活動方針

2024-2025年活動方針

Ⅰ 基 調

1. 私たちをとりまく情勢

【国外の情勢】

WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)に関する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を2023年5月5日に解除しました。今後もさらなる変異株の発生などの恐れもあり予断を許しませんが、世界経済はパンデミック前まで完全には戻らないまでも回復の兆しをみせています。

他方、ウクライナ侵攻は1年以上が経過し、長期化の様相を呈しています。欧米国内ではウクライナへの支援疲れの声も聞かれる一方で、ロシアへの経済制裁、ウクライナへの軍事支援について、まさに引くに引けない状況が続いており、終結は見通せない状況にあります。主権と領土を侵害し、多くの一般市民を巻き添えにするロシアの暴挙は明らかな国際法違反です。また、核兵器の使用をほのめかすなど、世界を核の脅威に陥れ、国際的な安寧や秩序を脅しており、断じて許されるものではありません。

この侵攻に伴い、世界的にエネルギー供給の不安定化や価格の高騰、物価上昇による生活への不安・不満が広がっています。

世界経済への影響も極めて深刻であり、IMF(国際通貨基金)は、4月11日、今年の世界全体の成長率を2.8%(前期比マイナス0.1ポイント)と下方修正しています。また、人手不足を背景にした賃金上昇などインフレ圧力は予想以上に根強く、各国の中央銀行が金利引き上げにより十分にコントロールできていないことなどを要因として、「物価が多くの国で元通りになるには2025年までかかる」との見通しも示しており、世界経済の先行きは極めて不透明な状況にあるといえます。

世界的に物価やエネルギー価格が高騰する中で、スリランカ、ペルーなどでは物価対策を政府に求める大規模なデモが発生し、一部では暴動に発展するケースも散見されています。また、アメリカやイギリス、ドイツなどでは労働者が物価高騰に見合った賃上げを求め大規模なストライキを実施するなど、物価高も踏まえた賃上げが世界的な課題となっています。

環境面でも影響が深刻化しています。干ばつ、猛暑、豪雨などによって食料の安定供給に大きな影響が出ている中で、国連が中心となり世界が一丸となって取り組むべき気候変動対策は、今回の侵攻によって各国が自国の経済を回すため、一時ブレーキをかけざるを得なくなっています。

【国内の情勢】

日本においても新型コロナは一定の落ち着きをみせ、政府も5月8日から感染症法上の位置づけを「5類」に変更するなどウイズコロナへと進みはじめていますが、これまでの対応を引き続き検証する必要があります。とくに、重症化しやすいとされる高齢者や基礎疾患のある人への対応、感染拡大時の病床の確保など、救急を含む医療体制の課題を整理し、今後の感染拡大や新たな感染症に対応できる体制整備を訴え続けなければなりません。

一方で、2023年連合春闘では大手企業を中心に賃上げが進み、3%を超える水準を獲得しましたが、今春闘で掲げた「5%程度」との目標には到達せず、依然として物価上昇には追い付いていません。大手企業と全労働者の7割を占める中小企業との格差を是正することが必要であり、適正な価格転嫁も課題となるなかで取引関係の適正化も重要です。

こうした中、総務省が公表した人口推計(2023年4月12日)によると、2022年10月1日時点の日本の人口は約1億2,000万人(前年比75万人減)と12年連続の減少、減少幅は統計をとりはじめた1950年以降で最大であり、15歳未満の人口は約1,400万人と過去最低、75歳以上の人口は約1,900万人で過去最高と、「少子・高齢化」「人口減少」が急速に進んでいることが顕著になっています。また、人口が増加したのは東京都だけであり、「東京一極集中」の流れが再び強まっている状況にあります。

また、運輸・輸送業界、とりわけ物流業界の労働力不足がさらに加速することが危惧されている、いわゆる「2024年問題」が間近に迫っているだけでなく、令和4年版厚生労働白書(2022年9月)では、2040年に医療福祉分野で96万人もの労働力が不足すると公表しています。

少子・高齢化および人口減少が進み、労働力の確保が日本全体の深刻な課題です。誰もが安心して働き続けることができるよう、これまで以上の雇用対策や労働者保護施策を含む社会的セーフティネットの整備が求められています。

【地方公務員・消防職場を取り巻く情勢】

新型コロナの感染拡大や大規模な自然災害等、危機的な事態が次々と発生している状況下で、住民生活を支える立場にある地方公務員・消防職員に求められる役割は、これまで以上に重要なものとなっています。しかし、この間、地方公務員数は大きく減少し、災害時の即時対応などの難しさが明らかになってきています。今後も新たな感染症の流行も予想されることから、職員が安心して働けるよう今回の新型コロナを教訓に検討・対応していくことが必要です。

次に、公務員の定年年齢が2023年4月1日から2年ごとに1歳ずつ段階的に引き上げられ、2031年には65歳となります。

総務省消防庁は、消防職場は加齢による職務遂行の困難、さらには適切な配置を検討すべき職種との認識のもと、抜本的な改善策について「定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会」を立ち上げ、2022年11月に「定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会報告書」を公表しました。自治体消防制度が確立してから70年以上が経過した現在の消防職場は、消防車両や個人装備品などの資機材は小型軽量化、省力化が進み性能も飛躍的に向上しましたが、加齢による体力等の衰えを考慮し、定年の引き上げが適切に導入されるよう組織の総力をあげて取り組む必要があります。

次に、緊急消防援助隊の登録目標隊数を、増強するとしましたが、派遣に関する待遇については派遣元の自治体条例によるため、賃金・労働条件等で不均衡が生じているのが現状です。

また、大規模・複雑多様化した災害が増加する中で、現場活動での肉体的・精神的ストレスに対する対応策は十分措置されているとはいえません。あわせて、新型コロナや猛暑に伴う熱中症により、救急要請は増加の一途を辿っており、長時間の活動に、起因した疲労による事故も発生しています。

全消協は、自治労と協力し、消防行政の向上と職場環境の改善のため、さらなる労働安全衛生の確立を今まで以上に政府に対し、働きかける必要があります。

【新型コロナに関する消防職場の課題】

新型コロナの感染拡大はさまざまな問題を表面化させました。2022年の救急出動件数は過去最多となり、救急体制がひっ迫し、救急車が不足していた事が全消協のアンケート調査で明らかになりました。

引き続き、日本の消防職員の代表たる組織として、こうした現場の実情を関係省庁等に対して訴え、しかるべき措置を講ずるよう求めます。

【ジェンダー平等社会をめざして】

男女共同参画社会基本法の制定から24年が経過する中、政府は第5次男女共同参画基本計画(2020年12月25日閣議決定)や育児・介護休業法の改正(2021年6月9日公布)、性的指向およびジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(通称:LGBT理解増進法、2023年6月23日公布)など、ジェンダー平等社会の実現にむけた情勢となっています。また、さまざまな分野で女性が活躍する場面が増える中にあって、防災分野でも女性目線による復興および防災対策の重要性が改めて認識され、ジェンダー平等社会の実現が災害に強い社会づくりであるともいわれています。

一方、「WEF(世界経済フォーラム)」がまとめた男女格差報告(ジェンダーギャップ指数2023)の調査によると、調査対象国146ヵ国中、日本は125位で過去最低を記録しました。とりわけ「政治」と「経済」の分野においては先進国の中でも下位であるなど、依然としてジェンダー格差が大きく、働きやすい社会とはいえない状況です。

2. 運動の基本方向

【消防職員の団結権回復にむけた対応】

①団結権問題とILOの対応

全消協は、1977年の結成以来、団結権回復にむけた運動を一貫して続けてきました。日本政府は消防職員の団結権禁止について、ILO(国際労働機関)の第87号条約で、「軍隊および警察に条約が規定する保障(団結権等)を適用するかどうかは各国の国内法令で定めること」としているため、消防は警察に含まれると解されることから、「同条約上問題なしとした上で1965年に批准した」としています。これに対し、1973年、ILOは「消防職員に団結権が認められるよう適当な措置をとることを希望」するとして、日本政府に消防職員への団結権付与について勧告し、以降幾度にもわたって指摘がなされていますが、現在に至るまで具体的な措置は講じられていません。

② 消防職員委員会の創設

1980年代後半から団結権問題が政労においてさらにクローズアップされる中、1995年の自治労委員長と自治大臣(当時)の会談では、消防職員の団結権問題についての当面の解決策での合意として、「消防職員委員会」が創設され、1996年から開始されました。また、2005年には「意見とりまとめ者」などの告示改正が行われるとともに、第107回ILO総会・基準適用委員会での議論も踏まえ、消防職員委員会の運用方針の改正にむけ政府と協議した結果、2018年9月には「連名・匿名での意見提出」などを盛り込んだ告示改正が行われました。しかし、消防職員委員会は職員個人の意見を提出・審議するものであり、消防職員の団結権に代わるものにはなりえません。

③ PSIへの加盟と国内での機運の高まり

2007年、消防職員の団結権回復の運動を国外からも協力を得るため、全消協はPSI(国際公務労連)に加盟しました。2009年9月、民主党(当時)を中心とする政権が発足し、公務員の労働基本権問題や労使関係制度の改革にむけて本格的な作業が始まり、消防職員の団結権は着実に回復への道を辿りました。2010年10月に発足した「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」で議論が重ねられ、「付与が妥当」とされました。2012年11月には、消防職員への団結権付与を含む「地方公務員制度改革二法案」が国会へ提出されましたが、衆議院の解散により審議未了のまま廃案となり、消防職員の団結権回復への道筋は一旦途切れました。

④ 定期協議に至るまでの国際的な対応

国内における膠着状況が続く中にあって、全消協は自治労や公務労協、連合、そしてPSIを通じて、ILOやITUCなどへの働きかけなど国際的な対策を強化してきました。その結果として、2018年5月末から開催された第107回ILO総会・基準適用委員会(以下「基準適用委員会」という)の個別審査の対象とされました。基準適用委員会での審査は、187の加盟国の労働問題の中でとくに討議すべき優先順位が高い事項が選ばれるものですが、その対象となるためには、国内外での実情を訴えていくことが不可欠であり、全消協のこの間の国際対策が実を結んだ結果であり、従来の勧告とは一線を画すものです。

基準適用委員会の議論の中で、日本政府は、団結権付与に関しては今まで通り「警察と同視」との見解を示しました。しかしながら日本政府は、消防職員委員会制度が定着しているとした上で、(ア)消防職員委員会の運用方針の改正を行うこと、(イ)新たに労働側との定期的な意見交換の場を設けることを明言し、これを受けた議長集約でも同様の指摘がなされるとともに、結社の自由委員会報告において、日本の公務員の労働基本権問題について、2002年の連合・官公部門連絡会のILO提訴以降11回目の勧告が行われました。

特筆すべきは、政府が「(イ)労働側との定期的な意見交換の場を設ける」を認めたことです。これにより全消協は、自治労と連携し日本の消防職員の代表組織として、災害現場の最前線で奮闘している会員から預かった想いを踏まえ、定期的に政府と対等な立場で協議を実施し、これまでに計11回の定期協議を行いました。今後も粘り強く定期協議の継続をはからなければなりません。

⑤ 団結権の回復にむけて

前述の通り、消防職員委員会制度の改正がされるに至りましたが、同制度は「団結権に代わるものにはなりえない」ことは明らかです。時には自身の命を危険にさらし、住民の負託に応えるため災害現場の最前線で活動する消防職員の意見を反映させるためには、労働基本権は必要不可欠なものです。

2021年7月に韓国の消防職員への労働基本権が認められたことで、ILO第87号条約批准国さらにはOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で消防職員に団結権が無いのは日本だけとなりました。そのこと等を踏まえ、自治労をはじめ自治労消防政策議員懇談会(以下、「議員懇」という)・PSI-JC(国際公務労連加盟組合日本協議会)・連合・公務労協とも連携し、団結権の回復にむけ、政府への働きかけを強めていきます。

さらに、立憲民主党内に公務員制度改革PTが設立され、2023年6月、公務員制度改革関連5法案が衆議院に提出されました。これは、国家公務員における若年層の離職増加や志望者の減少を踏まえたものであると同時に、国公法附則に基づく自律的労使関係制度の確立をめざすものです。自律的労使関係制度は当然ながら公務員全体の問題であり、検討課題には地方公務員、そして消防職員の労働基本権が盛り込まれています。

この間、議員懇でも団結権回復にむけ対応することを確認しており、引き続き議論動向、さらには国会対応を注視するとともに、全消協として具体的措置が講じられるよう自治労と連携し対応をはかっていきます。

【組織の強化・拡大】

全消協は、第37回定期総会で会員3万人体制を目標に掲げていますが、会員数は約12,000人で、会員数の増加には至っていません。そのため、これまでの取り組みを検証した上で、第43回定期総会において「新たな組織強化・拡大の取り組み(以下「組織強化・拡大アクションプラン2020」という)を策定し活動を行うこととしました。しかしながら新型コロナの感染拡大に伴い、2020年度半ばから全消協も活動・行事などを制限しなければならない状況となり、具体的な成果には至っていません。

こうした状況を踏まえ、全消協はコロナ禍においてもでき得る活動を模索するとともに、全国的な参集が難しい状況においてもウェブを活用した会議や集会を実施してきました。今後もウェブを活用することにより、「休みの調整ができず参加できない」、「少人数しか参加できない」といった課題への対応と、各地域の情報交換・活動の共有を行います。

一方で、参集開催することも重要であるとの意見が多く寄せられています。組織とは「人」であり「人とのつながり」によって成り立つものであることから、その構築にむけた手法を検討し組織強化・拡大とすべての世代の人材育成に取り組みます。

【賃金・労働条件の改善】

全消協は、結成以来、賃金・労働条件の改善にむけて、継続して取り組みを行ってきましたが、当初からの課題である無賃金拘束時間についてはいまだ解決されていません。2003年、総務省消防庁が発出した206号通知を根拠に、休憩中の労働を事後において休憩時間を繰り下げることにより、時間外勤務を正規の勤務時間とし、処理できない時間のみ時間外勤務として扱う恣意的な運用をする職場もあります。これは勤務時間の事前明示に反するものであるため、法制度上の矛盾を追及し206号通知の不正運用を解消する活動を展開します。

緊急消防援助隊の派遣にあっては、多くの自治体で派遣手当の新設などの条例整備がされました。また、総務省消防庁は、緊急消防援助隊の活動に、出動前の車両点検等の準備を含むとの見解を示しました。しかし、いまだ条例整備を行わない自治体が存在するなど改善に至らない消防職場が多々あります。

緊急消防援助隊の出動は国の制度下によるものであり、派遣に伴う諸条件は全国画一とすべきであることから、引き続き、総務省消防庁への働きかけを行っていく必要があります。

新型コロナの感染拡大は経済にも大きな打撃を与えました。その影響は今後、国・地方の財政にも波及してくることが想定されることから、消防財政の不当な緊縮・人件費削減、さらには財政面だけを主眼とした不合理な広域合併が推進されないよう働きかけを行います。

定年引き上げに伴い、高齢期の消防職員が安心安全に働ける職場環境の整備を重要課題の一つとして取り組むとともに、消防職場の働き方について、あるべき姿の提起を行います。

また、人事評価制度についても、恣意的な評価がされないよう取り組みます。

【労働安全衛生の確立】

全消協は、結成以来、継続して消防職場の労働安全衛生について取り組んできました。消防業務は、深夜勤務を伴う交替制勤務や長時間拘束などの過重労働であり、有事の際には、危険な現場に赴くことが求められます。

近年は、災害が大規模・複雑多様化の傾向にあり、それに対応するための資機材や技術の高度化が進んでいます。そのため、これまで以上に現場や訓練時の安全管理体制・メンタルヘルスケアの確立が求められています。消防力の低下を防ぎ、より質の高い消防サービスを提供するためには、これまで以上に職場の安全衛生体制の確立と、労働安全衛生活動の強化が必要です。

全消協は、労働安全衛生法を活用し、安全で快適な消防職場に即した職場環境を整備する取り組みを進めます。さらに、職場内外問わず、すべてのハラスメントを撲滅することを重要な課題として、「被害者・加害者」を出さないよう取り組みを進めます。

【定年引き上げへの対応】

2022年3月より総務省消防庁において有識者を集め、「定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会」が開催され「定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会報告書」が公表されました。全消協は、昨年設置した「全消協消防総合研究委員会」(以下、「シンクタンク」という)の研究結果をもとに、課題抽出と情報共有を行い、問題解決にむけ、活動を展開します。

Ⅱ活動方針

(1) 団結権回復にむけた取り組み

全消協は、1977年の結成以来、最大の目標である団結権回復にむけて取り組みを続けてきました。2009年9月には民主党(当時)を中心とする政権が発足し、「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」が設置され議論が活発になりました。しかし、2012年11月に法案が閣議決定されたものの、衆議院の解散により審議未了のまま廃案となりました。

こうした中にあっても全消協は、団結権の回復にむけて国内外で活動を展開してきました。2017年11月に開催されたPSI第30回世界大会では、「日本の公務員と韓国消防職員の労働基本権」と「公共サービスと公共サービス労働者の拡充で災害に強い社会づくり」の決議案を提出するとともに、村上全消協会長(当時)が「日本の消防職員の労働基本権問題」を提起しました。その際には、ガイ・ライダーILO事務局長(当時)から全消協の活動を支援する旨の考えも表明されています。

2018年5月末から開催された第107回ILO総会・基準適用委員会において日本の公務員の労働基本権問題が個別審査され、報告書が採択されました。これは連合や公務労協、自治労の尽力によるものですが、それには諸外国の労働組合との合意も必要であり、当事者たる全消協がPSIを通じて声をあげ続けてきた結果でもあります。

同時に、ILO結社の自由委員会第386次報告では、日本政府に対して11度目の勧告が行われ、こうした経過を踏まえ設定されたILO総会基準適用委員会議長集約にかかる定期協議は現在まで11回行われており、全消協も主体的に参画しています。2023年2月には、全消協単協代表者会議の後に、議員懇との意見交換会が開催され、71人の国会議員が参加し、これまで以上に議員懇役員との繋がりを強めました。こうした活動が実を結び、2023年6月に立憲民主党は、社会民主党、国民民主党と共同で「公務員制度改革関連5法案」を衆議院に提出しました。この法案には、これまで措置していた消防職員の団結権に加え、協約締結権を措置することとしています。

また、2021年7月に韓国の消防職員へ労働基本権が認められました。現在、ILO批准国さらにはOECD加盟国の中で、唯一日本だけが消防職員に団結権が認められていない状況であることから、消防職員の団結権の回復を含むすべての公務労働者の労働基本権回復にむけて、議員懇との連携やPSI-JCでの活動を通じ、連合・公務労協とも連携し取り組みを継続していきます。

さらに、今後も自治労と連携し、地域公共サービス分野で働く同じ労働者として、共通した問題意識を持ちながら、ともに活動する体制づくりを構築します。

あわせて、全消協第33回定期総会で決定した団結権の回復後の組織のあり方である「自治労に合流することを前提とし、課題整理していく」ことを踏まえ、自治労と定期的に組織合流のあり方について検討を行います。

【労働基本権の回復にむけた政治的活動の強化】

1. 消防職員の団結権の回復を含む公務員の労働基本権の回復にむけ、自治労をはじめ連合・公務労協との連携をより一層密にします。

2. 議員懇に支援と協力を求め、政府・総務省消防庁などへの問題提起など、団結権の回復はもとより、働き甲斐のある職場を目指すための活動を展開します。

【労働基本権の回復にむけた国際連帯の強化】

3. ILO87号条約批准国であるにもかかわらず、消防職員への団結権の付与にむけ、国内法令の整備等、積極的な行動を起こさない日本政府に対して、PSI-JCでの活動を通じ、国際的な機運が高まるよう取り組みます。

4. PSIに加盟する消防・救急労働者等との情報交換を行うとともに、PSI-JCの活動を通じ、他産別との交流を深め、消防職場の現状を発信します。

【自治労への合流を見据えた連携強化】

5. 全消協は、引き続き団結権の回復を見据え、自治労に組織合流することを前提に具体的協議を重ね、これからの組織のあり方について共通認識を深めます。

6. 全消協は、自治労本部と引き続き連携を深め、県消協・単協においては自治労県本部・単組とより一層の連携を深めます。

(2) 組織強化・拡大の取り組み

全国に723消防本部、1,714消防署が設置され約16.7万人の消防職員のうち、全消協加盟の単協数188、会員数にあっては約1万2千人で、会員数の増加には至っていません。

新型コロナの感染拡大に伴う活動制限のため、単協活動の停滞や組織力に強弱があることから、地域の実情に合わせた施策を検討し、目標の「会員3万人体制」のため、「組織強化・拡大アクションプラン2020」に基づき、単協の加入率過半数をめざし、各ブロック・県・単協活動の後押しを行い、組織強化に取り組みます。

組織拡大については、全消協幹事が中心となり、自治労の地区連絡協議会(地連)と連携し、未組織本部への働きかけを行います。あわせて、隣接するブロックと協力して情報の共有を行い、オルグ活動の活性化をめざします。

ウェブでのメリットを活用しながら、性差、世代、地域を超えた会員交流・人材育成に努め、女性連絡会・ユース部の活動を推進するとともに、全世代が参画しやすい協議会活動を展開します。

【組織強化・拡大方針について】

1. 組織強化・拡大アクションプラン2020を基軸に、多くの意見を集約するとともに、組織強化・拡大事例の共有を行い、リニューアルされたホームページ、組織化マップを活用し、単協・県消協・各ブロックと連携した組織強化・拡大活動に取り組みます。

2. 全消協幹事が中心となり、ブロック内でより積極的な組織強化・拡大活動を行います。

3. ウェブを活用した取り組みを強化し情報の共有化をはかります。

【自治労本部との連携】

4. 自治労第6次組織強化計画を参考にし、自治労本部とともに、既存単協の組織強化や未組織消防職場への組織拡大のオルグ活動の環境を整備します。また、自治労共済をオルグ活動に活用します。

5. 議員懇と全消協加盟単協との意見交換会が実現したことを踏まえ、地元議員とのさらなる連携を深め、消防職場を取り巻く課題に対応します。

【自治労県本部・単組との連携】

6. 自治労県本部・単組と県消協・単協は、組織強化・拡大にむけて連携を深め、下記の取り組みを進めます。

① 消防職場の実態や問題点などを共有し、現状の打開策を協議します。

② 自治労各県本部に「消防組織化対策委員会」の設置・継続を働きかけ、未組織消防本部の組織化を推進します。

【協議会活動を担う人材の育成】

7.単協における会員の積極的な活動への参加を促します。また、未組織の消防職場へのオルグ活動を行うため、オルガナイザーの育成・配置に努めます。

8.次世代の協議会活動を担う人材育成とともに、労働講座・研究集会等で出された意見を反映させ、問題の所在と課題、あるべき姿の提示から解決の方向性を提起できる能力の開発をめざし、各種学習会・講座を開催します。

9. 女性・ユース世代が各ブロック等で学習会を開催するなど、自主的な活動を後押しし、協議会活動を担う人材育成に努めます。

【全消協PR活動について】

10.全消協ニュース・オルグリーフ、ホームページおよび各種SNSを活用し、会員ならびに未組織消防職員へ全消協活動を広く情報発信し、組織強化・拡大につなげます。

(3) 賃金・労働条件改善への取り組み

住民の安心安全を守るためには、消防職員の勤務労働条件の向上は欠かせません。

しかし、現在の消防職場においても、全消協結成当初からの課題である無賃金拘束時間はいまだに解消されていません。

一度出動となれば、過酷な現場活動に従事するにもかかわらず、2003年に総務省消防庁が発出した206号通知を根拠に、休憩中の労働を事後において休憩時間を繰り下げることにより、時間外勤務を正規の勤務時間とし、処理できない時間のみ時間外勤務として扱う恣意的な運用をする本部もあります。また、2011年の広島高裁判決では、消防職員は休憩時間の自由利用の原則が排除されていることを根拠に、労働時間性を否定しました。この裁判の結果も踏まえ、各消防職場の勤務時間や休憩時間等の実態を調査するとともに、無賃金拘束時間の解消にむけ、現行の法制度上の矛盾を追及する運動を展開します。

緊急消防援助隊の派遣にあっては、多くの自治体で派遣手当の新設などの条例整備がされました。総務省消防庁は、緊急消防援助隊の活動に、出動前の車両点検等の準備を含むとの見解を示しています。しかし、いまだ条例整備を行わない自治体が存在するなど改善に至らない消防職場が多々あります。条例化されていない消防職場では特殊勤務手当が支給されないなど、同じ活動に従事している職員間での不均衡な取り扱いにつながっています。緊急消防援助隊の出動は国の制度下によるものであり、派遣に伴う諸条件は全国画一とすべきであることから、引き続き、総務省消防庁等へ働きかけます。

新型コロナの感染拡大は経済に大きな打撃を与えました。その影響は今後、国・地方の財政にも波及してくることが想定されます。消防財政の不当な緊縮・人件費削減、さらには財政面だけを主眼とした不合理な広域合併が推進されないよう働きかけます。

2023年4月から定年が段階的に引き上げられ、消防職場は肉体的・精神的に負担が大きい職種であり、加齢に伴う身体能力の低下などの懸念があることから、高齢期の消防職員が健康で安心安全に働ける職場環境の整備を重要課題として消防職場の働き方についてあるべき姿の提起を行います。

2016年度から人事評価制度が消防職場にも導入され、運用されています。この制度は、賃金、昇給・昇格に直接関わることから、消防職場に適したものとなるよう取り組みを進めます。

【賃金・労働条件の改善】

1. 勤務体制や賃金・手当等、ほかの公務労働との均衡性を含め、消防職員の労働のあり方・労働に対する評価のあり方等について調査・研究し、改善にむけた施策を検討します。

2. 改善にむけた施策を検討するにあたり、幅広く意見を聴き、解決方策等を検討する機会を設けます。

3. 各種手当は、地域により不均衡な取り扱いとなっていることから適切に支給されるよう取り組むとともに、各単協の現状を把握するため、引き続き賃金・労働条件に関する調査を実施します。

4. 広域再編後の給料表・手当が統一されるよう、格差是正にむけて情報収集・提供を行います。

【無賃金拘束時間の解消とワーク・ライフ・バランスの推進】

5. 結成当初から課題となっている無賃金拘束時間は、休憩時間と称しておけば、何時間でも無賃金で職場に拘束するものです。とくに、消防職員にかかる労働時間についての例外のあり方の見直し・再検討を求めます。現行法の休憩時間に関する取り扱いの是正をめざし、自治労や議員懇と連携して取り組みを進めます。

6.単協・県消協において、人事委員会・ 公平委員会に対する措置要求、または訴訟などの動きについて情報収集に努め、支援、協力のあり方を検討します。

7. 単協・県消協は、無賃金拘束時間を可能な限り短縮するよう、勤務体制を研究します。

8. 職員一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、職務上の責任を果たすとともに、子育て期、中高年期といった人生のライフステージに応じて多様な生き方が実現できるよう、妊娠・出産・不妊治療・子の看護・介護等の特別休暇を取得できる環境の有無や年次休暇の取得率等について、実態調査の結果をもとに仕事と生活の調和がとれた職場環境となるよう働きかけ、ワーク・ライフ・バランスの推進を行います。

【現行の勤務制度上における改善】

9. 地方公務員法第58条の規定により、消防職員には労働基準法第32条の2で規定される「一箇月単位の変形労働時間制」しか適用になりません。単協は、消防当局に対して、労働基準法等の遵守および勤務時間条例等との整合性のとれた運用を求めるとともに、それぞれの消防職場において、次の点について改善を求めます。

① 変形期間の始期と終期を明確にした勤務割を行うこと

② 各職員の各日の勤務について、正規の勤務時間および休憩時間位置を明確にすること

③ 非番・週休日における常態化した業務命令を見直し、通常勤務の中で業務遂行できるよう、体制の整備をはかること

④ 非番・週休日の業務従事に際して、時間外勤務手当の支給対象を明確にした上で勤務命令を出すこと

⑤ 週休日の労働に対して、安易に週休日の振替等の運用を行わないこと

⑥ 条例等で定める休暇・休業が取得しやすくなるよう、必要な措置を講ずること

⑦ 勤務時間の明確化をはかり、休憩時間内の労働(出動など)に対して、時間外勤務手当の支払いを求めること

⑧ 常態化した時間外勤務を撤廃し、適正な人員配置のもと、時間外勤務の縮減とサービス残業を廃止するよう求めること

【災害派遣にあたっての取り組み】

10.総務省消防庁に対して、次のことを求めます。

① 緊急消防援助隊の派遣に関する処遇について、給与条例等に依拠することなく、国の責任としてリーダーシップをはかること

② 派遣された隊員の処遇のあり方・内容について例示するとともに、派遣時の職員の身分、勤務の態様、特殊勤務手当の支給対象となる活動およびその額について例示し、各自治体に対し適切に助言すること

11.災害派遣における処遇について、情報収集・提供を行います。

12.単協は、災害派遣にかかる手当等が支給されるよう取り組みます。

【新型コロナに対する取り組み】

13. 新型コロナの感染拡大は経済に大きな打撃を与え、その影響は今後、国・地方の財政にも波及してくることが想定されることから次のことを働きかけます。

① 消防財政の不当な緊縮・人件費削減、 さらには財政面だけを主眼とした不合理な広域合併が推進されないよう働きかけます。

② 新型コロナ終息後の財政悪化に追随する形での給与・手当の見直しは行わないよう自治労や議員懇の協力を得ながら、関係省庁などに対して働きかけます。

【再任用制度と定年引き上げへの取り組み】

14.全消協は、高齢期の消防職員が健康で安心安全に働ける職場環境の整備を重要課題として消防職場の働き方についてあるべき姿の提起を行います。

15.定年引き上げに関する消防職場の課題について、情報収集・提供を行います。

16. 単協は、現行再任用制度について、以下の点に取り組みます。

① 職員定数の枠内ではなく、定数外職員として任用することが可能な制度に改めるよう取り組みます。

② 任命権者に対して、本人の意向を踏まえた再任用制度の運用を求めます。

17. 単協は、定年引き上げに伴う労働条件や、健康で働きやすい職場環境となるよう、それぞれの消防職場において次のように働きかけを行います。

① 職員の意向や希望も踏まえ、勤務体制や業務内容を決定すること

② 職員の昇任・昇格、採用に影響を及ぼさないようにすること

③ 健康管理・安全管理・衛生管理など、必要な環境整備を行うこと

【消防職場の人事評価制度の取り組み】

18.  消防職員の賃金、昇給・昇格に大きな影響を与える人事評価制度の運用にあっては、恣意的な評価がされない消防職場に適したものとなるよう取り組みを進めます。

(4)労働安全衛生の確立

労働安全衛生法は、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進する」ことを目的とし、安心安全な職場を実現することをめざして制定されたものです。私たち全消協は、公務上の犠牲者を出さないとの信念のもと、法の趣旨に基づき、これまで以上に職場の労働安全衛生体制の確立をめざし、安全で快適な職場環境の整備に取り組んでいかなければなりません。

消防業務は、深夜勤務を伴う交替制勤務や長時間拘束などの過重労働であり、有事の際には危険な現場に赴くことが求められるなど、公務内外における死者や負傷者の発生する割合は、他の行政職員と比較しても高い水準となっています。また、災害現場では常に命の危険と隣り合わせでの活動であり、公務災害が後を絶ちません。そのため、休息を十分にとれる体制を確立し、安全に災害現場で対応するために資機材や設備管理の見直しなど、公務災害が起こらないよう安全管理体制の確立に取り組みます。あわせて、公務災害認定請求ができるよう、助言等の対応にも取り組みます。

さらに、地方公務員の定年引き上げについては、消防職員が定年まで安心して働き続けられる働き方の検討や災害現場や訓練時の安全管理体制の確立がこれまで以上に求められていることから、今後も総務省消防庁等へ働きかけます。

例年、日本各地で発生する大規模災害や傷病者が多数発生する事件・事故の対応、日常的な災害対応や劣悪な職場環境等により、消防職員が心身ともに不調を訴える例が多く報告されています。そのため、各職場での相談窓口の設置やメンタルヘルスラインケア・セルフケアの資格取得およびメンタルヘルス講習会の開催等、メンタルヘルス対策を講じるよう追求します。

全消協は、2012年の労働講座から「すべてのハラスメント一掃宣言」を展開しています。しかしながら、職場環境に目をむけると、いまだに非民主的な職場環境が多く存在しています。ハラスメントは相手の尊厳や人格を侵害する行為であり、職員の士気低下や職場環境の悪化につながることから、全ての職場でのハラスメントの一掃に取り組むことが必要です。

全消協は引き続き、メンタルヘルス対策とすべてのハラスメントの撲滅を重要な課題として、その「被害者」「加害者」を出さないよう取り組みを進めます。

【危険職種指定をはじめ法令改正に対する取り組み】

1. 労働安全衛生法では、消防職場は安全委員会の設置・安全管理者等の選任義務がないことから、危険職種指定をはじめとする一連の法令改正について、自治労と連携し、議員懇の協力も得ながら、総務省消防庁を通じ厚生労働省に対し改善を行うよう求めます。

【労働安全衛生法に基づいた取り組み】

2. 労働安全衛生法の趣旨を活かし、民主的で職員一人ひとりが積極的に参画できる労働安全衛生活動を推進するため、単協は、消防当局および各自治体首長に対して、次のことを求めます。

① 「職場の改善対策事例:消防職場」を活用し、消火・救急・救助活動などの現場活動を含めた職場点検活動を行うこと

② 消防職員委員会・衛生委員会等の委員の選出や会議において、民主的な運営を求めること

③ 職場点検活動で得た問題点は、消防職員委員会・衛生委員会等で協議し、消防長等に改善策を求めること

④ 訓練中および現場活動で想定しうる災害に対処するための必要な情報の提供・安全衛生教育の徹底・装備すべき資機材の整備充実を求めること

⑤ 深夜業務や潜水業務に従事する職員の健康診断については、労働安全衛生法に基づいた適正な健康診断を行わせるとともに、実施にあたっては業務の一環として受診させ、その結果分析と事後措置などの改善対応を求めること

⑥ 衛生委員会等へすべての世代の参画を推進し、「誰もが担う安全衛生活動」を確立すること

⑦ 消防職員の勤務実態において、労務環境の充実は必要不可欠であるとの認識に立ち、食堂や休養室、個人のプライバシーが守られる仮眠室の個室化などの整備を求めること

⑧ 消防職場に関する労働安全衛生法の改正点について研究すること

【定年引き上げに関する対策】

3. 消防職員が定年まで安心・安全に働き続けることができる環境整備にむけ、以下について取り組みを進めます。

① 過重労働である消防職場での働き方について情報共有すること

② 他職種の定年引き上げ後の働き方について情報収集を行い研究・情報共有すること

③ 定年引き上げについてアンケートを実施し、再任用職員との違いや働き方について情報共有すること

【公務災害対策】

4. 公務災害が発生しないようすべての消防本部で安全管理マニュアルを策定し、職場の安全管理体制を確立するよう取り組みます。また、各公務災害の事例を検証し、情報を共有することで、質の高い安全管理がはかれるよう努めます。

5. 公務災害補償制度は自己申告制となっていることから、職員側が申告しなければ公務災害認定を受けることはできません。このことから、単協・県消協は、公務遂行中や公務に起因して発生したと思われる死亡・傷病、また、過重労働に伴う内因性疾患について、自治労県本部・単組と連携をはかりながら、すべて公務災害認定請求を行うよう取り組みます。

6. 公務災害認定基準の改善を求めるとともに、被災者立証制度の抜本的見直しにむけて取り組みます。

7. 職員が療養する必要が生じた場合、安心して治療に専念できる体制づくりを求めます。また、職場復帰をする前には、慣らし出勤や就業場所・業務内容の変更、規則の制定による段階的な職場復帰ができるよう、健康に配慮した体制づくりを研究します。

【メンタルヘルス対策】

8. 単協・県消協は、メンタルヘルス対策として、次のことに取り組みます。

① メンタルヘルスの基礎教育(セルフケア・セルフチェック)と消防本部による相談・カウンセリング体制の充実や慣らし出勤等の職場復帰に関する体制整備(ラインケア)の充実を求めます。

② メンタルヘルス問題を職場内で気軽に話し合える環境づくりを進めます。また、人権の尊重・プライバシーの保護を基本として、人事管理とは完全に切り離したカウンセリング体制の充実を求めます。

③ 本人や家族または職員同士で惨事ストレスについて理解し、心身の変化を早期に察知できるよう、研修・担当職員の養成を求めます。また、メンタルヘルスの専門家を活用できるよう関係機関等と協力関係を築きます。

9. 従業員50人以上の事業所に対して、医師・保健師等によるストレスチェックが義務化されました。衛生委員会等で職場環境の改善について協議を進めるとともに、従業員50人以上の事業所に義務化されているストレスチェックが適正に実施されているかを調査します。

【ハラスメント対策】

10.全消協は、消防職場におけるハラスメントの撲滅を目的に、次のことに取り組みます。

① 総務省消防庁が2017年7月4日に発出した「消防本部におけるハラスメント等への対応策」が確実に実施されるよう注視します。

② 改正労働施策総合推進法に基づき、職場におけるパワーハラスメント防止対策が事業主に義務付けられたことから、消防職場においても同様の措置が講じられるよう総務省消防庁等への働きかけを行うなど、取り組みを強化します。

③ 全国の消防職員と消防本部に対して実施したアンケートは、現場の状況を十分反映した結果が出ていることから、今後の比較対象として、同様のアンケートを継続して実施することを総務省消防庁に求めます。

④ 職場内外での全てのハラスメントの実態を把握し、その防止にむけて取り組みます。

11.カスタマーハラスメントを含む業務に付随するすべてのハラスメントについて、職場における状況を把握・分析するとともに、必要に応じて総務省消防庁等への働きかけを行います。

12.単協・県消協は、ハラスメント対策として、次のことに取り組みます。

① 2017年に総務省消防庁が発出した「消防本部におけるハラスメント等を撲滅するための、消防長の宣言等による意志の明確な表明について」を踏まえ、職場においてその宣言が確実に履行されるよう、消防長に対して求めること

② 会員相互の連帯を深め、職場内におけるすべてのハラスメント防止にむけて取り組むこと

【自治労との連携】

13.消防職場で労働安全衛生活動を推進するため、自治労主催の安全衛生集会等へ積極的に参加し、単協での活動に活かせるように取り組みます。

14.自治労作成の「公務災害認定への取り組みマニュアル(2015年)」を活用するなど、公務災害認定に積極的に関与し、取り組みを強化します。

(5) ジェンダー平等の取り組み

ジェンダー平等とは、世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の1つで、一人ひとりの人間が、性差にかかわらず、平等に責任や権利の機会を分かち合い、あらゆる物事を一緒に決めることができることを意味しています。

消防職場においても、女性消防吏員の活躍推進のため2015年7月に消防庁次長通知が各都道府県知事あてに発出されるなど、積極的な取り組みが求められています。しかし、女性消防吏員は5,585人(2022年4月1日総務省消防庁調べ)で、消防吏員全体の3.4%にとどまっており、目標としていた2026年度当初までに女性消防吏員5%までの引き上げ達成は厳しい状況となっています。また、2022年4月1日現在採用がない消防本部は121本部(16.7%)となっています。女性消防吏員の採用や職域の拡大を推進することが喫緊の課題となっています。また、施設や資器材など男女ともに働きやすい職場環境を整え、職場へのジェンダー平等の啓発やすべてのハラスメントの防止にむけた教育を実施し、いまだ続く「男職場」を改革することも必要です。全消協としても、組織のさらなる活性化をはかるため、グローバルな視点から、すべての人があらゆる分野で活躍できる組織づくりを推進していきます。

さらに、職場にはLGBTQ+の当事者がいることを認識し、あらゆる差別を許さず人権の尊重を掲げる全消協として、誰もが働きやすい職場環境を実現するためにも、LGBTQ+当事者の人権を守りハラスメントなどの課題解決に取り組みます。

ジェンダー平等参画は、組織活性化の要です。ワーク・ライフ・バランスの観点から社会全体の課題であることを認識し、意識を改革する必要があります。職場や地域、協議会活動において、性差を問わずすべての人が消防吏員としてその能力を十分に発揮し、生き生きと活躍できるよう全力で取り組みます。

【ジェンダー平等の推進】

1. 男女共同参画社会基本法を踏まえ、職場におけるジェンダー平等の推進にむけて取り組みます。

2. さらなる女性消防吏員の積極的な採用と職域の拡大等を推進するため、労働条件等調査を精査し施設や資器材の改善など、環境整備を求めます。また、男女間の処遇上の格差を是正し、ジェンダー平等の職場づくりを推進します。

3. 人事院の「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」を参考に、育児・介護を行う職員の両立支援制度を研究・活用します。

4. 性差を問わず、育児・介護を行う職員の超過勤務の制限および改正された育児休業・介護休暇制度の活用にむけて取り組み、情報を発信します。

5. 地方公務員共済制度・事業について、性とライフスタイルに中立な制度設計を前提として、両立支援策や福祉事業などを充実するよう、自治労と連携し対策を進めます。

6. 誰もが働きやすい職場環境をめざすため、衛生委員会等への女性職員の参画を推進します。

7. すべてのハラスメントに対し、使用者責任を明確にしつつ、情報提供や予防対策、被害者救済対策に取り組みます。

8. 2016年6月、総務省消防庁長官を本部長とする「消防女性活躍推進本部」が設置され、全国の女性消防吏員を2026年度当初までに2.4%から5%に引き上げるとの目標が示されました。全消協はこの政策の動向を注視するとともに、必要に応じて課題提起を行います。

9. LGBTQ+当事者が制度上受けている不利益、例えば結婚休暇などの休暇制度、扶養手当などの賃金制度から同性パートナー関係が排除されている実態等について情報を収集します。

【誰もが参加しやすい全消協づくり】

10.  あらゆる世代の会員に全消協活動への参加を促す観点から、以下の事項に取り組みます。

① 全消協が主催する各種行事に女性枠を設けます。

② 育児を行うすべての会員の参加を促すため、託児所等を設置します。

③ ウェブ会議システムを活用し参加しやすい開催方法を模索します。

11.性別を尋ねる必要がある場合の結果公表については、アウティングとならないように注意します。

【国際的な活動におけるジェンダー平等の推進】

12.  ワークルールの改善、ジェンダー平等、均等待遇の推進など、ILO条約等国際条約の批准および遵守の取り組みを強めます。

13.  PSI規約に基づき、あらゆる活動でのジェンダー平等参画をめざします。

(6)消防職場の課題改善にむけた取り組み

市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生してから70年以上が経過しました。この間、消防制度や施策、消防防災施設等の充実強化がはかられ、消防業務は火災予防・消火、救急、救助、自然災害への対応や国民保護と広範囲にわたり、国民の安心と安全の確保に大きな役割を果たしてきました。

他方、近年は災害が大規模・複雑多様化する中にあって、今後発生が危惧される南海トラフ地震や首都直下型地震、風水害等の大規模災害をはじめ、危険物火災等の特殊災害、国際的なテロ災害などが予想されています。

さまざまな災害や感染症等から国民の生命、身体および財産を守るという消防の責務はさらに大きくなっていますが、消防職場では業務量が増える一方、慢性的な人員不足により、職員個々の負担が増大し、さまざまな弊害が出てきています。

全消協は、さらなる消防防災体制の充実にむけ、消防職場が抱える課題を明確化し、効果的に消防業務を遂行できるよう、自治労や議員懇の協力を得ながら、関係省庁などに対して問題を提起し働きかけます。

【消防職場の課題の抽出】

1. 警防・救急・救助関係についての課題

① 大規模・複雑多様化する災害に対応するための消防力の不足

② 消防救助技術大会にむけた訓練など訓練全般における受傷事故の頻発

③ 救急出動件数の増加、医療の進歩、救急救命士の処置範囲拡大など、精神的・肉体的な負担の増大

④ 感染症等への感染防止資器材、教育および医療機関や保健所等との連携

2. 予防関係についての課題

① 立入検査と違反是正に対応する業務量増加による負担

② 違反対象物に係る公表制度および違反処理など、業務量の増加による負担

③ 多様化する防火対象物、度重なる法令改正に対応する業務負担

3. 消防業務全般についての課題

① 増大するさまざまな業務に伴い、超過勤務が常態化している現状

② 世代交代に伴う専門的知識の継承・教育体制が確立されていない現状

③ 業務に関する資格・研修を自費受講・取得・更新している現状

④ 資機材・施設・庁舎等の計画的な整備が遅れている現状

⑤ 各種施策の実施にあたり、対応する現場の意見を聴取していない現状

⑥ 定年引き上げに関わる職場課題

【消防職場の課題改善にむけた取り組み】

4. 全消協は、総務省消防庁に対して、次のことを求めます。

① 消防力の整備指針に示す必要な人員、車両および資機材等に見合う財源を継続して確保すること

② 職員の負担軽減を考慮した車両、資機材等および設備等に財源を確保すること

③ 現状の課題に即し、将来を見据えた施設・庁舎等の整備のあり方を示すこと

④ 適切な労務管理が行われるよう指導・助言を行うこと

⑤ 感染症等が蔓延し業務に著しい負担がある場合は、早期に物資の確保や財政措置を講じるとともに、職員に対する心身的なサポートなど必要な施策を行うこと

⑥ 定年引き上げについて消防職場に適した情報提供を行い、住民サービスの低下を招かない方針を示すこと

5. 全消協は、課題解決のため情報収集および提供、調査・研究を行い、課題の改善にむけて取り組みます。あわせて、労働講座や研究集会等のさまざまな機会を通して、消防職場の課題を抽出します。

6. 単協・県消協は、消防当局および各自治体首長に対して、次のことを求めます。

① 人員および財源の確保にむけ、必要な対策を講じること

② 施設・庁舎や車両、資機材等の計画的な整備を行うこと

③ 心身の疲労回復、パフォーマンス低下、事故防止の観点から、適切な労務管理が実行できる体制づくりを強化すること

④ 災害対応能力、専門的知識を習得・伝達・継承できる教育体制を確立すること

⑤ 業務に関する資格・研修は、公費で受講・取得・更新できるようにすること

⑥ 増大する各種業務に対し、職員の負担が減るよう業務の効率化を行うこと

⑦ 定年引き上げおよび再任用職員の業務内容の明確化、勤務が継続できる消防職場環境づくり、住民サービスの低下を招かない体制をつくるよう研究し、提言すること

(7) 消防の広域化への対応

総務省消防庁は、2018年4月に「市町村の消防の広域化に関する基本指針」と「市町村の消防の連携・協力に関する基本指針」を改正し、消防の広域化の推進期限を2024年4月までに延長しています。基本指針では、「消防広域化重点地域については、これまで以上に積極的に指定」することとし、あわせて「消防の連携・協力についても推進していくもの」としています。この内容については、具体例が示されていますが、「効果的・効率的」との記述があることから、より良い消防行政を実現できるか注視していく必要があります。

今後、人口減少や少子高齢化の進展により、消防力の維持に支障をきたす恐れがあることや、住民からは、機能縮小や、消防署の統廃合により署が遠くなるなどの「消防力の低下」を不安視する声もあり、さらなる体制強化が喫緊の課題となっています。

全消協は、1990年のILO「消防職員の雇用及び労働条件に関する合同会議」の結論に基づき、総務省消防庁に対して、①広域再編にあたっては不必要な広域化は進めるべきではない、②住民サービスを現状より低下させない、③職員の削減や労働条件の悪化を伴わない、の3項目について自治労を通じて申し入れを行っています。

今後も、広域化を推進する場合には、消防本部の規模にかかわらず、地域の実情にあわせたものとなるよう関係機関等に提言するとともに、先進事例や留意事項の情報収集を継続します。

【全消協の取り組み】

1. 自治労と連携し、議員懇を通じて、消防広域化が地域の実情に即したものとなるよう総務省消防庁へ求めます。

2. すでに広域化した組織から、広域化までの経過や形態等に対する情報を収集し、その共有や提供を行います。

3. 広域再編を契機に、組織の強化・拡大につながるよう取り組むとともに、単協の組織力が低下しないようフォローを実施します。

【広域再編の対象となった単協・県消協の取り組み】

4. 「消防組織広域再編対策委員会(仮称)」などを設置し、自治労県本部や協力議員とも連携しながら、各自治体当局に対し、消防職員の意見を聴取する機会の確保を求めることを提起します。

5. 消防組織の広域再編を検討する自治体 に対して、次のことを提起します。

① 財源優先の広域化は避けるべきであり、再編された消防組織の財源を確保するため、構成市町村の負担(拠出)額が、地方交付税基準財政需要額の消防費額を下回らないこと

② 新たな特別地方公共団体を設立する段階での規約に、一人の職員も欠くことなく「雇用を継続する」旨の文言を盛り込むとともに、給与など労働条件について不利益を生じることのないよう措置すること

③ 地域住民や現場の消防職員に対して積極的に情報を提供・開示し、意見を聴取する機会を設けること

(8) 質の高い消防サービスの実現にむけて

全消協は質の高い消防サービスの実現にむけ、消防力の地域間格差の解消や職員の職場環境改善などが必要であるとの観点から、現場実態に基づく要望書を取りまとめ、総務省消防庁に対して要請行動を行ってきました。また、新型コロナ対策をはじめ、定年引き上げに関する事項などの新たな課題についても現場の声を取りまとめて、総務省消防庁や国会議員等に直接訴えるなど取り組みを推進してきました。

また、PSIは「質の高い公共サービス(QPS)」について、「質の高い公共サービスとは、質の高い労働条件下で働く質の高い労働者が提供するもの」と定義した上で、「質の高いサービスは人権」であり、「サービス利用者が常に質の高さを望めるような財源を伴ってこそ初めて提供が可能になる」との考え方のもと取り組みを展開してきました。これは、全消協がめざす目標や信念と同質であり、質の高い消防サービスの実現にむけて取り組みを継続していかなければなりません。

質の高い消防サービスの基礎となるのは消防力であり、その力の原点は消防職員であることはいうまでもありません。人員が充足され、継続した人材の育成がなされた上で、遺憾なく能力を発揮できる車両や資機材、および組織の体制と消防予算が必要です。しかし、自治体消防が整備すべき基準値は整備すべき目標となり、条例定数の削減や車両の最低人員が目標値に届かない中で運用している消防本部も見受けられています。また、従来の消防業務のほか近年多発する自然災害や未知の感染症等への対応も求められており、消防職員への負荷は増大しています。

さらに、加齢困難職種とされながらも詳細な議論もされないままに定年が引き上げられたことにより、現状の体制で住民に対して必要な消防サービスを提供できるものか疑問を抱く状況です。

住民本位の消防行政のあるべき姿を実現するためには、十分な消防力を有し、すべての消防職員が安心して働ける職場環境が必要であり、その担保となる消防予算の充実を強く求めることが重要です。

全消協は、賃金・労働条件の改善だけではなく、住民からの信頼に応え、やりがいをもって仕事ができる環境の整備をめざします。その思いを職場の仲間、住民とともに共有できる自治研活動等への参画を通じて、「質の高い消防サービス」の実現にむけて取り組みます。

【質の高い消防サービスの実現にむけた取り組み】

1. 全消協は組織強化に努め、PSIの「質の高い公共サービス(QPS)」の趣旨を尊重し、次のことに取り組みます。

① 単協・県消協の取り組みを集約し、質の高い消防サービスの実現にむけ課題を提起します。

② 定年引き上げに伴い消防サービスが低下しないよう、研究を進め、課題を抽出し、議論されたことを情報共有します。

2. 単協・県消協は、消防当局および各自治体首長に対して、次のことを求めます。

① 住民ニーズの把握に努め、地域住民と協働した活動を推進すること

② 単組・県本部と協働して、消防行政についての課題を情報発信し、地域住民と共有すること

③ 災害時における自助・共助の重要性について協議を行い、地域との連携をはかること

④ 新型コロナへの対応等も踏まえ、より一層地域の医療、福祉、保健、教育機関などと連携・協力して、質の高い消防サービスの実現をめざすこと

⑤ 定年引き上げに伴い、高齢期職員の活躍できる環境を整備すること

⑥ 高齢期職員が活躍でき、消防サービスが低下しないよう定員管理を行うこと

【消防力の整備指針の取り組み】

3. 全消協は、総務省消防庁に対し、次のことに取り組みます。

① 自治労や議員懇と連携し、全国的な消防力に関する課題提起を行います。

② 「消防力の整備指針」が市街地の常備消防を配置の対象としている一方、「地方交付税算定基礎」は国民生活環境最低水準としての算定となっており、基本となる考え方に乖離があることから是正を求めます。

4. 単協・県消協は、消防当局に対して、現在の消防力および整備すべき目標について、住民への十分な情報公開を求めます。

【自治研活動への参画】

5. 全消協は、消防行政や消防サービスのあり方等について議論を重ね、消防の将来を展望する活動を推進します。

6. 単協・県消協に対し、地方自治研究全国集会への参加や、他産別との交流を促すとともに、取り組みの参考となる情報を提供します。

7. 単協・県消協は、単組・県本部と協働し、自治研活動へ積極的に参画します。

(9) 国際連帯活動の推進

我々の生活・仕事・協議会活動は、平和の上に成り立っていることを念頭に置き、世界中が平和で、多様性が受け入れられることで、人生を謳歌できる社会の実現にむけ、全消協は国際連帯活動を推進していきます。

全消協は、2017年11月に開催されたPSI第30回世界大会で、「日本の公務員と韓国消防職員の労働基本権」および「公共サービスと公共サービス労働者の拡充で災害に強い社会づくり」の2つの決議案を提出するなど、日本における諸問題の解決にむけ取り組みを展開してきました。

その後、2018年6月の第107回ILO総会では、日本政府へ11度目の勧告等が出され、①消防職員に団結権を付与すること、②社会的パートナーとともに行動計画を策定すること、③定期的な協議の場を設定することなど、より強い要請が出されました。これを受けて、全消協・自治労は、政府と消防職員委員会の告示改正にむけた具体的な議論を行い、現在では消防職員の団結権問題および消防職場の諸課題について定期的に協議を継続しています。

このように、政府と正式な形で協議を実施できるのは、国内外での主体的な取り組みを継続してきたことによるものです。引き続き、国際社会の中で共通の課題や諸問題を解決するために関係機関と連帯し、世界から日本政府に対して訴え続けることが団結権の回復に必要不可欠です。

また、全消協は住民の安心・安全を保障する「質の高い消防サービス」の実現にむけ取り組みを推進してきましたが、PSIも「質の高い公共サービス」を基本に公務員の労働基本権確立を掲げています。引き続き、より良い消防行政の構築と職員がやりがいをもって働くことのできる労働諸条件、そのための団結権の回復にむけた取り組みを国内外で推進すべく、PSIと連携し活動を強化します。あわせて、すべての人が働きやすい消防職場づくりを推進します。

他方、韓国では2020年12月に消防公務員を労働組合の加入対象とすることを含む「公務員労働組合法改正案」が国会で成立(2021年7月6日施行)し、全消協と同様に悲願であった労働基本権の獲得によって、労働組合の結成や加入の動きが進んでいます。韓国消防労働組合等と交流および情報を交換するとともに、日本における公務員の労働基本権問題の解決にむけた取り組みに活かしていかなければなりません。

全消協の活動は、世界の公共部門労働者から注目され、労働者の権利が脆弱なアジア諸国からも大きな期待が寄せられていることから、私たちの活動が各国にも波及していくよう国際連帯を深めます。

【PSI活動を通じての国際連帯の取り組み】

1. 団結権問題について、PSI活動の場を通じて強く訴えることにより、ILOなどの国際機関から日本政府に対して強力なメッセージが送られることを求めます。この取り組みにより、国際労働運動の注目と国際世論の喚起に努めます。

2. 団結権問題に関する日本政府との「協議」が設けられました。この協議の取り組み経過をPSIと共有し、一層の連帯を深めます。

3. ILOの中核的労働基準の遵守と、ILO94号条約(公契約)、105号条約(強制労働廃止)、111号条約(差別待遇禁止)、149号条約(看護労働)、183号条約(母性保護)、190号条約(暴力・ハラスメント)など未批准条約の批准促進にむけ、連合・公務労協・自治労とともに取り組みます。

また、PSI-JCの活動を通し、超党派の国会議員で構成するILO活動推進議員連盟と意見交換を行い、情報発信と共有をはかります。

4. PSIの「2018-2022行動プログラム(PoA)」で示された、公共サービス労働者の労働基本権確立、公共サービスの市場化反対、すべての人に対する尊重と尊厳、平等で公正な社会の基礎となる質の高い公共サービスの実現をめざします。

5. PSI-JCの活動を通じて、世界的な脅威である感染症・大規模災害の課題に関し、PSIで共有する情報を収集するとともに、日本国内の緊急公共サービス労働者の取り組みを発信します。

【アジア太平洋地域を中心とする国際連帯の取り組み】

6. PSIアジア太平洋地域の諸活動へ積極的に参加し、問題解決にむけて取り組みます。また、PSI-JCや自治労・公務労協・連合と連帯した活動を推進します。

7. 2018年4月、PSI本部において、消防職員をはじめとする緊急事態従事者で構成されたファーストレスポンダーネットワークが創設されました。全消協もこのネットワークと連携して、世界の消防・救急労働者の諸問題について、さまざまな国際組織への情報発信と共有をし、国際連帯の推進をはかります。

8. 韓国消防労働組合と交流および情報交換をはかり、日本における消防職員の団結権の回復や各種課題の解決への取り組みにつなげます。

【国内における国際連帯の取り組み】

9. PSI-JCの活動を積極的に担い、女性・ユース世代の参画を促進し、他産別との交流や相互参画により、日本におけるPSI加盟組合の組織強化・拡大の取り組みに連携します。

あわせて、これらの取り組みを全消協女性連絡会・ユース部の活動に反映します。

【国際連帯活動の情報共有と発信】

10. 国際連帯活動の取り組みについて、その実例を共有し、引き続き取り組みの必要性を加盟単協にむけて発信します。

(10)女性連絡会の取り組み

全国の女性消防吏員は2022年4月1日現在で5,585人となり、1969年にはじめて採用されて以来増加しています。2015年7月に総務省消防庁より「消防本部における女性職員の更なる活躍に向けた検討会報告書」公表後、関連通知の発出や消防大学校で「女性活躍推進コース」が開催され、2017年12月には「女性消防吏員活躍推進アドバイザー制度」が新設され、要綱も改正されながら派遣対応されています。

しかし、総務省消防庁が女性消防吏員の活躍を推進し、消防職員全体に占める女性消防吏員の割合を2026年4月までに5.0%に引き上げる目標を定めているにもかかわらず、2022年4月1日現在で3.4%にとどまっています。女性消防吏員を採用していない消防本部は16.7%と減少してきましたが、2015年7月の「消防本部における女性職員の更なる活躍に向けた検討会報告書」公表から8年が経過している中、女性消防吏員のいない消防本部もいまだ多く見受けられます。注目を集めた「消防本部における女性職員の更なる活躍に向けた検討会報告書」が発表されて以降、「女性消防吏員の更なる活躍に向けた取組等の調査の結果について」が通知されたのみで、女性活躍推進法が施行されて以降の通知は出されていません。近年、はじめて女性消防吏員を採用した消防本部では、特に閉鎖的で情報の少ない環境の中で従事していることが推察されます。総務省消防庁は、消防本部に対し、広い分野で職務を広報する必要性があります。

女性連絡会がこれまでに実施した調査の結果や、2018年から定期的に開催している女性交流会から、ジェンダー平等に対する意識、施設の未整備、ハラスメント、職域制限などさまざまな課題が抽出されました。施設の整備や職域制限については改善傾向ではあるものの、女性消防職員が増加していく中で、結婚・妊娠・出産・育児・介護や、長期休業・休暇後の復職について新たな課題が浮き彫りとなりました。育児・介護休業法が改正され、性差を問わず仕事と育児の両立を行えるよう取り組まれていますが、休暇を取りづらい環境や制度整備も含め、職場環境の改善が必要です。

住民サービスの向上をめざすためには、女性消防職員が働き続けることのできる、ソフト面ハード面の環境整備が重要です。

2022年12月からは、ILO定期協議の団結権PTメンバーとして参加、2023年3月にはPSI-JC女性委員として、国際女性デー要請行動に参加し、政府・政党、ILO議連へ女性消防職員の取り巻く現状について報告・要請を行いました。今後も、広く意見を募るとともに、継続的に女性消防職員の課題把握に努め、会員や関係機関へ課題を提起します。また、マスメディア、SNS等を活用した積極的な情報の発信や、各種研修会や意見交換会の開催、関係機関との連携をはかります。

これらを踏まえ、女性消防職員に関する諸課題の解決に貢献できる活動の展開と、すべての消防職員が能力を発揮しながら働き続けられる職場環境づくりに取り組みます。

【女性連絡会の取り組み】

1. 女性を取り巻く環境の実態把握に努め、働き続けられる職場環境の構築をめざし、課題を提起します。

2. 会員が積極的に研修会へ参加し、意見を発信できる環境および、活動強化にむけた体制の整備をします。

3. 女性連絡会の活性化と育成をめざす観点から、女性連絡会担当を四役から選任し協力体制を構築します。

4. 女性交流会を開催する等、あらゆる世代が参加しやすいよう、ウェブの活用に努めます。

5. ユース部と協力して、LGBTQ+差別や男性の育児休暇など、性差を問わず解決すべき課題に取り組みます。

【女性会員との連携、非会員・未組織女性職員との交流】

6. 女性同士のネットワークを強化するとともに、女性連絡会の活動報告、学習会や関係機関の通知・通達などの情報を広く発信します。

7. FacebookページやInstagramなどのSNSを活用し、会員だけでなく、非会員・未組織女性消防職員に対しても女性連絡会の活動とあわせて相談窓口の1つであることをPRし、女性交流会を通じて女性消防職員間の連携を強めます。

【職場環境の改善への取り組み】

8. 各種調査を行うなど現場実態をとりまとめ、総務省消防庁などの関係機関との意見交換を追求します。あわせて、連合・ILO議連などの関係機関に課題を提起します。

9. 従前より課題となっている、施設整備、個人被服、ハラスメントに加え、女性消防職員が増加したことや、多発する大規模災害に伴い浮き彫りになっている課題(育児や介護等に関わる各種休暇や非番招集を含めた働き方等)について取り組みます。

【連帯活動の取り組み】

10. PSI-JC女性委員会およびユースネットワークの交流活動に参画し、全消協活動に活かします。

11. PSI規約に基づく、あらゆる活動でのジェンダー平等をめざし、女性の協議会活動への積極的に参画にします。

12. 他業種と女性消防吏員にかかる課題解決にむけ連携をはかり、全消協活動へ活かします。

(11)ユース部の取り組み

ユース部は、ユース世代の協議会に対する思いや、求めること等について把握しつつ、さまざまな活動を展開し13年が経過しました。ユース幹事経験者が全消協幹事や各ブロック・各県消協・各単協内で役員を務めるなど、確実に全消協活動の発展につながっています。この間、活動の一つとして、次世代の協議会活動を担う人材を育成することを目的に、「全消協ユースStep Upセミナー」を開催し、全国のユース世代が感じている課題の共有や協議会活動・消防業務に関する学習を重ねてきました。こうした活動の展開とともに、全消協幹事会における各種取り組みに意見を反映してきており、引き続きユース会員の求める活動にむけて取り組みを強化していく必要があります。

この間、女性連絡会と連携し、女性連絡会・ユース部合同セミナーを実施するなど、課題を周知・共有するための活動を展開するだけでなく、SDGs(持続可能な開発目標)を通して、LGBTQ+への理解促進、継続的な取り組みを行うとともに、男性の育児参画に関する情報を発信してきました。

さらに、他産別と連携することで活動の幅を広げ、自治労青年部や全水道青年部と積極的に交流をはかりセミナーの内容に反映するなど、消防職場の課題点を発信しています。

ユース世代の活性化は、組織の強化や協議会活動のさらなる発展に不可欠です。定年引き上げによる消防職場への影響に対しユース世代も問題意識を持ち、その目線から意見反映を行うことで、消防職員としてより一層の意識向上につなげます。

ユース部はユース世代の「問題」を「課題」として提起するとともに、引き続き、ユース世代の育成にむけ協議会活動の歴史やその必要性を学ぶセミナー等を開催します。さらに、全国のユース世代の活動に関する情報発信に取り組みます。

【ユース部の取り組み】

1. 次世代の協議会活動を担う人材育成を目的とした活動を推進し、各種学習会への参加を促し、ユース世代が今後の組織の一翼を担えるよう以下のことに取り組みます。

① ユースStepUpセミナーを開催し、ユース世代のさらなる意識の向上と体制や活動を強化します。

② ユース世代を対象としたアンケート調査を実施します。その結果を分析し、活動へ反映するとともに、情報提供をします。

③ 単協・県消協のユース部との連携強化をはかります。また、自治労単組・県本部等の青年部と連携を強化し、さらに幅広く活動を展開していくことをめざすための具体的方策を検討します。

④ 各ブロックユース部とウェブを活用した積極的な交流や合同会議を実施します。

⑤ 定年引き上げがユース世代へ及ぼすメリット・デメリットについて調査し、研究します。

2. ユース部の活動を、マスメディア・SNS等を活用し、情報を発信します。

3. SDGsを通して、LGBTQ+への理解促進や男性の育児参画促進にむけて課題を共有します。

4. 女性連絡会と協力し、ジェンダー平等に関する取り組みをはじめ、関連する諸課題の共有など連携を強化します。

【連帯活動の取り組み】

5. PSI活動の諸会議に積極的に参画し、全消協活動に活かします。

6. PSI-JCに設置されているユースネットワークに参画します。あわせて、PSI加盟のユース世代と連携をはかり、全消協活動へ活かします。

7. 他業種と若年層にかかる課題解決にむけ連携をはかり、全消協活動へ活かします。

【単協・県消協の取り組み】

8. 単協・県消協は、次のことに取り組みます。

① 単協・県消協の組織形態に応じて、ユース部会の設置、ユース世代の役員や委員の選出を積極的に行います。
② ユース世代の会員に対して、協議会・各単組・県本部・各地連活動に積極的な参画を促します。