第45回全国消防職員研究集会
研究集会報告
2017年6月5日~6日の2日間の日程で、東京:TOC有明にて第45回全国消防職員研究集会を開催、133単協、249人が参加した。
はじめに、2017年3月2日に発生した長野県防災ヘリの事故で亡くなった仲間への黙とうをおこなった。
司会は池田衣智子女性連絡会幹事、福嶋薫関東甲ブロック幹事が務めた。
近江孝之会長より、消防職員の取り巻く状況を研究集会で学び議論していただき、質の高い消防サービスの提供に繋がることを願っています、と主催者挨拶を述べた。
杣谷尚彦自治労中央本部副執行委員長、自治労組織内議員の江崎孝参議院議員より来賓の挨拶を頂き、全体集会が開始された。
全体集会
本部提起「消防職員を取り巻く情勢について」
相澤健二事務局長より、消防力の整備指針に基づく整備率の向上について、労働環境の改善について、緊急消防援助隊の課題について、国際連帯による団結権の回復について、今後の全消協の取り組みについて、の提起がおこなわれた。
全消協活動報告
「2017年度全消協活動経過報告~民進党消防政策議員懇談会、総務省消防庁対応について~」
竹内洋司事務局次長より、議員懇勉強会、消防庁ハラスメントWGの取り組みについての報告のあと、「なぜ」からはじまる活動の重要性、会員の視点で考える大切さについて述べた。
「団結権回復にむけたILO等との協議・要請及び連合シンポジウム活動報告」
井戸章夫副会長、青木玲奈女性連絡会代表より団結権回復にむけた取り組みについての報告を行った。
記念講演
熊本地震について
全消協幹事を経験されたことがある、西岡博之阿蘇広域行政事務組合消防本部消防長による、熊本地震での災害活動を報告していただいた。
分科会
研究集会2日目は、5つの会場に分かれて分科会をおこなった。
以下、分科会各担当者の所感です。
第1分科会 組織強化・拡大
今回の第1分科会組織・強化拡大では、「明日からできる組織強化・拡大」をコンセプトとし、午前中は座学、午後からは初の試みである実践方式(ロールプレイ方式)での組織強化・拡大を実施しました。
実践方式は、ブロック幹事が未組織役・会員役となり、参加者が執行部役としてオルグを実施する内容ですすめました。参加者からは「実際にやってみると難しい」「うちの単協でも実施したい」とのアンケート結果からも大成功であったという手応えを感じました。
参加して良かったと思える分科会を今後も実施していきたいと思います。(和田幹事)
第2分科会 賃金・労働条件
「賃金・労働条件の基本的な知識」と「無賃金拘束」について、藤原弁護士より「消防職員の賃金労働条件について」の講義をおこない、その後班に分かれグループ討議と発表をしていただいた。
前回のアンケート結果を踏まえ、グループ討論の時間を長く設定した。その結果、多くの意見が引き出され積極的な力強いグループ発表に繋がったと感じた。消防職員も労働者であるという認識を持ち、より良い労働条件と消防サービスの向上を目指し、今後も労働条件等の議論を深め解決できる様な活動が必要であると感じた。(権名津幹事)
第3分科会 救急医療体制
今回、救急医療体制の分科会では、例年とは違い、現場の職員目線で行う事を目的に、午前中は、外部講師を迎え現場での接遇コミュ二ケーションを学び、午後は、准救急隊員についてと、各所属で感じている救急の問題点を出してもらい、各班でディスカッションした。
株式会社エンパワー21能勢みゆき代表を講師に迎え『救急隊員の接遇コミュニケーション』と題し研修を受けた。救急隊員は、相手が人である為相手に与える印象が悪いとトラブルの元になり、救急活動を台無しにしてしまう恐れがある。接遇は、自分自身の意識改革で今すぐにでも変えられる為、今回の講演を参考に現場で活かして頂きたい。特に、現場では感染防止のゴーグルやマスクを装着していることで表情が分かりにくい為、威圧感を与えないように相手の目線で『安心して下さい!』という言葉をかける事と良いのでは、という言葉が印象的であった。
『準救急隊員について』北信ブロック 返町幹事
消防法施行令一部改正、救急業務実施基準一部改正により、4月1日から一部の地域で準救急隊員が認められた。これは、救急車1台に救急隊員2人以上及び准救急隊員1人以上をもって編成できるというもので、賛否両論の意見がある。条例定数の正規職員数を確保せず、なし崩し的に運用される恐れがあるので、全国での運用を注視していきたい。
『救急隊員の抱える問題2017最新版』 関東甲ブロック 福嶋幹事
シンポジウムや学会では話せないような現場救急隊員の本音を協議会ならではの視点で班毎に出してもらい、情報交換と内容を共有した。アンケートでは、ディスカッションの時間を増やして欲しかったという意見が多数あり、次回も是非やりたいと感じた。
第4分科会 労働安全衛生
第4分科会では「健康で働き続けられる快適な職場づくりのために」と題して、消防職場のハラスメントついて41人の仲間たちとグループディスカッションを行った。
消防の上位下達の階級制度のなかで、今でも多くの仲間たちがハラスメントの犠牲になっている現実、許すことのできない女性職員に対するセクハラやマタハラ、自殺者や離職者を生み出す消防独特のいじめなど実例を挙げながらハラスメントのない消防職場をめざすため活発な議論が行われた。
また、未組織消防職場から参加して頂いた勇気ある消防士の自分の受けたパワハラ・モラハラの体験談や当局や上司からの心ない対応を直接聞くことができ、参加者からは有意義なものであったという意見が数多く寄せられた。辛い体験談を話して頂いた勇気ある消防士からは、「このような消防職員の団体があることを知らなかった。自分が参加してみんなに勇気と元気をもらった。職場復帰して自分や家族のために頑張りたい。」という言葉をもらい、消防の仲間として心のつながりを持てたと感じた。
併せて、村上副会長から現在行われている総務省消防庁の「消防本部におけるハラスメント等への対応策に関するワーキンググループ」の進捗状況、全消協として役割、また、今後の対応について報告を受けた。(岩本幹事)
第5分科会 男女平等参画・国際連帯活動
男女平等参画、女性活躍推進、働き方改革など、社会情勢が変化している中で、男性が家庭・育児に参加することへの期待が高まっている。今回の分科会で『イクボス』について紹介させていただいた。男性が多い消防職場において育児休暇制度は馴染みがないと思う。今回の講座を通して、少しでも男性職員の育児休暇取得への理解が職場全体に深まり、より良い職場環境となることを期待する。(吉田ユース部幹事)
LGBTや性的マイノリティーの方々が受けている偏見や差別を0にし、誰もが自由に主張でき、平等な扱いを受ける事が当たり前な社会(消防職場)を実現するためにはどうするべきかを参加者全員で考える。といった主旨で、実際に聞いた体験談や悩みをもとに話をさせていただいた。
働きやすい職場環境を構築していくためには、ハード面の整備はもちろんのこと、各種学習会や話し合いの場を設けるなどソフト面の充実を図らなければならない。これを怠ると人間関係に亀裂が生じ、職場として大きな損失となる。
LGBT等に対する考え方については、社会問題としてメディアにも取り上げられ、確実に浸透している。担当した分科会をとおし、自分の所属する消防職場に置き換えた視点で考えていただく機会の一助になったと感じた。(津島ユース部幹事)