各種報告

全消協第55回労働講座

労働講座

2024年11月15日(土)、11月16日(日)の2日日程で東京都・日本教育会館で開催した。全国から50単協60人(うち未組織1人)の仲間が参集した。

講座の開催にあたり全消協を代表し、須藤洋典会長が主催者挨拶を行った。須藤会長は「各地方によって要望が違う。それを手助けするのが全消協の役割である。要望を訴えていくために現状では消防職員委員会を有効に活用すべき。本日の講座を機に1つでも何かを掴んで地元に帰って欲しい。地元のために知識を蓄えて還元させて欲しい。」と述べた。

【講座Ⅰ:組織強化】全消協九州ブロック幹事 北川彰平

組織強化の最大の近道はユース世代の育成であり、若い世代の人たちの考えをしっかりと理解するところから組織強化は始まる。オンライン等の難しいコミュニケーション環境下でも、SNSなどのコミュニケーションツールを駆使して柔軟に関係を構築できるという特徴がある。ユース世代の力を借りることで、単協のSNSを作り、情報の発信・共有を行うことが組織強化の第一歩となる。当局側との話し合いの中でもユース世代からの意見を反映させることで、ユース世代が協議会活動に参画しているという認識を持ち、そして、ユース世代が主体性を持って活動することができるようになり、単協の組織強化に繋がっていく。

【講座Ⅱ:単協活動事例発表】全消協北信ブロック幹事 清水大輔

始めに、当時の県消防長会で県生活環境部消防防災課長から不当な介入がなされた結果、休会状態となった単協が相次ぎ、未組織で時間外勤務手当の未支給が発覚した長野県内の単協の変遷が紹介された。次に自治労長野県本部と連携し北信ブロックから2名が参加した能登半島地震ボランティアについて、被災者の方から様々な要望を受けたものの、ボランティアとして、ルールの基に活動しているため活動が制限され、歯がゆい想いも経験したと、心情を踏まえた活動報告が行われた。

単協での新しい取り組みとして、ガソリン代の補助、資格取得及び講習受講等支援助成金制度、感染症等に係る助成金制度を実施などの新しい取り組みを実施しても、脱会者が出てくる状況にある。根本的な問題として、自分の労働環境に疑問を持っていない会員も見受けられるため、粘り強く地道な活動が重要である。学習会等で知識、情報を蓄え他の会員と共有することにより、少しずつ興味を持ってもらい、地道な活動が単協の力となると力強く話された。

【講座Ⅲ:消防職委員会の活用】全消協事務局長 川北研人

消防職員委員会は、大前提として団結権の代替処置ではない。しかし、消防組織法に明記されている消防職員の権利である事を認識し、最大限活用する必要性を確認した中で、団結権の必要性を再確認した。単協の活動事例を参考に消防職員委員会は1つの活動手段であることを確認し、グループ討議を行った。グループ討議では2日目の模擬消防職委員会に提出する意見書をグループごとに取りまとめた。

【岸まきこ参議院議員挨拶】

国政報告として「自民党1強政治からの脱力がなされた。政権交代を実現し、消防職員の団結権の獲得に向け、社会にもその必要性を訴えていく。能登半島地震については、道路の寸断等で援助に向かえない現実があった。たどり着けない現状をとらえ、地元消防の充実を図らなければならない。また、異常気象による救急搬送の増大、地方では消防職員の人員不足が都市部より更に深刻化している。そのため休暇、育休等が取りづらいとの声が今もある。消防職員の増員は喫緊の課題である。労働組合は夢を語り、課題を仲間と共有することに意義がある。」と力強い挨拶をいただいた。

懇親会は、全国各地の仲間が意見交換し盛り上がりを見せた。岸まきこ参議院議員にも出席いただき、会員から直接多くの現場の声を聴いていただく機会となった。最後に佐藤昭徳副会長の団結ガンバローで1日目を締めくくった。

2日目

【講座Ⅳ:安心・安全な職場づくり~働き続けられる職場をめざして~】

自治労本部総合労働局 上野友里子 法対労安局長

地方公務員災害補償制度とは地方公務員が公務上の災害又は通勤による災害を受けた場合に私たち消防職員の生活の安定と福祉の向上にかかる重要な制度である。公務上の災害(公務災害)認定基準は「公務と相当因果関係をもって発生したことが明らかな災害(公務遂行性と公務起因性のいずれも認められる場合)」とされている。通勤による災害(通勤災害)は勤務の為に住居と勤務場所の往復、勤務場所から他の勤務場所への移動、合理的な経路および方法により起因する災害となる。公務災害は私たちの権利である反面、請求をしない限り公務災害は認められない。請求を提出する際には任命権者から支部長へと提出されるため任命権者によって「公務外」とされる恐れがある。不服申し立てをしても認められる場合が少ないので初めに請求をする際に資料の収集と事案の調査を行い、任命権者に「公務上」と認めさせるための必要がある。そのためにも1人で悩まず協議会役員へ相談し協力し合わなければならない。

定年引き上げに伴い高年齢労働者が増えてくる中、安全対策は必須となるので、安全衛生委員会を有効に活用しなければならないことを再確認した。

【講座Ⅴ:消防職員協議会活動】全消協副会長 佐藤昭徳

なぜ協議会活動が必要なのか?の問いからグループ討議を進め、単協活動の共有から全消協活動の報告・自治労との連携を確認した。その後、消防政策議員懇談会参加議員の活動と国際連帯活動を報告し、なぜこのような活動が展開できるのか?の問いに対し再度グループ討議を進めた。最後に明るく民主的な職場作りのために消防職員協議会活動が必要であり、その活動が1人の消防士の命を守っていることを再確認した。

【グループ討議(模擬消防職委員会)】

1日目のグループ討議で各班から模擬消防職委員会へ次の意見が提出された。

「1班:関係機関協力手当 2班:休憩時間の繰り下げ 3班:管外居住について 4班:事務引継ぎ時間に対する時間外支給について 5班:救急救命士に対する救急出動手当ての増額について 6班:防火衣専用洗濯器の導入について 7班:週休3日制の導入 8班:文書管理の電子化について 9班:防火フードの貸与について 10班:女性職員専用施設の新設について」

委員会討議の中で、参加者は会員ということもあり、当局側として参加しているグループの方が意見を出すことが難しいような印象を受けた。

模擬消防職委員会では各班が当局側と意見提出者側の両方をおこなうことで、今までとは違う考え方が出来たので今後の消防職委員会につなげていきたいとの声が上がった。

講座の最後に長谷部寛副会長から総括として、「昨年度のアンケートを基に今回も模擬の消防職員委員会を採用した。2日間の講義、グループ討論を通し様々な課題を確認できた。今後も全消協は各単協、各県消協であがった課題に対して真摯に向き合い、自治労との連携を密にし、国レベルでの取り組みを今後もおこなっていく。」述べ、第55回労働講座が閉会した。