 オ 防災対策について消防機関と関係市町村との密接な連携強化策を講じること。 カ 署所の統廃合などにより住民に対する消防行政サービスの低下を招くことなく、総合的に向上させること。 キ 構成自治体の経費負担方法については、いわゆる6:4方式のような不適切なあり方ではなく地域住民に対する行政サービスと財政負担の均衡が取れるよう適切な措置を講ずること。 ク 消防職員の身分・賃金など処遇が不利益とならないようにすること。
- 社会的対話を通じて住民の意思が消防行政に反映できるようなシステムづくりを求めます。
- 消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の広域化(共同運用)については、導入にともなう費用を国が応分の負担をするよう求めます。
- 都道府県が定める推進計画と消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の広域化(共同運用)への対応については、県消協および各単協に「広域化対策委員会」を
設置するなど次の取り組みを行います。ア 県消協および各単協と、広域化に関する情報の収集・提供を行うこと。 イ 地域住民・各種団体・未組織消防に対し、広域化に関する情報の収集・提供を行うこと。 ウ 推進計画策定に際し、自治労各県本部・単組・組織内議員・協力議員と連携して都道府県・各県消防長会に意見反映および政策要求を行うこと。
- 財政運営のあり方について調査を行い、実態把握に努めます。
- 広域化対象市町村が定める広域消防運営計画への対応については、県消協および広域化該当単協に「広域化対策委員会」を設置し、次のとおり取り組みます。
ア 各単協と、広域化に関する情報の収集・提供を行うこと。 イ 地域住民・各種団体・未組織消防に対し、広域化に関する情報の収集・提供を行うこと。 ウ 広域消防運営計画策定に際し、自治労各県本部・単組・組織内議員・協力議員と連携して各自治体当局に意見反映を行うこと。 エ 既存単協周辺に「広域化の対象となる」消防本部がある場合、広域化を契機として既存単協に及ぼす組織拡大・縮小両方の観点から「広域化組織対策消防本部」として選定し、組織化の取り組みを自治労県本部・単組と連携して具体的に進めていくこと。 オ 広域化該当単協は、既存の単協を活用して、対象全消防本部の組織化を進めること。
(13)地域安全・安心センター構想の推進
- 「地域安全・安心センター」構想に関して各地域の実情に応じた消防行政のあり方を、各単協で主体的に分析・検討します。
- 住民アンケートの集計によって得られたデータなどをもとに、今、地域住民が消防行政に何を求めているのかについて、調査・研究します。
- 会員をはじめ各方面から、消防行政の将来的展望について幅広い議論の素材の提供を求めます。
- 具体的行政実例を収集し、分析・検討を行うとともに、その情報を提供し、各地域での議論の活性化に努めます。
- 「地域安全・安心センター構想」と、「高齢者再任用制度」、「消防の広域化」の接点について検討します。
- 医療・福祉・保健・教育機関など、ほかの関係機関との連携について、さらに検討します。