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韓国・公労総消防労組訪問

2024年3月18~21日、全消協は韓国・ソウル市を訪問し、公務員労働組合総連盟(公労総)消防労組と交流を行った。全消協から、須藤会長、川北事務局長、朽木女性連絡会代表、鈴木ユース部代表、自治労から八巻総合企画総務局長、藤岡総合労働局労働部長(全消協事務局)の6人が参加した。公労総消防労組からは、高鎮永委員長以下15人の消防労組役員が参加した。

 

国家公務員化と労働組合結成

韓国も日本同様に、かつては消防職員に団結権が付与されておらず、ともに労働基本権の獲得にむけ、たたかいを続けてきた。高公労総消防労組委員長が、2006年に消防公務員3人で「消防発展協議会」を結成した。2014年セウォル号沈没事故で捜索支援のヘリが墜落し、5人の消防職員が殉職。当時、消防公務員は地方公務員で、自治体ごとに消防予算が異なり手当額に格差があったことから、安全を確保するため、消防公務員の国家職化を要求した。世論の賛同も後押しとなり、2020年4月に消防公務員は国家公務員に身分移管された。また、文在寅大統領の公約で、2018~2022年に消防公務員は2万人増員された。そして、2021年7月には、公務員労働組合法の改正で、消防公務員に団結権・団体交渉権を付与し、労働組合の結成・加入が容認された。現在、消防公務員の労働組合は6つあり、そのうちの一つが公労総消防労組である。

回の訪問では、日韓消防職員の抱える課題をはじめ、勤務体制、賃金、女性およびユース部の現状と課題まで、幅広いテーマで意見交換を行った。意見交換からは、日本の消防職員が長年抱えている課題が、既に韓国では解決されており、職員の勤務体制、労働環境、消防行政サービスのいずれにおいても、韓国が日本をリードしている状況が明らかとなった。

意見交換を行う公労総消防労組と皆さんと全消協役員

 

3部制による勤務体制、すべての時間を労働時間と認定

まず、現在の勤務体制は3組1交代勤務体制(当-非-非)で、月10日勤務、総勤務時間は240時間。かつては2交代勤務であったが、労組結成前の2009年、当時の「消防発展協議会」が全国の消防公務員に呼びかけ、1万人を超える消防公務員が原告となり、未払超過勤務手当支払訴訟を提起した。その結果、2019年10月に最初の確定判決が出され、超過勤務がすべて認められた。

また、交代制勤務の消防公務員は、昼食時間、夕食時間、仮眠時間、休憩時間、交代勤務時間(引継ぎ時間)がすべて労働時間と認定され、手当が支給されている。

賃金については、2020年4月の国家職化以前から、警察公務員と同じ給料表を使用していたが、労組の取り組みの結果、2023年には警察・消防の給料表が公安職水準に引き上げられた。特殊勤務手当は、火災隊員に「火災鎮火手当」8万ウォン(約9,000円)、救急、救助隊員に「救助救急活動費」20万ウォン(約22,500円)が支給されている。

 

すべての署で女性専用施設を整備

韓国の消防公務員全体66,659人のうち女性公務員は6,655人、女性比率は9.98%で、日本の女性消防職員の5,585人、3.4%を上回っている。女性の担当業務の7割は行政事務となっているが、次に多いのは救急隊で、女性の専門性が高く評価されている

 

韓国の消防職員は20代、30代が約6割

消防公務員の年齢構成は、30歳が最も多く、20代、30代が全体の約6割を占めている。また、若年層は賃金の低さを理由に3割が離職するため、離職防止策として、若年層に焦点を絞って賃金交渉を実施し、一定の成果を上げている。

            公労総消防労組と全消協ともにがんばろう

 

労働組合活動は、消防・救急業務への悪影響なし

2021年7月の消防労組結成から3年、手当の改善をはじめ、消防公務員の処遇改善が進められた。消防庁は労働組合の必要性を認めなくてはならない存在と認めている。消防・救急業務への悪影響はなく、逆に肯定的な面がより多くある。

また、今回の訪問では、ソウル消防本部の広津消防署および指令センターの職場視察も行った。また、2022年10月に発生した梨泰院惨事現場も訪問し、犠牲者への献花と慰問を行った。

今回の全消協と公労総消防労組の交流は、大変有益な情報を得ることができた。今回の訪問を初回とし、4年間の交流の実施を検討している。第48回定期総会にて、公労総との定期交流実施案をはかる予定である。

           ソウル市役所前の献花場で黙祷する全消協役員