活動方針

2012-2013年度活動方針

Ⅰ 基調

1. 私たちをとりまく情勢

【国際情勢】

北アフリカや中近東のアラブ各国で市民決起による民主化運動が激化し、独裁政権が次々に崩壊しています。とりわけ、無血革命により民衆の支持を維持し、長期独裁政権を続けてきたリビアのカダフィ政権も影響力を急速に低下させ、国連も介入するなどその国内情勢は非常に不安定となっています。そのような状況下から、世界規模で原油価格が高騰するなど、各国での民主化による動きは世界経済にも大きな影響を与えています。

一方、地球規模での異常気象も各国で発生しており、なかでもオーストラリアの天候不順により立て続けに発生した干ばつ被害、大規模な山林火災、そして局地的な集中豪雨は、国際的な食糧価格高騰への引き金となりました。

また、自然災害としては2011年2月にニュージーランドのクライストチャーチ付近でマグニチュード6.3の大規模な地震が発生し多数の犠牲者が出ています。この地震では語学研修中の邦人がビルの倒壊に巻き込まれ、国際消防救助隊を含む国際緊急援助隊の懸命の救出活動にもかかわらず、28人が犠牲となっています。

【国内情勢】

国内でも、ニュージーランドでの地震の悪夢も覚めやらぬ3月11日14時46分、世界における観測史上4番目(国内では観測史上最大規模)であるマグニチュード9.0の大地震が東日本全域を襲いました。この東日本大震災では地震の揺れによる家屋等の倒壊の被害もさることながら、実際には20メートルをゆうに超した津波の襲来により、震源地に近い東北や北関東の太平洋沿岸部に甚大な被害をもたらしました。

この地震による被害者は7月現在で死者行方

不明者が2万1,000人余り、建物の全半壊は11万5,000棟とまさに想像を絶する未曾有の大災害となっています。

また、東京電力福島第一原子力発電所において、地震発生翌日から2日間にわたりタービン建屋が爆発し、多量の放射線が漏洩し続けています。東京電力の社員はもとより消防・警察・自衛隊による懸命の復旧作業にもかかわらず、30㎞圏内の住民は立ち入りを制限され、地震の揺れや津波による被害に追い討ちをかけられた形で長期間における避難生活を余儀なくされています。

なかでも宮城県南三陸町、岩手県陸前高田市および大槌町などは、街全体が壊滅的被害を受け自治体の機能が麻痺し、いまだ安定した社会・生活基盤の回復はおろか、復旧・復興への道のりすら長く険しい状態となっています。

【公務員・消防職場をとりまく情勢】

民主党政権が誕生してまもなく2年が経過しようとしています。鳩山内閣から菅内閣になってからも支持率回復の兆しはありません。今回の東日本大震災による影響も混乱の一因であると推察できるものの、国民全体の意思として、政権の運営に対し不安感を抱いているのも事実です。また、マスコミの過熱した批判的報道も影響を与えていることは否めません。

このような混沌とした政局のなか、国家公務員制度改革関連法案が6月3日、閣議決定されました。この法案が国会を通過すれば2013年には警察などを除くほぼすべての国家公務員に協約締結権が付与されることになります。これにより、政府側窓口の公務員庁と交渉し、給与や勤務時間などの労働条件を団体交渉で決定することになり、人事院勧告制度は廃止されることとなります。

地方公務員は国家公務員制度改革に若干の遅れを取った形とはなっていますが、ほとんどの自治体が国公準拠の形を取っている現状を鑑みたとき地方公務員が現行のまま放置されることは考えられません。

ただ、国家公務員制度改革関連法案は現時点で今国会の成立のめどが立っておらず、地方公務員の制度改革が実現する見通しはついていません。

2. 運動の基本的方向

【団結権回復と回復後の組織のあり方】

合計9回開催された「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」も2010年12月に報告書の提出に至りました。途中内閣改造により検討会座長の交代という予期せぬ事態もありましたが、報告書では団結権を回復する場合のあり方について整理するという内容となっています。

この報告書を受けて、6月3日には総務省から「地方公務員の自律的労使関係制度に係る基本的な考え方」が公表されており、このなかで「消防職員の団結権については、付与することを基本的な方向としつつ、必要な検討を進める。」と明記されています。

しかし、政局が不安定なため消防職員の団結権回復は不透明な状況にあります。

私たちの訴えてきた団結権回復の必要性と必然性の信念は、決して労使間の分断と混乱ではなく労使双方が当事者意識を高め民主的かつ効率的な質の高い消防行政を実現することです。したがって今後も事態を楽観視することなく、情勢を冷静に見極めながら今まで以上に強く訴え続けていかなければなりません。

そして、団結権回復後の全消協のあり方について第33回定期総会の第2号議案「全消協の組織・財政確立のための中長期課題について(組織討議案)」で決議しており、全消協は自治労組織に合流し全国的な職種別横断組織としての活動の構築にむけた準備を進めていく必要があります。

2010年7月に開催した単協代表者会議において、事前に実施した「第2号議案の討議状況及び取り組みの進捗状況」調査で取り組みを確認するとともに更なる議論の醸成を求めてきたところです。政府が公式見解を示したいま、来たるべき団結権の回復時に混乱をきたさないよう準備を進める必要があります。

【組織の強化と拡大】

第31回定期総会で決定した「全消協新組織強化・拡大計画」を受け、第33回定期総会では更なる組織強化・拡大に対しての活動強化を確認しました。そして2010年7月の単協代表者会議において「組織・財政確立のための中長期課題および組織強化・拡大への取り組みに向けた考え方」を示し、第34回定期総会活動方針において各ブロック・県・単協における取り組みについて確認しているところです。全消協はこの間「全消協の組織化に関する考え方」および「組織強化・拡大のためのアクションプラン」を作成し、各ブロック・県・単協における具体的な活動の方向性を示すとともに活動強化をめざしてきたところです。

自治労も消防職員の組織化を「自治労自身の問題」として組織全体をあげて取り組みを強化しています。全消協としても、更に自治労との連携を強固にするとともに、主体性と具体的方策を持って組織化に取り組んでいかなければなりません。

【活動の継続と次世代への継承】

協議会活動の継続とあわせて次世代への活動の継承に対する組織的な取り組みを急ぐ必要があります。

消防はいうまでもなくマンパワー職場です。そして全消協活動も、問題意識を持ち団結することによってエネルギーを集結させ行動力を生み出すマンパワーによる活動であることはいうまでもありません。この間、全消協は上意下達、上命下服の抑圧された職場環境に対して決意を持って集結した先達の勇気によって組織を強化・拡大させてきました。

協議会活動の主軸と牽引役を担ってきた団塊世代の会員が退職をむかえているいま、この力を途切れさせてはいけません。消防職場全体が働きやすく働きがいのある民主的な職場とするために、次世代へのスムーズな活動の継承が不可欠です。

そのため全消協は第34回定期総会でユース部の設置にむけた取り組みを提起しており、今総会においてユース部を設置します。

若い力を集結させる環境をつくり消防職場の抱える問題に対する意識や考え方を伝承し、活動のノウハウを次世代に継承していきます。

【賃金・労働条件の改善】

無賃金拘束時間に対しては、「無秩序で不当な労働者の束縛や拘束の強要は組織運営のための慣例制度ということで肯定されるものではない」という判断が社会制度の流れとなっています。地裁判決では医師の当直勤務を時間外勤務と認めた判決や通信指令勤務に従事する消防職員の深夜帯を含む休憩時間の業務命令に対して時間外勤務手当の支払いを命じた判決が立て続けに出されています。

全消協は発足以来、無賃金拘束時間の解消を、全国の消防職場共通の課題として取り組み続けてきました。近年の司法判断を踏まえ、現行の勤務体制の不備に対して今まで以上の改善にむけ、積極的に取り組んでいかなければなりません。

また、東日本大震災では派遣命令・要請を受けた全国の緊急消防援助隊が被災地で現場活動を行ってきました。しかしながら、災害派遣時における勤務時間の取り扱いに消防本部ごとに取り扱いが異なり、この不均衡は条例主義という壁はあるにせよ不条理な自治体間格差と言わざるを得ません。全消協は被災地への緊急消防援助隊派遣の勤務取り扱いについて公平・公正となるよう国への働きかけを含め問題点を提起していく必要があります。

【安全衛生体制の確立】

東日本大震災では、凄惨な被災地の現状や精神的に極限状態ともいえる極めて過酷な状況下での現場活動により、消防のみならず警察、自衛隊などにも相当数のPTSD発症が危惧され、各組織下で喫緊の取り組み課題となっています。

全消協はメンタルヘルス対策として派遣された職員を対象にアンケート調査を実施し、少なからずとも影響を受けPTSD発症の可能性がある場合には対応の遅れが生じることの無いよう、専門家と取り組みを進めてきました。今後も、さらに対策を強化し研究とメンタルヘルス対策の重要性を啓発していきます。

【救急医療体制の確立】

現場における救急活動については消防救急発足以来、その任務と責務を消防機関が担ってきました。昨今、ドクターカーやドクターヘリ、さらには大規模災害時におけるDMATの活動等、人命を救うため各医療機関において、より現場に近い医療体制の充実がはかられています。病院前救護体制の充実強化が進められている状況を受け、救急救助活動と医療活動の更なる連携体制の強化が求められています。消防の枠組みにとらわれることなく、自治労の衛生医療評議会や多産別等との連携や情報交換により住民ニーズに応えられる救急医療体制の充実をはかります。

Ⅱ 活動方針

(1) 団結権回復にむけた取り組み

消防職員の団結権については、この1年で大きく前進しています。「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」は、総務大臣政務官を座長として2010年1月から12月までの間に、計9回にわたって検討を重ね報告書をまとめました。報告書では、消防職員の団結権問題に関するこれまでの議論の経過において「団結権を与える」のではなく、憲法第28条によって本来勤労者に保障される権利であるとの視点から「回復」するという表現に変え、検討を行いました。また、団結権を回復することにより生じる課題・懸念や団結権を回復する場合の制度のあり方と対応策などについて整理を行った上で、5つのパターンを含む報告書が示されました。

この報告書の内容に対して連合は談話を公表し、「団結権を付与すべしとの内容でないことは遺憾であるが、検討会では激しい意見対立の中で、付与した場合の制度のあり方を提起し、文脈において付与は可能であるということを示唆したことは大きな前進であり評価する」とし、「政府はこの報告書を受けただちに団結権付与のための制度設計と関係法令改正の準備に着手すべきである」との談話を発表しました。

一方自治労は2011年6月に「国家公務員制度改革関連4法案」の閣議決定の前に、政府として法案の成立に全力をあげるよう中野公務員制度改革担当大臣と交渉を行い「消防職員の団結権を含めた地方公務員の労働基本権について、今回、国と同時に法案を提出することにはならなかったが、国と同時に実施されることを確信している」と述べ、担当大臣として総務大臣に強く要請するとともに、協力して取り組むよう求めました。

6月10日に第6回政府・連合トップ会談を行い、このなかで政府からのコメントとして「公務員制度改革について、法案同時成立に向け、全力を挙げる。消防職員の団結権についても憲法第28条の労働基本権は公務員にも同じように適用されるのは当然であるという前提に立ち、総務省とも連携し、公務員制度改革全体の整合性をとる」との発言がありました。また、会談の前段に行われた「公務員制度改革および関連法案の扱い」についての申し入れを行い、このなかで官房長官から「消防職員に団結権を付与する」との政府公式見解が出されました。

団結権回復は、結成当初からの悲願であり、質の高い消防サービスを確立するためにも必要不可欠なものです。この権利がまさしく国民のコンセンサスを得て回復しようとしている今、国際公務労連(PSI)への積極的な参加を通し、ILOへ早期に回復されるよう要請します。また法案の早期成立にむけて日本国内の関連団体とより強固な協力関係を構築し、各級議員への働きかけを行うことを活動の基本とします。

【団結権回復のための政治活動の強化】

1.協約締結権を含めた労働基本権の回復のため、民主党消防政策議員懇談会に対しての働きかけを強化し、法案成立にむけた要請を行います。連合・自治労を軸として国に対し、団結権を回復するよう働きかけを行います。

【団結権回復にむけた国際連帯の強化】

2.消防職員の団結権問題について、PSIの一員として国外の公務労働者との連携をとり、またILOに対し、引き続き団結権が早期に回復されるよう要請します。
3.PSIに加盟するアジア・太平洋地域に働く消防職員との交流を深め、消防職員の労働基本権の確立をはかります。
4.PSI-JCの活動を通し、加盟する組織との連携を強化します。

(2) 組織強化・拡大の取り組み

団結権の回復は目前に迫っています。当然この機会を最大のチャンスと捉え、時機を逸することなく組織強化・拡大の取り組みを進めなくてはなりません。

安心して働ける職場づくりのためにも「組織」の重要性をもっと全国の未組織職場へ訴え、組織化へ繋げていく必要があります。昨年は、「組織・財政確立のための中長期課題および組織強化・拡大の取り組みにむけた考え方」を単協代表者会議において提起し、より具体的な方針を示したところです。自治労も「消防職員の組織化方針」に基づき、積極的な取り組みを進めています。より強固に連携し、未組織職場への働きかけと未加入者への加入促進など組織拡大を進めます。

今後は「自主組織」から「労働組合」へ移行する準備も進めなければなりません。労働組合としての組織体制や規約の見直し、組合費などの諸課題を克服し、直接交渉するための知識とノウハウを習得したうえでより当局側と有利に交渉するためには組織強化・拡大は必要不可欠です。

若年層の育成も課題の一つであり、ユース部や女性連絡会活動を強化します。研究集会、労働講座およびリーダーセミナーの内容を充実させ、PSI活動への積極的参加を進め、これまで以上の知識の習得や人材育成を進めていきます。

【自治労本部との連携】

1.自治労本部の消防組織化対策本部と連携し、全国の消防本部における状況の把握を行い、全消協と自治労合同で組織化対策を進めます。
2.全消協執行部と自治労本部組織担当役員で定期協議を実施し、全国の組織化の進捗状況や消防職場の現状、団結権回復後のあり方などの議論を継続します。

【自治労各県本部・単組との連携】

3.県消協および単協は、自治労各県本部に設置されている消防組織化対策委員会に積極的に参画し、消防職場の勤務実態や状況などを説明しながら、未組織消防へのアプローチ方法や組織化にむけた具体的取り組みを行っていきます。
4.県消協および単協は、自治労県本部および単組に対し、消防職場の喫緊の諸課題や組織化に必要な情報提供を行います。
5.自治労県本部および単組と連携し、議員、首長、消防長に対し消防職員の団結権回復と組織化への理解を求めます。

【協議会活動を担う人材の育成】

6.消防職場における労働問題の自主的解決能力の向上や職場環境の改善などに役立ち、将来における各単協および全消協運動を活性化、さらに「労働組合」を想定した中心的役割を担っていく人材育成のために、労働講座およびリーダーセミナーを引き続き開催します。

【訴訟支援体制の強化】

7.賃金・労働条件、安全衛生や労災などの各種訴訟を単協が取り組む場合は、当該単協の主体的な取り組みを前提に、具体的な支援について幹事会で決定し提起します。

(3) 団結権回復後の組織のあり方

全消協は自治労との定期協議を開催するなど、この2年間で自治労とともに来たるべき団結権回復後の組織合流のあり方について議論を深めてきました。全消協は1977年の発足以降、民主的な消防職場の構築と消防行政の発展のために活動を行ってきました。発足当初2500人だった会員数も現在では1万3000人となり、総務省が設置した「消防職員の団結権のあり方に関する検討会」にも構成員として参画するなど、全消協はこれまでの活動を通じて、広く「全国の消防職員の代表である団体」と認知されるまでになりました。団結権が回復され、自治労との組織合流時において今までの活動は継続していく必要があります。また、組織合流する際に混乱と分断をきたさないよう、より具体的な部分についても議論を重ねていかなければなりません。

一方これまで単協レベルでの議論の進捗状況についてアンケートを行い、現状を見極めるとともに、2010年7月に開催した単協代表者会議で意見集約を行いましたが県消協および単協で今まで以上に議論と調整が必要であることが確認されています。引き続き組織のあり方について議論を深め、スムーズな組織の移行と全消協活動の継続が可能な組織体制の構築をはかっていく必要があります。

【職種別横断組織としての自治労への合流】

1.団結権回復後は、自治労に組織合流します。その際「全消協」という名称は消滅することとなりますが、合流後は自治労のなかの職種別横断組織として「消防評議会(仮称)」を設置し、自治労組織の一員として労働運動を展開していくための協議を行っています。今後も、今の全消協としての活動が継続されるよう、自治労と具体的協議を重ねていきます。
2.県消協組織のある県については、県本部内に評議会を設置し県内の職種別横断組織を形成します。

【協議会から労働組合への移行】

3.単独消防の協議会で当該自治体に自治労加盟単組がある場合、基本的には個々の会員が単組に組合員加盟し単協は解散します。
4.当該自治体に自治労単組がない単独消防の協議会や事務組合等の協議会などについては、単組を結成し自治労に加盟します。
5.自賄い方式の組合消防等の単協は、地域事情にあわせた組織形態を自治労と調整します。

【財政の確立】

6.活発な活動のためには健全な財政の確立が不可欠です。今後、自治労の一員として労働運動を展開していくためには、現状の会費を自治労単組と同水準とすることが必要であり、会費の段階的な措置等については、自治労と調整をはかっていきます。

(4) 賃金・労働条件改善の取り組み

私たちの消防職場では賃金や労働条件において、消防当局の恣意的な運用例が数多く存在しています。また、本来は歓迎すべき勤務時間短縮ですが、交替制の消防職場においては、24時間拘束の職場実態は変わらないまま勤務時間の短縮が行われ、一般職員の勤務条件改善に反して、交替制職場の消防職員は無賃金拘束時間の延長という悪条件の増長になっています。

最近では、消防職場と類似する職種の「仮眠・休憩」などの無賃金拘束に対して労働時間性を認める判例が相次いで示されています。消防職場においては、通信係員の休憩時間中の業務命令に対し時間外の支払いを求めた地裁判決が出されています。休憩時間の取り扱いでは、消防庁通知は、消防職場に大きな影響を与え、とりわけ「休憩時間の繰り上げ・繰り下げ」は、労働基準法の労働条件明示義務に反する違法性の高い運用になっています。

能力・実績に基づく人事評価制度が消防職場にも導入されていますが、評価システムを消防職場で適正に運用させ、公正・公平で的確な評価をさせる取り組みを行います。

公務員の定年延長が2013年度から実施されようとしています。定年延長制度導入の場合、特定消防職員は2019年度からの制度導入となる見込みです。会員が安心して働ける再任用制度をめざすとともに、再任用制度で起きている問題を検証し「定年延長の困難職種」である消防職の業務内容、人事のあり方、賃金および福利厚生等について研究を行い、関係団体と協議し、年金支給開始年齢まで健康に勤務できる体制をとれるよう国に働きかけます。

東日本大震災では、全国の消防から緊急消防援助隊として派遣総数2万8,620人・部隊総数7,577隊が3月11日から6月6日まで派遣され被災地で現場活動を行いましたが、災害派遣について不均衡な取り扱いが発生しました。緊急消防援助隊に関する経費については国に請求しますが、請求については自治体の条例に基づき請求するため、派遣元が財政基盤の脆弱な自治体で特殊勤務手当の削減や凍結、給与の削減を行っているところも多数あり、複数消防本部で混成運用している部隊では同じ業務を行いながら全く違う扱いが発生しました。全消協は緊急消防援助隊での活動に対して、不均衡な勤務取り扱いにならないよう国へ働き掛け問題提起をします。

全消協は、消防業務の特殊性を考慮した基本賃金のあり方、その他の労働条件に関しても、活力あふれる職場をつくるための環境整備と、仕事に対する「正当な評価」を求め、加盟単協と一体となって、次の運動を進めていきます。

【賃金・労働条件の改善】

1.消防職員の賃金・労働条件改善に自治労と連携して取り組みます。
2.消防職員の基本賃金および諸手当のあり方について研究を進めます。賃金・諸手当の改善事例を収集し、その情報提供に努めます。
3.一般職員との賃金格差が生じないよう積極的に情報交換を行い、昇給・昇格が不利益のないような制度の整備を求めます。
4.勤務時間や休日数などでの日勤者との格差、交替制勤務者間での格差が生じないよう制度の整備を求めます。勤務形態・労働時間の改善事例を収集し、その情報提供に努めます。

【無賃金拘束時間への取り組み】

5.国に対し、休憩時間にかかる基本原則適用除外を定める労働基準法施行規則の見直しと深夜を含む労働の総量と深夜勤務の回数制限を設けるよう求めます。
6.自治労と連携し、自治労委員長と総務大臣との勤務時間等に関する定期協議などを通じた行政対策や、協力国会議員と問題共有化をはかるなど国会対策に取り組みます。
7.人事委員会・公平委員会に対する措置要求、また、訴訟等の動きがある単協の情報収集に努め、支援協力体制の確立をはかります。
8.単協はシフト制の導入など勤務制度の研究を行い、無賃金拘束時間を可能な限り短縮するよう求めます。

【勤務時間制度の改善】

9.変形労働時間制の期間は、「1ヵ月以内」を原則とし、使用者による恣意的な週休の振替運用については是正を求めます。
10.労働時間配分の明確化をはかり、休憩時間内の労働(出動など)に対して時間外勤務手当の支払いを求めます。
11.時間外勤務の縮減を求めるとともに、恒常的なサービス残業を廃止するよう求めます。
12.勤務時間外における恒常的・定期的な業務命令(予防査察・救命講習・訓練など)を撤廃し、これらの業務が、適正な人員配置のもと通常勤務のなかで円滑に遂行できる体制を求めます。

【人事評価制度への取り組み】

13.新たな人事評価制度の導入にあたっては、会員自らが制度設計段階から関与・参画し、納得できるシステムづくりを求めます。

【再任用制度・定年延長への取り組み】

14.すべての消防本部に再任用制度が導入されるよう取り組みます。
15.すでに再任用制度が運用されている消防職場の実態の収集と情報の共有化をはかります。
16.希望者全員の採用にむけて関係団体と協議しながら職場の確保をはかります。
17.現職時における再任用や定年延長にむけた研修制度の充実について研究を行います。
18.消防職員の定年延長については、消防職場の現状を鑑みた制度構築にむけて、国に対する申し入れを行います。

【災害派遣勤務への取り組み】

19.東日本大震災における加盟単協の派遣時の処遇について調査研究します。
20.国に対し、派遣時の勤務の取り扱いが不均衡に取り扱われないような基準を設けることを求めます。

(5) 労働安全衛生の確立

労働者の健康と安全を守り、働きがいのある仕事・職場にしていくことは、労働者の尊厳ある労働(ディーセントワーク)のための最も基礎的な要件です。労働安全衛生活動は、これから消防職員に団結権が回復され、労働組合として労働者のためにさらに活躍できる最大の舞台でもあります。

消防業務は長時間拘束や交替制勤務、深夜勤務をともない、常に相手の状況にあわせて働くケア労働です。この労働条件下で質の高い公共サービスを提供するためには、労働安全衛生委員会の活動を強化するとともに、労働安全衛生法を活用し、安全で快適な職場環境を整備することが必要です。

消防職員の公務中における死者や負傷者の発生する割合は、その職務の特殊性から他の行政職員と比較しても高い水準となっています。訓練時において、災害時の負傷者数を上回る現象がここ数年続いています。また災害現場活動で多くの仲間の命が危険にさらされています。労働災害が起こらないよう安全管理体制の確立に取り組むとともに業務に起因して発生した死傷病については、公務災害の認定を求めます。また、定年まで「健康」で働ける職場づくり、定年後も家族と「老後」の楽しめる職場環境づくりをめざします。

阪神・淡路大震災や東日本大震災等、近年大規模な災害が発生しているなか、今一度メンタルヘルスの重要性を認識し、惨事ストレスの「犠牲者」を出さない取り組みを行います。

【労働安全衛生法の活用】

1.厚生労働省に対し、消防業務を労働安全衛生法施行令のなかで明確に位置づけるため、第3条(安全管理者を選任すべき事業所)、第8条(安全委員会を設けるべき事業所)の改正を求めます。
2.安衛法の趣旨を活かし、民主的で職員一人ひとりが積極的に参画できる労働安全衛生活動を推進します。
3.消防職場の労働安全衛生については、その職場で働く職員の意見や経験を尊重するとともに、医師、有識者、自治労関係者など、広範囲な専門家の参画により基準の見直しを行うよう求めます。
4.私たちが従事する現場活動には、あらゆる危険性が潜在しています。現場活動時の安全管理はもとより、訓練中の安全管理にも細心の注意を払うとともに、健康で働きやすい職場の環境整備をはかるため、必要な情報の提供・安全衛生教育の徹底・資器材の整備充実を、消防当局に求めます。また、開発された機械・器具が早期に消防職場に導入されるよう求めます。
5.深夜業務に従事する職員の健康診断については、安衛法に基づいた適正な健康診断を行わせるとともに、その実施についても業務の一環として受診させるよう活動を進めます。
6.労働安全衛生委員会への女性の参画を促進し、「男女がともに担う安全衛生活動」を確立します。
7.消防職員が24時間職場に拘束されるなかで、福利厚生の充実は必要不可欠であるとの認識に立ち、食堂やリラックスできる休養室の整備、個人のプライバシーが守られる仮眠室の個室化などを求めます。

【労働災害・公務災害対策】

8.労働災害が発生しないよう職場の安全管理体制を確立します。
9.職員が療養する必要が生じた場合、安心して治療に専念できる体制づくりを求めます。また、職場復帰時からフルタイムで働くことが困難な場合、就業場所や業務内容の変更、規則の制定による段階的な職場復帰が出来るよう、健康に配慮した体制づくりを研究します。
10.業務中や業務に起因して発生したと思われる傷病などについては、すべて公務災害認定請求を行うよう活動を進めます。
11.原子力施設や危険物施設などが管轄内にある消防本部の災害対応体制の充実、また、関係機関との情報を共有、さらには、災害発生時に出動する消防職員の安全を確保する装備の充実や教育・訓練を国の責任において実施・徹底するよう働きかけます。

【メンタルヘルス対策】

12.メンタルヘルス対策として次の通り取り組みます。

① 一次予防(職場の民主化・活性化、参加型安全衛生活動によるストレス・過労対策・快適職場づくり、厚生施設の整備・充実やサークル支援など福利厚生活動の充実、地域社会活動の推進と支援)
② 二次予防(早期対策・早期治療のための利用しやすい相談体制の工夫・改善、リスナー・カウンセリングマインド研修等実践的な研修の実施)
③ 三次予防(リハビリ勤務、慣らし勤務等による復帰のための猶予期間の保障、カウンセリング体制の継続など職場復帰・再発防止対策)

13.メンタルヘルス問題を職場内で気軽に話し合える環境づくりを進めます。人権の尊重・プライバシーの保護を基本として、人事管理とは完全に切り離したカウンセリング体制の充実を求めます。
14.本人や家族が惨事ストレスについて理解し、心身の変化を察知し、研修・担当職員の養成などに努めます。
15.メンタルヘルス専門家を活用できるよう関係機関などと協力関係を築きます。

【自治体安全衛生研究会との連携】

16.消防職場で労働安全衛生活動を推進するため自治体労働安全衛生研究会の活動に積極的に参加し、単協での活動に活かせるように取り組みます。
17.各地で発生した公務災害について、その実態を明らかにするよう取り組みます。また、その情報を全国に発信し共有化をはかるとともに、その防止策について研究します。

(6) 男女平等参画社会実現の取り組み

2010年12月の男女共同参画第3次計画策定、人事院の「育児・介護を行う職員の仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の改正(2011年4月施行)など、国の制度における男女平等参画の取り組みは課題を持ちつつも着実に前進しており、急速な少子・高齢社会を迎えるなか、「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)」において男性の働き方の見直しや女性の活躍による経済社会の活性化を含むさまざまな議論が進んでいます。しかし、消防職場における女性の採用状況は、総務省消防庁の調査によれば、女性消防職員は2010年4月1日現在で、消防職員3,646人(2.3%)、消防吏員2,809人(1.8%)にすぎません。消防職場への女性の採用を推進すること、施設や資機材など女性の働くことができる職場環境を整え、職員への男女平等の啓発やセクシュアル・ハラスメント防止などの教育を実施し、「男職場」であった消防職場を改革することが求められています。

男女平等参画は組織の活性化の要であり、経済・社会の持続可能性の基盤であることを基本に、男女平等参画は女性のみの課題ではなく、「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)」の観点からも男性や基本組織の課題であることを認識し、組織全体で意識改革の必要があります。職場や地域、協議会活動において男女を問わず、一人一人が消防職員としてその能力を十分に発揮し、生き生きと活躍できる場の実現にむけ全力で取り組みを進めます。

【雇用における男女平等の推進】

1.男女共同参画社会基本法を踏まえ、あらゆる社会制度・慣行をジェンダー中立のものにするため、男女平等政策および職場における雇用平等推進にむけ、自治体・消防本部に要求を行います。
2.女性職員の採用を求め、女性の勤務が可能となるよう、施設や資機材の改善など環境整備を求めます。採用・登用・配置をはじめとする男女間の処遇上の格差を是正し、雇用の全ステージにおける男女平等の職場づくりを推進します。
3.人事院の「育児・介護を行う職員の仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の改正等を参考に、育児・介護を行う職員の両立支援制度を活用します。
4.育児・介護を行う職員の超過勤務の制限を徹底します。また、育児のための短時間勤務制度について、条例化を進めるとともに実効性を高める取り組みを進め、男性職員の積極的な育児参加を奨励します。さらに、介護を行う職員のための短時間勤務制度の実現に取り組みます。
5.地方公務員共済制度・事業について、性とライフスタイルに中立な制度設計を前提として、両立支援策や福祉事業などを充実するよう対策を進めます。具体的には、介護休暇全期間に関わる掛金の免除、育児休業・介護休暇に関わる休業給付金の支給水準・期間の改善、出産費・出産手当金の増額などを求めます。
6.安全衛生委員会への女性の参画を促進し、男女がともに担う安全衛生活動を確立します。
7.セクシュアル・ハラスメントをはじめモラル・ハラスメントやいじめ対策など、使用者責任を明確にしつつ、情報提供や予防対策、被害者救済対策に取り組みます。

【男女がともに担う全消協づくり】

8.全消協の活動のすべての領域で女性の参加を促進し、男女がともに活動を担う運動作風をつくります。労働講座、研究集会には女性枠を設け参加を保障します。
9.全消協の主催する会議・集会等でセクシュアル・ハラスメントの起こることのないよう、「セクシュアル・ハラスメント一掃宣言」に取り組みます。

【国際的な活動における男女平等の推進】

10.ワークルールの改善、男女平等、均等待遇の推進などILO条約等国際条約の批准および遵守の取り組みを強めます。
11.PSI規約に基づき、あらゆる活動での男女平等参画(ジェンダー・メーンストリーミング)をめざします。女性の協議会活動への積極的な参画、雇用における男女間格差の解消にむけて、同一価値労働・同一賃金と均等待遇実現運動に取り組みます。

(7) 救急医療体制の確立

消防法の一部を改正する法律が2009年10月30日に施行されました。改正消防法では、都道府県が消防機関による救急業務としての傷病者の搬送および医療機関による当該傷病者の受入れの迅速かつ適切な実施をはかるため、傷病者の搬送および傷病者の受入れの実施に関する基準を定めることとしていますが、実行できていないのが現状です。

救急医療の現場では、救急隊員・医師・看護師の負担が増大しています。救急隊員は人命の救護・応急処置・病院搬送の任務を遂行する重責を担っており、出場件数の増加は救急隊員の身体的負担を招き、蓄積した疲労は予期せぬ事故を引き起こすことにもなりかねません。また近年、凄惨・悲惨を極める大規模な自然災害や事件・事故が多発しています。PTSDやCISなど身体的症状を訴える救急隊員も少なくありません。メンタルヘルスに対応できる職場環境が必要です。

救急救命士の処置拡大にともなう専門教育・研修が長期にわたり、職場では人員不足が常態化しています。高度な知識・手技を取得した救急隊員を効果的に運用することが必要不可欠ですが、確立された業務の遂行をはかるためには人員の充足率を高める必要があります。救命士は、医師の具体的指示下での特定行為を行っていますが、地域によって対応できる病院が限られるなど問題が発生しています。救急隊員が行う応急処置の質を保証するためにも各都道府県、医療圏そして地域におけるMC体制の充実・強化が必要です。

また、救急救命処置を有効に機能させるためには、消防救急が地域医療機関と連携し、相互理解を深めるためにも“顔の見える”関係を構築する必要があります。全消協は、消防救急の抱える問題点を明確化し、救急救命士制度の効果的な運用と救急隊員の質的向上をめざし、地域住民、地域医療を担う労働者、消防救急が一体となり、消防救急の充実にむけ関係各省庁に対して働きかけます。

【改正消防法への対応】

1.国に対し次のことを求めます。

① 都道府県協議会の運営状況を把握するとともに、十分機能するよう指導および支援を行うこと。
② 厚生労働省は国民が平等に医療を受けられ、また搬送時間が長時間とならないよう、適正な病院の配置と医師・看護師の確保をすること。
③ 制度改正にともない国は都道府県や市町村に必要な財政措置を行うこと。

2.都道府県に対し次のことを求めます。

① 協議会に現場で活動している消防職員の意見を反映させること。
② 都道府県は協議会を設置するに当たって各地域MCと連携し、医療機関と消防機関との合意をはかること。

【救急業務の充実】

3.消防救急の充実、救急隊員の労働安全の確立をはかるため職員の増員を求めます。
4.コールトリアージ、フィールドトリアージのあり方の研究を進めます。
5.MC体制の地域間格差を解消するよう国に求めます。
6.NBC災害や新型インフルエンザ等の特異的事象に対応するための情報の提供や装備の充実をはかるよう求めます。

【地域医療との関わり】

7.地域の救急医療の拡充のため、自治労衛生医療評議会との連携を強めます。

(8) 消防の広域化への対応

2011年5月、消防組織法改正により消防の広域化は努力目標と示されましたが、今回の東日本大震災によって広域化政策が大きく変化する可能性があり、消防の災害対応のあり方を見直すべきという考えを基に都道府県を単位とした消防広域化をめざそうという動きがあります。しかし、小規模消防の対応力の強化については、安易な広域化のみでは根本的な解決とはなりません。全消協は、1990年5月のILO「消防職員の雇用および労働条件に関する合同会議」の結論に基づき総務省消防庁に対して、①広域再編を進めるにあたっては不必要な広域化は進めるべきではない、②住民サービスを現状より低下させない、③職員の削減や労働条件の悪化をともなわない、の3項目について自治労を通じ申し入れを行ってきました。消防の広域を進める上で、地方自治体の逼迫した財政状況のなかでは、財政的な効率のみを追求した広域化に進む恐れもあり、消防の広域化にあっては地域の特性や住民の意思に基づき、住民サービスが低下しないよう進めることが大切です。

消防の広域化と同時進行している消防・救急無線のデジタル化は、莫大な費用を要することから財政難にあえぐ地方自治体では単独での整備は困難であり、結果として消防の広域化を強いるものとなっています。また、消防・救急無線のデジタル化は一定規模の消防が共同運用を行うことにより、管轄区域の広域化へと政策転換していく可能性もあります。

行財政運営の効率化のみに主眼が置かれた消防の広域化に対し、公共緊急サービスである消防行政を担う消防職員として、その社会的使命を再確認したうえで、地域実情に即した消防サービスのあり方を求めていかなければなりません。自治労・関係議員・各種団体との連携を通じ、都道府県が定める推進計画、広域化対象市町村が定める広域消防運営計画策定に関与し、広域化が地域の防災力を高める有効な手段となるよう提言し、消防の広域化に対し主体的に対応していく必要があります。

【国に対する取り組み】

1.広域化の推進にあたっては、自治体への財政支援を行うよう求めます。
2.消防・救急無線のデジタル化については、導入にともなう費用を国が応分の負担をするよう求めます。

【自治体に対する取り組み】

3.広域化の推進にあたっては、管轄人口規模や財政の効率化のみを主な判断基準とするのではなく、住民サービスの低下を招かぬよう住民の生活圏・消防需要の動向・住民の意思などを総合的に踏まえることを求めます。
4.地域住民と現場の消防職員に情報を開示し、意見反映をはかることを求めます。
5.消防職員の雇用、賃金・労働条件など処遇が不利益とならないようにすることを求めます。

【広域化対策委員会の取り組み】

6.都道府県および広域化対象市町村が定める広域消防運営計画への対応については、県消協および広域化該当単協に「広域化対策委員会」を設置し、次の通り取り組みます。

① 県消協および各単協と、広域化に関する情報の収集・提供を行います。
② 地域住民・各種団体・未組織消防に対し、広域化に関する情報の収集・提供を行います。
③ 広域消防運営計画策定に際し、自治労各県本部・単組・組織内議員・協力議員と連携して各自治体当局に意見反映を行います。
④ 自治労県本部・単組と連携し、広域化を契機に未組織消防への組織拡大をはかるよう取り組みます。また広域化により単協が多数派の未組織職場に埋没することがないよう取り組みます。

(9) 質の高い消防サービスの実現

全消協は、PSIの「質の高い公共サービス(QPSキャンペーン)」の一環として質の高い消防サービスの実現に取り組んできました。PSIは、「質の高い公共サービスとは、質の高い労働条件下で働く質の高い労働者が提供するものであり、ディーセントな(人間として尊厳を保つことのできる)社会をつくり出すための必須要件に他ならない」と定義し、「質の高いサービスは人権である。さらに質の高いサービスは、質の高い労働者(良く教育され、公共部門の倫理観を備えた)が質の高い労働条件の下で、そしてサービス利用者が常に質の高さを望めるような財源を伴ってこそ初めて提供が可能になる」ことをゆるぎない信念としています。これは全消協の方針と同質であり、全消協活動を推進することが、質の高い消防サービスに繋がります。

質の高い消防サービスの基礎となるのは消防力であり、その基本となるのが人員です。人員が充足され、平等に高い教育を受ける機会を持つこと、そして、その力が遺憾なく発揮できる車両や資機材、システムおよび組織体制、消防予算が必要です。しかし、各自治体消防が整備すべき基準値は、「消防力の基準」から「消防力の整備指針」と改正され、「最低基準」から「整備すべき目標」となりました。さらに地方財政悪化の影響により、十分な消防予算が担保されず、条例定数の削減や最低人員の切り下げが平然と行われています。全消協は、根本的問題である消防予算の確保、住民本位の消防行政の確立をめざし「質の高い消防サービス」の実現への取り組みを推進します。

【質の高い消防サービスの実現への取り組み】

1.県消協・単協は、住民ニーズの把握に努め地域住民と協働した活動を推進します。
2.県消協・単協は、積極的に地域住民との交流の機会を設け、消防行政について検証・評価し、課題を共有します。
3.県消協・単協は、大規模災害時における自助・共助の重要性について協議を行い、地域における防災コミュニティーづくりに取り組みます。
4.県消協・単協は、医療、福祉、保健、教育機関などと連携・協力し質の高い消防サービス実現に取り組みます。

【消防力の整備指針への取り組み】

5.単協は、消防当局および各自治体首長に現在の消防力および整備すべき目標について住民に対し十分に情報公開することを求めます。
6.県消協は、県内すべての消防本部の消防力の整備状況を把握し、消防力の地域間格差が拡大しないよう各自治体および消防長会に要望します。
7.全消協は、総務省消防庁に対し、自治労や民主党消防政策議員懇談会と連携し、全国的な消防力に関する課題提起を行います。消防力整備における国の責任を明確にさせるとともに、相応の予算措置を求めます。

【自治研活動への参画】

8.県消協・単協は、自治労単組や県本部と連携し、自治研活動に積極的に参画します。
9.全消協は、先進的事例を収集し、分析・検討を行うとともに、研究集会において政策提起します。また、自治労の主催する自治研集会に積極的に参画し、連携・共有をはかります。
10.全消協は、会員をはじめ各方面から幅広く、消防行政の将来的展望について意見の提供を求めます。

(10) 国際連帯活動の推進

全消協は日本の消防職員の団結権獲得など目標を掲げ、ILOに訴える活動においてPSIの支援を受けてきましたが、いまだ目標達成には至っていません。国際社会のなかで共通の課題や諸問題解決のために連帯し、世界から日本に対して訴えていくことは全消協の目標達成には必要不可欠で、幅の広い活動となります。全消協はPSIの活動を通して、国際ステージでより積極的に自らの問題について発言し、日本での消防職員の団結権回復や世界の公共部門労働者との連携をはかり、権利獲得や労働問題解決への取り組みの一翼を担います。

PSIは基礎的公共サービスが人間らしい生活を営む上で必要であり、貧困の解決と社会格差の解消に有効であることを再評価し、「質の高い公共サービス」グローバル・キャンペーンを展開しています。全消協も市民の安心・安全を保障する消防行政の実現をはかるための取り組みを、権利獲得と労働条件改善の取り組みと一体のものとして推進します。また、PSIが重視しているジェンダー平等の取り組みを、全消協の活動のあらゆる領域に適用するとともに、男女平等の働きやすい消防職場づくりを推進します。

全消協は、世界およびアジア諸国から注目されているとともに大きな期待が寄せられています。これらの期待に応えるため全消協は団結権回復をめざし、その活動が各国に波及していくよう国際連帯の活性化をはかります。

【国際公務公共サービス労働運動の発展・強化の取り組み】

1.日本の消防職員の団結権問題について、PSIの諸活動の場において訴え、国際労働運動の注目と国際世論の喚起に努めます。
2.PSI-JCの活動を積極的に担い、日本におけるPSI加盟組合の拡大など組織強化に寄与します。
3.連合が重点とする、ILO94号条約(公契約)、105号条約(強制労働廃止)、111号条約(差別待遇禁止)、149号条約(看護労働)、183号条約(母性保護)など未批准条約の批准促進にむけ、連合、自治労とともに取り組みます。

【「質の高い公共サービス」実現の取り組み】

4.「PSIグローバル政策と戦略目標2008-2012」に基づいて、質の高い公共サービスを守り発展させることを目標に、社会格差の解消、貧困撲滅、公共サービス労働者の労働基本権確立、公共サービスの市場化反対、男女平等参画などの運動の活性化をはかります。

【アジア・太平洋地域を中心とする国際連帯の取り組み】

5.2008年10月に設立されたPSIアジア太平洋地域「消防・救急労働者ネットワーク」に参加します。全消協からコーディネーターを選任し積極的に活動を担います。
6.毎年、韓国で開催される「日韓労働組合交流会」に参加し、問題解決にむけともに活動します。
7.PSIアジア太平洋地域の消防職員との情報や意見交換をはかり、「消防・救急労働者ネットワーク」を拡大します。
8.全消協は、質の高い消防サービスの優れた事例についてPSIに情報発信し、国際的なネットワークづくり・国際連帯を推進します。
9.PSI「質の高い公共サービス・グローバル・キャンペーン」と連携し消防職場のQPS活動を展開します。

(11) 女性連絡会の取り組み

2010年度消防白書によると、全国の女性消防職員は3,646人で、全消防職員の2.3%とまだまだ少数であり、残念ながら女性の進出が遅れている職場だと言わざるを得ません。

少数であるが故に女性が声をあげることが難しく、消防当局や全消協執行部に意見が届きにくいという状況であったため、全消協では2007年第31回定期総会において全消協女性連絡会を創設し、女性の意見を積極的に求める体制づくりをスタートさせました。

2009年に女性連絡会で実施したアンケートにおいて、男性が多数を占める職場のなかで、女性職員が周囲の理解の不十分さや施設面での未整備、職域の壁、セクシュアル・ハラスメントや人間関係の難しさに直面しており、また、結婚・出産・育児など、将来への不安を抱えながら働いている現状が浮き彫りとなりました。

これらの問題を解決していくためには、女性会員も協議会活動に積極的に参加し、発言していくことが不可欠です。女性連絡会では、男女問わず会員から広く意見を募り、また、継続的に女性職員の勤務状況の把握に努め、問題提起を行います。さらに、情報交換や交流の場を設け、ネットワークづくりを支援します。

現在の女性職員のためはもちろん、これから採用される女性職員のためにも、今まで以上に女性の意見に耳を傾け、それを反映していくことが可能な組織づくりを進めていき、男女がともに自分らしさを発揮しながら働ける職場づくりをめざします。

【活動強化】

1.男女がともに協議会活動を担う体制を確立し、男女平等の職場と社会を創造するため、女性連絡会の活動を強めます。
2.会員同士の顔の見える関係を構築するため、研究集会などの開催にあわせて女性交流会を設定し、女性同士の情報交換・ネットワークづくりを支援します。また、各ブロックの女性連絡会の開催を進めていきます。
3.男女平等の職場・社会をつくるべく、継続的にアンケートを実施し、女性を取り巻く環境の実態把握に努めます。

【掲示板の活用】

4.全消協HPに女性連絡会の掲示板を設け、女性会員の情報交換の場とします。
5.女性連絡会の活動報告、学習会などの情報を発信します。
6.会員からの意見・要望について、女性連絡会で検討し、問題提起を行います。
7.活発な意見交換ができるように、全消協ニュース等で掲示板の開設を周知していきます。

【職場改善】

8.仮眠室や浴室、更衣室等の施設や被服等の個人装備について実態調査を行い、問題と課題を共有化し、男女がともに働きやすい職場環境を提案します。
9.セクシュアル・ハラスメント等のアンケートを実施し、その結果を広く周知することで男女がともに意識の向上をはかります。

【国際連帯活動の取り組み】

10.PSI-JC女性委員会およびユースネットワークの交流活動に参加します。
11.PSI規約に基づく、あらゆる活動での男女平等参画をめざし、女性の協議会活動への積極的な参画に取り組みます。

(12) ユース世代活動の推進

全消協結成から35年が経過するなか、歴史を築いてきた先達の活動の伝承が急務となっています。また、ユース世代の成長および活躍は組織の活性化につながり、大いなる原動力として組織に反映させなければなりません。そこで、協議会活動の入り口としてユース部を設置し、学習、実践、交流を通してユース世代の成長、活躍、リーダー育成を念頭に置いた活動を行います。

世界に目を向けると、2007年に加盟したPSIでは、その年の世界大会で、「若年労働者の有益な参加拡大をとおした後継者の育成」について決議され、意思決定部門、交渉チーム、研修、教育プログラムなどを含めて、若年労働者の参加率30%確保を推進するとされています。また、社会の急激な変化を鋭敏に察知し、活動が継承および発展するよう組織の改革と充実をはかるなど、環境整備に努める必要があることから、未来の労働運動を担う人材の育成に取り組みます。

【ユース部の設置】

1.全消協にユース部を設置し、活動を開始します。
2.PSI-JCに設置されているユースネットワークに積極的に参加し、東アジア地域における消防組織を中心にPSI加盟諸国のユース世代との連携の強化をはかります。

【設置後の取り組み】

3.次世代のリーダー育成を念頭に置いた活動を行います。
4.PSI2008年世界執行委員会(EB137)における決定事項に基づき、意思決定機関や交渉団、あらゆる活動へのユース世代の30%参加をめざします。
5.ユース世代特有の課題の解決に取り組みます。
6.自治労等他産別の青年層と交流し、人材の育成に努めます。
7.ユース世代の課題に取り組むため県消協や各単協にユース部設置を推奨します。